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お邪魔虫


 季節はずれの台風が、刻一刻東京に近づいているという。
 そんな10月最後の日曜、午後から夕方、夕方から夜にかけて、カーテンを開け放ったなか、わたしと綾乃の、いつ果てるともわからぬSMプレイが延々繰り広げられていた。
 下半身を組み敷かれた綾乃が、自由な上半身で悶えまくっている。わたしの左手は綾乃の片膝を持ち上げ、その脚を肩に抱えつつ、大股開きにした股間の中心に手袋をした手首を生えさせ、フィストファックにおよんでいた。
「うん、うっ、あん、ああっ」
 ピストン運動につられて、綾乃の断続的な呻きが発せられる。肘まであるグローブの右手が激しく出し入れされるたび、手袋の端から出た2本のコードもせわしなく揺れる。
 フィストファック、それも電気責めを応用した過激なプレイだ。
「ううっ、う、ああっ、あぁ」
 綾乃の呻きが強くなる。そのときには拳がヴァギナの入り口近くにさしかかり、拳のいちばん太い部分が膣孔を押しひろげ、大きな円をつくると同時に、綾乃の苦悶の反応がくっきりときわだつ。ヴァギナの入り口付近が、より感じている証拠だ。
「あああーっ、あ、あっ……うああーっ!」
 汗で光る上体が大きくのけぞり、何度目かの絶頂を迎えた。
 どろっと、手首を食わえたヴァギナが、白濁した液体を、ゆっくりと吐き出す。
「ああっ。もう、やめて……」
 綾乃が顔をくしゃくしゃにして、弱々しくわたしを押しのける。だが、電流グローブをした右手は、まだ綾乃のヴァギナのなかに収まったままだ。それが、また息を吹き返してピストン運動を開始する。
「ああ、お、ねがい……ああ」
 綾乃の手がわたしの肩を押しやる。しかし、その押し返しはごくごく弱いもので、やがてまったくあらがうことをしなくなり、綾乃の両手は左右にだらんと垂れ、汗みどろの上半身は新たな反応を開始する。
「あ……ああ……ああっ、あーあ、あ……」
 綾乃の悶えようが、さっきよりも大胆になった。両手が固くシーツを握りしめ、上体は右に、左に反りかえりながら大きくくねる。
「ううん、うあ、ああーっ……」
 悶え声が頂点に近づくごとに、まただんだんと甲高い響きに変わる。
「あっ、あっ、い、いいいーっ!!」
 激しくいやいやをする。
「いやっ、いやだあーっ!」
 拳によるピストン責めが、だんだん速くなる。局部にびしゃびしゃという水音をたてながら、わたしの拳は残酷に蜜壺を小突きまくる。えぐりまくる。
「あっ、あっ、い、いいいーっ!!」
 興奮の頂点をきわめた、狂ったような泣き叫びを聞いたとき、まったく場ちがいに玄関チャイムが鳴った。
 ピンポーン……。
「え?」
 空耳と思ってそのままにしておくと、また、ピンポーン……。ずいぶん間の抜けた場面になってしまった。
 ここは知り合いの南米人宅で、家主は本国に一時帰国して長く留守にしているからには、新聞の集金などであるはずがない。とすると、押し売りかなにかの勧誘か。
「しょうがないわね、こんなときに」
 ほっとけば何度でも鳴らされそうだ。
 プレイを中断するしかない。綾乃の中から手袋の右手をゆっくりと引き抜いた。膣からあらたな愛液がシーツにしたたり落ちる。
 電気コードが這わせてある手袋から慎重に手を抜き出すと、女にしては大きめのわたしの右手が、ふやけた感じで、なお大きく見えた。まったくこの手にはいつも困っている……。
「どなた?」
 枕元の受話器を取って無愛想に訊いたとき、聞き覚えの声が返ってきた。
「わたしです、さち子」
 あっと思った。台風接近で気にかかっていたのは、じつは彼女の訪問だった。
「ごめんなさい。予定は明日だったけど、この台風でどうなるかわかんないので、今夜来ちゃいました。ええですか?」
 すっかり興醒めだ。
 綾乃を見ると、案の定ぶーぶー顔になっている。ただ、それも一時で、わたしが困った顔をすると、
「入れてあげましょうよ。わたしはかまわないわ」
 鷹揚にうなずく。
「ほんとう?」
「ええ」
 わたしは綾乃に感謝した。




綾乃の提案


 身づくろいして階下に降りていくとき、綾乃がこう言ったものだ。
「ちょうどいいわ。わたし、いいこと思いついた」
「え?」
 訊き返すわたしに、
「いいからいいから、さち子さんと会うのが楽しみだわ」
 心から愉しそうにした。
 SMグッズやら人形やらトルソーやら、昼間でさえ不気味な感じのする2階のキッチン廊下を抜け、玄関への階段に向かうとき、「がたっ」と大きな物音を聞いた。
 台風は確実に迫っているようだ。
 玄関の覗き窓から見るさち子は、予定を変えたことを悪びれる風もなく、せわしなく貧乏揺すりをくりかえしている。そしてドアを開けるとすぐ、「ごめんなさいっ」と頭を下げ、荷物の詰まったショルダーを床に取り落とすと廊下の奥のトイレへとあわてて走った。
「なに、この子ったら行儀わるい……」
 やがてすっきりした顔でもどってくる。
 今日のさち子は青のトレーナーに体操着のような白のパンツ。あいかわらず地味なかっこうで、身長も150センチそこそこなうえ、童顔だから高校生にしか見えない。
 その子がわたしの寝間着姿を見るなり、
「あ、もう、お休みしはってたんですか?」
と、いちおうはすまなそうにしているものの、本心はわたしを相手に、早くも一杯やりたい気持ちのはずだ。もちろん、プレイを前にして気分を盛り上げるために。
「じゃあ、行きましょ」
 ショルダーを肩に抱えなおすさち子をせき立て、2階へ上がる。
 一時帰国している南米人の知人から留守のあいだをまかされている、別名・拷問館と呼ぶここ世田谷区砧の一戸建て住宅にさち子を呼ぶのは、これで3度目。
「何度来ても、この前通る過ぎるんは、気色わるいわー」
 トルソー像やSMフィギア、拷問道具といった置物が雑多にならぶ2階のキッチン前を通るとき、肩をすぼめて言ったが、そのさち子が、
「あれー?」
 開け放しになったリビングを覗くなり、素っ頓狂な声をあげた。
「いやだ、わたし……」
 ゆっくりと振り返った顔に、後悔の色がにじみでていた。
「悪いときに来たみたいですねー」
「いいのよ」
 わたしがなだめるすぐあとから、「そうです。いいんですいいんです、さち子さん」と、リビングから綾乃もとりなす。
「綾乃よ」と紹介すると、
「あなたがっ!」
 即座に思い当たり、大きなため息をつきつつ、うっとり顔になった。だが、そのあとすぐ、
「そうすると、やっぱり〈あれ〉はここだったんですか」
「え、なになに」
「だって、下の路地まで筒抜けでしたよ」
「え、ほんとう?」
 わたしはがらにもなく赤面した。
 そのせいだろうか。綾乃が階下からもどってから、なんだかおかしい。ローブをまとった肩をすくめ、緊張している。震えているようにも見え、顔色も心なしか青ざめている。
「どうしたの? 急に固くなって。やっぱり初対面では恥ずかしい?」
 さち子を呼び寄せておきながらと、呆れた。
「いいえ、おねえさま、ちっとも。それどころか、さち子さん、あなたさえ良ければ、見てもらいたいわ」
「え?」
「わたしがおねえさまに虐められるところ、見てもらいたいの」
「えーっ!?」
 さち子がまたまた素っ頓狂な声と顔で、まじまじとわたしたちを見くらべた。
 綾乃の提案は、わたしにとっても意外だった。さっき言った「いいこと」というのは、そういうことだったのか。でも、実際そう思ったものの、いざそのときになって後悔したというのが今しがたの狼狽だろう。
「無理しなくていいのよ」
 こんどはわたしが綾乃をとりなしたが、
「いいんです。ほっといて、おねえさまっ」
 怖い顔で、むきになった。
「ねえ、いいでしょ? さち子さん」
「え? わ、わたしだったら、かまいませんけど……」
 どぎまぎしながら、またこっちをうかがってくる。
「だったら、こんな部屋じゃなく、調教ルームで、して。ね、マーゴおねえさま。おねえさまと初めて会ったあのときのように」
 綾乃は、それこそ、ぞくぞくするほどに熱っぽい目を向けてきた。




拷問実習


 10畳の調教ルームは窓もない完全防音密室で、ここには常に2台の拘束ベッドが置いてある。
 すみっこに寄せてあるのが一般的な内診台だが、部屋の中心にあるのは、運送屋を使ってまで恭子ママの店に運んでもらい、そこで初プレイとなった綾乃を載せた寝台だ。
 最近のハイカラな内診台は好きになれない。むしろ昔風の冷たい感触のする内診台が好きで、さらにいえば解剖台と思えるような開脚寝台が好きだった。そういう意味では、真ん中に置いてあるのこそ、形といい感触といい、ぴったりわたし好みだった。
 雰囲気をだすため部屋の照明を落としたとき、がたがたっと風が隣室にあたるリビングの窓を揺すった。
「あ? 風――。いよいよ嵐の到来やね」
 さち子が天井を振り仰いでつぶやく。
「なに言ってんのよ、いまごろ」
 大きな物音ならさっきも聞いている。だが、わたしの言葉の意味には気づかず、
「なんや、本格的な感じやわー」
 恐がり屋のさち子が、薄暗がりのなかで肩をすくめてそう言う。
 綾乃が、直立不動の姿勢をとって、わたしの前に立った。〈あのとき〉、つまり初めて会ったときとおんなじだ。わたしも、努めて〈あのとき〉の鬼畜な感情をかき立てた。
「それじゃ綾乃ちゃん、バスローブを脱いで生まれたまんまの姿になりなさい」
 わたしの命令に、そばにいるさち子まで緊張顔になった。
 はらりとローブを脱ぎ捨てると、華奢な上半身と、それとは反対にたくましく骨太な下半身が、野育ちを思わせて一糸まとわぬ姿になった。
「そこに横になりなさい」
 綾乃が開脚寝台に両手をかけて後ろ向きにずり上がり、まず上体を寝かすと、つぎに片足ずつ、左右にまっすぐ伸びている脚乗せ部分に脚を置いた。
「さあ、あなたも手伝って」と、さち子を指図するが、手ぬるくて見ていられない。
「だめよっ、こんなゆるい締め方ではっ!」
 早くもさち子を叱り飛ばし、残る片方は自分で締めなおし、頭の上に組ませた両手も自分で縛った。
「こっちへいらっしゃい」
 おどおどするさち子を手招きする。
 カチッ、と、ビデオライトのスイッチを入れて、綾乃の性器が照らされた。狭い範囲に密生した陰毛のなかから、やや黒ずんだラビアが外に向かってめくれていた。
「さ、見て」
 めくれ気味のラビアを精一杯剥き上げ、クリトリスの先を強くひねりあげたとき、綾乃が「あっ」と一声、苦痛の声を漏らした。
「いまから電気を使った性器責めの実習よ」
「!……」
 さち子がびっくりしたような顔をする。
「いい? 生ぬるいSMプレイなんかじゃなく、正真正銘の拷問実習」
「……………」
 呆然としているさち子に流し目をくれ、壁際の床頭台から、黒い円筒形の鉄の固まりをコードごと引き出し、綾乃を寝かした台のそばに置いた。
「ボルタックといって、最高電圧130ボルトの変圧器よ」
「ひゃ、130ボルトっ!? 100ボルトよりも高いんですか? そんなので、死なないんですか?」
 さち子が目を剥いた。
「実際に使う電圧は、10ボルトから20ボルトのあいだだけよ」
「あーあ」
 こんどは、ホッと胸をなでおろす。
 “拷問”準備のほうはコードの先を壁のコンセントに差し込み、さち子を「さあ、もっと近づいて」と、すぐそばまで招き寄せる。そうしておいて、ふたたび綾乃の性器をずりっとめくりあげると、
「よく見ててね」
 コードの片方の先のクリップを綾乃のラビアにはさみつけ、もう片方は床頭台の引き出しから取り出したドライバーの金属部分に噛ませた。
 電圧を20ボルトに設定する。かわいそうだが、これもさち子に見せるためのお膳立てだからしかたない。
「さ、はじめるわよ」
 さち子がその部分を凝視する。
 大の字に寝かされた裸身が緊張で身を固くする。
 ドライバーの先が、クリトリスを突いた瞬間――。
「ひっ、うああーっ!」
 いったん静止した全裸の全身が、悲鳴ととも大きく揺れ、ドライバーの先が大きく的をはずれ、悲鳴も止んだ。
「これではダメね」
 また床頭台を開けると、革ベルトを3本取り出した。幅が広くて長い方を綾乃の腹部に巻きつけ、ベルトが肉に食い込むほど締め上げ、細幅の2本は太股の付け根をこれまたきつくしばった。
「さあ、これでまったく暴れることはできなくなったけど、それではつまらないわね」
「……………」
 呆気にとられているさち子をしり目に、せっかく縛った腕の戒めを解くと、綾乃の上体を起こさせた。そして、さっきのベルトで両手を後ろ手に縛って突き放す。
 綾乃の上半身が、「どん」と音を立てて寝台に倒れ込んだ。




性感電流


「さあ、こんどは逃げられないわよ」
 また、綾乃が金縛りにあったように動かなくなった。歯を食いしばり、しっかり目をつむっている。
 ラビアを剥き上げたまま、ゆっくりとドライバーの先を、多少浮かせ気味にして押し当てる。
「う、うああーっ!」
 甲高い悲鳴とともに、ある程度自由の利く綾乃の上半身が、後ろ手に縛られたかっこうで大きくしなったり、くねったりして暴れまわる。
 反対に下半身は3本のベルトで締めつけられ、きつい電流責めから逃げようとして動けず、ただぶるぶると腰を震わせ、必死に力んだ分だけ腹部と太股のベルトがさらなる食い込みを見せている。
「ああっ、うあーっ、あ、あーっ、あああーっ!」
 綾乃が声をかぎりに泣き叫ぶ。ここなら外へは聞こえない。それで開放的になったのか、あらんかぎりの声を張り上げている。
 ドライバーの先に力を込めたとき、
「ぎゃあああーっ!」
 綾乃が目を見開いて絶叫した。浮かせ気味でも20ボルトはきついようだ。
 さち子が震えている。震えながら、わたしにしがみついてきた。闇雲におびえさせてもしかたないのだ。
「これでは、きつすぎてホンモノの拷問だわ」
 わたしは別の反応を試すべく、ドライバーの先をさっきとおなじように当てたまま、ボルタックの電圧を20ボルトから15ボルトくらいまで下げた。
 悲鳴が「う、うーっ」という呻きに変わったが、表情はあいかわらず苦しそうだ。
「さち子ちゃん、手、だしてみて」
 恐る恐るさち子が差し出す手を、綾乃のラビアから離した左手で乱暴につかんで、電気を感じている綾乃のヴァギナに強引に触れさせた。
「ひゃっ」
 びっくりして振り離そうとするのを、「だめっ」と、無理に押しとどめさせる。わたしのドライバーを持つ手はドライバーの金属部分も握っているから、綾乃に流れている15ボルトの電流は、わたしの身体を通してさち子にも流れていることになる。しかし、わずか15ボルトに過ぎない。
「だいじょうぶ、だいじょうぶよっ」
「いやや、いやや」
 激しく拒否して顔をしかめるさち子が、ハッと気づいておとなしくなった。わたしが手を離しても、もう逃げることはしなくなった。それどころか、
「あ、感じない」
「でも、すこしは感じてるでしょ?」
 するとこんどは好奇心満々といった表情で、電気の感触を確かめている。
「きてるきてる。びりびりびりびり、しっかりと電気を感じてるわ」
 愉しそうにしたが、目の前で綾乃が苦しんでいるのを見て悪いと思ったか、すぐまた神妙な顔にもどった。
 そのさち子が、つぎには不思議そうに首をひねったり、うなずいたりする。
「手ではこれっぽっちしか感じない電気の、どこがそんなにつらいんだろう」
「そうか、性器はそれだけ敏感ということなのだな」
 そんな心のつぶやきまでが聞こえてくる。
(くっ、素直な子)
 しかし、これではなんの発展性もない。綾乃の思いついた「いいこと」も、そのあとを引き継いだわたしの目論見も、このままではふいになるだけだ。
「『血で書かれた最期の手紙』というルポルタージュ本に、第2次大戦中ナチの将校から3カ月にわたって凌辱と拷問を受けた子のことが書いてあってね」
「はあ」
 ぽかんと口を開けて聞くさち子のそばで、苦痛の表情を見せる綾乃のこめかみがピクピクしている。わたしは、綾乃にも聞かせるつもりで話をつづけた。
「その子はフランスのレジスタンスで、17歳の女子学生だった。将校は彼女をレイプして処女を奪ったあと、裸にして解剖台にしばりつけ、連日のごとく電気責めにかけたそうよ。50ボルト、100ボルトの拷問電流だったら、衰弱してとっくに死んでいたでしょうね」
「というと……?」
「10ボルト、20ボルト、30ボルトと、弱い電流からだんだん時間をかけて強くしていったの。そうすることで、身体がだんだん電流になじんでいったのね」
「ほんまですかぁー?」
「!」
 さち子の関西弁まるだし言葉には、ほんとうに引いてしまうのだが、まあ、ここはしかたない、がまんすることにしよう。
 照明を支える三脚を動かし、ビデオライトの光源をさらに近づける。これで綾乃の局部は熱いくらいなはずだ。
「綾乃ちゃん、今日はクリトリスを責めるわよ」
 そう言うと、綾乃の身体が緊張で、びくっと動いた。こめかみもひくつかせている。
 右手の親指、人差し指で大陰唇を剥きあげる。やや黒ずんで見えるヴァギナは、すでにたっぷりと濡れていて、これからさち子に見せる効果実験にはきわめてぐあいが悪い。
「初対面のときは一時だけのクリ責めだったけど、今日は時間をかけて集中するわね」
 三たび床頭台を開けてガーゼを取り出し、たんねんに性器を拭いて、愛液をすっかりぬぐい取った。
 こんどははっきりと、めくれ気味の小陰唇と、そこからつんと出たクリトリスが、まばゆい光のなか、はっきりとさらされた。
「綾乃ちゃーん、まだ感じてはダメよー」
 いいようにいたぶっておいて勝手な言い草だが、ラビアにはさんだクリップを外すと、それをこんどはクリトリスに付けなおした。
「いつもはクリトリスは避けるんだけど、今夜はクリトリスと尿道孔、もっとも感じる部分へのダブル攻撃だから、電気に慣れるまでがたいへんよ」
 綾乃が覚悟を決めた。いまごろは、どきどきして苦しいくらいなはずだ。
「さ、よーく見て」
 さち子が顔をいっぱいに近づけ、しげしげと眺める。
 広げたラビアとラビアのあいだにのぞく尿道孔が、ライトの明かりに映えるように、そのあたりをひねりあげる。
「おしっこ穴が見えるわね」
「ああ、見えました」
 いよいよそこに狙いをつける。
「さあ、綾乃ちゃん。こんどはできるだけ悲鳴をこらえるのよ。わたしは大げさに泣き叫ぶ子は好きじゃないからね」
 たっぷりと脅しをくれて、ドライバーの先を尿道孔に触れたとき、「うーっ!」と激しい呻きをあげて綾乃がのけぞった。華奢な上体を蛇のようにのたうち回らせ、狂ったように暴れ回った。
「ううっ、うーっ! むうううーっうっ!!」
 思わず綾乃の苦しがりように目が行くさち子。さち子までが苦痛を共有しているように、顔をしかめる。それをわたしは許さない。
「ダメよっ! 見るのは綾乃の顔ではなく、綾乃のいやらしいあの部分っ。それをしっかりと見るのよっ」
 あわててまた目を落とすさち子。ドングリまなこで凝視する。
「うう、い、やーっ!!」
 綾乃が激しくいやいやをする。
「ああっ、ううーっ!」
 必死に首を振りつづけている。
「いちばん感じる部分なのよ。その感ずる通路を電気刺激が絶え間なく走りまわる、こんなに凄い快感刺激はほかにないわ」
「ほんまに、か・い・か・ん・なんですかー?……」
 さち子が、こわごわといったようすで訊ねてくる。その間にも綾乃は狂いまくっている。
「やはり初めてでは刺激が強すぎたようね。でも、もうすぐよ。綾乃ちゃん、もうすこしがまんしてらっしゃいっ」
 わたしはドライバーの先を、尿道孔から、なおも離そうとしなかった。
「うぅーっ」
 綾乃が白い喉を見せてのけぞる。
「うーっ」
 人の字の全身が、がたがたと開脚台を揺らして暴れる。だが……。
 2分、3分たつうちに、あんなに激しくのたうちまわっていた綾乃が、だんだんおとなしくなった。
「そろそろ痺れてきたようね」
 綾乃の反応から察して、電気責めの中心への観察に移った。さち子も綾乃の顔と、その部分とをせわしなく交互に見つめている。
「あ、あ、ああー……」
 苦痛の悲鳴に、甘美な響きがまじった。さっきまで悶えていた全身は開脚台に張り付いたようになり、人の字の全身が硬直した。
「あっ」
 さち子の口から驚きの声が漏れた。
 電気刺激を受けるヴァギナの口から、じわーっと愛液がにじみ出し、したたりはだんだんふくらみ、おおきくなってから、ぽとっと、開脚台のへりに落ちた。
「あううー、ううーっ……」
 綾乃の口から、昆虫が唸るようなうめき声が発せられた。こんな声を聞くのは初めてだ。開脚台に張り付いた脚が、手の先が、筋を浮き立たせたり、ひきつれたり、複雑な反応をしめしはじめる。
 その間にも、じわーっ、ぽとっ、じわーっ、ぽとっ、快感のしずくは絶え間なくヴァギナからしたたり落ちている。
「ううっ、ううっ……」
 綾乃が顎をひくつかせている。そしてすすり泣くような声をあげる。「ああっ」「いいっ」と、薄目を開けて恍惚とした顔になっていた。
 わたしの手は、ボルタックのダイヤルをひねっていた。いったん電流を中断し、綾乃の耳元にささやいた。
「さあ、一気に10ボルトほど上げたわよ」
「いや、いやぁー」
 目を大きくして首を振る。
「だいじょうぶよ。もっと感じられるわ」
「いや、いやぁーよぉー」
 拳を握りしめ、爪先を固くする。
「あなたはいま、サディストの女将校に拷問されるレジスタンスの女子大生よ。もう何日も電流責めに会って、身体は十分拷問になじんでるわ。そのもっとも敏感な電流回路に、とどめの一撃をくれてやるのよ」
「いや、いやーっ!」
 さち子の耳元にささやき、注意をうながす。「見ていて」と。
 一瞬だが、ドライバーの先に力を込めたとき、「あううーっ!」大きな声とともにのけぞる綾乃の性器から、ぽたぽたぽたっと愛液のしずくが、こんどは勢いをつけてしたたり落ちた。
 綾乃が目を見開いて叫ぶ。
「ああっ!」
 拳を強く握り締め、爪先を伸ばしきって、全身をいっぱいに突っ張っていっぱいに反応する。
 わたしは、20ボルト以上もの電流を、直接ではなく、ドライバーの先を浮かせ気味にして触れさせる。そうすることによって、びりびりびりびり、びりびりびりびり、一定刺激の電流が綾乃のクリトリスと尿道孔のあいだを走りまわり、苦痛のまじった快感を与えつづけているのだ。
「うああ、あうーっ!」
 綾乃が顔を汗で光らせ、恍惚として悶え、泣き叫ぶ。
「綾乃ちゃん、こんどは一気に40ボルトまで上げるわよ」
 そう言ったら、目を剥いた。
「なにそれっ。うそっ、うそうそーっ!」
「ウソじゃないわよ」と、わたしは本気でボルタックを40ボルトまで上げていった。
「ぎっ、うげげっ……ぎゃっ、うぎゃ、うぎゃあああっ……ぎゃあああっ!」
 25、30、35……上昇するにつれて悲鳴が絶叫、その絶叫も耳をつんざくほど激しいものへと変わる。
「おねえっ、おねえったらぁ!」
 さち子がわたしの肩に手をかけ、はげしく揺する。それを「うるさいっ!」と叱り飛ばす。
「だいじょうぶなのよっ」
 わたしはちゃんと、ドライバーの先をかげんしていたのだ。30ボルトの手前から離したり付けたりをくり返し、40ボルトのときはちょん、ちょんと突ついているだけだから、一瞬の電気ショック効果が持続しているだけだったのだ。
「ぎゃっ!」「ぎゃっ!」絶叫も断続的にとぎれ、苦痛が持続しているはずはないのに、恐怖のあまり拷問電流に貫かれていると錯覚しているのだ。
 その間、ヴァギナからほとばしる愛液は、一時も止むことがなかった。ぽたぽたしたたる愛液はリノリウムの床を濡らし、まるでちょっとした失禁のあとのようだった。
「さあ、綾乃ちゃん、もう10ボルト上げるわねー」
 わたしの手がボルタックをひねる。
「うぎゃああっ! ぎゃああああーっ!!」
 すざまじい絶叫が、陰惨な雰囲気をもって果てしなく響きわたった。


第1部その1 第1部その2 第1部その3 第1部その4
第1部その5 第1部その6 第1部最終回
第1部のためのプロローグ1 第1部のためのプロローグ2