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| さち子と綾乃。主人公2人に仲良く分けて2つにしたプロローグだが、じつはこのプロローグ、わたし(筆者=マルガリテ)にとっては綾乃とさち子が見おさめとなるパートでもある。 この先2人が、わたしとどうからみ合うのか、それは今後のお楽しみ。 というわけで、マルの1人称としての〈残虐遊戯・綾乃とさち子〉のまえがきも今回が最後。 ではみなさん、2人の行く末を、どうか温かくごらんあれ……。 |
| カラカラカラ……キィ、キィ…… 滑車の回転音ときしみ音、それにチェーンがじゃれつく音が混じるなか、鉄かせをはめられた手足が、ゆっくりと上に向かって開かれていく。ぴーんと張っていくにつれ、チェーンの巻き取り口が左右1か所ずつのため、手と足は最後にはぴったりくっつきあう形となり、それがVの字を描く中心に、綾乃の股間はこれ以上ないほど無残にさらされることになった。 ガチャン、ギギッ! 牽引が中止され、ロックがかけられたとき、ムリな拘束による痛みで、関節のあちこち、きりきりと疼きはじめていた。 「わたしたちのプレイでは受け入れようとしなかったフィスト――あとでたっぷりその仕返しをすると言ったはずだわよね」 「……………」 パンティ一つで痩せぎすな全身をさらした麗羅が、苦痛を耐えて気丈ににらみ返す綾乃に一瞥をくれたあと、ペニスバンドではげしく犯され、ぬるぬる、びしょびしょになった割れ目にも目を落とした。 「見れば見るほどイヤらしい色と形――誰? ここをこんなにしたのは。マーゴでないとしたら、あの豆タンク?」 「!」 “豆タンク”といわれて綾乃が「むっ」とした 「おや? 怒るところをみると……」 「さち子さんは、あなたなんかよりずっと魅力的な女性よ!」 「その減らずグチを塞いでやる」 右手に黒革手袋をはめ、その上からチェーンを巻きつける。けっして細くはないチェーンを手首から甲にまわし、細い指のあいだにも丹念にわたし、最後に残った両はし部分はこぶしのなかにしっかりとおさめた。 「いっそ両手フィストといきたいところだけど、いまのおまえじゃ裂けてしまうだろうからね」 「!」 ぐるぐる巻きされたチェーンで、麗羅のこぶしはごつごつに醜くふくらんでいる。 「こんな“無体”が許されると思ってんの!?」 「おや? 意外と古風なセリフを言うじゃないか。さては、時代劇ファンか?」 ローションの容器を逆さに振り、ぬるぬる状の液がチェーンを巻いたこぶしにかけられる。その際には、こぶしの角度を変えたりして潤滑液はまんべんなく行きわたらされた。 液は黒ずみを見せる淫猥な下の口にもかけられ、こっちは素手の左手で膣のなかまですりこまれ、綾乃のその部分も愛液とローションでぐちょぐちょになった。 「あとはお前しだい。壊されたくなければ、せいぜい気分をだして受け入れるのね」 「ああっいやっ!」 こぶしが力を込めて押しつけられた。 「ううっ、あ、あーっ!」 ぐぐっと角度を変えてこぶしが割れ目をひねりあげ、チェーンのごつごつした部分がゆっくり秘肉を掻きあげる。残虐な侵入にともない、ぬらぬらと光る秘肉が、あんぐりと口を開けていく。 「いやっ、いやあっ……」 ぎりぎりっと手足を支える滑車部分がきしんだ。 「力むとかえって痛いよ。お腹の力を抜いて食わえることに気分を集中するの」 「い、あ、あっ……はあー、ふうーっ、はっ、うふぅーう……」 ぐいぐいと押しつける相手のこぶしの動きに、呼吸を一心に合わせて綾乃は懸命に努めた。すると確かに膣の締めつけがゆるみ、固い異物がゆっくりとはいってくるのを身体が感じる。 「ううっ、うああっ!」 痛みがくわわる。膣がどんどん口をおおきくしている。強制拡張による痛みは、なおはげしさを増すいっぽうだ。 「もうすぐよ。あとすこし」 「うう、ぎゃああっ、いやあーっ!」 綾乃の中心は、めりめりっと引き裂かれる激痛につらぬかれた。 「綾乃さん……綾……綾乃さん……」 うなされ声に目をさましたマーゴが毛布を押しのけて見ると、額を汗で光らせたさち子が背中を丸め、シーツのはしを握って震えていた。 「どうしたの? なに夢見たの?」 背中を揺すって起こすと、「わっ」と叫んでマーゴに抱きついた。 「綾乃さんが、ひどい目に遇ぉてたのっ!」 「だいじょうぶよ。夢なんだから……」 子どもをあやすように言って聞かせるが、そのマーゴ自身ずっと綾乃のことは気にしていた。 「夢であれこれ心配したってもしょうがないでしょ。まったくもう、30にもなろうという子が、そんなことでどうすんのよ」 とたんに、さち子がふくれた。 「年のことは言わない約束なのに……」 2人はそれからベッドから抜けだし、マーゴが冷蔵庫から食べ残しの皿をだし、新しいブランデーの封を切ることになった。 そこは、東京都心の×区にあるマンションで、マーゴが自宅にさち子を迎えるのはそれが初めてだった。 ガウンを羽織ってワインを口にしながら、2人はマーゴが知り合いのアルゼンチン人から留守をまかされている、通称“拷問館”で3Pを演じた夜の綾乃のことをかんがえていた。 「あの子、どうしてあんなことまで……」 綾乃がさち子へのフィストを買ってでたこと自体おどろきだった。それも素手で――。 「このほうがずっと気持ちいいのよ」 綾乃はそうも言ったのだ。そしてその際、利き腕の右手ではなく左手を使った。フィスト初体験のさち子に貫通させるためには、利き腕よりはすこしでも小さい逆手を使う。これはマニアの常識だ。 「綾乃さん、恋人がいるんよ。それも同性の、プレイに慣れた人」 「え?」 「プレイの合間の食事のとき、おねえが、『下半身デブなんてわたし言ってない』ってムキになって言い張ったら、そうじゃないこと認めつつ、はにかんでうつむいてたの覚えてます?」 「そうだったわね」 綾乃にれっきとした“いい人”がいるらしいことはマーゴも認めざるを得なかった。 「それにしても、麗羅! まさか、あの家に忍び込んでいたとはね」 いったい、いつからいたのか。そしてなぜ、あの家が目をつけられたのか。マーゴもさち子も、それぞれの胸のなかで推理をめぐらせた。 そして話は1週間前にさかのぼる。 |
| 嵐のようなSMプレイを経て一眠りし、最寄り駅から帰りたいという綾乃の希望で、世田谷区砧の拷問館から小田急駅を見下ろす雑居ビル内の大衆酒場に場所を移していた。 3人はプレイを振り返りつつ、初めのうちは場所がらことばを選ぶのにも慎重だった。 「アレ、もうだいじょうぶ?」 綾乃がさち子に、マーゴのところで替えてきたパンツまで、プレイの“余震”の愛液で濡らしているのではと心配して訊いたのだ。 「いまは、だいじょうぶそう」 そう言いながら、まだ、もじもじ腰を動かし、前夜の余韻が醒めやらないといった風だ。 「それにしても驚いたわ……なぜ? ビリビリが残ってたの? それとも、ビリビリ思い出してあんな“洪水”になったとか……」 マーゴが電気責めの手つきまでしてからかうものだから、「ビリビリ、ビリビリ言わないでくださいよー」と、食ってかかった。 「あら、さち子って、げじげじ眉?」 「え、ウソよー」 マーゴの意地悪は、さらにつづく。大げさに言ったのも、つぎのからかい口のためだった。 「あそこの濃いのと眉の濃いのは、しっかりとリンクしているものなのね」 運転で飲めない憂さを、さち子をダシに晴らしていると、綾乃までが輪をかけた。 「そういえば、さち子さんの口って可愛いいおちょぼ口だこと。バナナ頬ばるとき、つらくない? ゲンコツせんべいなんか、痛いだろうね。食べてて、痛くなかった?」 「ちょっと、ちょっと……」 怖い顔でにらむその目が、やがてじんわりと潤んできた。 〈あのとき〉をマーゴが思い描く。 さち子のピンクのラビアがいっぱいに開かれ、綾乃のこぶしを窮屈そうに食わえていたっけ。そして、はちきれるほどに開かれたヴァギナに半分収まって、きつい締めつけに逆らってなおも中へ入ろうとする綾乃のこぶし。 「うっ、いや。や、やめて……」 「入れさせてよぉ、さち子さん」 「痛い。痛いわ、綾乃さんたら」 「もうすこしよ、あとちょっと」 そういいながら、綾乃の手の筋が突っ張り、力を込めているのが見て取れたとき、「うううーっ!」と、悲痛な叫びがさち子の口から漏れた。 さち子も、あの夜のことを想像していたにちがいない。「あ、あ……」と、のぼせたような顔でなかば茫然としている。 「ゲンコツせんべい、食べたい?」 テーブルの上の綾乃の左手がこぶしの形をつくり、ぐぐっとさち子の方へ動いたとき、「はあっ」と、さち子が周囲に聞こえるほど、おおきなため息をついた。 「さち子ちゃんは涙目だからね」 腰をひくつかせ、ヴァギナから、たらたらと愛液をしたたらせるさち子の“あのとき”を思い出し、また、たとえを変えた。 「そうそう、ちょっとのことで涙腺ゆるんで、あたりかまわずぽたぽたぽたぽた……」 綾乃の手が、テーブルの上で微妙な形や動きをすることで、ぬーっと開かれたヴァギナ、そこに電極の先を当て、さち子が悶えるようすが思い出される。 そのあとも野菜のインゲンの鞘がどうの、豆がどうのと局部のようすにたとえ、酒場の喧噪のなか、“言いかえ遊び”で3人だけの別世界をつくっていた。 ただ、その“ゲーム”のあいだも、綾乃の目はちらちらと窓に向けられ、そこから見下ろす駅前ロータリーの監視を怠らなかった。 (そういえば、ここに入ると真っ先にその席に座り、わたしたち2人は外から死角になる位置にくるようしむけた。なぜ?) と、そのときにはマーゴもさち子も、拷問館から麗羅につきまとわれ、外から見張られているなどとは想像もつかなかった。 ただ、1テーブルおいた席の30代後半くらいの男性客に、マーゴの関心は向けられていた。ひとりでコップ酒をちびちびやりながら、3人の会話に聞き耳立てている風だったのだ。 「!」 綾乃が、なにごとか察知したようすで、マーゴを見たのはそのときだ。 「外に麗羅がいるの。あの家からずっと尾行されている。でも、これから行くところに迷惑かけられないので、わたしが捕まるわけにいかないんです。だからわたし、この場から消えたいんだけど、おねえさまたち、それじゃ……」 「わたしたちならだいじょうぶよ。今晩はさち子とホテルにでもしけ込み、そこからケンちゃん呼ぶわ。彼の運転ならA級ライセンス並み、どんな追っ手も100パーセント確実にまけるから……でも、あなたどうやって消えるの?」 「それなら平気です。かんがえがありますから。じゃおねえさま、さち子さん」 さっと目顔をおくり、マーゴからプレゼントされたもののはいった買い物袋を持ち、客のあいだを抜けて奥のトイレへと向かった。 「あのときの綾乃さん、カッコええかったですよねえ」 さち子がうっとりした目で言った。 「それと、あの彼氏の機転。絶妙のタイミングだった」 「じゃ、あの2人は知り合いやったというのですか?」 おどろいて見返すさち子は、ガウンの胸元をはだけさせていた。そのときには2人ともすっかり目が冴え、そうなるとたがいの心に眠るSM欲が、またふつふつ煮えたぎってきたのだった。 「こんどは、思いっきりエッチなかっこうとらせるわよ」 マーゴの手が、さち子のガウンをはぎ取った。 150センチに満たない小柄な身体は、色白のむっちり形。綾乃とは、またちがうタイプの日本人体型で、こういう野育ちを思わせる体つきがマーゴは好きだった。 「思いっきり酷く責めてくれてええですよ」 「でも拷問館とちがって、わたしとこは大声出すと、となりに筒抜けだから……」 「耐えてみせますって!」 さち子が、いつになく気丈にかまえた。 プレイ再開を前に、2人はもういちど駅前の居酒屋でのできごとを振り返った。 綾乃をトイレに見送ったあと、マーゴはきょとんとしているさち子を無視して、ある行動にでた。ずっと3人の“言いかえ遊び”を盗み聞きしてたらしい男性客の前で倒れかかったのである。 「あら、ごめんなさい」 そう言って謝るふりをして、相手の耳元にささやいた。 「助けて欲しいの! もうすぐ悪い奴が踏み込んでくるから、いまトイレに向かった子を連れて、ここから抜けだして欲しいの」 いきなり見ず知らずの男に助力を願いでたことに、さぞや読者のみなさんは不思議に思われるだろう。だが、マーゴことマルガリテには天性の人を見る目がある。気にはなっても自分たちに向けた男の目に悪意は感じられず、「彼ならだいじょうぶ」と踏んでの決断だった。 「念のため、お名刺いただけますか?」 相手がぽかんと口を開けた。強引に頼んだわりにはしっかりカタを取る姿勢に、唖然としたのだ。が、そのとき、いかにもな感じの目つきの鋭い男が入口に姿を見せた。 それが尾行者であろうと見当をつけ、こんどは彼からマーゴに早口でささやいた。 「確かに引き受けました。彼女を無事ここから連れ出してさしあげますよ」 そして素早く名刺を手渡す。 「ありがとう、恩に着ます」 頭を下げて振り返ったとき、マーゴが「あっ」と息を呑んだ。紫の花模様のチャイナドレスを着て、とんぼメガネをかけた女が、トイレのある奥からこちらにもどる途中だった。 「……………」 綾乃がそのとき着ていたものは2日前の再会の日、マーゴがプレゼントしたお気に入りだった。あのときは麗羅が着ていたのをうらやましがり、それにあやかっての希望だったが、いまその麗羅が、綾乃にとって最大の危険となって迫っている。 「やあ!」 とっさに男はレジのあたりで立ち止まっている綾乃に手を挙げ、ずっと前からの知り合いか、はぐれた女友だちを見つけたようなふりして、じつに自然なふるまいで近づいていった。 それに応えて綾乃も手を挙げてほほえみ、男はレジで精算をすませ、恋人のように手を組んだ。2人して店をでるとき、綾乃が一瞬目顔を送ったのをマーゴはしっかり受け止めた。 (綾乃ちゃん……) そのときマーゴは言い知れぬ寂寥感にとらわれた。男と綾乃の関係をうすうす察すると同時に、綾乃の背後にある得体の知れぬ動きの進行。だからこそ、こののち綾乃と接することは双方の危険にもなるため、これが〈永遠の別れ〉になるかも知れぬと直感したからだった。 尾行者らしき男も一瞬面食らったが、マーゴとさち子が居残っているのでその場を離れることもできず、綾乃と連れの男のほうはあきらめるしかなかった。 ぽかんとしたままのさち子の耳元にマーゴがささやく。 「いますぐ、それとなくトイレに走って」 「え?」 「そこに綾乃の着替えがあるから取ってきて」 「なんのこと?」 「とにかく行って、早く!」 マーゴは烈しくけしかけた。そのときになっても綾乃の変身に気づいてないさち子は、わけのわからぬままトイレに向かうしかなかった。 経営コンサルタント 菊 池 代志郎 マーゴの手のなかには、男の名刺が残った。 |
| ベッドは、調教用に手すりが高くなっていた。マーゴはまず、さち子に両手を広げさせ、低い位置の手すりに手首を拘束したベルトを結びつけた。 「身体、やわらかいほう?」 「〈店〉では、けっこうアクロバティックなこともするんよ」 店とは新宿歌舞伎町のイメージヘルスだが、マーゴがそこへ行くことはなかった。知り合ったのはおなじ歌舞伎町のパブ喫茶で、いつもの直感でさそったらOKとなり、ホテルのベッドに縛りつけて、深夜から明け方までバイブ責めに興じたのだった。 「おねえが、かんがえてること当てましょか」 「あなたも思いだしてた?」 「ええ」 太めの足を取ってベルトをかけるのを、さち子はドキドキする思いで見守っている。ぎゅっと締めつけると、肉に革が食い込む。 ベルトをかけた両足を上体のうえにバンザイさせておいて頭のほうに回る。そして手すりから乗り出すとひろげた足首を引っぱり、こんどはそれを手すりの高い位置にベルトで結びつけ、さち子の身体はあおむけのまま二つ折りされたかっこうになった。 「つらい?」 「つらいことあらへんけど、これやとなにもかも丸見えやんか。恥ずかしぃし情けないなあ」 「このかっこうでなら、前後ろとも、なんだってできるわよ。クスコで開いて、ろうそく垂らす? それともフィスト。鞭打ち。そうだ。初対面のとき思いだしてバイブ責めにするか」 自宅だからどんな道具でもそろってる。 「電気責め――」 さち子が自分から申しでたので、あまりに意外な気がして、念押しした。 「ええの。綾乃さんのこと思ぉたら、そんな気になった。綾乃さんかてつらい目見てるなら、わたしかて綾乃さんの苦労共にしたいから」 3度まで「綾乃さん」をくりかえし、泣けるセリフを言って瞳を潤ませる。 好きな相手を思いやり、その者と運命を共にしたいと願い、実際そうしながら、その行為のなかで燃えていく。そのとき身体の内でなにが爆発し、なにが溶けていくのかSの身のマーゴにはわからないが、すくなくともようすから見たさち子の純情にウソはない。 (だったら思いきりかなえてやろう) ベッドの手すりに向けてバンザイした足の中心に、濃いめの陰毛が繁茂するデルタに飾られ、性器と肛門がこれ以上ないほど顕わにさらされている。それがさち子の女の部分だ。 「ふしぎね。まるで少女のみたい」 蜜壺をめでるマーゴの感想を、さち子は綾乃の声にダブらせて聞いていた。 「さち子さんの性器、きれいだわ」 あんなにエッチな声で、エッチなかっこうで悶えまくりながら、体型も顔も女の部分まで少女そのもの、と、羨望まじりに綾乃がさち子に言ったことばだ。 ブブブ、ブゥーン…… モーター音がひびき、見ればマーゴの手には太めのバイブレータが握られている。それをいきなりラビアのあいだにのぞく割れ目に突き立てた。 「ひっ」 さち子がのどをそらせてのけぞる。深々と性具を突き立てられたピンクの秘肉。ぶるぶる震える襞のすき間を縫って、愛液がにじみだし、たちまちしずくとなって、恥毛を濡らしながらぷっくりとした白い腹にながれる。 「う、うう……うっ……」 反応しつつ、その声を耐えることで苦悶の表情をきざむ。 それからブルブル震えるバイブと膣のすき間にクリップを挿入し、それだけでは心もとないと、先を開いて膣孔にはさみつけた。 「うっ」 ちいさな呻きを発するさち子の眉間がしわを刻み、しっかりと結ぶ口元が一瞬震えた。 マーゴの右手には、電気の流れているドライバーが握られていた。左手の先が放射状にしわを刻む菊門にそえられ、ぬうっとなかを開きにかかる。 ブブブブ、ブルーン…… 連続する振動音のそばで指によってひねられ、露出されたピンク色の粘膜部分にドライバーの先が当てられた。 「うっ、うう、うーっ!」 さち子が目を見開いて苦悶した。窮屈に折られたむっちり肢体が、苦痛に耐えきれずあばれだす。そのたびにベッドや手すりが、ぎしぎし音をたてて揺れた。 「きつい?」 「平気や、負けへんっ」 その気丈さを打ちくだいてやろうと、マーゴはドライバーの先を強く肛門に押しつけたりもする。 「うぐうっ、くくくっ、あつうーっ!」 天井を向いてバンザイした爪先がひきつれ、力んで硬縮し、両手は関節が白くなるほどベッドの手すりをしっかり握っている。 「つらいでしょ? ムリしなくていいのよ」 「負けへんっ。負け……ううーっ、いやっ!」 肛門をひねりだす左手は微妙に動きを変え、〈無キズ〉の粘膜をさぐりあてると、こんどはそこにドライバーの先を押しつける。 「ひっ、ああっ! くっ……」 思わず悲鳴をあげかけるが、となりまで響くことを心配して必死で声を殺す。 「いいのよ。すこしくらいは叫んだって。セックスの声が洩れて恥ずかしいわけじゃなし、SMだっておなじことでしょ」 そう言いつつ、声を押し殺して耐える顔もいいもんだと、防音設備をほどこした拷問館で泣き叫ぶプレイとはちがった興奮――いや、こっちのほうがずっといいと思いなおすマーゴだった。 「あうっ、う、うう……うふぅ……」 さち子の反応に変化が見られた。苦痛の呻きに甘美なひびきが混じりあっている。淫猥な股間に、さらなる淫猥さがくわわる。 ブブー、ブッ、ブブブッ…… 電池がなくなりかけているのか、振動する性具の唸りが不規則になった。しかし、それでも役目はちゃんと果たしている。 「うしろからも愛液、にじみでてるわよぉ」 「ほんまですかぁ……」 のぼせたような顔でこたえる。 「手、入れるね」 「そんな、だって、わたし今日は……」 「すこしくらいいいわよ。あのときあなたの粗相をしっかり受けた綾乃を思えば、そのやさしさをわたしも見習わなければ……」 そうだった。1週間前の夜、怒濤のようなアナルフィストで、ひと突きしたあと抜き出した手は、さち子の不十分なセルフ浣腸のため、直腸内に残置された溶便にべっとりまみれていたのだった。それを綾乃はいやな顔ひとつせず、むしろ嬉々として流しへ走ったのだ。 それを思えば……。 左手の人差し指と中指をアヌスにねじ込んだとき、いつもとちがう感触にハッとなった。 (綾乃の言うとおりだ。素手だと、責めるほうも相手のハラワタを、よりリアルに感じとることができる!) マーゴは感動をもって、愛液ですべりを良くしたなかを、勢いをつけてかき回した。 「うっ、う、うっうっ……」 さち子が嗚咽を洩らすたび、肛門がひくつき、マーゴの指を硬くしめつける。なおえぐったり、かき回したりするうち、しめつけがゆるくなった。反応してしみ出す愛液の量もさらに潤沢になる。そのすきに、右手の指2本をくわえた。 「うっく……つうう……」 「痛い?」 「すこし」 「もうすこし痛くするけど、がまんするのよ」 「はい」 さち子が歯を食いしばり、口をへの字に結んだ。 そのときのマーゴは、外科医にでもなったつもりでいた。自分の両手を開口器のようにして、マーゴはアヌスを拡張しにかかった。 「ああっ、あ、いいーっ!」 さち子が顔をあげ、恐怖の目で自分にのしかかるマーゴの手を、その手でアヌスをむりやりこじ開けられるさまを凝視した。 マーゴの目のなかには、左右4本の指でこじ開けられ、暗い空洞をのぞかせるアヌスが、残酷で淫猥なかがやきを放ってあった。 そこへさっきから口のなかに溜めていたツバを、よだれをぼたぼたと垂らす。ぼたぼた、ぼたぼた、溜めては垂らし、溜めては垂らし、ひとしきり肛門にふりかけると、つぎには両手にもたっぷりと垂らした。唾液にローションの代わりを勤めさせようというわけだ。 そして…… 「ああーっ!」 二つに折られたさち子の身体が、ぎしぎしと関節をきしませてのけぞった。そのときにはバイブを抜かれ、クリップをはずされたヴァギナにもフィストにおよぶべき右手が、そしてアヌスには左手が突き立つところだった。 「あっ、ああ……うんっ、うううーっ!」 マーゴの身体がさち子の身体のうえに沈んだと思うや、ずぶーっ、とさち子のなかに吸い込まれるようにして両方の腕が挿入された。 「はいったわよ、はいったわよ」 「ぐうっ、ううん……あ、ああっ!……」 さち子を乗せたベッドが、ゆさゆさと音をたてて揺れる。 「行くわよ、行くわよ」 さち子の目にはマーゴの身体が遠のいたり近づいたりして、そのたびごとにずーん、ずーんと子宮を、直腸を小突かれる衝撃につらぬかれた。 「ひっ、むぐっ、くふぅーっ……」 ずぼずぼ貫かれながら、さち子は綾乃になっていた。麗羅にはげしく拷問される綾乃が、自分にかさなった。声を殺し、呻きを抑え、顔をゆがめ、全身の筋肉をひきつらせ、心のなかでは地獄の絶叫をあげていた。 「ぎゃあああーっ!!」 綾乃の裸身を、ふたたび電流が駆け抜け、はげしい痙攣でベッドがかたかた音をたてていた。そのとき綾乃の体内を貫通する電流は、マーゴとのプレイで経験した電流ではない。50ボルト、60ボルトという拷問電流だった。 スイッチが切られた。 その瞬間、汗びっしょりの全身はがっくり力を失ってベッドに沈みこむ。 「誰? おまえのいい人は?」 「はあ、はあ、はあ、はあ……」 はげしく喘ぎながら綾乃は、さっきからの尋問で麗羅がなぜマルガリテのいどころを訊かないのか、そればかり気になっていた。自分の落ち度から拷問館だけでなくマーゴの住みかもつきとめられ、たいせつな人々に多大なリスクを負わせたのではと深く危惧したのだ。 (たとえ自分はどうなっても、これ以上周囲を危険に巻き込むわけにはいかない!) そう覚悟すると、きっと唇を噛んで、麗羅をきびしくにらみ返した。 「鞭のあとはアメよ。しぶといおまえにはこっちのほうが効き目あるかも」 「うーっ!」 汗で光る全身が弓なりに反りかえった。 びっしょり濡れた綾乃の腹の一部が、ぼこっ、ぼこっと、奇妙な盛り上がりを見せる。その盛り上がりがでたり、ひっこんだりをくり返すのだ。その間、「うっ」「ひっ」「あっ」という呻きとともに、はげしくのけぞる手足をひとまとめにVの字に開かれた綾乃の全身。 あのチェーンを巻いたこぶしによる拷問フィストは、まだつづいていたのである。 「あうーぅ……」 汗で光る顔が一瞬恍惚とする。それは、はげしいピストン運動のさなか、麗羅の気まぐれからでこぼこグローブが、ゆっくりとひねりを利かせて引き抜かれるときだった。 「やっと好きになれたようだね、おまえも〈これ〉を……」 黒革手袋にチェーンを巻いたでこぼこグローブは、潤沢なローションのほか、白濁した愛液にもまみれ、ぐっしょりと濡れそぼっていた。 そしてまた、それにも飽きると…… 「うぎゃっ、ぎゃああーっ!!」 残虐電圧による全身電気ショック拷問がくりかえされ、綾乃の絶叫が響きわたる。 「おねえ、わたしなんだかドキドキする」 プレイで一汗かいてシャワーを浴び、すっきりとした身体にガウンをまとい、冷たいビールでのどを潤しながら、さち子が頬をほてらせてつぶやいた。 「綾乃の思いが乗りうつってんのよ」 「そんな気がする」 「あんたたち、前世は恋人同士か仲のいい姉妹だったのかも知れないね」 「来世って、あるんですか?」 「あったらなんになりたい?」 それには応えず、茫乎とした目で、こんなことを言う。 「おねえは、わたしみたいので良かったの?」 「良くなきゃこうしていっしょにいないわよ」 「もっと若くてスタイルのいい子現われたら、きっとわたしなんか棄てられるわね」 「バカなこと言ってなっ」 マーゴがいつものクセで、こつんと軽くおでこをたたいた。 なにを思ったか、さち子がガウンのすそを広げかけた。まさか、またプレイに誘惑しているのかとマーゴは勘違いした。 「ねえ、わたしの〈ここ〉ってどんな匂い?」 「そんなことか」とマーゴはくすっと笑った。 「さち子は綾乃とちがって無味無臭だよ。知らなかったの? いままでセックスなんかで、ほかの誰かに訊いたりしたことなかったの?」 「そんな人いないよぉ」 そう答えてふくれっ面したが、「ほんとかな」と、マーゴはこれには半信半疑だった。 あくる日は昼まで寝て、いつものように車で渋谷まで送ることになった。 若者が群れるハチ公前で別れるとき、さち子は言った。 「ちょっと会えんようになるけど、さがしたりしないでくださいね」 「え?」 「だいじょうぶ。またきっと帰ってきますから」 「どこ行くの?」 「それも訊かないで」 いつになく澄ました顔をして、それからゆっくりと背中を見せて去っていく。人混みを縫って駅構内にはいる直前、くるっと振り返って手を振った笑顔がまぶしかった。 そして〈さち子も〉消えた。マーゴの前からもみんなの前からも、ほんとうに〈さち子はいなくなった〉のである。 |
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第1部その5 ● 第1部その6 ● 第1部最終回 第1部のためのプロローグ1 ● 第1部のためのプロローグ2 |