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| 読者の一人から、最近こんなメールが届いた。 ――わたしをモデルに、小説を書いてください。 そのなかで、うんとうんと虐めてください。 年齢、22歳――じつはこの年齢、わたしもうっかりしてたけど、本人2歳サバよんでたのよね。で、名は……名前は、仮に落合美鈴と呼ぶことにしよう。 ともあれ、つたない文章しかまだ書けないわたしに、小説というバーチャル空間にせよ“凌辱”と“拷問”にわが身をゆだねようという。そんな刺激的な申し出は初めてで、メールを読んですぐ心が騒いだほどだ。結果的に執筆を承諾することになり、彼女の希望に沿ってストーリーを組み立てるため、メール取材を何回か繰り返した。ところが美鈴のせっつきようは尋常でなく、「いますぐ読みたいの」「UPはいつですか」と、激しく催促するようになった。 なにかあるという直感とは別に、単なるわがままではないかという失望感。その二つの思いが交錯して、「イメージがいまひとつ沸かない。美鈴という確たるイメージを自分のなかに構築するには、直接会うしかなさそう」と、挑発的な返事をしてしまった。ただの冷やかしなら、それきりあきらめるだろう。そうなったときの寂しさはあるものの、反面それならそれで気が楽、むしろそうして欲しいと、逃げたい気分にもなっていた。 ところが「会います」という返事――。 美鈴との出逢いは、その3日後のことだった。場所は、都心の某ホテル一室である。 |
| 約束の時間ちょうどに姿を見せた美鈴は、メールで想像したイメージとはちがったものの、会った瞬間の第一印象としては悪くはなかった。 ハンドバッグを置いてコートを脱ぐと、その下はふかふかのセーターに、膝までのスカートといったかっこう。肌は白く、中背で、どちらかといえばスリム体型である。 「こんにちは」 「はじめまして、マルさん」といいかけ、「あ、マーゴさんって呼んだほうが良かったんでしたっけ」といいなおす。うつむきかげんな顔を上げた美鈴は、さすがに緊張したようす。 「なんだっていいわよ、名前なんか。それより、寒かったでしょ?」と、時候のあいさつで気分をほぐす。 去年からこっち、ずっと暖冬だったが、そのなかでも何度か冬らしい日もあった。美鈴と初めて会った日がそのうちの一日で、メールで冷え性だといっていた美鈴を気づかったのだ。 「きょうは寒いですね」と、すすめた椅子に腰かけるや、厚手のストッキングの上から、ふくらはぎのあたりをさすりだした。 「暖房、もっと強くする?」 「いえ、これで十分ですよ」 「そう」と、まずは安心したものの、ベッドから毛布を取ってきて腰から下に巻いてやった。 美鈴と向かい合ってすわり、それから20分ほど歓談した。ほとんどメールで知ったことの再確認だが、それ以外初めて聞くこともあった。だが、テープもメモも取らなかった。 質問に答える美鈴の顔が、だんだん紅潮していく。声もうわずってきている。わたしのメールでは、きわどい内容からどきどきすると言ってたが、いまもどきどきしているのだろうか。 「見てもらいたいものがあるんです」 美鈴がようやく決心をつけたという風に切りだした。 「え?」 「いきなり恥ずかしい部分見せることになるんですけど……」 そんなことも予想していたが、こう早く美鈴のほうから言い出されるとは思わなかった。しかもいきなり性器を見せるという。かえってこっちがどぎまぎした。 「え? ええ、もちろんいいわよ」 毛布を返し、椅子から立つとパンティーを脱いでベッドにあがった。 「性器を見ればいいのね?」 「はい」 「いいわよ。じゃ、横になって」 わたしは美鈴に手を貸し、ベッドに横たえた。 スカートをたくしあげにかかると、わたしがやりやすいようにと美鈴が腰を浮かす。そのタイミングに、いっきにたくしあげて股間がさらされた。 裸になった股間に目をやったとき、いちばんに気になったことは陰毛の生え方だった。 きれいな逆三角形を描く陰毛は、まばらなくらい薄いほうだが、それが遠目には逆立って見え、近くで見ると一本一本勝手なほうを向いている。こういう生え方は淫乱に見えるとなにかの小説で読んだことがある。 美鈴の男性経験を詮索してからかおうとしたが、そのときの美鈴のただならぬ表情からこちらも身をひきしめるしかなかった。 「じゃ、見せてもらうわよ」と美鈴の股間をのぞき込み、大陰唇をぬうーっと開いた。 〈目をみはる〉とは、こんなときにこそふさわしいことばだろう。しっとりと潤いを見せる小陰唇の一方がひしゃげ、そのひしゃげた中心がただれて裂けていた。どうしたらこんなにも醜い傷跡ができるのかと思えるほどだ。 「苦しかったでしょうね」 わたしの頭のなかで、美鈴の絶叫が悲痛に、絶望的に響きわたっていた。 「なかも……」 「え?」 「なかも焼かれたんです」 「ええっ!?」 まさかと、美鈴のことばがにわかには信じられなかった。 「ちょっと、がまんしてね」と、ストッキングの足の膝をいっぱいに曲げ、下半身を大きく観音開きにした。 「焼かれたのはどのあたり?」と訊くと、美鈴は膣に手をのばし、「上とか下とかでいえば、横のこのあたり」と外から指さして教えた。 「器具を使うわね」 「はい」 わたしはいったん美鈴の前を離れると、アイテムを入れて持ち歩くボストンバッグを開け、ローション(性戯用潤滑液)とクスコ(局部拡張器具)とペンライトを持ってふたたび美鈴の股間の前に。 「ここ、痛いことないよねー」 「もう、2年も前の古傷ですもん」 そうはいっても痛々しい。ペペのゼリー液を美鈴の割れ目にふりかけ、恐る恐るといった感じでまんべんなくすり込み、入り口をぬるぬるにしておいて、クスコにもたっぷり塗ってアヒル口の先を、膣の天井と下に当たるようにして入れ込む。 「うっ」と、声にならない呻き。慎重にゆっくりとクスコを挿入する。深く、深く、そして奥まで挿入して、またゆっくりと開いたあと、暗い肉の空洞にペンライトの明かりを当てた。 金属製の医具に開かれた膣壁の一部が、醜くただれてケロイド状になっていた。 「酷いわ。いったい、なにを当てられたの?」 「電気ゴテ……」 リンチというより、れっきとした拷問である。 わたしはクスコを膣から抜いた。そしてじっくり見ると、金属製の光をはなつアヒル口の先が、ゼリーとはちがう液体でべっとり濡れていた。 「ひどいわ。こんなことした人、許せない」 「だから、告発したいんです」 美鈴が目をぎらぎらさせて言った。 どうやら単なる好奇心からSMの世界に踏み入ったものの、常軌を逸した鬼畜マニアによって生涯消えない疵を負わされたということらしい。それがほんとうなら、りっぱな犯罪だ。 「2年前なら、まだ訴えられるわよ」 うっかりそう言ったものの、それでは美鈴のあられもない事実まで世間にさらすことになる。ことは単純でも短兵急ですむ問題でもない。 「ごめんね」 また、あやまることになったが、美鈴は「いえ」と首を振った。 「わたしのことはいいんです。自業自得でこうなったんだから。でも、わたしのされたことが世間に明らかになれば人がひとり死ぬかも……。いえ、きっと死ぬわ」 そのとき美鈴は、どきっとするほど思い詰めた表情になっていた。 「わたしのホームページに書くことで、あなたをこんなにした人への制裁になるの?」 「それと、わたしに手が出せなくなる」 「え? まだ狙われてるの?」 「また、どうにかしようとしているんです」 美鈴が小説の掲載を急いでいるわけが、ここではっきりした。 匿名で発表することで知られてならない人にはわからず、その一方で被告発者には、「過去の犯罪事実について書いているんだぞ」となんらかの形で宣言しておく。いま安穏としている人々にとっては、かなりな脅威になる。 「もしわたしが不審死を遂げるようなことがあったら、そのとき奴らを実名で告発してくれますか? 共犯者からなにから、すべてお知らせしておきますから」 ホテルでこの話を聞いたときもそうだが、これをテキスト化しているいまの緊張感といったらない。数日後にはこれをホームページにアップすることになる。美鈴の話がほんとうだとするなら、マルガリテの部屋もこの先どうなるかわからないことになる。 「やっぱりご迷惑でしたよね」 美鈴がしょぼんとした。 正直、ちょっと後悔していた。運命の分岐点というのはこんなものかも知れない。でも、それならそれでいいじゃないかとも思う。わたしは美鈴の運命に賭けることにした。 「わかったわ。『美鈴』の執筆、正式にお引き受けします」 そう言って、右手を差し出した。 「握手よ。これでわたしたちは共同戦線の同志だから」 美鈴が明るい顔で手を握り返した。 綾乃のときとちがって、今回はみんなを巻き込むことはないだろうと思った。いざとなったら、わたしひとりが差し違えればすむことだ。いや、わたしが美鈴といっしょになって――。 「美鈴ちゃん」と、こんどはわたしが真剣な顔つきになって持ちかけた。 「美鈴ちゃんのあそこ見ていたら、わたし萌えてきちゃった。このままバイバイなんて帰したくないの。それとも、わたしが相手じゃイヤ?」 否やはないと思ったが、いちおう訊いた。首を振った。もちろんオーケーの表情だ。 美鈴がベッドから降りて服を脱ぎはじめた。それを見ながら、部屋の暖房をいっぱいにした。ういーんとヒーター音が唸りをあげ、それだけで暑さをかんじるほどだ。 セーターを脱ぎ、ブラウスのボタンに手をかけたが、その動作は緩慢だった。脱ぎながらどんなことを考えているのだろうと、美鈴の緊張した顔を見つめながらあれこれ想像するのも、けっこう萌えるものだ。 (この子、タイプだわ) こんどはこっちがどきどきしてきた。 ブラジャーを取るとき、斜めを向いた顔がはにかんだ。 「胸ないので、バストせめて80ほしい」とメールで書いてきた美鈴。だが、ブラの下からこぼれた色白の乳房は、おもったよりは量感があった。これなら、綾乃のほうがまだ“貧乳”かも知れない。 「けっこうあるじゃないの」 そう言うと、きっぱりした顔を見せた。 「もう気にしてませんから」 「そうよそうよ、その調子」 美鈴のいさぎよさに嬉しくなった。 「ストッキング、はいたままでいいわよ」と気を利かせたが、そのストッキングを脱ぎ、スカートも足からはずすと、パンティははじめに脱いでいるから、上から下まですっぽんぽんの美鈴になった。 ベッドに上がる前、全裸の美鈴が持参したハンドバッグから、ていねいにたたんだものを取り出した。さっと広げるとナプキンだった。それを両手に持ち替えてベッドに敷く。 「待って待って」 ベッドに上がるのを止めて訊いた。 「いつもそんなに多いの?」 「はい」 「いまもドキドキしてる?」 「ええ」 「じゃあ、こんどはゼリーが不要なほど、たっぷり沸き出してるわね」 「……」 美鈴が泣きそうな顔になったので、「ごめん」とあやまり、ナプキンはまた折りたたんで返し、代わりにバスタオルを敷いてやった。 ベッドに横になった美鈴が、 「縛ってもいいですよ。なにやっても、今夜は――。 マルさん、電気で責めるの好きなんですよね。電気って痛いんでしょうね。でも、美鈴、耐えてみせる」 たどたどしい口調で覚悟をまくしたてる美鈴に、さっきの傷を見たあとではなお悲痛なものを感じる。だが、その反面で、わたしのなかでくすぶった加虐の炎が、いまや消すことのできない燎原の炎となって燃え広がっている。 「電気はあとよ」そう言って、腕時計を見た。 「今夜は泊まって行けるっていったわよね」 「はい」 「いま7時をまわったところ。ソフト、ハード合わせて5時間じゃ、つらい?」 「え? 5時間……」と言って呆然となりかけたが、「美鈴、耐えてみせますって」と、気丈な覚悟を見せてはっきりとうなずいた。 |
| あおむけのまま、大の字に縛りつけた美鈴が歯をかちかちいわせ、全身でぶるぶる震えていた。まるで処女のようで、こっちがめんくらってしまう。 「このほうが、萌えやすいから」と言って、アイマスクをかけさせた。見えないことで羞恥心をやわらげ、吾を忘れて激しく乱れることができる反面、恐怖心を高めて気分を萎縮させることもある。美鈴の場合がそのようだった。さっきからの震えが、目隠しされてなお激しくなったからだ。 「はじめに、バイブを使うね」 例のボストンバックから、大人のオモチャ屋で求めた新品のバイブを取り出した。 「握ってみて」と、縛った片手を広げさせて押しつけた。 「あなたが使ってるのと、どちらが太い?」 「こっちのほうが断然太いですぅ」 声まで震えている。 「怖い?」 「すこし」 「でも、2年前はもっと大きなもの入れられたんじゃない? それを思い出すことになってもいいのね? いや、むしろ、そのころの美鈴にいま返りたい気分なのよね」 「……………」 美鈴が唇を噛んだのを見届け、バイブのスイッチを入れた。ぶるぶるぶるっという性具のモーター音に反応して、目隠しされた美鈴が生唾を呑む。その瞬間、色白の全身から震えが引いたように見えた。 バイブの先が割れ目を押しひろげ、「くうっ」と、声にならない呻きが発せられた。「くっ、くくっ」バイブが膣を突き上げるたび、押し殺した呻きが口を突いてでる。 ぐい、ぐいぃっと小突きながら、 「美鈴ちゃん、声だしてかまわないのよ。大きな声で叫んでも、誰にも聞こえないから」 「いや、いやぁ……」 「じゃあ、いいわいいわと感じだして泣きなさい。ほんとうはそっちで、美鈴の本心は淫乱卑猥な200パーセントマゾ女なんでしょう?」 「そんなぁ、そんなのウソよっ!」 わたしの残酷な詰問に激しく首を振って否定する。そして、左右に開かれた手が、窮屈にゆがみながらそばのシーツを必死に握りしめている。ぶるぶる震えている。 「美鈴ちゃん、後ろに指入れていい?」 だんだん大胆になる自分を、わたしは抑えることができなくなっていた。 「いやっ、怖い。後ろはいやっ」 「ウソおっしゃい。これまでいろんなことされたくせに」 ますます残酷になりながら、はやくも左手を腰の下にもぐり込ませていた。尻の谷間をまさぐり、固くすぼまった入り口に指をねじ込もうとした。 「くっ。く、くぅ……」 また、声を押し殺している。シーツを握りしめている。そしてこんどは、足の先が目いっぱい内向きになって、シーツをくしゃくしゃに皺だたせている。 「そんな、そんなとこ……」 「固くていい感じよ」 そう言いながら、中指の先がぬるっと入っていくところだった。 「濡れてるじゃない。初めてだなんて、ウソついたなー。このウソつき娘の悪い子ちゃんが」 「うそじゃないもん」 そう言い張り、また「くくっ」「くうっ」と独特の呻き声をあげはじめた。 M度ランク(マゾ性の格付け)というものがあるとしたら、この子はどのあたりだろう。いったいどこまで〈やられて〉るんだろう。そしてどこまで、M性でいられるんだろう。その境界線を確かめるためのプレイでもあった。 30分ばかり、ぬるい責めをつづけて、それから美鈴をうつぶせ大の字縛りに替えた。アヌスの経験十分と踏んだからだ。 「なにをするの?」 美鈴が不安そうにアイマスクの顔をあげてきょろきょろしているとき、わたしはドクターハンドを利き手ではないほうの左手につけていた。 これを教えてくれたのは、おどろいたことに綾乃である。さち子とのフィストファックで、慣れないさち子のアヌスを貫通するには、すこしでも手が小さいほうという機転だった。あの子はそうとうSもやってるはず。やらされたと言うべきかも知れないが……。 「腸まで貫通するかしら」 そう言ったら、 「いやっ、そんなのいやあーっ!」 美鈴が激しく抵抗した。縛られた手足の先を精一杯暴れさせ、縄目が食い込むのもかまわず身体をちぢめようとふんばった。 「フィストはいやだっていったのに」 「フィストは電気よりぬるいわよ」 「だって、お尻じゃない」 「あら、ヴァギナならいいの?」 大の字に縛られて横たわる美鈴の腹の下に、バスタオルをかけた枕を入れて腰を浮かせた。 「ヴァギナには物足りないでしょうけど」と、さっきから、わずか30分ばかりの行為でぐしゃぐしゃになったバイブを、下に敷いた枕のすぐ上に当たる割れ目に深々と挿した。 ぶるぶるぶるっという振動音が、美鈴の体内に入ることでちいさくなり、代わりに「うう、うーん」と美鈴が甘ったるいよがり声を上げはじめた。 「なんか、入れるものまちがえちゃったねー。いまのが後ろで、拳は前でなくちゃねー」 生白い双臀に両手の指をかけ、ぽっちゃりしたししおきを左右に押しやり、肛門をさらす。やはり割れていて、放射状に無数走る肛門じわのなかに、くっきりと長いフィストじわが刻まれていた。 「美鈴ちゃん、あったわよ、さがしていたものが。うふふ、これさえあれば、遠慮なく後ろへも入れられるってわけね」 「いや、いやだぁー……」 背中を震わせ、泣きそうな声をだした。 このかわいいお尻を見て、拳を入れることを考えないSマニアがいようか。たとえそれが犯罪的なことで、罪に堕ちると知っても。 美鈴のアヌスとわたしの左手にまんべんなくローションを行きわたらせ、手刀をつくってアヌス穴に潜りこませにかかった。 「うううーぅぅ……」 美鈴の口から異様な呻きが起きた。それとともに、美鈴のなかで、なにかが反応をはじめていたのをわたしは知らなかった。だから、するっとアヌスのなかに入った自分の左手の動きにも、単純に二通りのことを考えたのだ。 (ずいぶんゆるいアヌスだなあ) (いや、わたしがやりすぎたか) そのどちらでもなかった。 難なく直腸を通過したのをいいことに、そこでこぶしに替えたわたしの左手が、S字結腸に行き場を阻まれてしまった。 (しまった)とほぞを噛むわたし。しかし、 「ううっ、うんむーっ……」 また美鈴の口から異様な呻きが発せられ、それとともに、いまふさがれた先が開かれた感じになり、呑み込まれれるように拳の通過をみた。 (すごい、すごいわ!) わたしが驚いたのは、アヌスの締めつけだった。肛門とその奥の通過のあと、わたしの腕はなにかに握られているような締めつけを感じていたからだ。 (この子、そうとうに経験を積んでいる。それが、今夜目覚めた!) 訓練を積まされているということかも知れない。それが強制されたものか、この子本来の淫性によるものか、その真実を知るのはなかなか容易なことではなさそうだ。 腸まで貫通することはまちがいない。そう思ったら、それ以上の深追いはやめ、フィストプレイの醍醐味を味わうことに徹した。 「じゃあ、行くわよー」 そう宣言して、拳を抜いては入れ、抜いては入れを繰り返した。 「うっ、くっ」 「あはっ、ふううっ」 小突き、引き抜かれるたび、美鈴の口から恍惚の呻きが発せられた。その反応ぶりから、これまで踏んできた場数の多さが察せられる。被虐のすさまじさというべきだろうか。 見れば、バイブをくわえた膣からも、ぽたっ、ぽたっと、わずかずつだが絶え間なく愛液のしたたりがつづいている。 「うくぅうーっ、くくっ」 左右に開いた両手は、シーツをきつく握り締めたままだ。 M度、もしくはM性に、たとえば5段階評価のようなものをつけるのは無理だろう。1、2段階目、SMに興味があるが実行まではいかない段階、実行にいってもソフトSMに甘んじている段階、ここまでくらいの区別はただしいとしても、その先の嗜好は千差万別だからだ。 低温ローソクですらきついと感じる人が、フィストをあたりまえのようにこなすことだってある。また、本来快感と思えるクリ責めも、2時間、3時間と長時間なぶられつづけることで、地獄の拷問に思えることだってある。 「ううーん、あ、あーん」 性器から愛液を流しつづけ、強烈なアナルフィストに喜悦の声を発しつづける美鈴にとって、耐えがたい最大の苦痛というのはなんなのか。わたしには、さっきからつづいている疑念があった。あの酷い傷とケロイドを見たときから。 「美鈴ちゃん、いよいよだわよ」 「え? 電気?」 「そうよ。目隠しは、もう取るね」 目隠しを取られた美鈴の身体から、また震えが生じはじめた。 「ベッドを使って逆さ半吊りにするね」 そう言ったらぎょっとなった。が、だまされてはいけない。目を見開いて驚いたと見せて、その実心のなかは、期待の興奮でどきどきしているのかも知れない。ここは容赦なくとりかかることにした。 後ろ手に縛り、ベッドに横にすわるかっこうにして、両足首を縛って、縛ったロープの先を、ベッドの長くした方の片側の支柱に結ぶ。このとき、足と支柱のあいだのロープの長さをうまく調節しなければならないが、慣れているわたしに失敗はない。 「さあ、床に向かって寝かすわよー」 肩と背中を抱いて、慎重に床に向かって美鈴の身体を倒す。と、腰から下がベッドの外に落ち、足を縛った縄がほぼいっぱいに引き絞られたところで、ちょうど美鈴の肩が床にあたって止まった。 「あ、あ、ああ……」 美鈴の顔が、いっぱいにゆがんで天井を見ている。 「前の締めつけも確かめたいわ」 美鈴の前に椅子を置いてすわると、目の下いっぱいにヴァギナといわずアヌスといわず、天井を向いた女の恥ずかしい部分がこれいじょうないくらいはっきりとさらされている。 アヌスをほじって、まだぐしゃぐしゃになったままの左手を、ずぶりとヴァギナに突き立てた。 「あひっ!」 びっくりしたような悲鳴。そして、「あっ、あっ」と、ぐりぐりとかき回すたび、声で反応し、また、締めつけで反応してくる。 「凄いよ、美鈴すごいよ」 ずぼっ、ずぼっ、ずぼっ、わたしは逆さにした美鈴の蜜壺に腕を突き立て、勢いをつけて激しくレイプした。 「うっ、ぐうっ、ひいっ……」 上を向いた美鈴の顔が、しっとりと汗ばみながら恍惚としていた。 手袋の左手を抜いて、素手の右手に替えた。愛液まみれのヴァギナにローションは必要なく、こんども難なく挿入された。そればかりか、膣から抜いた左手を、またアヌスにもどしたのだ。 「美鈴ちゃん、ダブルフィストよー」 「いやあーっ、いやいやっ!」 美鈴の拒絶を無視し、二つの穴に突き立てた両手を激しく出し入れさせた。ずぼずぼ、びちゃびちゃ、膣といわず、アヌスといわず、逆さになりながら、それでもあふれる愛液のしたたりはつづいていた。 2時間がたっていた。 いよいよ電気責めだ。 ほぼ一直線に開かれた両脚の、膝から爪先に向かっての部分がベッドに残り、逆に膝から腿、腰から上にかけてが逆さに床に向かって落ちている状態。 ボルタック(発電用の変圧器)を床に置く。 そこから伸びた電極の一方はクリップ状になっていて、これを乳首にはさむ場合もあるが、胸は心臓に近いから安全を考えてラビアにはさむ。はさむとき、あのひしゃげて裂けた無惨な傷が目に入って、さすがにそれのあるほうは避けていた。 そうしておいて、もう一方の電極はドライバーの金属部分に結ぶ。 「美鈴ちゃん、ほんとに電気は初めてなの?」 「電気なんか、ほんとしたことないですよぉ」 まあ、それはほんとうだろう。電気責めは最近でもよほどのマニアでなければしない。男の客でしたいと思っても、店のほうで怖がってなかなかしてくれるS嬢もいない、特殊中の特殊プレイと考えられているくらいだ。 「ほんとかなあー」 わたしは半信半疑といった顔で、美鈴の尿道孔をひねりあげ、秘穴にドライバーの先を触れさせた。 「きゃあああーっ、痛いっ!」 美鈴がびっくりするような声で叫んだ。目がいっぱいに開かれている。 「え?」 わたしは円筒形の黒い固まりであるボルタックの回りに刻まれている電圧目盛りを確かめたが、まちがいなく10ボルトあるかないかだ。 「これで、痛いの?」 ふたたび軽く突つくと、 「いいっ、いったーいっ!」 また、のけぞるところだったが、首が床に阻まれて窮屈にくねるだけだった。 「待って待って、あんまり暴れないで。首の骨折ってはたいへんだから」 尿道はやめて、クリトリスではどうかと思った。だから、こんどはクリをひねりだす。 このときドライバーを持つ右手も腿のあたりに触れているから、両方の手がアースの役割をして美鈴に流れている電気を受ける。それはちりちりと感じるか感じないかわからないくらい弱いもので、敏感な部分といえども卒倒するほどではないはずと思うからだ。 「さあ、ここはどう?」 フィストだ、バイブだとなぶられ、すっかり勃起したクリの先にドライバーの金属部分を押し当てる。と、 「うんむーっ、あっ、ああっ!」 逆さにされた上半身が妖しくくねり、それまでのプレイのどれでもない悲鳴、悲鳴にしては甘美さのまじった声が発せられた。見れば、じんわーっと、膣から愛液がにじみだすところだった。 「どう?」 「変です。こんなのいままで経験したことないくらい変な感じです」 「たとえば」 「すんごい刺激があそこに張りつき、びりびりびりびりと掻きむしるような……。ああ、こんなの初めて。なんなんですか?」 「これが電気よ」 そう言って、もう一回突いた。 「ああっ、凄いっ、感じ……」 また突く。また突く。 「ああっ、あっ、ああ、あっ!」 見れば、逆さを向いた美鈴のヴァギナが、ぱっくりと口を開けかけ、ふう、ふうっと、息をしているように動いて見える。そして、その半開きの口から白濁した愛液が糸を引いてしたたり落ちようとしているのである。なんという淫猥な眺めであろうか。 5ボルトほど上げた。初めてのときの綾乃だったら、顔を真っ青にしておののき、泣き叫んだ電圧である。 恐る恐るといった感じで突くと、 「きひぃーっ!」 美鈴の逆さ吊りの上半身がまた大きくくねった。 「きつい?」 「ちょっと」 顔をゆがめ、目を細めてうなずく美鈴。だが、それでも恍惚の色は消えていない。その証拠に膣からしたたる液が、なお白さと濃密な粘りけを増した。 15ボルトの電圧を維持したまま、ドライバーの先を強く突いたり引いたり、それを一瞬でおこなう電気刺激を繰り返してみた。 「ううっ、ああーっ! いいっ、いいーっ!」 美鈴の悶えようが狂ったようになった。バイブのときはつらそうに声を殺し、ひくついた呻きを発するだけだったおなじ子が、なんという変化のしようであろうか。いまや電気責めにハマって半狂乱になっていた。 これ以上この姿勢でつづけるのに危険を感じ、わたしは美鈴をまたベッドにもどした。逆さ半吊り状態からまっすぐ寝かせたとき、堰を切ったように膣からながれる愛液がシーツを濡らして広がった。 それから朝まで、狂ったようなプレイがつづいた。 美鈴が乱れ狂うプレイはもちろん興奮ものだったが、プレイとプレイのあいだの“ねやばなし”も楽しかった。この場合、美鈴と交わす会話はあくまでも小説の取材である。 「電気責めはされなかったようだけど、わたしのサイトは電気責めが売り物だからね。ウソでもこれだけは入れさせてもらうわよ」 「いいですよ。だったら、美鈴がして欲しいことも入れてくれる?」 「いいわよ。でも、その前に、なにされるのが一番いや?」 「蛇責めとか絶対いや。あと、木馬責めなんか、痛そうだからあんまりねー」 「あ、いいこと聞いた。そんなこと言ったらだめよ。わたしはサドなんだから、されたくないって言ったら、それしたくなるに決まってるでしょ」 「うふふふ……」 ずるいとか言って怒ると見た美鈴が、含み笑いをこらえきれずに洩らした。それを見て、あっと思った。 「そうか。それが希望なんだ。ひっかけたわね」 「ふふふ、知ーらない」ととぼける。 どうやら一本やられたようだ。 それからわたしは十分まじめな顔になり、こんな話もした。 「法医学の本で、SMプレイの極致で死んだ女の人の死体写真を見たことがあるわ。全身焼け火箸の跡だらけで、後ろ手に縛られた全身は苦痛の果てにか異様にひきつり、それでいて顔は奇妙に恍惚としている。なにか妖気のようなものが感じられる不思議な写真だったわよ」 さっきいったようにSM度を5段階とするなら、そこからはみ出した6段階、7段階目もあると思う。それがたとえば、不測の事態で死を招く危険のある電気責めであったり、電気責めを含むSMの極致が招く死にいたるプレイ――。 話のあいだ、じっと美鈴の顔を見つめていた。そこから心の内を探るつもりだったが、表情ひとつ変えず聞きいるその顔からは、なにもうかがうことはできなかった。 それより、 「ねえ、どこからはじめるの? 小説」 それの発端が気になる風だった。 「やはり、中学時代からはじめようか」 「わ、ほんとう? それ、すごく嬉しい。懐かしいなあー。美鈴、いろいろ話しますよ。恥ずかしいけど……また、どきどきしちゃうなあー」 そして、またプレイだった。 「ああ、痛いっ、痛いよー」 「もっと、もっと痺れさせてー」 「ああ、行く、行くーっ」 わたしの電気責めに悶え泣きながら、美鈴は中学時代の美鈴になっているのだろうか。もう、とことんこの子につきあうしかなさそうだ。 |