HOME

(3) 保健室__後篇


性リンチ


 ウルフ山中の述懐――。

 そこは土地の人々が“バラ屋敷”とも“伏魔殿”とも呼ぶ、アメリカ人イングリッド・パーカー邸だった。
 豪壮なつくりの1階部分を、コンクリート塀とバラの生け垣ですっぽりと覆い、どことなく秘密めかした雰囲気のこの屋敷の実態を知る者はいまい。ましてやここで10日前、17歳の少女が凄惨な運命に見舞われたことなど、余人の知ろうはずもない。
「うっ、うっ、くっ……」
「おっ、おっ、おおっ……」と、はじめのうちは、ケダモノの咆哮にも似た呻きと喘ぎがずっとつづいていた。
 その部屋を、女あるじは〈リハビリ・ルーム〉と呼んでいたが、だからといって、ここが私設のエステや健康サロンであるはずがない。なぜなら女は、他人がうらやむほどの美貌とグラマラスで頑健な肉体を兼ねそなえた37歳の女ざかりでもあったからだ。
 天井の一角からは、手かせ、足かせのついたチェーンが、それこそすだれのように垂れ下がる、元は倉庫兼ガレージだった建物を改造した密室だった。
 そこには開脚台や拘束ベルトのついたベッドもあり、壁には人間ダーツを模した回転ハリツケ台までそなわり、まさに拷問部屋といった雰囲気。リハビリ・ルームとはよほどの冗談か、皮肉たっぷりなネーミングだ。
「おっ! ううっ!……ふー……」
 最後のひと突きのあと、床に投げ出された生白い脚のあいだから、毛むくじゃらの尻を見せた男の身体がゆっくりと離れた。そいつが刑事の神谷だ。
 道具を替え人を替え、すでに2時間以上も犯され、島崎若菜は精も根も尽きはてたといった感じで力なく、むき出しの股間にも床にも、男たちの欲望の残滓が点々と飛び散っていた。
「ふん。あばずれにしてはいい味だった」
 神谷は舌なめずりし、ズボンをあげてベルトを締めると、つぎの者へとうながす。だが、どの面々ももう限界といったようすで、そうなるとまた、女番長の紺野梨沙が腕まくりしてしゃしゃり出る。
「もう一度あたしが……」
 黒い布でしっかり目を覆われた若菜のあいだにはいると、力こぶを作るときのように、こぶしにした手をぐっと握った。そのときには、手術用の手袋をした手は、まんべんなく塗られたローションで、ぬるぬるに光っていた。
 目顔で指図した。
 男が2人、若菜の腰を抱えあげる。
「ううっ、いやっ……」
 首を振ってあばれる若菜の上体を、3人目の男がおさえつけた。
「ううっ、うーっ!」
 目かくしの顔をあばれさせて呻く若菜を、男たちは目をらんらんと輝かせて見ていた。
 そのときに江利子がささやいた。
「若菜は梨沙の〈女〉だったのよ」
「じゃ、ふたりはレズ……?」
「レズというよりは、梨沙が一方的に若菜をオモチャにしてただけだけどね。
 だって、そうでしょ。あんな鬼娘、だれが相手にするもんですか。ただ、それだけに、その若菜が男にクラ替えするとなれば……」
「可愛いさ余って……」
 そう言いかけたとき、
「むうーっ……」
 押し殺したような呻き声が起こった。
 若菜のヴァギナに梨沙のこぶしがゆっくりはいっていく。ゆっくりゆっくり割れ目を開いて没していった。
 また悲鳴があがって、梨沙のこぶしはずっぷりと相手の体内に埋まって、それからずぼずぼと前後にせわしなく動きはじめた。
「うーっ」
 ずぼずぼ、びしゃびしゃ、こぶしが出し入れされるたびに、若菜の体内は水音をたてていた。
 こぶしは膣からすっぽ抜ける寸前まで引き抜かれるから、こぶしのいちばん大きな部分が通るたび、ピンクの秘唇がぱっくりと大きく開いたり、すぼまったりをくりかえした。
「いやっ、う、う……」
 ピストン運動をくれるこぶしに、ひねりが利かされるようになると、必死に声をこらえる顔がぶるぶる震え、歯をガチガチいわせた。
「むううーっ!」
 不自由そうな上体が精一杯のけぞった。
 びしゅうっ、びしゅうっ、という水音をたてて、こぶしが深奥部を小突きまくった。
「ぐっ、げっ……」と、嘔吐じみた呻き声をあげる若菜の腹に、ぼこっ、ぼこっ、と、こぶしの跡が、出たり消えたりをくり返した。
 そのうちには、出たりはいったりをくり返すこぶしはぐっしょりと濡れ、ローションの透明液のほか、練乳のように白く濁った液のまじったぬるぬる状態になった。
「あ、ああっ!」
 若菜は明らかに感じていた。びしゃびしゃという水音は、はげしさを増し、ばっくり開いたり閉じたりする秘唇は白い糸を引き、ときおり愛液が飛沫となって飛び散った。
「いやっ、もうやめてっ!」
 若菜が髪を振り乱して叫んだ。
 若菜の膣はサンドバッグ代わりだった。こぶしを打ちつけ、膣壁をえぐり、子宮を小突きあげる梨沙の形相は狂気そのものに見えた。
「きゃはっははっ……こんなになったオマンコで、男のチンポを相手にできると思ってんの? ええ、若菜ちゃんよおーっ!」
「やめてっ、やめてえーっ!」
 男たちのあいだからも、「ひゃっほーっ」という奇声が発せられた。
「ううっ、いい、いっ……」
 抱えられ、宙に浮かされた足の先をばたつかせ、顔を歪めて身悶える若菜を見下ろし、梨沙は気が狂ったようにバカ笑いしていた。
「気持ちいいかい。ええ? 若菜ぁー」
「やめて。もう、やめてっ!」
「おまえはこれが好きだったじゃないか。え? 若菜よぉ。だから餞別にたっぷりとお見舞いしてやってるんじゃないか。
 それ、そーれっ!」
 号令に合わせて、梨沙の身体が大きく沈んだ。
「むっ、うあああーっ!」と、そのときケダモノじみた呻きが起こった。
 ぐうーっと、30センチかそれ以上、攻撃する腕が膣にすっぽりと隠れ、だれもがそのとき梨沙のこぶしが若菜の子宮のなかにまでもぐり込んでいるものと信じて疑わなかった。
 それからゆっくりと腕が若菜から引き抜かれ、ゴム手袋をはずしたあとの梨沙の素手は、ふやけたようになっていた。

 ウルフの述懐は、なおもつづく。




苦悩の焼き印


 真夏にバーベキューパーティーを開くわけでもないのに、卓上ガスコンロが倉庫の床に運ばれたのは、男たちのレイプ、梨沙によるフィストとつづいた、延々4時間以上にわたる凌辱のあとだった。
 だれかが「ガスコンロなどどうするんだ」と訊き、そのことばで過敏に反応した若菜がうろたえたりしたものの、コンロが役目を果たすのはまだだった。
「こんどはわたしたちの趣向ですすめるわよ」
 江利子とイングリッドが顔を見合わせてニンマリし、それが処刑開始の宣言となった。
 目かくしされた若菜が苦しそうにあえぐたび、汗で光る乳房がおおきく息づいた。
 女2人は、こんども男たちを指図して、倉庫の隅に置かれた開脚台を中央部に移動させ、それに若菜を横たえさせた。
 なにをするかと思えば、若菜の手首と膝の上下にサポーターを巻いたのだ。それも二重、三重にわたり。そのうえで開脚台にくくりつけた。
「生きて帰すからには傷はおろか、ベルトや縄目できつく締めたアザができても困るのよ」
 それで合点がいったが、リンチは若菜も納得ずくのこと。痕跡が不都合という理由は、むしろ不審死を遂げた場合の心配だろう。
 開脚台、コンロと出てきたリンチの道具立ては、つぎには一見してブリーフケースようの変圧器を仕込んだ装置がくわわり、開いたなかから何本ものコードを引っぱりだした。
「これって、もしかして……」
 梨沙が恐る恐るといった表情で尋ねた。
「拷問用の電気ショック装置」
 江利子がひそひそ声でこたえ、1本が二股に分かれ、裸にむかれたコードの先を、膝を曲げて広げられている若菜の両足裏に、ガムテープでしっかりと貼りつけた。
 ケースは小物入れにもなっていて、そこから大型の内視鏡といっしょに、ハサミに似た医具である鉗子を取りだすと、若菜の脚と脚のあいだにはいった。
「うっ、いやっ。そこだけは……」
 若菜の必死の訴えも空しいだけで、器具は事務的な動作で挿入され、膣を開いて内診台に固定された。さんざんなぶられ濡らされた局部に医具を挿入するのに、そう困難はなかった。
 内視鏡で開かれたなかをペンライトで照らし、鉗子の先でコードの先端をはさみつけた。そしていよいよ電極の残る一方のとりつけだ。
「動けないよう、押さえてっ」
 指図にこたえて、神谷を入れて男が3人、若菜の腰と太腿をがっしりと押さえつけた。そうしておいてコードの先を子宮にねじ込んだ。
「ううっ、やめてっ、やめてよぉ」
 自由の利く顔と上体で精一杯もがく。
 江利子の手でスイッチが入れられた。
「ううっ、うーっ!」
 人の字に開かれた手足が硬直し、呻き声が発せられたが、イングリッドが装置のダイヤル部分を回したとき、呻きは悲鳴に変わった。
「うつうっ、あ、ああ、あっ!」
 電圧を上げるごとに開脚台の脚が突っ張っていき、爪先が奇妙にひきつれた。さらに電圧をあげたとき、甲高い悲鳴が起こって、ぶるぶるぶるっ、がくがくっと、下半身が痙攣した。さらに腹部にも痙攣が走った。
「ぎゃあああーっ!」
 絶叫する若菜に、梨沙も、男たちも茫然と見とれた。
 10秒ほどでスイッチが切られ、若菜の全身はがっくりと力を失った。
「はあ、はあ、はあ」と喘ぎを洩らす。
 またスイッチが入れられ、いったん「0」にもどされた電圧がふたたび上げられ、下半身はひきつれていき、やがて腹部から下肢にかけて痙攣がはじまる。
 それを何度かくり返した。
「やめてっ。やめて、こんなことっ!」
 イングリッドも江利子も、電気責めを中断するたび若菜のようすをたしかめ、実験動物を観察する医者そのものといったふうだった。
「こんどは電気ショック効果よ」
 江利子の説明を受けて、イングリッドはこんどは電圧をいっぱいに上げた。
「やめてっ、いやあーっ!」
 スイッチが入れられた。
「ぎゃあああーっ!」というすざまじい絶叫とともに、下半身がぶるぶるぶるっと、はげしく痙攣した。絶叫のあいだじゅう痙攣はつづき、スイッチをひねってストップされたとたん、悲鳴も痙攣もぴたっと止んだ。
 また、スイッチ。
 絶叫。そして、中断後の静寂。
 そして、「ぜえぜえ」という喘ぎ。
「オッパイを責めたいわ」
 興奮して梨沙が希望した。
「だめよ。心臓に近いところは……」
「そうか。殺したらつまんないもんな」
 梨沙が若菜を見下ろし、にやにやしながら責めることができなくなった胸の隆起に触れたが、あわてて手を引っこめた。
「びっくりしたー!」
「バカね。まだ電気が残ってるのよ」
 そんなことがあるのかとおどろくと同時に、平然と冷酷な電気責めに興じる江利子とイングリッドに、男たちのだれもが舌を巻いた。
 いよいよ問題の卓上コンロが点火された。網が載せられ、そこに短く切った工業用のワイヤーが何本も並べられ、バーナーの火であぶられた。
「“苦悩の梨”という刑具は膣から子宮にかけて挿入し、ネジ操作でミリ単位に広げて最後には膣と子宮を同時に引き裂く拷問具だけど、身体の見えないところを破壊するという点では、これからおこなう処刑方法もおんなじね」
 梨沙が肩をすくめて興奮した顔をした。
「こんどはあなたに責めさせてあげるわ」
 江利子はイングリッドにペンライトを渡すと、へら状の先がスプーンのようにめくれた金属製の細長い棒器具を手にして、男たちと若菜のあいだに割ってはいった。
 短く切られた針金の先が真っ赤に灼け、鼻を突く臭いがあたりにただよった。
「十分焼けてきたわ」
 イングリッドが医具に全開された膣道を照らす。そこへ江利子が、変形スプーンを深々と挿入し、半球状に突起して息づく淡紫紅色の器官をとらえると、へら先で穴をこじ開けた。
「さ、いいわよ」と江利子がうながす。
 梨沙が赤く灼けた針金の1本を手にすると、大股開きにされた若菜の中心に目を凝らす。
「子宮以外のところを焼いてはダメよ」
 江利子が厳しく注意した。
「やめて、やめてよぉ……」
 若菜が涙声になって懇願する。
 梨沙の手がすーっと奥に伸びたとき、耳をつんざく絶叫とともに、その身を押さえつけている3人の男の身体までがおおきく揺れたほど、若菜の悶えぶりははすさまじかった。
「ギャアアアアーッ!!」
 腕といわず脚といわず、裸の全身の筋という筋が突っ張り、開脚台によっておおきく左右に広げられ、浮かされた下肢の爪先がぐうーっと下を向いて縮こまった。その足の甲にも、筋がぴーんと浮き立っている。
 その間、じゅうううっ、という肉を焼く音、いっぱいに拡張された内視鏡からは薄煙がたちのぼり、鼻を突く異臭にだれもが顔をしかめた。
 よく、髪の毛を焼く臭いとかいうが、そんなものではない。もっと生臭みをふくんだ、ぞっとするような異臭だった。
 2本目の灼けた針金が押し当てられた。
「グギャアアアアーッ!!」
 ぐらっと、また、小山のような男たちの身体が揺れたが、さっきのことがあるので、こんどはしっかり押さえている。代わりにわずかに自由の利く上体が精一杯のたうちまわり、若菜は髪を振り乱してはげしく悶絶する。
「ウウッ、ウギャアアアッ! ギャッ、ギャアアアッ!!」
 梨沙は憑かれたように灼熱した針金の先を、2本、3本と押し当てていく。10本ほどあったワイヤー片は一巡して、若菜の子宮を焦がした針金の先が、またあらたに炎であぶられ、真っ赤に灼けていくところだった。
 泣き叫び、のたうちまわる若菜は、頭から水を浴びたように汗びっしょりになっていた。額から、のどから、噴き出した汗が、だらだらと流れ落ちている。
「ひぎぃぃーっ!!」
 背中がまた、奇妙におおきくひしゃげる。
 ばしゃっと、汗を飛ばして髪が振り乱れる。
「うひぃーっ、いっ、いっ……」
 悲鳴の調子が変わった。
 じゅうううっ、と焼ける音、焼ける異臭のなかで、人の字の突っ張った全身に、ぶるぶるぶるっと電気を帯びたときのような痙攣が走った。
 凄いと思いつつ、なにかが欠けているとも感じた。この状態では表現しきれないなにか……。
 江利子の手が、最初の子宮焼きのあと、はじめてちがう動きをした。へらの角度を変えて、こじ開ける位置も変えたのだ。それによって空間に無傷な部分があらわれる。
 そこを狙って、梨沙が持つ真っ赤に灼熱した針金が押し当てられた。
「ギャアアアアーッ!!」
 全身を突っ張らせて、若菜の絶叫がまたおおきく響きわたった。耳をつんざく叫びは倉庫の壁に反響し、処刑儀式はこれ以上ないくらい陰惨な雰囲気のなか続行された。
「グギャアアアアーッ!!」
 汗で光る全身がおおきくくねり、いまや拷問台、処刑台、解剖台、どんな呼び方でも通用する開脚寝台は、がたがたと揺れ、ぎしぎしときしみ音をたてていた。
 江利子が顔を向けた。
「さあ、これを見たかったんでしょ」
「だめだ、これでは」
「どうして?」
「苦悩する目がこれでは見えてない。目を描けなければ意味がない」
「そんなこといままで言ったことないのに……」
 江利子がぶつぶつと不満をこぼした。
 たしかにいままではそんなことを思ったこともない。しかし、若菜のリンチを見たあとではちがう。あんな地獄ははじめての経験だ。こんどこそ凄いなにかが描けるというのに、そのなにかが目のまわりの表情が読みとれないことによって台無しだった。
「みなさん、下がって。顔を見られては困るから。さ、あなたも、なにかで顔をかくして……」
 デッサン用のスケッチブックを目から下に当てて「これでいい」と言った。
「じゃ、目かくしを取るわよ」
 そう言って、江利子が若菜の目かくしをずり上げ、汗に光る素顔をさらした。
「!」
 そこには、まるで思っていたとは別人の顔があった。長時間の責めに耐え、ぜいぜい荒い息を吐く少女。その瞳は意外なほど澄んでいて、おおきく、涙をいっぱいに溜めていた。
「……………」
 少女の目が正面から迫ってきた。その目が非難し、ののしり、そして悲しんでいた。自分の運命を呪ってもいたろう。実にさまざまなことを語っている目だった。
 ぐっ――と、その瞬間少女がのけぞり、さっきまでの目が飛び出るほどに見開かれた。
「ウギャアアアアアーッ!!」
 耳をつんざく絶叫が響きわたったとき、体内深くあらたな焼き印が押し当てられていた。
 じゅううっと肉を焼く音がして、肉を焼く異臭がただよって、そして少女の頬をつたって幾筋もの涙が流れ落ちた。







 ベッドがぎしぎしと音をたてて揺れるなか、絶頂をむかえた江利子から、怪鳥のような嬌声が発せられた。男の下になってシーツを掻く脚が硬直し、けいれんした。
 重なり合った二つの身体が、一瞬静止画のようになり、そのあと汗みどろの男と女は、けだるそうにして、たがいに離れ合った。
 ウルフは、汗で濡れた頭や背中をバスタオルで拭きながら、放心した顔の江利子を見た。
「今日はすごかったじゃない?」
「アレを思いだしたら、萌えちゃって」
「俺もさ。あんなのは、めったに見られるものじゃない。その凄さをリアルに再現したというのに!」
 編集者へのうっぷんを蒸し返した。
「そのことだけどねえ、例のを心当たりある編集者に売り込むことにしたわ。頼んだの描き上がってるの?」
「まだデッサン段階だが……」と、ベッドから身を起こし、仕事机に手を延ばしすとブックエンドのむこうに立てかけてあるスケッチブックから、下書き段階の1枚ものを披露した。
「おおっ!」
 江利子が思わず感嘆の声をあげた。
 それは“触手もの”というジャンルにはいる、淫靡なエロスにつらぬかれた線画だった。
 ほっそりと白い少女の裸身に長大な男性器をおもわせる無数の触手がからみ合い、口やヴァギナやアヌスには、そのエイリアンが食らいついてのたうちまわり、挿入部分からは体液がしたたり、しずくをまき散らせている。
 だが、その作品の尋常ならざる特徴は、苦悶と恍惚のいりまじった少女の顔そのものにあった。少女を知る者が見たらびっくりすることまちがいなしだが、美鈴も拓也も知らない事実もそこには描かれていた。
「しかし、どうしてこの位置にこだわるのか」
 ウルフは自分で付けた小さな特徴を、目を凝らして見入った。イラストにある少女には、太腿の付け根と性器の近くに小豆大くらいのホクロが付けてあったからだ。
「このホクロは第二段階としましょう。今回はこれが見えない構図に書き直してちょうだい」
「しかし、なんで〈ここ〉なんだ?」そう言いかけ、ウルフは「あっ!」と声に出しておどろいた。
「まさか!?」
 だが、その想像はあまりにも突飛すぎた。
「なんで君がそんなことを……?」
 江利子はウルフの疑問には直接こたえず、あとのことばをつづけた。
「神谷の細工で町に立った噂。そして、この絵――それによって、早紀という子を追いつめる包囲網が完成するのよ。そうしたら、こんどこそあの子の身体をズタズタに料理できる」
 ウルフは信じられない思いで江利子の顔を凝視した。
 夢でも見ているような顔の江利子の口元に微笑が浮かんだ。
「あの子を縛りつけ、脚を開き、アナル姦通、フィストファック、電気ショック……そして、そのあとで一寸刻み、五分試しのなぶり殺しにすることだってできる。
 そうよ。若菜の末路が明日の星川早紀の運命でもあるの」
 そう言って高らかに笑った。江利子の不気味な笑いが、ウルフの不安な感情をかきたてながらいつまでもつづいた。




高鳴る胸


 K中の養護教諭・川村みどりが主催するSMパーティーの生け贄に美鈴をくわえようとする野望は、「あわよくばもう一人」という目論見を兼ねての早紀包囲網の進展とともに、着々進行していた。
 それにしても美鈴はなぜ、みどりの残虐の罠にハマったのか。「自分にはマゾ性などまったくない」と思いこんでいる人にはわかりにくいことだが、心の内に被虐願望をもつ人は、きっかけさえあれば“被虐”の道に突き進む。そこに危険な落とし穴もあるのだが、美鈴が被虐に走った理由は、それだけではなかった。
 筆者(マルガリテ)は、美鈴とはじめて会った夜のことを思いだす。以下の会話は、美鈴の長い告白をあらかた聞いたあとにつづいたものと解釈されたい。

――SMへの目醒めですか? やっぱり中学の時かなあ。
 はじめにもいいましたけど、K中では、そんなひどいイジメというのはなくって、スカートめくりとか、ブルマー下ろしなんかがはやっていて、それ、されたときが、なんか刺激っていうか、すごくドキドキして……。
――でも、それってSMじゃないでしょ。
――でも、エッチにはすごく興味ありましたよ。それが高じてSMにも目が向いたんです。
 本とかで知識付けたっていうか、なかでセーラー服着て縛られている人がいたんです。はじめはイジメられてるとしか思わなかったけど、見ていてなんだかドキドキして……。それがSMの最初とはいえませんか?
――でも、それであそこまで行くなんて過激! なにかほかにも、Mに走る要素あったんじゃない?
――(中学)3年までは過保護っていうか、すごく大切にされてたんです。色であらわせば白一色でした。
 親に、いい子いい子で育てられ、異性との交際なんかも、ゆるしてもらえませんでした。ほんと、つまんなかったですよ。それなのに素直で通して。そんな自分がイヤでイヤで……

 親への反撥が招いた自虐願望が川村みどりによって火を点けられ、美鈴の思いもよらぬ方向へと突き進むことになる。
 前回にも紹介した早紀の取調室でのこと。若菜に対するリンチの詳細。ウルフ山中の野望の痕跡。これらは美鈴も知らないことだった。
 賢明なる読者の方はすでにおわかりだろうが、本稿は告白者・美鈴の視点のほか、2、3の登場人物の視点にもとづいても書かれており、それら克明な描写を可能にしたのは、彼らの証言があったければこそだ。
 筆者は美鈴に会ってのち、それら〈生存者〉に追跡取材しており、(「プロローグ」をふくめて)3・4・5回目にあたる養護教諭・川村みどりに関する部分が、当初予想を超えて枚数を増やしたのも、そのためである。
 本稿にもどる。

 7月第一週のある日のこと、美鈴は川村みどりに招かれ、一人で外泊の旅にでかけることになった。
 若菜の遺体発見、早紀への醜聞と、周囲がざわついていたころでもあり、出がけになって美鈴の母、泰子が表情を曇らせた。
「やっぱり行くの?」
「川村先生ならだいじょうぶと太鼓判押したの、お母さんなのよ。なによ、いまさら」
「でもねえ、今日はまた天気も悪いし……」
 北陸I県K市は、この年、雨が多かった。7月、8月と傘マークがつづき、その間、気象庁が大雨と認めた日が7回もあったほどだ。
「せっかくの誘いなのよ。〈だいじょうぶ〉、もう小学生じゃないんだから。なにかのときは〈車で送ってくれる〉ともいってんだし」
 あとのことばで、オーケーとなった。
 しかし「だいじょうぶ」というのは、美鈴のなかではいささか心もとない返答だった。ただし、「だいじょうぶでない」ところにこそ、ドキドキする期待心もあった。
 K駅からH鉄道に乗り、窓外にK平野の緑をながめながら30分ほどいくとC市がある。
 駅をでるとすぐ、ジェット機の爆音におどろかされた。雲にかくれて機影は見えないが、近くには自衛隊の基地があるはずだった。
 ドドドドッ……と、ナナハンもどきの騒々しいエンジン音が近づく。
 銀色のポルシェオープンカーだった。弾丸のように駅前ロータリーに滑りこみ、いったん止まると見せかけ、スピンしながら一周半して、それからゆっくりと美鈴のまえで止まった。
「乗って」
 サングラスの川村みどりはそれだけをことばに発して、あとは黙々と運転に集中した。
 車は風を切って海岸線を走りつづける。
 向かっているのは海に面した外国人の別荘だという。このとんでもなく高そうな外車も、そのお友だちからの借り物だろうかと、美鈴は車中そればかりかんがえていた。
「美鈴ちゃん」
 10分も走ったころ、やっと名前を呼ばれた。
「いま、どんな気持ち?」
 なんと答えていいかわからず口ごもっていると、先生はけらけら笑った。
「今夜は精一杯楽しもうね」
 先生の笑い声を聞きながら、美鈴はしっかりと閉じた膝に、なお力を込めていた。
 行く手に小高い丘が見えた。その丘のうえに白くて瀟洒な洋館が建っていた。




海をみつめて


「えーっ!? すごい眺めっ!」
 奥の部屋に通されるとすぐ、窓いっぱい広がる大海原に両手をひろげて感嘆の声をあげた。
「天気が悪くてあいにくだったわね。晴れていれば白波が、はるか向こうまで見えるのに」
 ガウンに着替えてからのみどり先生は、車のなかとはうって変わって饒舌だった。
「お風呂、まだ、いいわよね」
「はい」
「あとでいっしょに入ろうね」
 そう言って肩をぎゅっと握った先生の目が、ねっとりとしていた。
 それから30分ほど、とりとめのない話をした。その間、吉田医院での検診の報告もしたが、先生はそのことにはあまり関心を示さなかった。
「美鈴ちゃん、恋人はいるの?」
 突然そんなことを訊かれ、答えに困った。
 梶山拓也こと梶くんは恋人なんだろうか。海辺の番屋跡でいちどは身体を許しかけたものの、それが本気かどうかも判断つかなかった。
「星川早紀さんとは、どうなの?」
 恋人の質問のあとで早紀の名がでたので、美鈴は心臓が止まるほどおどろいた。
「早紀さんとは、お友だちなんでしょ?」
 先生の質問をなんととらえていいのか、美鈴はきょとんとしたまま、なすすべがなかった。
「え? どうしたの?」
 怪訝な顔をしたとき玄関チャイムが鳴った。
 近所の高級レストランからの宅配だった。
 それこそ目の玉が飛び出るほどのごちそうの数々が、高級ホテルでの食事のようにワゴンに載せられ運ばれた。
 ぎこちない手つきでナイフとフォークをあつかいながら、美鈴は自分が想像したイメージとまったくちがうみどり先生におどろいていた。
「おいしい?」
「ええ、とっても」と答えながら、「そうでなくちゃ」と思った。手料理かなにかでふるまう所帯じみた姿など先生にはふさわしくないと。
 夢中でぱくつきながら思った。
 空が急に暗くなり、不気味な唸りをたてている。雷鳴かと思ったが、近くの基地を発着するジェット機の爆音とわかった。
 ぽつ、ぽつぽつ……庭の樹木を打つ雨音。それがだんだん間隔をせばめ、風もでてきた。
 先生が、また立っていって窓を閉めた。
 帰りがけ足を止めて美鈴に手を触れた。肩に置いた手がすべって、扁平な胸を、うえからぎゅっとつまんだ。
 ぎょっとなって振り返ったが、もう、そのときには先生の姿はなく、自分の席に着くところだった。こっちに向けた目が笑っていた。
 雨がザアザアと、大降りに変わった。ジェット機の轟音も、もう聞こえていない。
 食事のあと、また、とりとめのない話が交わされたが、そのときなにを話したか美鈴はまったく憶えていなかった。
「じゃ、お風呂はいろうか」
「あ、はいっ!」
 びっくりして返事したものの、すぐには立てなかった。
「行ってるわよ」
 先生のスリッパの音を追いかけ、廊下をいくつか迷ったあげく、ようやく浴室を見つけた。
 脱衣所で上半身裸になり、スカートに手をかけ、ハッとなった。恐る恐るまわした手にナプキンがひっかかった。触れた中心がしっとりと濡れている。
(先生に知られる。そしたら……)
 ドキドキの原因が、またひとつ増えた。







 戸を開けて一歩はいると、そこはだだっぴろいバスルームで、いの一番に美鈴の目を引いたのが荘厳な大理石づくりのバスタブだった。
「うわーっ」
 歓声をあげて駆け出したくなるほど、タイル部分の床も広い。
 ここからも海が見わたせる。どんよりと暗い空は大粒の雨を降らせており、雷鳴ともジェットの爆音ともつかぬ音を響かせているが、それはそれでわくわくする光景だった。
 そして、満々と張られた湯に見え隠れする、みどり先生の裸体――。
 みずみずしい肌、たわわな乳房、引き締まった腹部ときれいなくびれを見せる腰や、ふわふわと淫靡に揺らめくおとなの女の中心部。美鈴の眼は、そこにも吸いつけられた。
「早くいらっしゃいっ」
 怖い目でにらまれ、湯舟にはいる。はいるやいなや、その手を力をこめて握られた。
「つかまえたっ。もう逃がさないっ」
「え?」
「美鈴ちゃんをこのまま“ゆでダコ”にして食べちゃうっ」
 そういってけたけた笑った。
「先生ったら。あははは……」
 美鈴もつられて笑ったが、
「星川さんと仲良くしてるんだって?」
 出し抜けの質問に、おどろいた。
「え? あ……はい」
「星川早紀さんって、どんな子?」
「いい人ですよ。とっても素敵なお友だち」
「そう。わたしは彼女に嫌われたけど……」
「え?」
 ふと見た先生の顔に、影がさしていた。
「早紀ちゃんも誘ったのよ、以前に。でも、すげなくかわされちゃって。先生、嫌われてるのかなぁ。ねえ、なんでだと思う?」
 そんなこと訊かれても困る。返答をしぶっていると、
「美鈴ちゃん、いくつになったぁー?」
 あまったるい感じで問いかける。その手の先が、肩から胸にかけて這いまわる。その間、ぞわぞわ鳥肌だつような刺激につつまれた。
「14……」
 もじもじしながら答えた。
「14歳かぁー」
 と、こんどは扁平な胸を両手で下からすくって、親指と人差し指のあいだから、ぷくっと乳首を押し出す。びりびりする刺激に思わず声をだしかけた。
「14歳にしては、胸小さいねぇー」
「う……う、う」
「いいのよいいのよ、気にしなくて。それに先生、ちいさいの好きだなー」
 無理に押してふくらませた胸に、自分の乳房を押しつけたりもする。
「かわいいお乳ぃー」
「そ、そんなぁ……」
 美鈴の困惑などどこ吹く風で、先生は乳首をつまんだり、爪の先を触れさせたりして鋭い刺激をくわえる。
「うくっ……う、う」
 必死に声をこらえた。
 やがて、別のつらさもくわわる。それから逃れようと湯舟から身体を浮かしかけるが、先生の手がなかなかはなしてはくれない。
「早紀ちゃんとはどんな関係? お友だち? それとも、それ以上エッチな関係?」
 美鈴は身動きもかなわず、のぼせるにまかせた。脂汗が額ににじみだし、まぶたをつたってしたたり落ちるまでになった。
「せんせい、先生……」
 頭がくらくらする。
 意識が遠のきかけたとき、身体がすーっと抱き上げられ、気がついたときにはタイルのうえに、うつぶせに寝かされていた。
「あっ」と思った瞬間、両手をうしろに回された。がちゃっと音がして、同時に冷たい感触が手首につたわった。
(手錠? ウソっ!?)
 ウソではない。両手の自由が利かなくなっていた。一瞬、SM雑誌で見た広告ページの、通販画像が頭をよぎった。
「美鈴ちゃん、ゲームしよっ」
「え?」
「拷問ゲーム」
「そん……うっ!」
 人差し指と中指、2本に添えられた指が陰毛の上へ延ばされると、そのうちの1本が割れ目をほじくった。
「うーう、うっ……」
「ふっ、もう、こんなに濡れて。でも、ここは処女だったわよね。だったら、前は許してあげる。その代わりぃ……」
 膣からだされた指が、いったんまた割れ目をたどって、すぐそばの別の穴へと向かう。
「ぬあうーっ!」
 美鈴ははげしく身をよじったが、暴れれば暴れるほど手首に固い金属製の拘束具がこすれて痛いだけだった。
「だめだめ、暴れちゃあ。すり傷なんかつけて帰ったら、お母さんになんていうの?」
 先生のことばで身体がぴたりと固まった。
「お尻に入れられたくなかったら、先生のいうことに答えなさい」
「な。なにをぉ?」
「だから、早紀ちゃんとの恥ずかしいことを」
「ウソ。ウソウソっ。わたし、そんなことしてません。早紀ちゃんだって、そんなこと……」
 中指が、アヌスへの侵入を開始した。強い痛みに貫かれながら、どんどん押し入ってくる。
「あうう……う」
 中指はたっぷり付け根まではいると、そのあとゆっくり出したりをくり返され、その間、ひねりをきかせたり、角度を変えたりと、さまざまにかたちを変えて責めたてる。
 痛さと気持ち悪さでどうかなりそうだった。
「先生、かんにん……」
「ぬるぬるしてきわ。もう、そんなに痛くはないはずよ。美鈴ちゃん、処女のくせに後ろで感じること覚えちゃったねえ」
「そんな……そ、そん……」
「こんなとこお母さん見たら、どう思うか」
「いやっ。イヤイヤ、そんな……」
 指の動きがだんだん早くなる。
「早紀ちゃんだって……」
「イヤぁ……あ、ああっ……」
 ようやく出し入れに慣れてきたのに、また、あらたな痛みがくわわる。2本目の指がはいりかけているのだ。
「さあ、恥ずかしい告白しなさい。早紀ちゃんとのっ!」
 ぐぐっと、2本目の指が押し込まれた。
「いやあーっ……先生、せんせいっ!」
「言いなさいっ」
「い、言います、恥ずかしい告白っ。でも、早紀ちゃんとじゃないです。早紀ちゃんとは、ほんと、なにもなかったですから……」
 とにかく早紀を話題からはずそうと、美鈴は苦しまぎれの告白を思いついたのだ。だが、先生を満足させるなにがあるだろう。
「うん?」と、先生の指の動きが止まった。
 まず脳裏に浮かんだのは、教室での場面だった。いじわるな男子学生の一人で、机のなかに隠しもっていたあるものをさぐり当て、わいわいはやし立てていた。
 その回想が一転、体育時間のグラウンドに飛び、すぐうしろに立つおなじ男子学生にからかわれ、恥ずかしそうにブルマーのお尻に手を当てている美鈴だった。
「なんなのっ?」
 先生が怖い顔で迫る。
(ああ、ダメダメ。そんなんでは満足しないわ。だったら……)
 いまも勉強机のひきだしに隠しもっているSM雑誌。それで萌えたこと、濡れたこと。
 でも先生はそのこと、とっくに知っているようだ。なぜだろうと、告白よりなにより、これまで抱いてきた疑問がむし返されただけだ。
「こいつうぅ、出まかせ言ってぇ」
 ぐりぐりと、2本の指が完全にアヌスのなかに収まり、ひねりを利かせてはげしく動いた。
「痛いーっ、先生やめてっ!」
 動きが止まった。
「じゃあ、言えっ!」
「腎臓で倒れて県立病院に運ばれたとき……」
「ううん? そのときに?」
 みどりが真剣な顔になって聞き耳を立てた。
「おしっこの穴に、管入れられて。そのときすごく痛かったのに、わたし、痛いと思いながらもドキドキ感じていたんです。だから、わたしきっと変態なんだとそのとき思った」
 溜まりに溜まったものを吐き出すように一気にまくしたてたとき、みどりの目がかっと見開かれ、「あいつらぁっ!」と叫んだ。
「えっ!?」
 一瞬、空耳かと疑った。男のような野太い声で放った言いようが、とても現実とは取れなかったからだ。だがそのとき、みどりの目はたしかにらんらんと燃えていたのだった。







 そのとき夢を見ていた。
(梶くん……)
 記憶のなかに梶山拓也が登場していた。いじわるな男子を突き飛ばし、はげしく抗議してくれていた。ほかの男子の誰もがおもしろがっていたとき、たった一人で美鈴をかばったのが梶君だった。
「美鈴っ、美鈴ちゃんっ……」
 頬を軽くぶたれながら名前も呼ばれ、それで夢から覚めた。
 目の前に白衣のみどり先生がいた。
 なぜだろうと、一瞬には、みどり先生に連れられ、別荘にきたことさえ忘れていた。
 それから風呂にはいって、保健室でのようにエッチな行為をされ……先生にガーゼで口をふさがれた。そのとき鼻を刺す強烈な薬品臭に襲われ、そのまま意識が遠のいたのだった。
(あっ、これは!?)
 あおむけの全裸のうえからシーツがかけられ、足を開いたかっこうでステンレスのテーブルに乗せられていた。手首、足首はベルトで張りつけにされ、動けない。
(『処刑室への招待』にでてきた場面!)
 解剖台に縛りつられたヒロインとおなじ設定。夢のつづきかと錯覚したほどだ。
 壁も床もタイルだから浴室の延長かとも思った。それとも、まったく別の場所か。なにしろ時間間隔がないので、しかとはつかめない。
「これ、なんだぁ?」
 先生が目の前でナプキンをひらひらさせた。中心がしっとり染みになっている。いちばん見られたくないものを見られ、愕然とした。
「おりものが多いんで……それでショーツのうえに、いつもはさめているんです」
 白状するしかなかった。夢にでてきた、いじわるな男子のからかいの原因もそれだった。
 先生はナプキンの中心に鼻をちかづけ、
「くんくん、美鈴ちゃんのにおいがするよ。おしっこ臭さの混じった処女のにおいだ」
 そういって「くくくくっ」と笑った。
「今夜は大人入りの儀式をしたげる。そのまえに、おなかのなかの汚いものをだしてすっきりしなければね。〈県立病院の、泌尿器科でされたように〉……」
 さいごの部分は、うんと強調していった。
 先生の手にはゴム管が握られていた。病院で見たのとはちがい、30センチほどの全部がそのまんまのゴム管で、太さも倍ほどもあった。
「せ、先生、それ、ちがいますっ」
「なにがちがうの?」
「そんなに太くはないし、形も……」
「そうよ。わざわざ太いのを選んだのよ」
 シーツがはぎ取られ、全裸の美鈴がライトの下にさらされた。その中心に、みどりの目が止まった。
「美鈴ちゃんってお毛々も薄いのね。陰毛の生えぐあいも成長に比例するのかしら?」
 指がラビアをめくり、ぐちゃぐちゃと少女の入口をかき回す。そして、
「でも、ここはイヤらしい形。やっぱり成長と比例は関係ないか」
 また笑って、ラビアをいっぱいに開いた。
「ううっ、ああっ!」
 するどい痛みが尿道の先を襲った。小さな穴を押し開いて、太い管がむりやり入れられる。
「痛いーっ!」
「痛いのがいいんでしょ? 病院でおなじことされて、ドキドキしたんでしょ?」
 そういいながら管をすこしずつ挿入する。そうしなければはいらないというより、故意に時間をかけて苦痛を長引かせているのだった。
「ううっ、いた、痛いぃーっ」
 管に指をかける一方、別の指は膣を、クリトリスをなぶっていた。巧みな愛撫と責めによって不思議な興奮がこみあげてくる。
「あっ、ううーう……」
 膣孔を愛撫される快感に萌えながら、管が侵入ていく痛感にも悩まされる。ドキドキするなかを太い管がすこし、またすこしと膀胱へと侵入をつづけているのがはっきり感じとれる。
「ふふふっ……美鈴ちゃん、いま、あなたのがどうなってるかわかる? ぽたぽたぽたぽたおツユ垂らしているのよ」
「そんな、そんなぁ……ううっ!」
 また、すこし管が奥に動いた。
「イヤらしい子、これで処女だなんて。こんなとこ、早紀ちゃんが見たらなんて思うか?」
(さ、早紀ちゃん?)
 美鈴の心の隅を占めているものが、ぐんぐんおおきくなって迫った。「こんなところなんか、見られたくない」と思う反面で、「早紀ちゃんに見られ、精一杯恥ずかしめられたい」と願う感情。二つの思いにはげしく揺れる美鈴。
「ああ、ううんっ……」
 あんなに強い痛みが、やがて小さな痛みに変わっている。それも痛みであって、痛みでない。快感痛とでもいえる刺激になっていた。
「でてる、でてる……」
 みどり先生の恥ずかしい実況報告は相変わらずつづく。そして管も、すこしずつすこしずつ身体の奥への挿入を止めないでいる。
 と、最後にぐっと管が力を込めて突き動かされた。
「あっ、痛いーっ!」
 美鈴が背中をそらせておおきくのけぞったとき、こころよい排泄感とともに尿が身体のなかを抜けていくのを感じた。そして、ちょろちょろ、ぴちゃぴちゃとあふれる尿を容器が受けとめる音が密室に響きわたった。
 きゃっははははは……と、みどり先生が身体を揺するほどの高笑いをした。
「すごいすごい、こんなにでるなんて!」
 先生のあざけりを聞きながら、美鈴は気が遠くなるほどの排泄感を味わっていた。
「美鈴ちゃん、これ知ってるわよね」
「えっ! ええーっ!?」
 そのとき、みどり先生の手に握られていたのは、真ん中がおおきくふくらみ、そこから左右に管がでている器具だった。それが簡易型の浣腸器とわかったのも、SM雑誌の広告ページをしっかり見ていたからだった。
 そばに満々と水を張った洗面器が置かれた。
 それから拘束ベルトの一端がはずされ、自由になった片足をどけてななめ横向きにされ、浣腸器の先をアヌスに突き立てられた。冷たいものが腹のなかに勢いよく注入された。
「せ、せんせっ、なんで、こんなことまで……」
「汚いものを、みんな出しちゃうって言ったでしょ。そのうえで、たっぷり可愛いがるのよ」
「い、いやぁ……」
 そんなにまでされながら、美鈴は興奮のまっただなかにいた。頭が興奮でくらくらするくらいだ。身体も火照り、胸はドキドキする。
 ぐるぐるぐるっと、早くもお腹のなかで、なにかが逆流をはじめた。急激に便意が襲う。
 ぶるるるるる……モーター音が響き、みどりの手から大人のおもちゃのピンクローターがぶら下がっていた。
「あううーっ!」
 振動するボールが茂みのうえに下ろされ、割れ目をなぞりながら刺激する。
「うっ、くくっ」
「これくらいじゃ、もの足りないようね」
 コントローラーが操作され、ブイイイイーン……激しい音とともに刺激も倍加する。
「いやあーっ……先生、せんせいっ」
 振動の先が割れ目をなぞる。ブルブル刺激されながらも痛いほどの快感につらぬかれる。
「凄いわよ。じくじく濡れてる。美鈴ちゃん、オナニーのときもこんなに濡れる?」
 みどりのあざけりが、頭のなかでこだまのように反響する。
 3分、5分という時間が、おそろしく長い時間に感じられて経過する。
 ギュルギュルギュルッ……便と浣腸水が攪拌され、逆流する音を聞きながら、みどりは最後のときを待って妖しく口元をゆがめる。
「ああっ、ううっ、せ、先生っ!」
 耐えられないくらいの便意に襲われ、便意といっしょに腹痛も襲っていた。
「先生、せんせいっ!」
 肛門のタガが一気にはずれたのを感じ、びちびちびちっ、と排泄の爆発音を発し、攪拌された便液が、ドボドボドボっ、と溢れでた。
「ああっ、あー……」
 気が遠くなるような排泄感にうっとりした。そして「はあ、はあ」という喘ぎを洩らす。淫らな指責めのあと、管による導尿、浣腸となぶりになぶられ、ぐったりとした。
 のどの渇きを感じた。
 やにわに先生がのしかかり、「あっ」と思った瞬間、唇を奪われた。あごをつかまれ、無理にこじ開けられた歯と歯のすき間を通って、冷たい液体が流れこんできた。
「ごくん」と音を立てて一気に飲みこんだ。それこそ渇いたのどに心地よく、なんの疑いをはさむ余地もなかった。
 不意に目の前が真っ暗になった。目かくしをされたからだった。
「あ、あ……」と、なにかしゃべろうとするが、ことばが自由に出てこない。身体が火照り、胸の動悸もはげしくなった。
「くふふ……クスリが利いてきたようね」
「ク、ス、リ……あ、ああ……」
 薬、というのは麻薬のことだろうか。その麻薬の助けを借りて、つぎにはなにが起こるというのだろう。
 あらたな恐怖と期待のなか、美鈴は想像を絶する夢幻境地に分け入ろうとしていた。

――蜜の章/対決前篇につづく――

―創作の記―

"美鈴呪縛"トップページ

全目次