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| 美鈴を帰した日の夜、早紀はK市郊外にある、とあるマンションを訪ねた。そこには県立病院心臓外科医局長で、早紀の母の主治医でもある田宮健一が妻や子には内緒で借りている1DKがあったからだ。 「お母さんはだいじょうぶだよ。不整脈もなく、呼吸もしっかりしている」 「ありがとう」 食事の材料やらなにやら、買い物袋を下げていたのに、田宮は報告のすぐあとで抱いてきた。それを「待って」とことわった。 「今夜は話があってきたの。ですから……」 そういって拒否するつもりが、キスで唇を奪われ、服の上から胸やら腰やらさすられ、だんだん抵抗の意志を奪われていく。 床に押し倒されたときは、早くも荒い息で喘いでいた。 「好きだよ。愛してる」 歯の浮くようなセリフが、恋に夢中なときはいざしらず、気持ちがはなれかけたいまとなっては、ただ空々しいばかりのはずなのに、心とは裏腹に身体は強く求めている。 田宮に抱き上げられ、ベッドに持っていかれた。上着やブラウスを脱がされ、スリップ姿になると、添い寝して肩や脚をさすってきた。 「細いね。きれいだ。なんて若いんだ」 そんなことを連発しながら、いつものようにスリップもその下のものも脱がしていって、早紀は生まれたままの姿にされる。 そうして田宮も裸になる。股間のものは、もうこれ以上ないほど隆々と勃起し、いきり立っている。愛が強かったときならいざしらず、幻滅がたくましい男の分身をも、ちがった生き物に変えて見せる。でも……。 膝を曲げて、脚を開かれた。 熱い、固い一物が秘肉を押し割って、ゆっくり入ってくる。わずかな痛みと圧迫を与えながら深奥部まで入ってきて、それから子宮をこじ上げる。 「ううっ」 歯を食いしばった。 「いいよ。いい感じだ」 のしかかって耳元でささやきながら、腰をつかった。猛根の熱い先端が、子宮を小突いたあと引き下がり、また小突いては引かれる。内粘膜と襞の同時刺激によって、早紀は身内の奥に、快楽の潮の湧き上がりを感じる。 「ああ……」 陶酔に意識が遠のくほどだ。 一瞬、脳髄にしびれが走った。身体の中心から突き上げるものを感じ、快楽のパルス信号とともに、なにかが発散されていくのを感じる。絶え間なく溢れている。 ピストン運動がせわしなくなった。ベッドがぎしぎしと音たてて揺れた。ベッドとともに、男の身体に組み伏されて蹂躙される早紀もきしむ。びりびりと痺れる。 「ああっ!」 背中を戦慄めいたものが走り、脳髄を電子音が貫いたとき、一度目の絶頂がきた。すーっと快楽の潮が抜けていく感じがした。 一度去った潮のあとで、また、さざ波めいたざわめきがはじまる。 田宮はまだ張り切ったままだ。その張り切ったものをいったん抜くと、早紀の身体は横向きにされ、反転された。そしてまた添い寝して、「いいね。いいねよ?」と訊いてくる。 「ええ」と、早紀は目をつぶったままこっくりうなずく。 反転した腰を持ちあげられ、膝をついて尻を突き出すかっこうにさせられた。後背位でのおなじみポーズだが、いまの早紀には“奴隷犬”にでもさせられた心境だ。 「いくよ」とささやく甘い言葉の裏側の本心で、この人はなにを思っているのだろう。 早紀はシーツを握った。 いったん抜かれた猛根は、淫水でぬるぬるしたまま、もう一つの入口にあてがわれる。そして、その固い口がゆっくり押し割られ、こじ開けられてゆく。 「うーっ!」 思わず顔をのけぞらせた。 「う、ふうーっ……」 痛さの奥で、痛さとはちがう痺れにつらぬかれる。固くすぼまった菊門を開けられ、その鋭い痛みにまじったゾクゾクするような快感。そして、また淫楽の潮が沸きたつ。 猛根の抽送運動がはじまった。 「あうーっ!」 田宮の分身は、早紀の締めつけに刺激され、前を攻めていたときより元気さを増している。隆々と膨張し、菊門をこれ以上ないほどに拡張して、烈しく前後運動をくりかえす。 「ああっ、あううーっ!」 激痛に叫んで、歯を食いしばった。だが、凶器のように張り切った猛根は、容赦ない前後運動をくり返し、どう猛に、凶暴に攻め立てる。 後ろを犯しながら、男の手は下向きになった乳房をすくい、握り、指を食いこませて揉みしだく。早紀は、愛欲の海におぼれながら、イラストに描かれた自分ともダブらせていた。 「いいね。いいよ」 田宮は呪文のように、おなじことばをくり返す。そのおなじ口から、こんなことを言ったのを、この人は忘れたのだろうか。 「若気の至りでね、恥ずかしいことにはコールガールとベッドを共にしたこともあるよ」 お金めあてに一度だけ見知らぬ男を相手にして、それを諫められたときだった。 「僕にしてからそうだから……」と、早紀の非行意識を軽減させ、立ち直りをうながす意味もあったのだろう。ただ、その際ふっと、 「でも、そんなときにはね、家ではできないことを、その子にしてもらうんだ」と、なんだかうれしそうに本音も洩らした。 それが、男と女の関係をもつようになってからしばらくのちの行為のとき…… 「初めてではつらいかも知れないけど、〈君で試したい〉んだよ。いいだろ? 〈君の愛を確かめたい〉んだ」 「君で試したい」と自分の欲望を吐露しながら、「君の愛を……」と早紀の田宮への思いの丈を量ろうとするずるさ。しかし、抗えなかった。 犬のように四つんばいさせられたのも、ある意味苦痛だったが、最初に入れられたときのその部分の肉体的痛さときた日には涙が出るほどだった。 もちろん田宮は、ローションをまんべんなくつかって念入りな前戯をほどこしてくれたが、猛り立つ男性自身をアヌスに挿入される痛さは、指でいたずらされるのとはわけがちがう。 「ひっ、ひいーっ!」 あまりの痛さに悲鳴をこらえきれず、田宮が登りつめて抜かれるまでの一度の行為中、脂汗と涙で顔がぐしゃぐしゃになったほどだ。 ただ、その痛さと酷さのあいだに、行きずりの男との経験で目覚めた早紀の内なる淫性と魔性が、また、めらめらとよみがえったのも無惨な事実だった。それをひきずっての田宮との関係でもあったのだ。 「あっ、あっ、ああっ……」 田宮のアナルファックは、ますます烈しくなり、頂上が近づいている。ずぼずぼと攻め立てられるときの痛みは、もはや痛みではなく被虐の快感に変わっていた。 ベッドのきしみ音が破壊的に響いて、田宮は身体にありったけの欲望を早紀の直腸内に放出した。 汗で光るほっそりとしなやかな四肢が、またもとのあおむけにもどされた。 田宮は早紀の下半身を観音開きにしてのぞき込み、途中で抜かれ、ほぼ自分の体液のみでぬるぬるになっている早紀の局部を両手の指でもてあそびはじめた。 わずかな黒ずみを見せるピンクの肉襞をつまんで開き、ぐっしょり愛蜜で満たされた淫猥な蜜壺をさらす。そこへ人差し指と中指を入れて、やや強引にかき回す。 「あ、ううー……」 早紀の顔が苦悶をきざむが、その本質は苦痛よりは恍惚に近い。そして、そのときの早紀の顔はおとなの女の乱れ顔だった。 「君は、年が変わるとすぐ16になるんだったね」 田宮の指が、くすり指を加えた3本になる。 「あっ」と、加わった痛さの強さに一瞬首を振るが、あえて拒絶も抵抗もしなかった。 田宮がこんなことを言う。 「『ウォーター・ブルー』に出てきたヒロインも、たしか16歳という設定だったが……日本人では無理か。それに、あのときの相手は女性だったしな……」 ただのひとり言と思った田宮のつぶやきは、つき合って最初のころ、ラブホテルのテレビに映した無修正ポルノビデオのタイトルだった。 「ちょっと、あれ試したいなあ」と、田宮が中に入れた指を、親指をのぞいた4本までにしたとき、はじめて早紀が拒んで起き上がった。 「あ、そうだ。話とは?」 部屋を訪ねた際の早紀のことばを思い出し、田宮はタバコを一服吸ってから訊いた。 早紀の目がきつくなっている。 「今井江利子さんって方は、先生の患者さんですよね」 「え?」 名前を聞いて、首を傾けた田宮の目が、だんだんおおきくなった。その変わりようは、仕掛けた早紀が意外に思ったほどだ。 「君が、なぜ、そんなことを……まさか!」 「やっぱり!」 早紀の目が怒りに燃えた。もともと勘のいい子だから、相手のわずかの動揺も見のがさない。 買い物袋から、二重に包装した茶封筒をだし、なかから取りだした雑誌を2冊、田宮のいるほうに放り投げた。 「なんだ?」 「付箋のあるページをご覧になって」 完全に切れた状態の目で言った。 「こ、これは!?」 ベッドに飛んできた2冊の雑誌の指定箇所を見くらべ、田宮が絶句した。 「なんで、こんな……」 「わたし、いままであなたのなんだったの?」 「なにを言ってるんだ」 「出世や保身のためなら、どんなことでもぺらぺら口に出すなんて。信じられないっ!」 「こんな……知らない。濡れ衣だっ」 田宮は否定したが、うろたえたその目を早紀にまっすぐ向けられずにいる。 「もう、お別れだわ」 早紀の誇りが許さなかった。だから憮然と言い放ってそそくさと身支度し、髪の乱れもそのままに立って玄関に向かった。 途中、一度だけ振り向いた。 「〈あの女〉とは手を切ったほうがいいです。でないと、破滅しますよ」 毅然と忠告して部屋をあとにした。 田宮は追ってはこなかった。 N町に向かう最終バスには、まだ間に合う。だが、このまま一人の家に帰るのは、あまりにもみじめすぎた。 けっきょく田宮にとって早紀は、代用品でしかなかった。妻にはない若さと健康と、その身体で妻にはできない行為を強いられる、商売女と変わりはなかったのだ。 早紀のなかに2人の女がいる。今朝方、美鈴との行為で萌えたおさない女。そして、たったさっきまで田宮に抱かれて萌えた大人の女。そしてさらに、早紀のなかに2匹のメスがいる。アナルファックもいとわぬ多情なメス。そして―― 「怖い……」 背筋を走る悪寒に、ぶるっと肩をそびやかした。 そのとき早紀を襲っていた戦慄は、田宮の愛を失ったことの消沈ではない。一人になったこの先、心の闇に眠る暗い情念の炎がくすぶりだすことへの底知れぬ怯えだった。 |
| 無数のコンテナ群がならぶ港湾埠頭は、休日とあってクレーン車も止まったままで、人の気配すらほとんどなかった。海水浴場として有名な観光海岸はこの先にあり、土地の者もそっちを遊び場にしているのか、テトラポットを敷きつめて伸びる沖の防波堤も閑散としていた。 そこに、そろいの紺のスクール水着を着た2人の少女がいた。 「京子ちゃーん、待ってよー」 「遅いのよー。早くぅー」 追いかける子は先を急ぐ子よりはずっと小柄だった。 突端の灯台まであと半分の、くの字に曲がった中間地点で追いついた。一時じゃれ合い、2人はもつれたままへたりこんだ。 「駆けっこ早いなー、京子ちゃんは」 「〈すずちゃん〉がのろいんだよ」 小山内京子が口にしたニックネームに、落合美鈴がきょとんとした。 「いま、なんて言った?」 「だめー? すずちゃって呼んじゃ」 「〈すず〉かぁー。そう呼ばれたことはなかったなぁー。早紀ちゃんにも、なかった」 「ねえ、だめ? だめ?」 京子が腕をつかんで揺すって甘えかける。早紀といっしょだと甘えいっぽうの美鈴が、ここでは逆転して京子に甘えられている。 「いいよ」 2人は顔を見合わせて笑った。 「すずちゃん、すこし明るくなった?」 「えっ? わたしって暗かった?」 「そうだよ。変だもん、最近のすずちゃん」 美鈴は返答に困った。 それにしても人の縁とは、おもしろい。 S川の土手でF高不良女子グループに脅されていた京子を、高みの見物どころか心で快哉を叫んで見ていたというのに、それがいまは大の仲良しにまでなった。 思えばそれも早紀のおかげだった。 「人がわかんなくなっちゃったナ」 青海原に目を泳がせて美鈴がつぶやくと、 「早紀ちゃんのことね」 美鈴にしてみればみどり先生もふくめてのことだったが、京子の早紀観はちがった。 「〈あんな〉のウソだよ。早紀ちゃんにかぎってウワサのようなこと、あるわけないよ」 美鈴は意外なようすで京子を見つめた。 (この子はどのていど早紀ちゃんを知ってて、そんなこと言うんだろ) 自分に届いた雑誌が京子にも届いたとは限らないから、京子が言う〈あんな〉とは、島崎若菜の変死について早紀が参考人聴取で引っぱられ、それをきっかけに立ったウワサについてだろう。 カマをかけてみることにした。 「あのね、このあいだ早紀ちゃんとこに泊まったんだよ」 「知ってるよおー」 「えーっ!?」と、美鈴がパッチリした目をよけいおおきくして驚いた。 「早紀ちゃんに聞いたもん」 「どこまで訊いた?」 美鈴は京子の顔を穴の空くほど凝視した。 「どこまでって、お母さんが検査入院の留守に泊まりに来て、その晩は早紀ちゃんとならんで、〈いっしょ寝た〉って」 最後の「いっしょに寝た」というところでは、さすがにドキドキした。 「ホクロ」と言いかけ、苦い記憶がよみがえった。そのため、出かけたことばを呑み込んだが、やはり知りたい気持ちが勝った。 「お風呂にもいっしょに入ったんだよ」 「そりゃ、お風呂くらい入るでしょう」 「そしたらね、早紀ちゃんって、いやらしいところにホクロあるんだよ。腿の付け根とならんで、きわどいところに2つもあった」 衝撃のレズ体験をはずして風呂で見たことにしたが、京子はそれほど関心もないようすで、「ふうーん」と言ったきり立ち上がった。 「すずちゃん、わたし泳ぐから」 「そうだね、泳ごう泳ごう」 2人はテトラポットに降りて、それからドボンと海に飛び込んだ。 ここには小学校のころ、美鈴も何度か父と夜釣りにきたことがある。 せっかく捕えたおおきなタコが魚籠(びく)から逃げ出し、大はしゃぎで追いかけたことや、その晩釣った活きのいい小鯛(ちだい)を翌朝焼いて朝食のおかずに食べ、ほっぺたが落ちるほどおいしかったことなど、いい思い出だった。 「それで、いまは?」 ぷかぷかならんで浮きながら、京子が訊いた。 「仕事仕事で、夜釣りはおろか、家族いっしょに出かけることなんかもなくなったわよ」 「わたしとこも、そうよ」 京子の父は商社の重役と聞く。かつての美鈴は羨望もあって、「金持ちのわがまま娘が」と見ていたが、まったくの誤解だった。 「あ……」と、京子が気づき美鈴もそのほうを見た。遠くで船が立てる白波が生じ、それが近づいている。 「たいへんだ」 「こっちへくる」 美鈴も京子もスクリュー波に巻き込まれるのを恐れ、あわてて陸に上がった。 ぐんぐん近づく船体はクルーザーだった。 甲板に立ってこっちを見ているのは4人。どの顔も女性だ。と、京子が「あっ」と叫んだ。 「紺野梨沙だっ!」 「京子ちゃん知ってるの?」 そう訊いて、目を凝らした美鈴も思い当たった。 黒ずくめのパンツルックで決めた梨沙以外の手下は、ガングロや茶髪、金髪に染めた顔から下はミニルックで、短すぎるすそから太めの足を堂々とさらしている。 その3人の顔は、たしかにS川の土手で京子をカツアゲしていた連中だ。 「きゃっほー!」 奇声を発してはしゃぐ少女以下、手下の手には武器が携行されており、一人だけ素手の梨沙が、不敵な笑いを浮かべていた。 「すずちゃん逃げようっ」 京子が殺気にうろたえ、美鈴の手を引き、2人は防波堤のはじまりへ向かって走った。 高速を上げて2人と並走するクルーザー。 追いつき、追い抜き、まず船が浅瀬の手前で止まり、梨沙と手下が降りて駆け出す。波打ち際で、ばしゃばしゃと水しぶきが飛んだ。 あっという間に美鈴も京子も4人に回り込まれ、防波堤の入口付近で逃げ場を失った。 とっさに引き返そうとするが、そこに船から降りた5人目の人物――美鈴たちには名前も素性もわからぬアメリカ人女性、イングリッド・パーカーが高みの見物を決めこんでいた。 逃げる少女2人は進退きわまり、たがいに抱き合い身を寄せ合った。 「2人おそろいとは好都合だこと」 梨沙がほくそ笑むなか、手下どもは鎖分銅、ヌンチャク、それに木刀をかまえて美鈴と京子に迫る。 そのとき京子が叫んだ。 「早紀ちゃーん、はやく来てーっ!」 「!?」 美鈴はなにを言ってるのかと思った。 |
| 京子の頭がおかしくなったのかと思ったつぎの瞬間、美鈴は不良たちの背後から、棒切れを両手にかまえて、いまやトレードマークみたいになったメッシュキャップとジーンズルックで、一目散に走ってくる早紀が見えた。 「ちっ」と、梨沙が舌打ちした。 4人の攻撃の矛先は当然、美鈴と京子から早紀一人に向けられた。 「美鈴ちゃん、こっち」 乱戦を避け、京子は浅瀬の海に美鈴を誘って退いたが、ちらっとふり返った後方、停泊する船のキャビンの半開きの扉越しに、別の女性の影が見えた。 その彼女のおびえきった表情に、美鈴の足は反射的にそっちに向きかけたが、防波堤に立つ女を見上げて躊躇した。しかし、 「モウ、ソノ女ニ用ナイ。アナタタチデ、連レテ行キナサイ」 イングリッドは片言の日本語で乗船をうながした。 その間、波打ち際では梨沙一派と早紀の対立が、にらみあいの形で、まだつづいていた。 「いつも邪魔ばかりするっ!」 「あの女の手先を務めるのはやめなさい。あなたはあんな悪魔のような女とはちがうタイプ。深みにはまると大変なことになるわよ」 「ふんっ」 両者の応酬を横目で見ながら、美鈴は京子とキャビンの扉にもたれかかっている女を助け起こした。 「大丈夫ですか?」 「ええ……」 やつれた顔でうなずく30歳代の彼女に肩を貸して連れ出す際、ふとふり返ったキャビンの、テーブル越しに見えた2脚の椅子のようすに美鈴は「ぎょっ!」となった。 向こうの椅子には雑把にほどけたロープが掛けてあり、手前の椅子にはコード類が結ばれたボックス状の器械が見えたが、美鈴がなによりおどろいたのはテーブルの上に転がっている筒状の道具で、その筒の一方の端にはベットリ赤いものが付着していた。 ――あれは、たしかに血だった! それは一瞬のカメラショットで捉えられたように鮮明な一コマだった。 「すずちゃん、早く!」 「うん」 京子にせかされ、あわててその場を離れた。 船からテトラポットに移ると、そこにイングリッドも降りていた。 「イッショニ見物シマショ」 そう言われても油断をおこたることなく、2人はキャビンから支えてきた女性を、いったんはテトラポットの上に座らせ、それからかたずを呑んで梨沙と早紀の対決に眼をみはった。 「いくら言ってもムダのようね」 「ああ、そうさ」 早紀が自分の持つ武器に一瞥くれた。棒切れと見えたのは長方形に長い廃材で、ところどころ釘が出ている。 「あいにくこんなものしか見つからなくて……当たりどころが悪いと大ケガするから、覚悟してかかってきてね」 笑みまで浮かべて不敵にかまえた。 「ナマ言って! いいから、かかれっ!」 梨沙の命令で早紀は三方から囲まれた。 一時、両者は対峙する。 このとき陽はかなり傾き、夕陽を背にした梨沙一派に対し早紀は不利のはずだったが、ツバ広のキャップが幸いして、逆光をものともしなかった。 反対に高3の梨沙と肩をならべるくらい上背のある早紀は、手下3人をわずかに見おろして有利な位置にあった。ただ、それにしても梨沙を入れて4対1の多勢に無勢―― びゅっ、と音をたてて分銅が飛んだが、間一髪その一撃を交わした早紀は、交わした余勢で別の手下のスキを突いて一歩飛び込み、そいつの手首をしこたま叩いた。 「ぎゃっ」 飛び退いた少女の手からヌンチャクが落ちた。 「こいつっ!」と、つぎに木刀を持った少女が早紀に襲いかかり、一時烈しい棒切れ同士のつばぜり合いがつづいた。 そのようすを、美鈴は時代劇ドラマでも見るようにうっとりながめていたが、京子は美鈴と早紀の身体を品定めするように見くらべるイングリッドの視線に、ひどく不快な印象をいだきつづけていた。 「あっ」と美鈴が叫んだ。 木刀と木ぎれで打ち合う早紀に、別の方向から鎖分銅が飛んできたからだが、身軽な早紀は木刀を受けつつそれも交わした。 「あぶないっ早紀ちゃんっ!」 こんど叫んだのは京子だ。 ヌンチャクを取り落とした少女が、道に落ちているこぶし大の石をひろって早紀めがけて投げつけたからだ。京子の声に気づいて早紀が木ぎれでバッシとよけた。が、そのとき―― ぼきっ、と、木ぎれがまん中から折れた。 「いまだっ!」 そのとき、鎖分銅が風を切って早紀めがけて飛んだ。一瞬ひるんだものの、その分銅に左手を差しだしてうまくからませ、あらん限りの力で鎖ごと引っぱりこみ、倒れ込んできた相手に逆襲の体当たりをくれた。 「ヤアーッ!」 早紀が叫び声を上げてさっき石を投げた少女に突進した。眼を剥いて逃げる少女。一時追いかけっこになったが、少女が梨沙のほうに逃げたとき、めまぐるしく攻勢を転じた。 早紀の身体が方向転換したと思うや、一瞬の身のこなしで分銅を巻いた腕は梨沙をがっしりととらえ、右手は木ぎれを捨てて分銅の鎖に持ち替え、梨沙の首を絞めてかかったのだ。 「さあ、手下を下がらせなさいっ!」 「くうーっ!」 梨沙が歯ぎしりして口惜しがったとき、 「ソレマデッ!」 イングリッドが剣道試合の審判みたいに判定をくだした。 「リサ、帰リマショ。ミンナヲ連レテ……」 こうして両者は分けられた。 早紀が梨沙から離れた。そして鎖分銅を腕から解いてはずすと持ち主の少女に返し、武器のない身になって京子と美鈴の前に近づいた。 「ツヨイネ。気ニイッタヨ」 素直にほめたが、その貪欲な目は早紀の頭から爪先までを一瞬にとらえた。 そうして梨沙が手下と船に乗り込み、イングリッドも乗りこみ、エンジン音が響いてクルーザーはしぶきを蹴立てて洋上に遠ざかった。 船が向かった先はもと来た方角であり、その方向にはみどりに招かれて行ったK市もある。それが美鈴にはどうにも気になった。 クルーザーから助け出された女性を、安全な浜まで移動させてから早紀が質問した。 「あなたは、もしや今井江利子さんでは?」 「はい」 疲れた表情の女性は、もちろん保健室の先生、川村みどりとは別人の顔だ。それによって今井江利子の本物が存在したことになる。 「K中学で養護教諭をしている川村みどりという女性を知ってますよね」 早紀の質問は本物の江利子を驚愕させた。 「なぜ、あなたはそんなことまで……!?」 江利子は不思議なものでも見る目つきで、大人の顔を持つ早紀という少女をまじまじと見つめたが、その口からさらに仰天する断定を聞かされることになった。 「あの女は危険ですよ。 あなたが川村先生にどんな弱みを握られているかは知りませんが、先生があなたの偽名をつかう理由は、なにかのとき、あなたを替え玉に仕立てるためではないかとも思います。 それはもしかして、殺されるということかも知れませんよ」 「そんな!」 江利子はうろたえた。 「あなたはいったい私にどうせよと……」 「姿を隠してください。すこしのあいだです。その間に、奴ら、きっと崩壊しますから」 そう説得する早紀の顔には、並々ならぬ決意がみなぎっていた。 早紀が、そう言い張る自信はどこからくるのだろう。みどりの正体とはなにか。そのみどり一派壊滅に向け、どう関わろうというのか。美鈴も京子も、ここへきてわからないことだらけになった。 「なにをされたんですか?」 早紀が容態を案じて耳をかたむける。 美鈴の脳裏に、キャビンの扉ごしに見た異様な光景がよみがえった。この江利子という未知の女性になんとなく感じる同族淫性が、じつは早紀にも共通する被虐の呪縛であることを、このとき美鈴は、まだ知るよしもない。 |
| その日、ウルフ山中こと山中正夫は、Y町にある川村みどり邸を訪れた。 そこはみどりの実父が開業していた産婦人科医院でもあったが、院長である父が痴呆で廃院。その頃からこの界隈は地上げにより周辺住民が立ち退き、さびれた一角に建つここも川村医院の看板だけ残るあばら屋同然となっていた。 「ごくろうさん」 “不測の事態”にそなえて張り番しているF高不良番長、紺野梨沙のグループ配下3人にあいさつして裏口から入ると、板の間廊下を通って応接室のまえまで来た。 32インチテレビに過激なレズSMシーンが映されていた。 開脚全裸の少女相手に、それよりずっと年上の女が手袋をはめるところだが、それは薄い手術用手袋などではなく、グローブという形容がふさわしい厚手のものだった。それにたっぷりとローションを塗りこめ、こぶしに変えた腕の先がゆっくりヴァギナに押し込まれ、深く挿入されたあとは、ひねりまわされ、出し入れをくり返される。 「知り合いのお医者に借りたフレンチポルノの直輸入品でね、画質が悪いのはビデオ方式が日本とちがい、それに合わせて一度落としてあるからなの」と、ごていねいな解説までくわえた。 (なるほど、これが8年前――筆者註・本稿時点は1993年に当たるので1985年――日本で公開された超変態ポルノ『ウォーター・ブルー』か。ビデオ教材で調教指導とは……) 感心するウルフの気配に気づいた。 「いらっしゃい」と振り向いたあと、 「紹介するわ、〈いろんな〉意味でのわたしのパートナー、〈中山〉正夫さんよ」 苗字をさかさまに言い替えたおかしさをこらえ頭を下げたが、「俺の顔まで明かすなんて」と、みどりの真意が図りかねた。 「こちらは有沢いさ子さん」 しゃぼんの匂いのする肌をバスローブに包み、短めのすそから白い細足を見せるいさ子という女は、肌のつややかさから20代そこそこに見えるが、どことなく暗い感じだ。いずれにせよ、徹底したみどりの調教で本格的なマゾ奴隷に仕立てあげられるのだ。 その第一弾が今日というわけだ。 「あなたの身体で、ビデオの場面を再現させてもらうわよ」 強引に迫られ、いさ子が青くなった。 「フィストの経験は?」 「ありません」 強い調子で答えて首を振った。 「病気で寝たきりのお母さんに、いい医療と介護を受けてもらうためじゃなかったの?」 「はい」 どうやら親孝行娘だ。この手はお涙ちょうだいで攻めて追い込む、恰好の餌食となりやすいタイプなのだ。 「ウチのクラブの常連さんたちはお金持ちばかりで払いは固いけど、その代わりハードな責めを要求するわよ。その覚悟でのぞんでもらわねば」と念を押し、「ともあれ、ここまで来て逃げは通用しないわよ」とクギを刺され、あきらめ顔でうなずくしかなかった。 「そこに四つんばいになって」 さっそく調教開始だ。いさ子がソファーから床に下りて膝をつき、上体を肘で支えて、犬のかっこうになった。 ローブの裾がめくり上げられ、恥ずかしい部分がさらされた。 少女のような尻の谷間と鼠蹊部に目を凝らすと、こわごわと豊富な陰毛がピンクの肉のクレバスを包み込むだけでなく、アヌス穴のまわりにまで黒々とつづいていた。 「イヤらしいお尻を見たら、ほかのことも試してみたくなったわ」 みどりのことばに、いさ子が表情を曇らせた。 いったん中座したみどりが白衣に着替えてもどると、いさ子の目の前の床に、箱型の装置とコード類、それに長さ約50センチ、直径4、5センチある金属製棒器具を置いた。 「これがなんだかわかる?」 「……………?」 棒の先端は金属製で、そこから出た2本のワイヤーが平行した螺旋を描いて巻きつけられ、取っ手部分で棒のなかに隠れている。カチッと音をさせ、装置から出ているコードの先のプラグを棒器具後端にさし込むと説明した。 「電気責め装置よ」 「!?」 「電気責め装置といっても低周波なんかじゃなく、マジ電流を発する装置」 「そ、そんな!」 四つんばいのまま怖じ気をふるったが、そのいさ子に、みどりは言い聞かせた。 「電気を流すといっても、ごく弱いものだし、人によっては病みつきになるくらいよ。電流プレイをエンドレスセックスというくらいだから……」 あれやこれや理屈をならべたて、結局はその気にさせた。 みどりが棒器具を手に持つと、その先を陰毛に取り巻かれて固くすぼまっている菊門に押し当てた。ぐいっとひねって力をくわえたとき、四つんばいにされて突き出された腰が逃げかけた。 「動かないでっ!」 烈しく命令して、なお力を込めた。 「うっ、うーっ!」 電気棒の先端、金属部分が無数のシワを刻んだ菊門の陰にかくれ、そのあと螺旋部分もすこしずつ中に入っていく。 「じっとしてるのよ」 その部分に目を凝らし、ずんずん押し込んでいく。途中で棒器具の挿入が止まった。 「ううっ、つうーっ!」 床をかきむしるような手の動きとともに、いさ子の口から苦痛の呻きが洩れた。首を振って身悶えた。 「がんばればがんばるだけ、お金になるのよ」 「あ、はい……ううっ!」 みどりは肛門に突き立てた棒器具の角度を変え、こじり開けるような動きで回転させると、なお押し込んだ。 「うぎゃうーっ、うっうっ……」 のけぞった肩がぶるぶる震えた。 「動くんじゃないよ」 棒を握る手に体重をかけるよう押し込んだ。 「ぎゃああっ!」 「だめよ、そんな大声出しちゃ。この辺りだって通行くらい時々はあるのだから」 「うっ……だって、痛くて、つらくて……」 「お母さんのためでしょ。お金のためでしょ」 そう言い聞かせると、また力を込めた。 「ううっ、ぐえええっ!」 押し殺した悲鳴が起きたとき、タガがはずれたように棒器具が10センチほど直腸に入っていき、あとはそのまま、ゆっくり5センチ、10センチと入っていった。 50センチもある電気棒の、螺旋の帯電部分がほぼ埋まったところで止めた。 「これから電気を流すけど、絶対に大声をあげてはダメよ。いいわね」 「う、うう……こ、怖い……」 「ふっふふふ……よほどのことでもないかぎり、死ぬことはないわ」 そううそぶいて函型装置のスイッチを入れた。それからダイヤルを回して徐々に徐々に電圧を上げていった。 「うーっ、ああーっ……」 電圧の上昇につれて、いさ子の顔もいちじるしくゆがんでいき、苦しまぎれに悲鳴が出かかるが、厳しく制限されているので必死に声を殺した。 「ううっ……うぐぐぅーっ!!」 歯を食いしばり、身体をぶるぶる震わせて耐えた。 「その電気棒をお尻に食わえたまま、犬のように四つ足で診察室に移動しなさい。はい、こっちよこっち」 みどりがばらけたコードをひとまとめに、装置といっしょに抱えていさ子のすこし前を歩いた。尻に電気棒の後端を生やしたまま、四つ足歩行のいさ子がついて歩き、ウルフもそのあとを追った。 みどりは2人を、テレビのある応接間から開脚寝台の置かれた診察室に案内した。 「どう? 専門が専門だけに本格的でしょ?」 そう言って自慢する内診台に、これまで生贄候補の女を何人寝かせて拘束し、“味見”と称していたぶったことか。廃院してもこれだけはそのため取っておいたのだ。 「さあ、もう犬のかっこうはやめて、ここに上がりなさい」 いさ子はいったん床から立ち上がると、慎重に開脚台に上がろうとするが、肛門から出ている電気棒の残り部分がどうしても邪魔をする。 「あなた」 みどりがウルフを手伝わせ、2人がかりでいさ子は台に横たえられた。その際、寝台の縁に電気棒がこすれ、ムリな加重がかかって、いさ子は「ぎゃっ」とわめいた。 |
| 「いつからなの? 自分にそんな傾向があると気づいたのは……」 愛液でするずるになった電気棒を肛門から引き抜きながらみどりが質問する。 「成人映画のポスターで、縛られたり責められたりしている女の人見たりすると、妙に興奮するような気持ちになって」 「そう」 「それで、ゴミ出しの日なんか外に出ているSM雑誌こっそり持ち帰って読むんですけど、家までの過程でもう、あそこが濡れていたりして……」 「そうなの」 愛想のない相づちを打ちながらも、みどりは内心ではあの手この手と趣向を考えていた。 「じゃ、いよいよ覚悟してね」 いさ子の見ている前で手術用の薄いゴム手袋を両方の手に装着した。そして、おおきく開脚された下半身の中心に目をこらす。 縦にながく広がる縮れ毛の茂みのなかに、複雑な皺を刻む女の部分が、ややどぎついピンク色して艶やかに息づいている。そして割れ目には早くもゆるい乳液状のものが滲み出ていた。 「気を楽にした方がいいわ」 ウルフがローション容器を持参して空椅子の上に置いた。みどりが瓶の蓋を開け、そのなかに右腕を突っ込んだ。こぶしから手首にかけてぬるぬるにしたあと一気に押し込む。 「うううーっ!」 手足を開脚寝台に固定されられた女の上体が、烈しい呻き声とともにのけぞった。くっきりと浮き立ったあばら骨が、ぎしぎし音をたてていると錯覚するくらいののけぞりかただ。 「痛いっ! 痛いですっ」 「すぐよ。すぐ痛くなくなるわ」 そう言いつつも、みどりは容赦ない力をくわえてぐいぐいと割れ目に押しつける。 「いいぃっ、痛いぃーっ!」 「痛いのが好きなんでしょ」 「イヤっ。こんなのキライっ。壊れるからやめてっ。さ、裂けてしまうわっ!」 いさ子の暴れ方は尋常でない。その痛さがりように、ウルフは「おや?」と思った。 (さすがの今井江利子、じゃなかった川村みどりの眼力も間違うこともあるのかな?) みどりもおなじ思いをしていたが、 (まあいい。それならかえって好都合) これと見定めたマゾ女をたらし込み、手練手管でさらに開発して完璧なるマゾ奴隷に仕立てあげ、高い会費の秘密パーティーで残酷ショーの実演を盛り上げるのが、これまでのみどりの手口だったが、相手が多少なりとも納得ずくということに物足りなさも感じていた。 「有沢さん。いさ子さん、いま気持ちを楽にするものをあげますよ。さあ」と、いさ子の顎を取って、ウルフが度の強いブランデーを口移しに飲ませていた。 そうかと、みどりが気づいた。 (美鈴に使ったクスリを用いる手もある) いさ子の暴れ方が、だんだん弱々しくなった。そして、痛がる一方だった声に甘美さがくわわった。 ぐちょっ、ぐちょっ、と、ドクターハンドの手首がひねられるたびに淫水が愛液と混じり合い、湿った水音を立てている。そして「うっ、くふぅーっ」という、ひきつった呻きと喘ぎ。 「ああっ、うああーっ!」 いさ子の声が恥も外聞もなく、ひときわ高く上がった。 開脚台にしなう淫らな媚体。華奢だがすこしもギスギスした感じはなく、新体操向きスポーツ体型といったところか。 (あの娘が、ちょうどこんな体型だ) ウルフは心に刻んだ少女の顔を思い描いた。 みどりもおなじ顔を思い浮かべていた。 (わたしの目に狂いはないはずだが……) それは早紀に対する仕掛けの効果があらわれないのにヤキモキする感情だった。親孝行だと聞いているからには、じらして高く売りつけようというのか。 「ああっうっ!」 こりこりとした感触を愉しみつつ、こぶしの先で子宮孔を強くえぐったとき、大の字に開かれた細身の裸が、さらにおおきくくねった。 ザクロの割れ目から、薄いゴム手袋をはめた手首が生えている感じだ。 その手首をくわえた淫らな裂け口から、じゅるじゅると愛液がしたたりつづけている。濃いめに白濁した、ヨーグルトようのラブジュースは、見た目に比例して臭いがきつかった。 (上品な客向きでないかナ)とみどり。 (男好きするタイプだが……)とウルフ。 そうして2人とも、すっかり被虐の虜になって悶え狂いしているいさ子を見おろし、青臭い少女にはない毒の匂いを嗅ぎ取っていた。 みどりが烈しくこぶしを突き動かした。 「ああっ、うあーっあーっ!」 内診台をぎしぎしいわせ、手足を拘束されたいさ子が汗で光る全身をくねらせ、のたうちまわった。その悶えぶりは、蛇が苦しみのたうつ動きにも似てエロチックだ。 「可愛いいわよ、とっても」 「うっ、うー……」 「もっと力を抜いて。リラックスするのよぉ」 「あうぅー……」 ウルフがかたわらで順番をうながす。こぶしをつくり、素手のままローションをまんべんなく塗りつけた。 みどりがゆっくりとこぶしを抜きにかかった。縮れ毛のなかの割れ目が、腕を抜かれるにつれておおきく口を開け、ずるずるになった手袋の腕が抜かれたあともぐっしょりと濡れそぼった空洞は開いたままだった。 「こんどは相当痛いけど、がまんするのよ」 そういってウルフにバトンをわたしたとき、電話が鳴った。 ウルフが交代していさ子の股間の前に立ち、淫水を光らせながら、まだ開きかげんにしている秘孔に腕の先を押しつけた。 「うむうっ!」 顔いっぱいに苦悶のシワが刻まれた。 こぶしに力がくわえられ、手首を起こして膣をこじ上げたとき、いっぱいに引きつった顔から「ひいっ!」と悲鳴が発せられた。 たらたらと淫水をしたたらせる割れ目と手首のすき間に、先をとがらせかげんにしたたくましい男のこぶしが押し当てられ、ぐいぐい押し込む。 「うぎゃっ、うんむーっ!」 叫び、呻きを無視して、なお腕を突く。 「ぎゃっ、ぎゃあああーっ!」 秘孔がぐわっとおおきな円をつくり、ウルフのこぶしがじつにゆっくり、すこしずつ繊毛に縁どられた全開の割れ目のなかに没してゆくところだった。 電話がしつこく鳴りつづけている。 みどりがドクターハンドを乱暴に脱ぎ棄て、廊下の一角に開業当時のまま置いてある、外来患者用ピンク電話をつかって出た。 かけてきたのはF高3年、不良グループ“蛇苺”をたばねる紺野梨沙だった。 「おネエ、またやられたよ。あいつに……」 港湾埠頭近くの防波堤で美鈴と京子を襲い、どこからともなく現われた早紀に撃退された顛末を口惜しそうに報告した。 「なんでいつも邪魔ばかりするんだろ」 「まるで美鈴の守り本尊みたいね」 みどりが古くさいことばを用いて不思議そうにつぶやいた。 業を煮やしつつも早紀の女武者ぶりには心のどこかで満足していた。相手がしぶとければしぶといほど責め甲斐があると、いまからその気になってぞくぞくする思いだった。 「張り番のサツキたちは夜までに返すわ」 そう言って電話を切った。 そのあと市警の神谷に電話した。 「あの娘が邪魔でしかたないの。そろそろ片づけるから、あなたもそのつもりでいてね。 それと、今かけたのは別のこと。一人調べてもらいたい子がいるの。かんたんな事情は直接訊いたけど、裏を取ってもらいたくてね。もしこちらの条件に合う子であれば、可哀想だけどいよいよ〈例のこと〉に使いたいのよ」 受話器を置いて宙に浮かしたみどりの目が、不気味さをたたえて光った。 診察室にもどると、開脚寝台がぎしぎし音をたてて揺れていた。 「ああっ、はあっ、うっ、ううっ!」 烈しい喘ぎと呻き――。 前後に突き動かされるウルフの腕に合わせ、こぶしの一部が出たり入ったりをくり返して、じゅるじゅるとラブジュースをしたたらせる秘孔が全開になったり、固くすぼまったりしてこれ以上ないほど残酷で淫猥な眺めだった。 ウルフが満足そうな笑みを浮かべ、びしゅっと、音を立ててこぶしを女の膣から引き抜いたとき、「ひいっ!!」と甲高い悲鳴が起きて、ラブジュースの飛沫が飛び散った。 |