
| 1970〜80年代のある時期まで、南米の一国であるその国も、アメリカの物心両面からの支援を受けた軍事独裁国家だった。強権的恐怖政治が支配し、それに反対して立ち上がった人々は容赦ない弾圧にさらされた。 80年代に入って民主化を要求する国民の声は高まり、国際人権機関の追及などから軍部がこれ以上政権を維持するのは困難な状況となっていた。そんなころ、日本から医療ボランティアとして派遣されていた斎藤美香(仮名)という女性が、秘密警察に拉致され5日間にわたって監禁される事件が起きた。 拉致された1日目は、地下の倉庫のような密室で、2日目からは首都にある秘密警察情報部に移され、連日はげしい拷問が繰り返された。そこには好色・残忍な女性主任がおり、彼女の猟奇趣味は執拗で陰湿な性拷問となって美香を苦しめた。 拷問4日目、とつぜん抜き打ち査察を名目にした政府職員の慰安訪問を受け、訪問者のなかにかねて栄転を懇請している陸軍大臣つき武官がいたことから、マリアの歓待ぶりは限度を超えたものになった。そのなかで、かつてホームレスだった12歳と14歳の姉妹が残虐の生け贄にさしだされたのだ。この姉妹の運命は。そして衰弱いちじるしい美香は果たして無事生還することができるのか否か。運命の時は刻々近づいている。 |

| イザベラ・ムニョスが慰安室からもどったとき、拷問室ではしゃくりあげるような美香の嗚咽がただよっていた。 「自殺するんじゃないよ」 マリアが耳元にささやきかけ、目隠しはそのままに、口に噛ましたギャグをはずしてやっていた。 女性囚相手に慰安にふけっていた他の男たちもアメリカ人顧問大佐のウイルソンをのぞいて全員もどり、そのとき拷問室にはイザベラを入れて8人の男女がいたことになる。 不安におののく美香に張りつき、何人かの男たちは、あちこちどす黒い電流斑を見せる身体を、いやらしくなでまわし、別の男たちはワイングラスをかたむけ、あるいはたばこをくゆらせ、見物に興じていた。 マリアが床に置いた発電機の電圧を、慎重な手つきで調節した。そうして美香の股間をのぞき込むと、なぶりになぶり、赤黒く腫れ上がったラビアをつまみあげた。 「おいしそうな貝だこと」などと戯れ口をたたき、電流の流れている虫ピンを一本、無造作な手つきでラビアに貫通させた。 「くぅーっ!」 汗で光る裸身が大きくのけぞり、それを男たちが押さえつけた。2本、3本と、マリアは電気の流れている針を性器に突き刺していき、そのたびごとに呻き声は大きくなる。 「くう、ううーっ!」 「ふふふふふ……いいわよ。その調子で耐えるのよ。がまんの褒美に、楽な拷問に替えることもあるかも」 だが、この女にそんな慈悲心などあるわけがない。 男たちの屈強な腕のなかで、顔をいっぱいにゆがめた美香は、ぶるぶる苦痛に震えている。虫ピンを刺されたラビアから、細い血の筋がゆっくりと流れてシーツを点々と染めはじめた。 「ひっ、いいーっ!」と、声を殺した呻きが、悲鳴に変わった。 こんどの針は、クリトリスから膣に向けて深々と突き立てられた。男たちの手に押さえられた腿や、ふくらはぎに浮き立つ筋が、びくびくと震えを見せる。 マリアがイザベラに気づいて立ち上がった。 「夫人を待つつもりだったけど、みんながねえ……」 マリアは弁解したが、「いいんじゃないですか」とイザベラは笑って返した。 「いやっ、きゃああーっ!」 背後で悲鳴が起こった。見れば男の一人が、さっきマリアが突き立てたクリトリスの上に、さらに一本電気針を突き立てたところだった。 マリアの報告がつづく。 「むこうはもっと凄い遊びしてますよ」 そして、むごたらしい仕儀を報告すると、 「あの姉妹のこと、話したの?」 一瞬、顔をしかめたマリアだが、「まあいいわ。それでわたしの栄転にはずみがつけば、これ以上の付け届けはないってもんだものね」 「ぎゃあああっ!!」 美香が、すざまじい絶叫を響かせた。 「ぎゃっ、ぎゃあああっ!!」 絶叫をあげながら、髪を振り乱し、汗を飛ばしながらのたうちまわる。 「ひっひっひっ……」と、不気味な笑い声をたてる男の手は変圧器のダイヤルを握っており、それをいっぱいに回したところだった。10本もの電気針を打ち込まれて鮮血をしたたらせる局部が、汗で光る下半身がぶるぶる、がくがくけいれんを繰り返していた。 「うぎゃあああーっ!!」 泣き叫び、のたうちまわる美香を男たちが見学しているところへ噂の主が現われた。 「ご満足いただけたでしょうか?」とマリア。 「子どもはやはりもの足りないわ」 「え?」 「でも、姉のほうは良かったわよ。ひさしぶりに興奮したわ」 そう言われてマリアの顔が安堵する。 12歳と14歳の姉妹を残酷に責めてきた夫人に、この場の美香への処置はどう見えるのか。イザベラは興味津々だった。 「だいぶ弱っているようね」 夫人が美香の表情を子細に観察すると、「こんどはわたしが愉しませてもらうわよ」と、勝手にあとを引き継いでしまった。 「あなた」 夫人に催促され廊下にでたロドリゲスが、ブリーフケースを提げてもどった。そして中を開ける。 「なにがはじまるのかな」 連中の目がケースの中身に向く。 電線が結ばれ、奇妙に折れ曲がった金属製の蛇腹管や、見覚えの医具の数々、そして電気ショック装置がきれいに収納されていた。 「さてと、この準備なんですがね……」 ロドリゲス夫人が美香の顔を見下ろすそばに椅子を置いて座り、夫から太さ約1センチ、長さ50センチほどの金属製蛇腹管を受け取る。 「この子の顎を押さえて、口を開かせて」 夫人がマリアに言いつける。 「あ、あぁっ……」 マリアの手で美香の口がこじ開けられた。 「伯父が武器商人でね、武器だけでなくこんなものまでつくってんのよ」 そんなことを言いながら棒器具の先を微妙に曲げ、ローションをたっぷりと塗りこめた器具を美香の口に押し込んでいく。 「ぐふぅっ、ぐ、うううーっ」 美香がよだれを流しながら暴れた。その顔をマリアがつかみ、男たちは美香の身体を押さえつけた。 「しっかり押さえてね。手元が狂ってうまく挿入できず、嘔吐で器官がふさがれ、窒息死でもされたら元も子もなくなるから」 男たちを指示しながら、自分は自分で慎重に棒器具を喉の奥に押し込んでいった。 「ぐっ、うぐうっ」 「だめよ、もがいては。じっとしてなさい!」 そう言いながら、どんどん押し込み、50センチの半分以上が美香の体内に収まったところで胃への蛇腹管の挿入は終えられた。 (なにをするつもりなんだろう) この時点でもまだ、イザベラは夫人の目論見がわからなかった。 おなじ南米のチリが軍政の時代、秘密警察の拷問で胃と腸に電気を通すという記録が残っている。だが、イザベラとマリアの国ではそんな方法はとらなかったのだろう。 「げぼっ」と、美香の口から吐瀉物が吐き出された。 「いけないっ」と、夫人は美香の鼻に口を当て、人工呼吸を試みたりしたが、嘔吐は一度だけですみ、大事にはいたらなかった。だが、美香の裸の肩からシーツにかけては汚物にまみれた。 「これがあるんでね、この装置は商品化されることはなかったんだよ」 ロドリゲスが苦笑して説明した。 夫人が2本目の蛇腹管をケースから取り出す。奇妙に曲がっていたのは収納のためで、まっすぐにすると1メートルほどになり、胃に挿入したのよりは伸縮性がより柔軟なようだ。 「胃と腸を結んで通電するといったら、あとはどこへ埋め込むか、もうおわかりよね」 夫人が男たちに笑いかける。男たちが美香の腰を持ち上げてアヌスを浮かす。美香が恐怖の悲鳴をあげて騒ぎ出す。それらの状況がほぼ同時に進行した。 「うぐううっ、ひいーっ!」 管を呑み込まされてぶるぶる震える目隠しされた顔。その恐怖の表情を見下し、あざ笑い、夫人は美香のアヌスにずぶりと蛇腹管を突き刺した。そして、嬉々とした表情でぐいぐいと金属管を押し込んでいく。 「フィストで慣れてるから、入りやすいこと入りやすいこと」 ぶぃいーっという音と同時に、美香のアヌスから黄色い飛沫が噴出してロドリゲス夫人の手にかかったが、そんなことはおかまいなしに作業をつづけた。 1メートルもある棒器具が30センチほど体内に収まったころ、「ううーっ」という激しい呻き声がして美香の上半身が弓なりにそりかえった。見ると、へそと陰毛の中間くらいの腹がぷくっと盛り上がっている。管の先が腸壁にあたって行く手を阻まれたのだ。 美香を押さえる男たちが、その現象に注視した。 「並みの成人女性なら、無理をしなくても50センチは入るはずだから」 そう説明しながらも夫人の手の動きがおそろしく慎重になる。微妙に角度を変えるようにして、また金属製の棒器具を押し込む。 やがて腹のふくらみがゆっくりもとにもどり、その後は慎重な挿入により、もうこれ以上は入ることがないところまでになった。 肺まで達する蛇腹管、腸に達する蛇腹管、その残り部分が美香の口から、美香のアヌスから伸び、その先から出ている電線の尾部にあたるジャックが電気ショック装置に接続された。そして、いよいよという場面になる。 「さあ、覚悟するのね」 「あぐ、あがが、ああ、あがぁーがが……」 顔をぶるぶる震わせなにか言おうとするが、金属管でふさがれてことばにならない。 夫人の手がスイッチをひねる。 「ひっ」 大の字に拘束された裸身が一瞬静止したようになる。まだ、電気は流れてはいないようだ。 夫人の手が、ダイヤルをゆっくりと回していく。と、「うぐぐっ」というくぐもった呻きとともに、汗で光る裸身が夫人の手の動きに合わせ、背中を支点に弓なりにそっていく。 「うぐぐうーっ……」 激しい呻き。それにともない、ぶるぶるっ、ぶるぶるっと、腹部から胸にかけてけいれんが走る。 夫人の手が、やや大きく動いた。瞬間、 「あ、あぎゃあああーっ!!」 絶叫が響きわたり、汗まみれの上半身ががくがくがくっと激しくけいれんした。まっすぐ伸ばされた脚もぴいーんと突っ張り、腿、ふくらはぎ、足の甲にくっきり、はっきりとした筋が浮き立った。 夫人の手がめまぐるしく、電圧を上げたり下げたりを繰り返す。それも嬉々とした表情で――。 イザベラ・ムニョスの証言。 「わたしはこれまで、マリア主任くらい恐ろしい人はいないと思ってましたが、グロリア・ロドリゲスはその数倍は怖い女でしょう。彼女は夫といるときより武器商人の伯父といる時間のほうが多く、その伯父の赴任先で残虐な所業を繰り返し、それを自慢たらたら吹聴するくらいですから。 グロリアはこうも言いました。 『インディオやジプシー、またホームレスやストリートチルドレンなど、わたしの行く国ではよほどのことでもないかぎり、なにをしたって面倒なことにはならないわ。そこでは人権なんてことば辞書にないんだから』 そして、晴れ晴れとした顔で高笑いするのです。 あのグロリア・ロドリゲスの天性の悪魔性にくらべれば、マリア・ガッゼンディなど功名心に駆られ、出世と金だけが目当ての小役人に過ぎませんよ」 「げっ、ぎえーっ!」 「ふうっ、はあ、はあ、はあ……」 「むうっ、ああーっ!」 「う、う、ウーン……」 電圧の上げ下げによって美香の反応も変化する。悲鳴の変化、さらに汗で光る全身の、のけぞったり、妖しくくねったり、筋肉の筋が浮き立ったり、もとにもどったりという変化――。 胃と腸に電気を通されるとは、どんな苦しみをともなうものだろうか。 斎藤美香の証言。 「衝撃をともなった苦痛というのでしょうか。その衝撃も、身体の奥底から外に向かって破壊されるような衝撃です。ばりばりっという感じと、なかで激しい火花がはじけているような感じもしますし……。 ですが、死への恐怖というのが一番かも知れません。でも、そのときには、死への恐怖よりは生きていることの地獄。早くこの苦しみから解放されたいという思いと、屈服してとりかえしのつかない結果を招いてはという恐れから、心底死を望んでいました。 ところが、そのほんの数十分のちに痛切にいだいた感情、誰かのために生きたい、絶対に死んではならないという感情が沸き出すことになろうとは……」 |