
| 1970年代はじめ、アメリカの後押しでときの政権を倒し、アメリカのかいらいと化した南米の軍事独裁国家で、反体制派勢力に対する熾烈な弾圧がつづく1980年代のある年、医療ボランティアとしてスラムの診療所で働く斎藤美香(仮名・当時18歳)という女性が、秘密警察に拉致され拷問される事件が起きた。好色・残忍な拷問センター女性主任と、アメリカ軍事顧問の大佐。彼らによる陰湿無惨な性拷問がくりかえされた。 拷問4日目、とつぜん抜き打ち査察を名目にした政府職員の“慰安訪問”を受ける。美香に対する拷問・凌辱は、酷薄非情な夫妻の登場により、さらに常軌をいっしたものになった。そのうち夫人の毒牙は子どもにも向けられ、12歳と14歳の姉妹が生け贄にさしだされた。哀れな少女姉妹の運命は? そして衰弱いちじるしい美香は? 拷問5日目は前日にひきつづき夜を徹しておこなわれ、胃と腸に電気を通すという信じがたい拷問のなか、運命の時は刻一刻と近づいている。 いよいよ最終回の今回は、現存する証言や記録をもとに、筆者の想像力を総動員して可能な限りの微細な再現を試みたものである。(2004.5.5 マルガリテ記す) |

| 電極を結んだ蛇腹管をアヌスと喉に深々と突き入れられた美香への拘束は、最初のときよりすこし形を変えられていた。 下半身のベルトは足首にくわえて太腿にも巻かれていた。代わりに腰のベルトははずされていた。 「このほうが、のけぞりやすくなるでしょ」 陸軍武官フェルナンデ・ロドリゲスの妻グロリアが説明した。美香の股間はめいっぱい広げられ、ヴァギナは丸見えとなって、グロリアのいたぶりを容易にしている。 「無傷のところがないくらい」 そう言って、赤黒く腫れ上がり、ところどころ針跡を見せるラビアをひねりあげた。 「むぐっ」 「もうセックスの悦びもないわ」 ふっふっと笑い、手術用の手袋をした手指が陰毛を掻きのけ、ラビアをつまんだり、剥き上げたりする。 「それとも、まだ感じるかしら」 またいたずらっぽく笑うと、もう片方の手指でクリトリスや尿道孔をつつき回す。ぐりぐり、ねちねち、しつような愛撫で陰部はさまざまに形を変えた。 「この子、まだ反応できるみたい」 それを裏づけるように夫人の指の動きは滑らかになり、水音さえたてはじめた。3分、5分とたつうち、赤黒く腫れあがったラビアのあちこちがしっとりと潤み、尿道孔や膣孔ににじみでるものは、いまにもしたたり落ちそうだ。 「う、うう……」 蛇腹管をくわえて上向いた美香の口から、押し殺したような嗚咽が洩れた。 荒々しくヴァギナをいたぶられながら、美香には凌辱よりは蛇腹管を体内に貫通された異物感のほうが苦痛だった。喉と肛門をふさがれたうえ、ふたたびいつ襲うとも知れぬ電気ショックにおびえきっていた。 内視鏡検査で胃カメラを飲まされたことのある者なら誰でも想像できるだろう。太い管がむりやり喉に押し込まれ、食道をとおって胃まで達するという状態がどういうことかを。 注射やスプレー式麻酔でほぼ完全に意識を取りのぞく検査ならともかく、ゼリー状のもので喉の感覚をしびれさせただけでカメラを飲まされる場合、麻酔がじゅうぶん効かなかったり、担当医の不慣れで苦しむことも多い。 ところがこの場合は医療ならぬ拷問。麻酔がないのはもちろん、すこしくらい喉が傷つこうが、腸が破れようがかまわないという乱暴さだから、たまったものではない。 「もう一度いくわよ」 ハッと身構える間もなくカチッという音がして、その瞬間、身体の奥ではなにかがはじけ、腹や胸を衝撃が走りまわった。 絶叫を発し、反射的に全身が激しく痙攣した。そして、蛇腹管を飲みくだされた口から顎にかけても激しくひくついた。 嫌っ、やめてーっと叫んでいるつもりだが、それはことばにならず、奇妙な悲鳴となって口からほとばしるばかりだった。その間、叫びを発する口は絶えずよだれを流し、直腸からも、ひっきりなしになにかが垂れ流されているような感じがしていた。 「ひぎっ、うがあああーっ!」 絶叫をあげてのけぞる若い裸身。背中がおおきく反りかえり、極端にすぼまった腹部と、反対に盛り上がり、あばら骨をくっきりと浮き立たせた胸、その腹にも胸にもぶるぶるぶるっと電気痙攣が、絶え間なくつづいていた。 全身の筋を浮き立たせ、関節をぎしぎしいわせながらのたうちまわる美香の悶えようをながめながら、グロリアはゆっくりと立ち上がり、マリアがさしだすおしぼりを受け取って、手術用手袋の右手についたぬめりをぬぐった。 「こんなにしぶとい娘ははじめてです」 マリアの額には、うっすら汗が光っていた。 胃と腸に電流を通す拷問などはじめてで、グロリアの鬼畜ぶりに舌を巻く反面、これで美香が自白したらマリアとしては形無し、出世につながる手がらにはならぬと焦っていたものの、しかし、こうまでしぶといとは――。 美香の耳元に顔をちかづけ、ヒステリックに尋問をくりかえすマリア。 「さあ、白状するのよ、自分はテログループの一員だと。そしてマヌエル・グスマンはじめ、一味の潜伏先をあらいざらい言いなさいっ!」 しつような尋問に対し、美香から返るのは苦悶の叫びだけだった。 そのときの美香を襲っていたのは、腹部から胸にかけての内臓が熱と衝撃波にたたかれ、よじれまくっている感じだった。走り抜け、はじけ飛ぶ強烈な衝撃痛は、身体全体が回路になっている感覚だった。 かつて味わったことのない衝撃痛に、あらたな強さがくわわる。身体の外に向かってはじけ抜ける衝撃に吸いつけられ、大の字に拘束された手足が、奇妙にひきつれていく。 「あっ、あ、あ、あわわわっ……!」 電流による衝撃が、手にも指にもつたわってくる。しっかりと握りしめているはずの手が、ぶるぶると震えながら指を広げていき、広がりながらも勝手な方向にひきつれていく。 ぶるぶる、がくがく、ひしゃげた指が激しいけいれんをくりかえすころ、衝撃を受ける手足の関節がぎしぎしときしみだす。さらなる痛さがくわわる。その痛さは猛烈な圧迫となって関節にかかり、いまにも関節が砕けるのではないかという不安にもさいなまれる。 「くううっ、ぐえええーっ!」 ひきつれ悶える全裸の女体を見物するサディストたち。 拷問センター主任マリア・ガッゼンディと彼女の忠実な部下イザベラ・ムニョス。そのそばにかがんで、変圧器をコントロールするグロリア。その女たちの背後には、ロドリゲス以外は何者とも知れぬ政府職員が固唾をのんで究極の“拷問ショー”に見入っている。 「ううっ、うぐううーっ、げふっ、げふっ!」 蛇腹管を突き立てた、よだれまみれの顎が呻き、あえぎ、ときどき激しく咳込みもする。目隠しの上下の顔に、苦しそうな皺がいっぱい刻まれ、かわいた涙の跡にあらたな涙をこぼしている。 「こんどはもっと強烈よ。ふふふ……でも、そのざまなら舌を噛むこともないから便利ね」などといいつつ、夫人の手がいったん発電機のスイッチを切る。 “串刺し電流”がいったんうち切られ、ひきつり、のけぞっていた全身がガックリとベッドに沈んだ。ぐったりした美香の蛇腹管をくわえた口から、はあ、はあ、はあと、激しい喘ぎが漏れはじめたが、夫人の手が電圧をさらに上げたあと、ぐいっとスイッチをいれた。 「ぎゃあああっ!! うぎゃあああーー……」 絶叫と共に、また美香の全身がバネではじかれたように大きく跳ね上がった。 身体のなかでなにかが爆発するようなすさまじいショックだった。そして爆発の直後に襲う強烈なパルス痛の嵐は、脊髄といわず関節といわずたたきつけ、脳髄までも直撃する。 「ぎゃあああーーっ!! ぎゃっ、ぎゃあああーーっ!!………」 美香は声を限りに叫んだ。 暴風のように電流が身体じゅうを走りまわり、全身は痙攣したり、ひきつれたり、突っ張ったりと、さまざまな反応を繰り返している。電流にたたかれ、身体がぎしぎしとあちこちに向かってきしみまくっている。 壊れつつある。いや、すでに方々壊れているにちがいない。 (死ぬっ! 死ぬーっ!!) 泣き叫び、のたうちまわりながら、最期のときが刻々近づいているのを強く意識した。 ただ、頭ではそう思いながら、肉体は昨日、一昨日ほど憔悴しきってないのが不思議だった。何時間か前、点滴注射に替えて、わずかでも食事らしい食事をとらされたからかも知れない。 そうして何十分か、いや、ほんの十数分かも知れないが、恐ろしく長く思える耐えがたい時間が流れていった。 嵐が止んだ。 ふくよかな重みと、あの香水の匂いを感じた。グロリアが胸に耳をあてているのだ。 「ラッセル音がよくないわ。そろそろこのお遊びも限界ね」 たしかに美香はそのとき、心臓と胸に異常な高鳴りと動悸を感じていた。 顎をつかまれ、胃まで到達していた蛇腹管がゆっくりと抜かれたのはその直後だった。口にたまっていた唾液やよだれが一気に噴きこぼれ、いっときむせたが、あとはすごく楽になった。ただ、喉にかなりの痛みが残っていたが、それも耐えられないほどではない。 腰を持ち上げられ、尻を浮かされ、腸の奥まで貫通していた蛇腹管がこれもゆっくり、楽しむように引き出されていった。お腹の奥から外に向かって、異物がずるずると通っていく違和感。だが、それがすべて抜かれたとき、言い知れぬ解放感につつまれた。 「はあ、はあ、はあ……」 胸の高鳴りも徐々に退いていくようだった。 蛇腹管の突端が美香のアヌスからでる瞬間、びゅっと下痢便がシーツに飛び散った。そのあたりのシーツは、それでなくとも広い範囲に黄土色にべっとり染まっており、いままたそのうえに黄色い飛沫が層をなしたことになる。 「うーむ」と、男たちの口からため息が漏れた。彼らにとっては、電気責めのあいだつづいた失禁すら興奮要素のひとつだった。 グロリア・ロドリゲスが、美香の体内から抜き出した蛇腹管を子細に眺める。胃まで貫通していた細いほうはよだれと胃液でべっとりしており、腸に達した太い蛇腹管も水溶便のまじった体液でぐしゃぐしゃに濡れそぼっていた。 「血はついてないようだから、胃も腸も傷つけることはなかったようね」 「さすが、グロリア様」「医者も顔負け」などと男たちは口々に褒めそやしたが、“遊び”からはずされた拷問センター所長のマリアは不満顔をかくせない。それを見抜いて、 「すこし飽きたわね。あなた代わって」 夫人はマリアにバトンをわたした。 「いいわね、殿方もそれで」と訊いたとき、背後からブーイングのような不満の声が漏れた。 「わかったわ。でも“とっておきの余興”の前に、所長としてはこの娘の口からなんとしても情報をとらなければならない、そうよね」 「わたしがなんとしてでも吐かせます」 「その目算はあるの?」 「女ならではの弱点を責めます」 「おおいに期待するわよ」 そうして最期の拷問と“とっておきの余興”が、この部屋のひとつ手前にある手術室でおこなわれることになった。 |

| ひんやりとした空気に包まれ、美香はそのとき、地下室に移されたのではと直感した。運ばれるとき、階段を降りたような気がした。 寝台に乗せられ、手と足をひっぱられた。手は頭のうえで結ばれ、足は左右いっぱい開かれ、折り曲げた膝から下が開脚台に固定された。 酒宴がはじめられたようだ。シャンパンを開ける音が響き、グラスがぶつかり合い、液体が注がれる音もする。そして、美香の耳をそばだてる会話がささやかれた。 「12歳と14歳の娘は、その後どうなりました」 「帰る前にわたしがもう一度料理するということで、兵士に番をさせてるわ」 慰安室からもどったばかりのときには、一言の感想しかなかったロドリゲス夫人グロリアが、シャンパンのさかなにここではそのときのようすを、微に入り細に入って自慢たらたら語り聞かせた。 その間、美香はへどがでる思いだった。 また足音が移動し、1か所で止まり、無数の視線を股間に感じているとき、あの女の匂いが近づき、無造作に目隠しをはぎ取られた。 「いやっ」とそむける顔を、「もういいのよ」と無理に向けさせられ、美香は瞬時に部屋のようすを感じとった。 タイル張りの壁と、水を張った床、まさに手術室そのものといった雰囲気だった。どこからかちょろちょろ音がするのは、たえず水を流しているからだ。美香がおどろいたのは壁の一部とすぐ目の前くらいに、あられもない姿で拘束されている自分を映した鏡があったことだ。 まわりをとりかこむ顔を見て2度おどろいた。男という男が、フェルナンデ・ロドリゲスをのぞいて全員黒い頭巾をかぶっていた。 そして、はじめて見るグロリアは30〜40代の美人系で、神経症な感じのマリアや淫蕩そうなイザベラとは大ちがいだ。知的で清楚な感じもただようが、残虐な本性を知ったいまとなっては醜い化け物以外のなにものでもない。 さらに拷問と凌辱のあいま、ずっと気にかけていたことが頭をもたげる。それは「閣下」と呼ばれていた存在が、いつのまにか消えていたことだ。それはアメリカ人軍事顧問ウィルソン大佐がいなくなったときと時間をおなじくしており、美香は政権中枢での異変をうたがった。 「さあ、はじめてちょうだい」と、ワイングラスを手に夫にしなだれつつ、グロリアがマリアをうながした。 キャスター付き処置台には、白布を敷いたうえに大型内視鏡やメス、ハサミ、鉗子、止血用のガーゼや脱脂綿、それに薬液のはいった瓶などが、ところせましとならべられている。 マリアとイザベラが、かがんで股間をのぞき込んだ。イザベラが処置台から内視鏡を取る。その手が美香のヴァギナに近づく。その直後、ひんやりとした異物感と、性器を開かれる苦痛。イザベラの手が、ぐいぐい動いて、苦痛はどんどん増していく。冷たい医具の感触がどんどんなかに入ってくる。 悪夢のはじまりだった。 イザベラが内視鏡を支えながら、別の手にペンライトを持って秘所を照らした。大型の医具が目一杯拡張され、ぬらぬらと輝く淡紅色の膣壁が、これ以上ないほど淫猥にさらされ、膣道の行きつく先に女のもっともたいせつな器官(パーツ)が息づいていた。 「みなさん、よく見える位置に」 マリアにうながされ、男たちはわれ先にとポジションを決めた。大股開きにされた股間の前の特等席はすぐふさがり、あとはわきにまわるか、腰の横で美香の太腿をしっかり押さえて離さない役をにないつつ、前かがみにヴァギナ内をのぞきこむしかない。 マリアが“濃塩酸”のラベル表示の薬瓶の口を開け、注射器の先で液を吸い上げた。そして処置棚から耳かきを大きくしたような医具を取ると、それをペンライトに照らされた膣壁の奥に挿入し、ぐいっと子宮にねじ込んだ。 「うっ、ううーっ」 美香の上半身が大きくくねったが、2人の男に太腿を押さえつけられた下半身はびくとも動かなかった。その動かないなかで、耳かきのばけものは子宮のなかで角度を変え、子宮孔に直径5ミリほどの暗いすき間をつくった。 そこに注射器の針がゆっくりと近づけられ、針の先が穴からわずかばかり奥へと挿し入れられた。 「さあ、ミカ、覚悟するのね」 マリアがぬらぬらと輝く粘膜質の肉の洞に目を凝らしながら、注射器の操作をする。ペンライトの明かりのなかで、注射器の先にしずくがふくらみ、それが大きくなってぽとりと落ちた。 「あああうーっ!」 悲痛な叫びとともに、開脚台がぎしぎしときしんだ。 がっしりと押さえられた腰と腿の部分はびくともしないかわりに、上半身はもうこれ以上はないほど大きくそりかえり、ぶるぶるふるえる乳房の下に、あばらがぐわっと浮き立った。 「あつぅーっ、ううーっ!」 苦痛にゆがんだ顔が右に左にのけぞり、左右に開かれた足先が突っ張り、つま先立ち、ぴくぴく震えている。 あたりにすえた異臭がたちこめた。秘所をのぞきこんでいた者らは思わず鼻に手をかけた。 だが、秘肉をただれさす臭いを間近に受けながらも、嗜虐にとりつかれたマリアはいっこうかまわず、注射器を操作しながら、ぽたっ、ぽたっと酸責めをつづけていた。 「あうーうっ、ひっ、いたああーっ!!」 激痛にのけぞる美香の頭をつかんで、むりに前に向けさせようとしているのは、グロリアの夫ロドリゲスだった。 「苦しむ顔をみんなに見せるんだ」 「ふふふ。これでおまえも女じゃなくなるのね」 夫人は夫人でそう言い、乳房をぎゅっとひねりあげた。 その間も、ぽた、ぽたぽた……子宮を焼く酸液はたっぷりと時間をかけてそそがれ、くまなくじりじりと秘肉を侵蝕していく。 「いやああっー!」 叫びながら、のけぞることもできず、こぶしを握り締め、爪先をぎゅっとちぢめた。 「きゃああっ!」 耳かきのばけものがさらに奥に突っ込まれ、子宮のなかを乱暴にかき回す。そして、注射器から噴き出される酸液は勢いを増し、子宮のなかを縦横無尽に侵蝕される激痛に、美香は全身で泣き叫んだ。 「ぎゃあっ! ひいーっ!!」 最後にマリアは、残る注射液全部を子宮に注ぎ込んでしまった。猛烈な異臭とともにうっすらと白い煙が立ちこめ、手術室はかつてないほど陰惨な雰囲気にとりまかれた。 男たちは全員鼻をおさえ、こんどばかりはイザベラもマリアも顔をそむけたほどだ。 耳をつんざく絶叫が絶えたとき、美香はがっくりと首をたれ、死んだようになった。その髪をひっつかんで起こしたのはグロリアだった。 「まだ、死んでは困るのよ」 マリアが耳かきのばけものと注射器を、ゆっくりと膣から抜き出し、白布の上にもどした。耳かきようの器具の先にはべっとりと血が付着していた。 ぴしっ、ぱしっと乾いた音が響き、グロリアが美香の頬を平手で張りあげた。正気にもどすためだが、美香はぐったりしたまま容易に息を吹き返そうとはしなかった。 「わたしの楽しみはどうしてくれるのよ」 グロリアも不満だが、男たちも残念そうだ。 マリアは、あたらしい注射器を手に持ち、美香の腕に針を打ち込み、ゆっくりとカンフル剤を注入した。 それから1分、2分、3分ほどたち、失神した美香の口から「ふうー」とため息が漏れ、やがてうっすらと目をあけた。 「ふん、やっとお目覚めだね」 「うう……うっ……あああ……」 気がつくとすぐ、美香は強い呻き声を発した。意識といっしょに傷害の痛みまでもどったのだ。 「では、奥様、どうぞ」 また、グロリアの出番だ。 イザベラが、コードを壁のコンセントに差す。その先にある道具を見ているのか、男たちが満足そうに笑っている。1分、2分と時間がたち、ぷーんと鼻を刺す異臭がただよった。 (なんだろう……) 反射的に思い浮かべたのは、器械マニアの兄のこと。壊れて鳴らなかったり、映らなくなったラジオやテレビをあつめては、修理して使えるようにしたものだが、修繕過程に嗅いだニオイがこれとおなじだった。 (あれはたしか、配線がびっしり張り巡らされた基板という部分を広げ、コードをはずしたりつないだりしたときに……ええっ!?) 思い当たり、ぎょっとなって顔をあげると、グロリアがマリアからなにかを受け取って近づくところだった。その手には灼熱した半田ゴテが握られている。 「鬼っ、人でなしっ!」 がたがた肩を震わせながらも、気丈に言い放つが、そんなあざけりなど意に介さず、グロリアは勝ち誇った顔で口元をゆがめる。 「ふふふふ……たっぷりと時間をかけて焼きつぶしてあげるわ」 そう言って美香の前にかがむと、そのあとイザベラがすぐそばに、おなじようにかがみこむ。そしてヴァギナに挿入したままの内視鏡を持ちなおし、ペンライトで膣道を照らして、グロリアをサポートする。 左右に開かれた脚の向こうと両脇に立つ男たちの目が、ぎらぎら輝いて一点を凝視する。 灼熱した半田ゴテがゆっくりと入ってくる。 「ああ、あ、熱い、熱いーっ……」 目を見開き、恐怖におびえきる美香。粘膜質の膣壁につたわる耐えがたい熱気、それがだんだん奥へと入ってくる。 「いやっ、いやいやっ、いやあーっ!」 グロリアの手がぐぐっと大きく動いたと思うや、 「ぎゃっ、ぎゃああああーっ!!」 身体の奥を襲う灼熱地獄の激痛に泣き叫び、のたうちまわった。 じゅ、じゅじゅうーう、ううぅぅ…………… 耳をつんざく絶叫に、秘肉を焼けただれさせるにぶい音がダブる。 のけぞり、のたうちまわる上半身と、しっかりと押さえつけられた下半身、そのあいだからうっすらと黒い煙がたちのぼった。 「ぎえええーーっ!! うぎゃあああーーっ!!」 グロリアはにたにた笑いを浮かべたまま、半田ゴテの先をなお離そうとはしなかった。ぶすぶすと肉が焦げ、鼻を刺す異臭がより濃厚にあたりを覆いつくす。 「ぎゃあああーっ!! やめてええーっ!!」 もうもうとたちのぼる燻煙と、肉を焼く異臭、血を吐くような絶叫――子宮を焼かれ、のたうちまわる美香の全身はたちまち汗にまみれ、凄惨なかがやきをはなちはじめた。 |
| マリアが、その日3本目の注射器をあつかい終わってすこしたった頃、腰から下がしびれたようになり、身体の奥から沸きあがっていた耐えがたい痛みも徐々に薄らいでいく。 そのときには周囲のようすが一変していた。素顔の女も、頭巾の男たちも、全員手術着に身をつつみ、手には手術用のゴム手袋をして医者のかっこうになっていた。 グロリアが腹部をさすって言った。 「若いから、内臓もきれいだわね」 美香に、運命のときが訪れた。生きたまま解剖されることになったのだ。 マリアが前にきて、寝ている位置から鏡がよく見えるよう角度を調整した。自分が切り刻まれるプロセスを、鏡をとおして見せつけようというのだ。これほど残虐な趣向があろうか。 (もう、ダメかも……) 絶望に胸を締めつけられ、頭が真っ白になった。こんなところで、こんな方法で、こんな奴らの手にかかって死ぬことになるとは。 グロリアがメスの先を明かりにかがす。鋭利な刃先が一瞬きらりと光った。 「子宮もぼろぼろだし、卵巣ももう必要ないわね。ばっさり切り取って標本にしてあげるわ」 鏡から目をそむけようとするのを、ロドリゲスがつかんで上を向かせた。 そこに、苦しそうに息づく自分の白い腹が映っている。それが間もなく裂かれる。身体が無性にふるえ、心臓が早鐘を打ち、恐怖と絶望に打ちのめされそうになるのを必死で耐えた。 たっぷりめにした脱脂綿にアルコールを浸し、陰毛からへそにかけて丹念に消毒した。アルコール液をなすりつけながら、手術部位をしっかりと観察した。 「血管を避けて切るのは、なかなかむずかしいのよ」 「こんなことまでやられるとは」 「もう10人近く切り開いているわ」 すぐちかくで交わされる会話が、現実のこととは思えなかった。これは夢だ。悪い夢を見ているにちがいない、必死でそう思うことにした。 グロリアの持つメスの先が、ヘソのすぐ下に当てられた。そして、一気に引き下ろされたとき、「ざくっ」とハサミで切り裂かれるような感触がはっきりと腹につたわった。 (うそっ……これが切られるってことなの?) 局部麻酔のため痛みはないが、切り裂かれていることがはっきり感じられるのだ。そして鏡に映った自分の腹にはくっきりと赤い筋が走り、そこからしゅうっと、鮮血が勢いよく噴きだしはじめた。 「止血っ」 「はいっ」 マリアとイザベラが傷口をガーゼで押さえる。白いガーゼはたちまち血を含んで赤く膨張し、あふれかえりそうになるのを、あらたなガーゼと取り替える。 ざくっ、ざくっとメスが走り、切られた皮膚から脂肪質の白い部分がはみだし、つぎには赤身の肉の部分まで切り下げられ、ばっくり口を開けた切り口からは、あらたな血が吹きだす。 (わたしのお腹が……お腹が……) 頭がくらくらする。 へそ下から陰毛にかけてざっくりと割られ、その部分の皮膚が左右にめくられ、ぬめぬめ、ぶよぶよした臓器部分が露出されると、こんどはそこに鉗子がわたされ、はさんでいく。 「これ持って……あなたはこれ」 グロリアは次々かたわらの男たちを助手にして、傷口を押さえた鉗子を押さえさせていく。その間にも出血はおとろえることなく、マリアとイザベラはガーゼの補充で止血に追われる。 銀色の膿盆は、たちまち血を吸ったガーゼと脱脂綿で覆われていく。 「これだわ」 グロリアがぶよぶよ重なり合う腸のなかから、それとは異質な臓器をつかみとり、引っぱり上げた。ぐにゃっとしたなかから、大小3つの球状になった部分をひねり出し、 「これが子宮、これとこれが卵巣で、それぞれ……」 グロリアの説明に耳をかたむけ、男たちが身を乗り出してしげしげとながめいる。 「まず、卵巣から切除するわよ」 ハサミの先が球状の臓器と臓器のあいだに入れられ、ばちっと切断されると、切り口からは血が「しゅううっ」と噴きだしたが、切られるときのざくっとした感触は、いままでのどれよりも強烈な感じがした。 「さあ、見てちょうだい。そしてそのあとは、みんなに回してね」 そう言って2つ目の卵巣も無造作に切り落として手渡す。 血まみれのなか、うねうねと重なり合うハラワタが、どくんどくんと脈打ちながら息づいていた。そして新たな傷口からは鮮血がいきおいよく噴きだしているが、マリアもイザベラも、もう血止めなどはしていない。 美香の体内から取り出されたばかりの生身のパーツ(臓器)が、人から人へと手渡しされている。茫然とそれを見ながら、美香の意識はだんだん薄れていくのだった。 |

| 運命の転機は、まず、ティナとレティシアのいる慰安室で起こった。 そのとき12歳のティナは、14歳の姉レティシアの前で私服の秘密警察員に犯されそうになっていた。必死につかみかかるレティシアを、制服の兵士が押さえつけた。 「妹をやるなら、わたしをやって!」 「あいにく、ロリコン好みでな。グロリアさんも、妹のほうは好きにしていいと言ってくれた」 「ぜったい許さないわっ!」 「うるさいから外へつまみだせっ」 必死であらがうレティシアを、兵士が廊下に連れ出した。引きたてながら、「かわいそうに、あいつのあとは、またあの鬼畜女のなぐさみ者か」と、しみじみと同情顔になる。 「なんですって?」 「おまえがまた、妹を人質にむごたらしい責めにかけられるってわけさ。姉思いの妹も、それで心はずたずたになっちまうんだから、実質的には二人そろえて串刺しにしてしまうようなもんだ。おそろしい女だよ、グロリア・ロドリゲスという女は――」 そのことばを聞いたレティシアが、怒りに燃えて行動にでた。 兵士が「あっ」と身構えたときはおそかった。腰のホルスターの拳銃がレティシアに奪われ、その銃口が自分に向けられているところだった。 「なにをする、バカなまねはよせっ」 「動くなっ!」 引き金に指をかけ、ふるえる手で狙いを定めた。 「ティナーっ!」 レティシアが妹に向かって呼びかけた。 「助けてやれない姉さんを許してっ!」 そう叫んだとき、兵士に向けた銃口の先を自分の口に突っ込み、引き金を引いた。 「ざくっ」と切り裂かれる感触を腹に受けたあとで見るグロリアの手には、いま切り取ったばかりの血まみれの子宮がかなりの量感をもって乗せられ、みんなのまえに差し出された。 「どうです? あとで試食しますかな」 夫のロドリゲスが、あたりを見まわし提案しているとき、にぶい音を聞いた。 「なんだ? いまのは」 「銃声のようね」 みんないっせいにそのほうを見た。 「あれは、たしか……」 グロリアが急にそわそわしだした。そのとき、黒人女性職員のルイーザが、息せき切って駆け込んできた。 「なにがあったの?」とイザベラ。 「たいへんです。政変です。陸軍の改革派が反乱を起こし、臨時革命政府の側につきました」 「臨時革命政府? いつの間にそんなものが……」 マリアが血相変えたとき、ゆうべから不在のアメリカ軍事顧問ウィルソン大佐が、もう一人のアメリカ人といっしょに入ってきた。 「アメリカ政府を代表する者だが、この場の異様な状況はなんとしたことか!?」と詰問したあと、美香のもとに駆け寄る。 「アナタガ、サイトウ・ミカ、サンデスカ?」 かたことの日本語で訊いた。 美香は薄れゆく意識のなかで、弱々しくうなずいた。すると男は、大統領補佐官名のサイン入り命令書を見せ、「アナタヲ、アメリカジョウホウキョクガ、ホゴシマス。モウ、ジユウデス。ニホンニモ、カエレマスヨ」 その間、ウイルソンが美香を拘束していたベルトをはずし、イザベラやマリアをせきたてて、止血や応急手当を指揮した。 自由になった右手を必死にのばし、救出にきた男に向かって、とぎれとぎれに、やっとの思いで語りかけた。男はうなずき、「ワカリマシタ、シマイノコトハ、オヤクソクシマス」と答え、安心した顔になった美香は、それから間もなく、がっくりと首をたれた。 それから1週間後――。 軍政から民政への政権委譲に沸く市民で首都が騒然としているころ、ウイルソン大佐を乗せた米軍専用車は、首都から5キロほど郊外にあるロドリゲス夫人の別荘へと向かっていた。同乗者の一人が斎藤美香だった。 おなじころ、武装した私兵に守らせた屋敷内の一室で、混乱の拷問センターから間一髪、どさくさにまぎれて逃げてきたグロリアとロドリゲスが最後の享楽にふけっていた。 全裸にされたティナがグロリアにおさえつけられ、ロドリゲスの猛り立ったペニスに突き立てられ、顔をゆがめてのけぞっていた。最愛の姉を失い、傷心癒されぬ12歳の少女は、もはや死んだようになって悪鬼の所業に身をゆだねるだけだった。 「ふふふうー、いい締まり具合だ」 「あら、わたしとじゃ萌えないくせに」 足を広げさせられたティナを羽交い締めにして自由を奪い、自分は12歳にしては豊かな乳房をわしづかみにし、力を込めてもみしだくグロリア。その顔には淫蕩で冷酷な笑みが浮かぶ。 そのとき突然、どーんと、リビングの扉が蹴破られ、私服の男たち数人に踏み込まれた。なかのひとりが見覚えのウィルソン大佐だった。 「なんだ、どういうことだ」 「この子を保護する」 「なにっ!?」 ロドリゲスもグロリアもティナから離れ、しばらくは裸のまま茫然としていた。放心した顔の少女をウィルソンが抱きかかえ、踏み込んだ男たちの背後から車椅子に乗った美香が姿を見せ、慣れない手つきで車椅子をこぎ、ティナのほうへと近づいた。 さらにそれから数か月――。 拷問センター所長マリア・ガッゼンディは、車で走行中、覆面の武装集団に襲われ、重傷を負った。警察は反体制派グループによる、軍政下の弾圧に対する報復と見て捜査したが、真相はいまもって不明だ。 イザベラ・ムニョスは、国際人権団体に証言した直後行方不明となり、車で走行中、運転をあやまって海に転落、水死体となって発見された。海から引き上げられた遺体の後頭部には2発の銃撃痕があった。 アメリカ軍事顧問ウィルソン大佐は、その後中米に左遷されたとも、イスラエルの軍事顧問として赴任したともいわれるが、はっきりした消息はわかっていない。 日本政府はこの事件については不問にし、アメリカに対し真相究明を求める声も、事件当事国に対する抗議の声もあがることはなかった。事件の一報は美香の出身地の地方紙にちいさくでたのと、ある芸能週刊誌にでた以外、大手マスコミに報じられることはいっさいなかった。 ロドリゲス夫妻はその後どうなったのか。彼らの消息もずっとわからないままだったが、2人が少女の生き血を吸うことは2001年9月11日以降考えられないことになった。なぜなら、ニューヨークで起きたあの大事件の2749人の犠牲者名簿に、2人の名前があったからだ。 美香は一度は告発を思い立ったが、結果的にアメリカとCIAによる生命の危険を示唆する圧力に屈した。いや、美香ひとりなら差し違える覚悟もあったが、そのとき美香にはもうひとり護らねばならぬ命があった。 いまわしい事件から数年後、名もないアフリカの地に、現地人の伴侶を迎えて貧しい人々への医療活動に没頭する美香の姿があった。そして、しあわせそうに微笑む美香のそばには、彼女を姉とも母ともしたうティナという名のかわいい女子高校生がいた。 |

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