
|
画像は全てイメージによる加工です) |
ホテル備えつけの小机を拷問台に見立て、その上に竜子を仰向けに寝かせ、万歳の姿勢をとらせたうえ、ゴムベルトをバストの上や腋の下、腰や太腿に通して固定、プレイが開始された。 電流責めのあいまも、竜子は私を「ババア」扱い。なんなんだ、こいつは。私の怖さを知らないのか、単なるバカか。 パンドラBOXの躾レベルにも屈せず、お仕置きレベルにも屈しない竜子に、私は別の計画を思いついた。 |
私は電光石火のスピードで動き出した。気分が乗って来たときの私の動きは、素早い。まず、竜子の体に布テープを使い、電極を貼り直す。次にペットボトルをハサミで切り、ロートを作る。最後に、ビール缶に水を入れ、タバスコをひっつかみ、竜子の頭上に駆け寄る。 「ハァ、ハァ、ハァ」 これは竜子の息ではない。私のだ。 「ウグ、ゴク」 喉に溜まった唾液を飲み込み、竜子に言う。 「いっぱい汗をかいて喉が乾いたでしょう。お水飲ませてあげるね」 竜子の口にロートを突っ込み、ビール缶の水をそそぐ。 「うぐ、うぐ、うぐ」 ほんとうに喉が渇いていたのだろう。けっこう飲む。500ml一気に飲み干し、竜子は言った。 「もう、いらない」 「あなた、なにか勘違いしているわね。これはサービスじゃないのよ。罰なのよ。今日は5リットルは飲んでもらうわ。と言うことはあと9杯ね」 もう一度水を満杯にし、竜子のロに流し込む。 「グヘ、ゲホ」 「竜子ちゃん、もう飲めないの。じゃ、これね」 フットスイッチを踏む。竜子の体に再び拷問電流が走る。 「ウ!」 竜子の体が硬直し、頭を持ち上げる。さっきはこれでやられたんだわ。今度は気をつけよう。 「いい。ちゃんと飲まないと電気でおしおきよ。はい、お口あーん」 「ウグ、ウグ、ゲホ、ハァ、ハァ」 「あらあら、こんなにこぼして。いけない子ね」 フットスイッチを踏む。 「ウ、ウ-一ン!」 ようやく2つ目の缶をあけそうになったとき、竜子は激しく横を向いた。両目から大粒の涙がボロボロこぼれている。このとき、竜子が横を向いたのは、苦しいからではない。負けず嫌いの彼女は、涙を私に見せたくなかったからだ。 「苦しいよね。痛いよね。水をいっぱい含んだあなたの体は、とってもよく電気を通すようになっているのよ。まだ少し残っているけど、これは飲んだことにしてあげる。あと、8杯ね」 と言って、水を汲みに行こうとしたとき、竜子が言った。 「もうやめてください」 ここまできて、ようやくタメ語から敬語になった。しかし、感情のこもってない、無機質な喋り方だ。まるで、事務連絡のようだ。私は思った。まだまだ、だな。 「竜子ちゃん、これなんだかわかるー?」 と言いながら、タバスコをさしだす。 「これ飲むと、もっとお水飲みたくなるわよ」 タバスコのキャップをとり、竜子の□に入れようとするが、激しく首を振り、入れることができない。 「えーい、ちょこざいな」 フットスイッチを踏む。ピタッと竜子の動きが止まり、また頭が持ち上がる。まるでビデオの一時停止のようだ。拷問電流通電中は全身に力を入れて息むから、首を動かすことができないのだ。 スイッチから足を離し、もう一度タバスコ攻撃をする。やはり、さっきの様に激しく首を振る。今度は、ビデオの早送りのようだ。 「面白いわね、一時停止!」 竜子の動きが止まる。 「早速り!」 激しく首を振る。私は有頂天だった。電池で動くおもちゃのラジコンを手に入れた子供の気分だ。気がつくと、私は手を叩きながらその場でピョンピョン跡ねていた。まるで、土人のダンスだ。人は自分が圧倒的優位に立つと、隙ができるものだ。だが、竜子は、このほんの少しのダンスタイムに、反撃作戦を練っていたのだ。
「まあ、そんな膨れっ面しちゃって、かわいくないわね! さあ、ちゃんと飲むのよ」 竜子はすなおに、タバスコと水を含む。 「まあ、おりこうちゃんになったわね。でも、まだ膨れっ面ねー」 意地悪くそう言いながら、不覚にも竜子に顔を近づけた。その時、竜子の口がイソギンチャクの様にすぼまった。次の一瞬、プシューという音と同時に、私の顔にタバスコの混ざった水が降りかかった。タバスコ顔面シャワーである。 竜子は、タバスコと水を口の中でシェイクし、私に吹き付ける隙を伺っていたのだ。 「グウゥゥゥ。目が、目が、見えない」 私は右手で目を押さえ、左手を空中で左右に動かし、足で床を探りながら障害物を避け、ようやくバスルームにたどり着く。本日2度目の救護室入りである。 洗面台で何度も顔を洗いタバスコを洗い流した。視力は回復したが、今朝、2時間かけて施したメークがすっかりはがれ落ち、すっぴん顔になってしまった。
爆風で吹き飛ばされた人間の様にバスルームから飛び出し、怒涛の勢いで竜子の元に駆け寄る。さすがの竜子も、自分の愚かな行為によって、これから阿鼻叫喚の地獄図が描かれることを予感したのだろう。おどおどした、おびえきった目付きをしている。 「いまさら怖じけづいても、もうおそいわーーっ! アチョーーっ!」 ブルース・リーのような雄叫びを上げ、フットスイッチを力いっぱい踏んだ。竜子の頭がいつもの様に10センチ程持ち上がる。10秒、20秒、30秒、時間が流れる。全身に力を入れ、痛みに耐える竜子。私は両手に握りこぶしを作り、体をブルブル震わせながら、スイッチを踏み続ける。まるで仁王様のようだ。 40、50、60秒、そのまま、スイッチを踏み続ける。やがて、1分30秒を越えようとしたとき、あぁぁぁぁぁ……という発声と共に、竜子の頭が徐々に下がり出す。痛みをこらえる限界に達した時の反応だ。 さらに通電を続けると、気を失うことになる。スイッチから、足を離す。 「どうだ。長時間通電の威力は! 30秒、40秒ってのは、やさしいんだよ。手加減してりゃ、調子こきやがって!」 私は、この時、完全に切れていた。ヤヌスの顔が裏返ったように、今、私の暗黒面が現われたのだ。 「ほら、くらえ」スイッチを踏む。全身に力を入れて痛みに耐える竜子の口にタバスコをねじ込む。 「ウグ、ウグ……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……………」 サイドブレーキの壊れた車が坂道を下るように、私の暴走は止まらない。 「まだまだだよ、おら。飲めないのか。おら、タバスコでもくらえ!」 竜子もさらに反抗し、タバスコを吐き出す。 「ウーン、ぺッ、ペッ」 「おら、ざけんじゃねえよ、飲みやがれ」 竜子がいくら抵抗しても無意味だ。戦況は圧倒的にこちが優位なのだから。私は、完全に我を失っていた。自分でも信じられない汚い言葉が次々出て来た。 「つら動かすんじゃね、このくされマンコが」 まるでやくざのようだ。 引退を賭けた最終決戦だ。私も必死だ。 電流、水、タバスコを繰り返す。髪を振り乱し、何かに取りつかれたように拷問する私。止血の為に巻いていた鉢巻きがずれてきて、私の視野をふさぐ。 「えーい、こんなもの」 鉢巻きを引きはがし、まだ続ける。竜子はもはやグーの音もでない。完全に逆らう事を封じられているのだ。電流の時は、体に力を入れ息み、タバスコの時は喉の痛みに耐え、水のときは腹の痛みに耐えなければいけないのだ。
私が正気に戻ったのは、タバスコが空になった時だった。「ちっ、空か」 タバスコの空ビンを部屋の隅に放り投げ、竜子を見る。 「し、し、しまった、やりすぎた」 竜子は視点の定まらないぼんやりした目をして天井を見上げている。全身滝に打たれたような汗をかき、時々、グフッ、ゲフォッと水を吐いている。強く握り締めたこぶしから、血がしたたり落ちている。おそらく、親指の爪が掌に食い込んだのだろう。 何杯飲ませたのか、夢中で覚えていない。6杯か、7杯か。竜子のバイタルを確認する。電流もないのに、腕が小刻みに震えている。しかし、それは痙攣とか、ひきつけとか、そのような深刻なものではないようだ。安心したと同時に、こんどは私が震え出してきた。 私はいつの間にか、激しいサディスティックスパイラルの渦の中に巻き込まれてしまったのだ。私はベッドに座り、震える手でタバコを1本取り出し、火を点けた。 タバコを燻らしながら、竜子をみる。食道に溜まった水は全部吐き出したのだろう。フー、フーッと荒いが、規則正しい息をしている。 立ち上がり、童子の足元による。膝頭に人差し指を立て、ボディーラインを辿りながら、進んで行く。太ももの間、へその穴に汗のプールができている。そのプールに指をいれ、汗のラインを引きながら、乳房の間を通り、喉を通過し、顎に到着。掌で竜子の顎を撫でながら言う。 「こんなにいっぱい汗かいて、かわいそうに、よく頑張ったわね」 これも理不尽な発言だ。頑張るもなにもない、私が勝手にやったことだ。このような、理不尽な発言が竜子の反抗心をあおっていることに、私は気がつかなかった。竜子の顔は汗、涙、鼻水、よだれ、タバスコでぐちゃぐちゃになっている。この顔がすごくいい。街でかわいい子を見てもなにも思わないが、拷問の後、かわいい顔が、ぐちゃぐちゃになっているのを見ると、たまらなく情欲にかられる。 顔が近づく。竜子の腋窩アポクリン腺から放たれる汗の匂いが、かぐわしい芳香となり、私の情欲に拍車をかける。 竜子に顔を近づける私。どんどん近づく。くちびるの距離わずか数センチ。あと数ミリ。と、その瞬間、竜子は激しい勢いで顔を横にそむけた。そして、言った、つぶやくように。 「やめてくださいっ。私、レズじゃありませんから」 ぐー、だめだ、まだ落ちてない。私は、両手で頭をかきむしりながら、歌舞伎役者のように、その場でクルクル回った。 この子、少し言葉遣いが変わっただけ、まだ手の内に入ってない。 「キイーっ」 私は両手に握りこぶしを作り、竜子のみぞおちを力いっぱい叩いた。 「グェッ」という呻きと同時に竜子の口から、胃に溜まった水が吹き出した。 「完敗だ」 このとき、私はそう思った。
「人間には数千人に一人の割合で、非常に高濃度なエフェドリン(脳内麻薬)を大量に産生する者がいる。そういう者にとって、痛み、苦しみは、御馳走以外のなにものでもない」 竜子は、その数千人の内の1人なのかもしれない。勝つための良策が見つからない。むなしく、お道具カバンをのぞき込む。カバンの中には、目隠しとボールギャグしかない。これだけで、何ができるかしら。こんなことなら、電気鞭とか拷問針とか持って来ればよかった。 「フー、だめか」 私は白旗をふるため、ベッドから立ち上がり、竜子に話しかけた。 「ねえ、竜子ちゃん、私ね」と、そこまで言いかけたとき、私の言葉をさえぎって、竜子が言った。 「トイレ行かせてください」 トイレという言葉を聞いて、私はハッとした。勝てる方法がある、1つだけ、この方法しかない、これに賭けてみよう。時間がない、急がねば。 パンドラBOXはバッテリーで駆動している。かれこれ90分たったから、あと30分位しかもたない。 私は立ち上がり、竜子に言った。 「竜子ちゃん、私疲れたから、下のロビーでお茶を飲んでくるわ。その間、竜子ちゃんがさみしくないように、パンドラちゃんにお相手してもらうわね」 私は、竜子にボールギャグを噛ませ、目隠しをした。このとき、竜子はおとなしくしていた。逆らう気力がなくなったか、あるいは拷問電流が怖いからか、それはさだかではない。 「いいこと、よく聞いて。今からタイマースイッチを入れるからね。これであなたの体に自動的に電流が流れるわ! でも、絶対お漏らししちゃだめよ。おしっこは電気の良導体だから、電流が膀胱に伝わり大変なことになるかからね」 私は、さらに脅しをかけた。 「膀胱に伝わった電流は、腸に伝わり、胃に伝わり、食道に伝わり、脳まで到達するわ。そしてあなたの呼吸中枢を麻痺させるのよ」 竜子はなにか必死に訴えようとしている。ボールギャグの向こうで、なにか言っている。 「うぐむ」とか「う、う、ううぐう」とか聞こえるが、たぶん「やめて」とか「いかないで」とか言っているんだろう。 まず、ベッドサイドのオーディオコントロールでクラッシックチャンネルを選ぶ。運よく、私の好きなワーグナーの『ワルキューレの騎行』が流れていた。 次に、縛りに緩みがないか確認する。もし、拘束が解けて、彼女がトイレに駆け込むような事になると、私の計画が台なしだ。 オーディオのボリュームを少し大きめにし、竜子に告げる。 「じゃ、スイッチを入れるわね。いい? 呼吸法を忘れないでね。2秒休んで、20秒通電するから、2秒の間に息を吸って吐くのよ」 竜子はおとなしくしている。言葉が出ないのか、あるいは尿意をこらえているのか。 私は、テレビの上に置いてあったルームキーを取り、彼女に聞こえるようにわざと、カチャカチャ鳴らした。 「2、3時間したら帰ってくるから、それまで頑張ってね」 2,3時間という言葉を告げると、竜子は急に「うー、うー」言い出した。おそらく、10分か15分ぐらいだと思っていたのだろう。 スイッチを入れる。電圧は拷問電流のままだ。 「ウ……………」 20秒経過し、2秒の休みに入る。 「ハァー、スゥー」 言われた通り、呼吸している。タイマーの動作を確認した後、竜子に言う。 「行ってきまーーーす」 入りロのドアの音を、大きめに鳴らす。ガチャンっ――これで、竜子は1人で部屋に居ると思い込んでいる。 私は、音をたてないように、四つんばいで、そろりそろりと部屋を移動し、ベッドにはい上がる。イモリになった気分だ。 ベッドに横になり、竜子を観察する。20秒間頭を持ち上げ、体に力を入れて痛みに耐え、通電が終わると、ゆっくり頭を下げながら、「フー、スー」と呼吸する。 頭が台につこうとするころ、通電が再開される。また、頭が持ち上がり、忍耐の時間が始まる。2秒という時間は、呼吸するために最低限必要な時間、それ以外には何もできない。 と同時に、竜子にとっては恐怖の待ち時間でもある。2秒後にまた激しい痛みに襲われる事は分かっているのだから、機械というものは冷酷なものだ。相手の感情や事情なんてものは全く関係ない。一度与えられた命令は、それが取り消されるまで永遠に実行されるのだ。ある意味では、私以上のサディストかもしれない。 竜子はいま漆黒の闇の中、永遠に続く拷問に一人で耐えている。たとえそれが拷問官であろうとも、自分のそばにいてくれることがどんなにありがたいことか身に染みて来たはずだ。 黒い目隠しが濡れてきている。汗か、いや、おそらく涙だろう。竜子は大粒の涙をボロボロこぼしながら、時々「ウッ、ウグッ」と、ボールギャグの奥からうめき声をあげているのだ。
そんな竜子を見ていると、私の脳に体積していたドーパミンが消化されてくる。そして、今度はエストロゲンが放出されてくるのだ。その性ホルモンの作用により、私の心に沸々と性欲が沸いてくる。目前には、拷問電流に苦しむ可憐な少女、お気に入りの音楽、ふかふかのベッド。ああ、きもちいい。私にとって、最高の至福のときが訪れた。竜子は相変わらず、何かの儀式の様に、頭を上げ下げしている。 「フフフ、もっと苦しめ、もっと苦しめ」 私には見えるのだ、光のスピードの竜子の流れが。竜子の体の中を駆け巡り、暴れ回り、痛め付ける電子の軍団が。それは、あたかもオーロラのように輝き、竜子の淫靡な裸体とオーバーラップして見える。 ああ、きもちいい、最高だわ。まるで真綿に包まれた気分だ。私はいつのまにか、両手で我が乳房を愛撫していた。やがて、胸をなで回していた。その手は、しだいに下腹部の方に降りて行った。そして自ら意志をもつ生き物のように何かをまさぐり始めたのだ。いってしまいたい、このまま。どうせ目隠しされている竜子には何も見えないんだ。 「ああ、いっ、いっ……おおっと、いかんいかん。引退を賭けた勝負の真っ最中だった」 私は、すんでのところで我に返り、竜子の観察を再開した。
「意外に、ねばるな。早くしないと、パンドラBOXのバッテリーがなくなるぞ」 ここまでくると、あとは、竜子の膀胱とバッテリーの容量勝負だ。 「早く、おもらししなさい」 「早く、おしっこしなさい」 「早く、小便こけ! オラっ」 私は、かなり焦り出した。このままだと、負けてしまう。 「頑張れ、パンドラ、負けるなパンドラ」 「あっ、パンドラのパイロットランプが暗くなってきた。ファンの回転が遅い……い、い、いかん、電源が切れる!」 と思った、まさに次の瞬間、竜子のつま先が小刻みに震えだし、 「ウー、ウググ、ウー!」という呻き声と同時に、竜子のパンティーがジュクジュクと濡れ始あた。私が、待ちに待った時間が訪れた。 「いまだ!」 私は、一目散に竜子の側に駆け寄り、大慌てで電極を外す。 ベリッ、ベリッベリッ……竜子の側に膝まづき、目隠しをとり、同じ顔の高さで視線を合わせる。 竜子は両目を大きく見開き、鼻の穴を膨らまし、ボールギャグの向こうで、「ウグー、ウグーっ」と唸り声をあげてい。呼吸は荒く、胸が大きく上下に揺れている。私はボールギャグを外し、竜子の頭を撫でながら、やさしく言った。 「安心して、電極を外したからもう心配ないわ」 その一言を聞いた直後、竜子は声をあげて泣き出した。 「こわかったよう、こわかったよう、こわかったようー」 竜子の両目からダムが決壊したように、涙があふれだしている。彼女にとって、私がここにいる事が驚きであったろう。なにしろ、私は部屋を出て行ったと思い込んでいたのだから。そして、私は悪魔の拷問鬼から救いの天使へ変わったのだ。 「おばさん、ずうっと、ここにいたの?」 「そうよ。大事なあなたを一人でおいて行けるわけないでしょう」 竜子はしばらく泣き続け、言った。 「おばさんごめんね。素直じゃなくて。おばさんに悪いこと言ったり、したり、それからおばさんのこと、おばさんって言ってごめんね。もう、おばさんって言わないから、許してね。おばさん」 私は思った。この子は今、何回おばさんと言ったのか。まあ、いい。完全にパニックになっているんだ。 「私の名前は原野威矢子(はらのいやこ)よ。威矢子って呼んでね」 竜子は体を起こそうとした。 「う、う、動けない」 「長時間電流を受けたあなたの体は、筋肉が一時的に麻痩しているの。しばらくすれば動けるようになるから、心配しないで。しばらく休んでなさい」 「威矢子さん」 「なーに」 「お願いします、キスしてください。私が動けるようになるまで」 私は竜子のマシュマロのように柔らかいくちびるを心ゆくまで味わった。竜子が動けるようになるまで……。
タバスコの空き糊は記念に持って帰ることにした。そろそろ教授が迎えにくるころだ。ホテルを出るとタイミング良く、教授のベントレーが横付けされた。 私は後部座席に乗り込んだ。教授は私の良き理解者である。今日のような特別な日は必ず迎えに来てくれて、私のマンションまで送ってくれる。 パンドラBOXなど私のお道具は、彼の設計によるものだ。教授は車を走らせながらルームミラーをちらっと覗き、言った。 「そのおでこの傷はどうしたんじゃ」 「いま、話します」 私は、今日の出来事を全て話した。まるで、戦(いくさ)から帰った武士が武勇伝を語るように。 話を聞き終えた教授は、私の予想に反し意外なことを言った。 「なるほど、それで原野君は見事にその竜子君とやらに落とされたと言う訳か」 教授の意外な言葉に、私は強い口調で反論した。 「いいえ、違います。彼女が落ちたんです。私が彼女を手の内に入れたんです」 「いいや違うな。君が落とされて、彼女が君を手の内に入れたんじゃ。君は気がつかないのかの、全て彼女が仕組んだと言う事に」 「何を仕組んだというのですか?」 「出来過ぎていると思わんか。ペットボトル、ビール缶、タバスコ……みんな、君の潜在意識に焼き付けるように、わざと見せつけておる。だいたい、そんな高級ホテルがいつまでもワゴンを片付けないわけないじゃろう。それも彼女がそのまま置いといてくれとルームサービスに頼んだのじゃ」 教授に言われると、部屋の光景がフラッシュバックのように次々とよみがえった。テレビの上に置いてあるルームキー、ワゴンの上のタバスコ、ビール缶、それにぺットボトルをラッパのみする竜子。 それでも、私は教授の言ったことを認めたくはなかった。私は、さらに激しく反論した。 「違います、違います。絶対違います。ただの偶然です」 「えーい、まだそんなことを言うのか。それでは訊くが、君はその部屋で『ワルキューレの騎行』を聞かなかったかの?!」 「え! 教授、あの部屋にいらしたんですか?」 「ばかな。わしは研究室で研究しておったわ。それも、竜子君があらかじめホテルにリクエストしておいたんじゃろう。その時間に鳴らすように」 「どうして私の好きな曲が?」 「君が、どこかのサイトで書いたんじゃないか。それにパンドラBOXの性能のこともな」 「と言うことは、彼女は時間まで計算して………」 「ま、そういう事じゃな」 「でも教授、たとえそれが本当だとしても、どうしてそんな作為的な事をする必要があるんですか?」 「原野君。もし彼女が君に、おなかがパンパンになるまでお水飲ませて、無理やり、と言ったら、君はそうするかね?」 「しますよ、一応。リクエストですから」 「それで君は興奮するかね?」 「まあ、相手の反応によりますけど」 「そうじゃろう。君ぐらいS性が強いと、相手にとってNGが君のしたい事になるんじゃ。どうじゃ、違うかな」 「まあ、相手のいやがることを、縛り付け、押さえ付け、無理やりするのは大好きですね」 「だから、彼女は自分がしてほしいことを、リクエストするのを避けたんじゃな。そして、彼女の欲求を満たす流れを作ったんじゃ」 「それじゃ、あのふてくされた態度もお芝居ですか、教授」 「君の、暗黒面を見てみたかったのじゃないかな、良くはわからんが。ま、わしの言った事はあまり気にせんでくれ。君が言ったように単なる偶然かもしれんしの。どちらでもいいじゃないか。いずれにしても、竜子君はエフェドリンを絞り出し、君はドーパミンを消化したんだから、2人とも満足できたじゃろう。 さあ、着いたぞ。 あ、そうそう。原野君、今度、研究室に来てくれんか。君に渡したい物があるんでな」 「はい、わかりました。一度寄ります」 私は部屋に入り、シャワーを浴びた。そして、お気に入りの『ワルキューレの騎行』を聞き、一人物思いにふけった。タバスコの空き瓶を眺めながら……。 |
|
|