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私たちが物事の数量的な関係を理解しようとする時に 最も分かりやすい関係は線形(比例)関係です。近代の 科学は物事を線形に理解する方向で進歩してきました。 物事のどんなに複雑な関係も微小な区間を拡大すれば 滑らかになり(多様体)、線形関係で近似(線形化 ) できると考えて、世界を理解してきました。この考えは 近代科学を発展させ、またその成功により補完されてき ました。複雑な生のデータから統計的なバラツキを補正 し、さらに微小なノイズを捨象した関係から、理想的な 条件での様々な法則を見い出してきました。このような 線形化された世界とは物事が単純で分かりやすく、現象 を支配する法則が分かれば、未来は予測できるという 決定論的な世界 でした。
一方、線形関係でない数量的な関係は、全て非線形な 関係と呼ばれています。実際の現象では非線形な関係の 方がずっと多いのですが、そのまま取り扱うにはあまり にも複雑で数学的な取り扱いも難しいため、線形化して 把握してきました。 しかし一部の洞察力に優れた数学者たちには、非線形な 関係そのものの中に見えてくる不可思議かつ魅力的な 世界が見いだされていました。ただしそれらの事例は 特殊であり、取り扱いの難しい数学上の病理現象として 扱われてきました。
近年になりコンピュータ技術の飛躍的な進歩により、 今まで優れた数学者の洞察の中でしか姿を現さなかった 非線形な世界がコンピュータのディスプレイ上で容易に 観察できるようになりました。まさに数学の 実験科学化 とでも呼べる事態です。また線形化の過程でノイズとし て見過ごされていたデータの中に豊かな世界があること が見い出されてきました。
そう自然は非線形であり、世界は複雑なのです。 しかしその世界を理解することは可能です。