ご あ い さ つ   特定非営利法人 NPO菜の花エコプロジェクト埼玉  代表理事 森平弘美  最初に私事で恐縮ですが、私は、だいぶん以前から自分の生活や、自分の仕 事について、ある問題意識を持っていました。そのひとつは、埼玉県の坂戸市 という、自分や自分の家族が住んでいる街と、私自身が、まったく関わりを持 たずに生活していることでした。本当に文字どおり、家には寝に帰ってくるだ けでした。坂戸という土地とか、坂戸に住んでいる他の人々と、何の交流もな く生活しているのは、かなり不自然だと思っていました。  会社をやめた後は、いったいどうなるのか。地域社会にうまくとけこめるだ ろうか。会社をやめたとたんに、脱け殻みたいになってしまうのではないか。 地域社会のなかで、税金を払う事以外の、何の役割も果たせていない状況が、 いいと言えるのか。そういう問題意識でした。  もうひとつは、都内での会社員としての仕事の実情です。企業組織とは、生 産性と利益率のあくなき追求でピラミッド型の組織です。助け合う、共に生 きる、そういう面が薄く、とにかく競争原理で動いている。企業のそういう動 きが世の中を、特に経済を、たいへん発展させました。そして人々の暮らしを 物質的に豊かにしました。でも反面、それが人間の生活を非常に荒廃させまし た。それは働く人を企業システムのなかのメカニズムにしてしまう文化でした。 それはまた大量生産、大量消費、自然にもどっていかないごみを大量に発生さ せる文化でもあります。企業の持つそういう側面をことさら声高に批判するつ もりはありません。しかしそうではない、もっと本来的な人間の在り方に根ざ した、生活・仕事はあると思っていました。  そういう問題意識を漠然と抱えていたところ、運良く坂戸の中にも、いろい ろな環境改善活動をしている方たちがいることを知り、自分から進んで、ぜひ 私も参加したいと、門をたたきました。そしてそれがいま、このNPOに参加 する形につながってきています。  NPOは、非常に民主的な組織形態です。理事は会社で言えば役員といえま すが理事が特権的に経営権を持っているのではなく全会員による民主的な運営 が基本原則です。会社とNPOのいちばん大きな違いは、非営利ということを 除いて考えた場合、会社がピラミッド型組織であれば、NPOはネットワーク 型組織であることだと思います。つまり命令系統というものはなく、みんなが 自由に意見を述べ合う。わいわいがやがやと活発に誰もがコミュニケーション しあう。そのことによって、少数の人の独断ではない、より多くの人による、 より望ましいものが生み出され人々の参加意識も高く維持されるのです。まさ に、新しい市民社会にふさわしい、人間の集まりの在り方だと思います。  菜の花エコプロジェクトの活動の集まりは、NPOという言葉を意識しはじ める前は、土日カンパニーと呼ばれていました。日本はこれから、高齢化社会 になっていきます。われわれのような世代(私は40代後半)も、まだまだずっ と元気でいなければならないのです。誰かに支えてもらうのではなく、自分で 自分を支えていくことが、求められ続けていくと思うのです。そういう意味か らもこの菜の花エコプロジェクト埼玉の存在意義はとても大きいと思います。  土日カンパニーの精神、すなわち、自分の時間の都合の許すときに自由に参 加する形態、仲間の汗や仲間の笑顔の見える活動、低予算・手弁当・手作りの ぬくもり、資源を大切にしよう、資源を循環させようという、自然に優しい心、 命を大切にする心、そういうものすべてが、NPOという活動形態と、とても マッチしています。私たちのこの最初の一歩は、まだまだ小さいですが、今後 私たちの活動に賛同してくださる方は、たくさんたくさん増えていくと思って います。私たちの目標は、時代の求める理想にかなっていると思います。  2001年9月はじめて、菜の花のタネをまき、翌年6月に収穫し、大自然 のいのちを再生させる力は、本当にすごいなあと、あらためて実感しました。 まいた種と、同じ種が、数百倍、数千倍に、数万倍になって、またこの手にも どってくるんですね。私たちの掲げている目標が、時代の求める理想にマッチ しているのならば、私たちのこの小さな一歩も、数百倍、数千倍、数万倍の実 りをもたらしてくれる。そう信じています。  数年前の私みたいな人が、いっぱいいると思います。家に寝に帰ってくるだ けで、地域社会とぜんぜん関わりを持たない生活をしている人たちが。大地と ふれあう喜びを忘れている人たちが。そういう人たちをいっぱい仲間に取りこ んで、もちろんそうでない人たちもいっぱい仲間に取りこんで、そしてまた、 坂戸だけでなく、埼玉全県を視野に入れて、資源循環型社会の実現の大きな目 標にとりくみ、その中で、人間の生活や人間の仕事の、本当の意味の豊かさを、 追い求めていきたいと考えます。  これから、夢の実現にむけて、ご一緒に活動していきましょう。 2003年10月16日              記念すべきNPO法人登記の日