TOP | 作成:2009/04.27,更新:2009/06.09


東芝キーボード UE0222P07

これは,数奇な運命の末に私の手元にやってきた,通称J-3100タイプと呼ばれているキーボードのレポートです。 「J3100」と表記しているページもあるようですが,本稿ではPC博物館にしたがいJ-3100とします。

残念ながら,Windows95になってからPC/AT互換機に初めて触れた私にとって,このレイアウトのキーボードが,いつ頃,どのようなマシンに使われていたか,まったく覚えがありません。 しかしながら,デザインや「TOSHIBA」のロゴ,その打鍵感から,1980年代後半から1990年頃にかけて,東芝の汎用機に使用されていたキーボードと同じ製造と思われます。 梱包箱に貼られたラベルから,東芝パソコンシステムがまだソードだった頃,東芝と提携して1992年4月に発表し,8月に発売したJ-3100 ZSの補修部品として東芝情報機器(TIE)が1993年12月18日に出荷したキーボードであることがわかりました。

キーボードレイアウト集で有名なPFUのキーボードコレクションを探すと,あっさりと東芝PC keyboardとして見つかりました。 私の覚えているJ-3100はモノクロ・オレンジ・プラズマディスプレイのでかいラップトップ機ですが,J-3100 historyによるとデスクトップもあったのですね。

外観

重く,大きく,非常に堅牢な感じです。 形状から,通称BigFootと呼ばれるALPSメカニカルスイッチを使用したキーボードのようです。 怖くて分解できないので,本当にALPS製かどうかは確認していません。 写真でも判るように,キーは板金で固定されています。 打鍵は軽いものの,クリックと底突き感があります。 [F] と [J] の凹みは深く,テンキーの [5] にはボッチがあり,これらによりホームポジションが判るようになっています。

キー配列は101配列を基に,日本語を考慮してひかえめに配置を変え,右の [ALT] と [Ctrl] をそれぞれ[漢字],[カナ] に変更したものとなっています。 記号類はタイプライターペアリングとロジカルペアリングの中間的な感じです。

本体は変色しておらず,きれいです。 ほとんど使われていない印象なのですが,点灯している3つのLEDを比べると,NumLockがヘタっているようなので,まったくの未使用というわけではないようです。 サーバーのように,電源は入っていても,めったに操作されないPCに繋がっていたのかもしれません。 ケーブルはカールしており,端子はPS/2です。

Windows Xpで試す

それらしいキーワードで検索すると,AX & J3100キーボード右Altキーに[漢字]キーを割り当てる方法で,Windows Xpでも利用可能とのことなので,主にゲームに使っているサブマシンに繋いで試してみました。 具体的には,レジストリエディタでHKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\i8042prt\Parametersを辿り,日本語106キーボードであったのを,AX用キーボードのように変更し再起動しました。

あっさりとうまく動きました。 すべてのキーは刻印どおりです。 実用上は問題ありませんが,この環境ではカナLockのLEDは点灯しません。 点灯させる方法があるのかもしれませんが,わかりませんでした。 PCの電源投入時には一瞬点くので,切れているわけではないようです。

左上の無刻印のキー([AX] キー?)は,既定では何の役割も持っていないようですが,キー配列の変更に用いるChange Keyというプログラムの調査ツールで調べると,キーコード0x5Cとして認識されます。 試しにこのキーを [Win] へ割り振ったところ,期待通りに [Win] として使えるようになりました。 一方,[漢字] と [カナ] は,それぞれ右 [Alt] [Ctrl] として認識され,このプログラムでは変更ができないようです。

さらに,コントロールパネル,キーボードのプロパティにてドライバを手動でPS/2 101キーボードに変更してみました。

そうすると,[漢字] [カナ] は右 [Alt] [Ctrl] となり,[Alt]+[`]([む])で漢字のOn/Offとなります。 IMEのメニューからかな入力に変更して試すと,[「] や [」] も含め,きちんと刻印どおりに入力できるようです。

FUJI XEROXキーボード XJ-T99

「FUJI XEROX」のロゴがあるものの,外観や打鍵感は前項と同じキーボードです。 ですが,こちらの由来はまったくわかりません。

外観

造りはほとんど前項と同じなので,異なる部分を挙げてみます。

アプリケーションの機能を書き込むものと思われる,プラスチック製のシートが3枚付属しています。 リバーシブルになっていて,裏もまったく同じプリントです。 この3枚の下には,DOS時代の日本語ワープロであるP1.EXEのシートも付属していました。 NECのPC-98シリーズと共用のためかと思うのですが,F-Keyの番号が10までしかありません。

本体は変色しており,シートを外すと,その境界が見てとれます。

ケーブルがカールしているのは同じですが,少し短いようです。 端子はATコネクタです。 以前から持っていたAT-PS/2変換コネクタを繋ぐと同じくらいの長さとなりました。

まとめ

このキーボードの最大の特徴は,カナが刻印された日本語キーボードであるにもかかわらず,ドライバがない状態でも刻印どおりに使える点でしょう。 DOSの時代であれば,キーボードドライバがない環境でも問題が少ない,あるいは,コンベンショナルメモリを確保するため,あえてドライバを入れない,という選択肢ができ,そのような場面では重宝されていたのではないかと想像します。

また,打鍵感のよさもポイントでしょう。 キーボード単体の平均価格が数倍高かった時代ゆえ,当然といえば当然ですが,当時のキーボードの方が造り全体が良質だったように思えます。 まぁ,その分,ときどき打っても反応しなかったり,逆にチャタリングするキーがあっても,おいそれと買い換えることができず,我慢しなければならなかったりするわけですが。

余談

FUJI XEROXキーボードに使用したAT-PS/2変換コネクタは,ビニールも破っていない新品で持っていたものを,今回はじめて使うことになりました。

ちなみに写真の隅に写っているのは,XBOX360用USB接続ジョイパッド,ELECOM JP-PS201USV経由で繋いでいるHORI Compact Joystick HPS-29(SLPS-00085),ディスプレイはBNC接続で21インチブラウン管の飯山電機製MF-8421,マウスパッドはSuper Famicon専用マウスに付属していた硬いプラスチック製のものです。

あえて写真は補正せず,EXIF情報もそのままなので杞憂ではありますが,このままでは撮影時期がわからなくなりそうなので,最近発売されたばかりのタバコを配してみました。

追記

実を申しますと,この文書には2つの目的がありました。

ひとつは,私の技術的興味が満たされるまで,使い勝手や由来を調べつくすことです。 1980年代後期に,月に数千〜数万ステップのプログラムを打っていたときの,指先にジンジンくる疲労感を思い出しながら,最初の文章を書き上げました。 それは楽しいひとときでしたが,文書が完成した時点でこの目的は果たされ,セカンドマシンには元の106キーボードが繋がれ,これらは物置行きとなることは明らかでした。

もうひとつのより重要な目的は,このキーボードを,必要としているどなたかに譲ることです。 彼女は,自身にとって不要でも,私にとっては違うかもしれないと思ってくれました。 引き継いだ私は,古きを知ることができ満足しました。 次は,私が別の誰かに思いを馳せる番だと考えたのです。 調査段階で,J-3100タイプのキーボードを気に入っているけれど入手困難なんだ,というページをいくつか目にしましたが,それも2005年あたりまでで,以後はあまり話題になっていないようです。 しかし,今なお,このキーボードを欲する人がいるに違いありません。

私はキーボードマニアでも,オークショニアでもありません。 そこで,このキーボードについて十分な情報を公開し,いつか誰かがこのページを目にし,勇気を持って問い合わせてくれることを待つことにしました。 祭りになっても困るので,この目的に関する記述は隠し文字とhtmlソースのコメントにして埋め込みました(達成された現在は削除してあります)。

そんなおり,Slashdot Japan古いアレゲな機器のストーリーが立ち,つい漏らしたところ,さっそく複数の方から連絡がありました。 さすがは /.J。

いただいたメールからは,短いながらも十分にこのキーボードに対する思いが伝わってきました。 モノの価値は,そのもの自体ではなく,それを見る人によって決まるのですね。 そんな当たり前のことを強く実感した数日間でした。 連絡していただいた方々に感謝します。 私の願いは,このキーボードが大事にされることではなく,これを手にした方が以前よりもしあわせになることです。