■標準電波局 WWVとWWVH■
おぎのかずとし

沿革
ご存じの通り、アメリカには標準電波として短波を使ったコロラド州のFt.CollinsにあるWWVとハワイ州KauaiにあるWWVH、そして長波を使ったWWVBがある。WWVBの場所はWWVと同じである。これらは、現在、NIST(National
Institute of Standard and Technology)が管轄している。
WWVが運用を始めたのは1923年3月のことで、場所はワシントンであった。その後、1933年4月にメリーランド州Beltsvilleに移り、送信機も20kWになる。現在の地、Ft.Collinsに移ったのは1966年12月のことである。この局の沿革を見ていると、長波局のWWVB(60kHz)が1956年から、実験局WWVL(20kHz)が1960年からコロラド州Sunsetで運用を開始し、その後、1963年に現在の地Ft.Collinsに移っている。WWVがこれらに合流したという形になっているのは興味深い。ついでに触れておくと、この実験局WWVLは1972年に廃止されている。また1977年にはWWVの20MHzと25MHz、そしてWWVHの20MHzが、中止となったが、WWVの20MHzは翌年に復活している。
WWVHは1948年11月に運用を始めた。場所はマウイ島である。現在のKauaiに移ったのは1971年のことである。
UTC(協定世界時)とは
さて、WWV、WWVHが時刻アナウンスに使用していたGMT(Greenwich
Mean Time)がUTC(Coordinated Universal Time)に変わったのは1974年のこと。実はこのUTCが作られたのは1972年のことで、パリにある国際度量衡研究所が管轄している。
話のついでにこのUTC(協定世界時)について触れておこう。現在の時間は、セシウム原子の放射する電磁波の周期が基準になっていて、セシウム原子時計を使って標準を作っている。原子時計から得られる時間は「国際原子時」というが、実際の太陽や地球の自転による生活時間とはズレがある。そのため「国際原子時」から整数秒ずらした「協定世界時」というものがある。「協定世界時」は地球の自転の観測結果と0.9秒以内で一致するように調整されており、1997年7月現在で「協定世界時」は「国際原子時」から31秒遅れている。これらの時間はパリの国際度量衡研究所にあるものが基準になっているわけではない。世界各国にある約230の研究機関で運用されている原子時計の平均値を基準にしているのである。その正確さは2×10−14乗くらいである。これは1千万分の1のさらに1千万分の1である(小さすぎてイメージがわかない!!)。
運用状況
WWVは、2.5MHz(2.5kW)、5MHz(10kW)、10MHz(10kW)、15MHz(10kW)、20MHz(2.5kW)で運用しており、毎分52.5秒に男性による時刻アナウンスが入る。WWVHは、2.5MHz(5kW)、5MHz(10kW)、10MHz(10kW)、15MHz(10kW)で運用しており、毎分45秒に女性による時刻アナウンスが入る。1時間のタイムスケジュールは、下図を参照されたい。
WWVとWWVHが送信する周波数と時刻の標準は、コロラド州のBoulderにあるNISTの原子時計によるもので、周波数の精度は1×10−11乗、1日あたりの時間の精度は1×10−12乗である。


アンテナ
WWVが使用しているアンテナとWWVHの2.5MHzのアンテナは、全方位半波長ダイポールであり、WWVHの他のアンテナは垂直位相半波長ダイポールアレイである。このアンテナはハート型のパターンを持ち、最大利得点は西に向いている。両局の変調はDSB(両側波帯)変調器を使っていて、一様なトーンは50%、BCDタイムコードは25%、タイムパルスは100%、音声アナウンスは75%である。
タイムパルス
タイムパルスについて見てみよう。毎時の最初のパルスは1500Hzの周波数で800mSである。また、毎分の最初のパルスは、WWVでは1000Hz、800mS、WWVHは1200Hz、800mSである。その他の秒パルスは、短い破裂音である(WWVは1000Hz、5mS、WWVHは1200Hz、5mS)。それぞれの秒パルスは、前に10mS、後ろに25mSの無音部分を持つ。
WWVでは、43〜46分と47〜52分に無音期間がある。WWVHでは、8〜11分と14〜20分に無音期間がある。WWVの29分と59分、WWVHの0分と30分も無音である。
両局は連続的に100HzのサブキャリアにBCD(Binary Coded Decimal)タイムコードをのせている。タイムコードは、1秒に1パルスの直列形式で、UTC情報を提供している。
WWVとWWVHの音声信号は、電話でも聞くことができる。
WWV (303)499-7111
WWVH (808)335-4363
衛星時間サービス
NISTは1974年からGOES衛星による時間サービスを開始した。GOESとは、Geostationary
Operational Environmental Satelliteを意味する。GOES衛星は2つあって、太平洋と大西洋、アメリカ大陸をカバーしている(残念ながら日本はサービス圏外である)。GOES/Westは468.8250MHz西経135度の上空にある。GOES/Eastは468.8375MHz西経75度の上空にある。
【Address】
NIST Radio Stations WWV, NIST Radio Station WWVH
2000 East Country Road 58, P.O.Box 417,
Fort Collins,CO 80524 Kekaha,Kauai,HI 96752
【URL】
http://www.boulder.nist.gov/timefreq/
【参考文献】
『NIST Time and Frequency Service』NIST Special
Publication 432(Revised 1990)
『超精密計測がひらく世界』計量研究所、1998、講談社BLUE BACKS、1140円+税
1999年6月28日作成