アイデアイデア
IdeA・L・IdeA
降るまで
氷礫が打つ日はパーティをしよう。歌ってつねってくすぐって。泡立つ水に粉果汁、百年ものの缶詰も開ける。小さな娘は私を見上げ、幼い息子はスカートに纏わりつく。やんちゃ盛りの童顔に彼の面差しを見つけ、私も黙ってしまいそうになる。
轟音がやんだら水を採りに行こう。手袋はめて桶持って、苔むして朽ちない倒木の森へ。炭酸ガスは氷礫から抜け、凹んだ地面に氷の殻が残る。拾った数を競争しよう。くるぶしが冷気にかすむまで。
凍てついて水を払われた空は青黒く深く、小さい太陽は激しく輝く。銀色の南嶺の彼方、大都会には熱湯が渦巻き、滅ぼしあう人々が絶えた今も戦争機械が氷礫をまき散らしているのだという。止めてくるよ、と彼は発った。
この北境の地には本当なら雪というものが降るらしい。舞い下りてやわらかくしんと音を吸いすべてを包む雪。掌の上で淡々と融けて澄んだ水になる。魅入られて埋もれて死ぬ人もいるんだよ。彼は笑っていたけれど、想像する心は体を離れそうだった。私を受けとめた彼の胸板はたしか、厚くしなやかで温かかったと思う。
明日かもしれない。明日ならいい。いつまでも暮れない夕闇を眺め、二人の手を引いて私は生きていく。
Since 2003.8.16
Presented by 歩知