真夜中の太陽

 目を閉じて耳をふさぎ四角い腿を合わせて平らな腹に引き寄せる。とくんとくん心臓の鼓動だけになる。怒り、嫉み、怠け、嘘をつく、人はどうして我儘で、際限ないのだろう。疫病に倒れた者の魚のような眼を想う。私も病気になれれば、忍耐だけが至上の命題なのに。
 肺で呼吸し血液を廻らせ、上下の穴を繋ぐ管で養分を吸収する。弟は片頬を歪めて笑う。奴らの事で悩むことはないぜ。勝手に動き出して勝手に止まる、ただのからくりよ。少女は唇を噛む。それなら私たちは誰?
 洞窟のまばゆい静寂に楽の音が響く。臙脂色の少女の瞼の裏に一人の女の姿が浮かぶ。篝火の下、丸みをおびた腰を揺らし、脂膜をのせた二の腕を振る。脚を伸ばしつま先を跳ね上げ、背中はしなって地表を滑る。声にならない少女の言葉を女は肩で受け流す。むずかしいのね。額の汗を拭いもせずに女はぬめりと笑ってみせる。あなたの光に包まれて踊りたいのです。指先が何かをなぞって動き、少女の背筋を竦ませる。
 成熟し朽ち果てる宿命の人間たちよ。永遠の時間を生きる私にはわからないからせめて、思わず何も為さず、すべて見届けてやる。少女の名はアマテラス。岩屋戸を開き、天の道を歩みはじめる。 


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