花咲伝

 枯木に花を咲かせましょう。
 古木のすみずみに沁みわたり、蕾に融け合いほころびる。領主は御満悦、褒美を下さるとの仰せ。爺さん婆さん、存分に喜んでくれ。見事な研究だった。永年の土堀り仕事で毒素の染みついた骸を火葬した判断も正しかったし、注意深い散骨と周到な観察があってこそ、今日の成果を得たのだから。
 隣家の男は捕縛され、役人たちに引き立てられてゆく。思いつきで竈の灰でも撒き散らしたのだろう。ただの無謀な平凡人が、災厄を招く破目になるとは。
 調査を重ねて練り上げた探索理論を是非とも実証したかった。犬一匹では叶わぬ力仕事、再度の好機に飛びついた。仮説はやはり正しかった。今度こそ埋蔵金と取り違えることもなく、上古人類の遺跡を掘り当てたのだ。有頂天の私、それが最後の記憶である。周囲の無理解は新事業の常、運命ならば甘んじて受けよう。だが、彼を不幸にしたのは私だろうか?
 それは天が定めることだ。寂びた声が梢を伝い、幾千万の花弁と化した私の奥底に響く。愛されて、よく生きた。それで十分ではないか。澄んだ空から細い光の束が降り注ぎ、私は僅かに紅を帯びて白い。微かに震えて風を待つ。やがてさらさら舞い上がる。


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