PREMIERE 1994年5月号

「撮影は、言ってみりゃ、回転地獄だよ。」
「チャーリー」で全身を駆使してチャップリンの一生を演じきったロバート・ダウニーJr.今回は肉体的に比較的ラクな役まわりだが……「この台本を読んで思ったんだ。(シメシメ。目をヒンむいて、何んてこった!と400回叫べばいいだけじゃないか)と。ところが、そのアテはまったく外れてしまった。」
「Chaplin チャーリー」の次に、ロバートが出演した作品が、この「Heart&Souls(愛が微笑む時)」でした。1994年の撮影風景のひとコマです。

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「役者には、命にかかわるような危険なマネをさせた覚えは一度もないんだが…」。平然と話すロン・アンダーウッド監督の頭上では、チャールズ・グローディン、キーラ・セジウィゥク、アルフレ・ウッダード、トム・サイズモアがワイヤーで宙吊りになっている。まるで『フック』の一場面を見ているようだ。「あの連中は危険を冒すことの大切さを心得ている。少しは冒険しないと満足な仕事はできないからね」。
 監督の言う"冒険"とは、サンフランシスコの高級住宅地、パシフィック・ハイツにある大邸宅の庭で、俳優4人が宙に浮いている状態を指す。そのうちに悲鳴を上げるヤジ馬が集まるかもしれないが、「愛が微笑む時」のロケ現場では日常茶飯事なのだ。この3000万ドルのプロジェクトに参加したロバート・ダウニーJr.は生真面目なヤッピーを演じている。グローディン以下扮する幽霊たちに取りつかれる役どころだ。現場の雰囲気は今日の天気と同じくらいにカラッとしているが、5週間に及ぶロケは、良い事続きではない。アンダーウッドは季節風ややっかいな台本と格闘してきたし、ダウニーにしても四六時中、4人の幽霊、いや4台のカメラに囲まれているのだから。
「撮影は、言ってみりゃ、回転地獄だよ」。
さまざまなアングルから撮られることについてダウニーがこぼす。しかし、アンダーウッドに関しては「本当に統率力のある監督だね。だって、この映画には主演5人の他に、名の通った俳優がわんさかキャスティングされているんだぜ。これほど配役に神経を使う作品は『再会の時』以来じゃないかな。でもロンは見事にやってのけたんだ」。
 アンダーウッドは俳優の信頼を得ることにかけてもプロなのだ。なにしろ出演者たちに楽しくも危険なパフォーマンスをさせてしまうのだから。彼の監督作「シティ・スリッカーズ」でビリー・クリスタルが野生の雄牛と走るシーンを覚えているだろうか。「先日は夜の町を飛んだよ」とグローディンがこともなげに言う。「確か地上から7〜8メートル上空だったと思う。電話線がはるか下に見えたからね」。
上空にいる他のキャストも、いったん地上に戻れば家族が待っている。ダウニーは少しでも手が空くと、妻で女優のデボラ・ファルコナーの側に寄り添う。彼女は8月に初めてのベビーを出産する予定だ。セジウィックの話し相手は4歳の息子と1歳の娘。ウッダードの足元には2歳になった娘がチョロチョロしている。グローディンはトレイラーにこもって、ひいきのバスケットチーム、ニューヨーク・ニックスの試合をテレビ観戦している。彼はやがて魔王のような笑みを浮かべると、新刊本の執筆に向けてなぐり書きを始めた。「いかにして人生を乗り切るか」、これが新しい本のタイトルさ」と胸を張るグローデイン"この中では、いまや見事に克服した過去の悩みについて書こうと思うんだ」。そう言うとニヤリと笑った。「昔は高い所が怖くてね」。

画像協力:miwaさん