●ボリショイバレエ●


「スパルタクス」全3幕

2002年10月6日(日)東京文化会館 13:30〜


振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
音楽:アラム・ハチャトゥリャン
演奏:ボリショイ劇場管弦楽団

出演者
スパルタクス:ユーリー・クレフツォフ
クラッスス:ドミトリー・ルィーフロフ
フリーギア:エレーナ・パーリシナ
エギナ:ガリーナ・ステパネンコ
剣奴:アレクサンドル・ペトゥホフ
素晴らしかった!

超人集団ボリショイバレエの底力を見せつけられた公演だった。
「スパルタクス」を観て、今までバレエという芸術に対して持っていた概念が一気にひっくり返った気がする。
ボリショイのオーケストラとダンサーから発せられるほとばしるようなエネルギーを受け、客席全体に高揚感が広がり、熱狂の渦に包まれたひとときだった。

観にいって良かったと、心底思う。
想像していたより、内面的にも深い作品だった。
もう1回観たい。いや、1回と言わず何度か観てみて、もっと作品自体を理解したいと思った。
これは、ボリショイの大切な財産だね。世界に誇れる作品。
今までそれなりに色々なバレエを観てきたけれど、これほど凄い作品は観たことがない。
スケールが大きすぎる。ダイナミックすぎる。何がなんだかよくわからないけど、引き込まれる、圧倒されまくり。あの音楽が耳から離れない。
驚いている暇もないくらい、次々と現れる驚異的な技を繰り広げるダンサー達。
とても人間技とは思えないテクニックを駆使しての雄々しくエネルギッシュな男性陣の場面と、スパルタクスとフリーギアのアクロバティックでありながら情感溢れる美しいパ・ト・ドゥ、と静と動2つの面を観ることができる、とにかく稀有な作品である。
これを創ったグリゴローヴィチって本当に凄い人だな、と観終わってしみじみ思ったわ・・・。

何から書いたらいいのか。
まず、音楽が素晴らしい!序曲が始まっただけで、鳥肌がたった。
いきなりロシア。演奏が始まったとたん、ロシアの雄大な大地がイメージとして頭の中に浮かんできた。
「ジャジャーン!」「ドン!ドン!ドン!ドン!・・・・・」(と書くとなんだかまぬけでうまく伝わらないようだけど、こんな感じなんですよ)といった、原始のリズムというか、遥か昔の動物・人間を思い起こさせる壮大な音楽の波が、洪水のように押し寄せてくる。
オーケストラが、素晴らしかった。身体の内側から感じるような、理性ではなく本能で感じるような演奏を聴かせてくれた。そう、生きている音楽、、、この作品をこのように素晴らしく上演できたのはオーケストラの力がとても大きい。また、これほど舞台とオーケストラの一体感を感じた公演は初めてかも知れない。

その音楽に合わせて登場する群舞が強烈だった。
前回、ボリショイのガラでこの作品の一部が上演された時、あまりの群舞の凄さに圧倒されて、絶対この作品を全幕で観たい!と思ったものだったが、いやいや、全幕を通して観ると、もう言葉もない。
特に、男性の群舞の圧倒的なパワーが素晴らしい。
雄々しい音楽と一体となって、1人1人が集まって生まれる巨大な力!
ダイナミックな回転と跳躍の連続をはじめとして、ちょっと動物を思い起こさせる原始っぽい動きが次々と現れ、かつ、その中から感情が滲み出ていて、とにかく新鮮で、圧巻。
なんて力強くて、躍動感があって、野性味溢れる群舞!なんという、迫力・・・。
ボリショイって、凄い!!!

衣装・セット。
お金かかってなさそー(笑)。
衣装はぼろきれみたいなのを皆纏っている。唯一ちょっとだけ豪華そうな(というほどのものではないけど)エギナの衣装だけど、あれも布の面積少ないしね(笑)。
やたら舞台は常にただっぴろく、がらーんとしているのだが、それがいい。
セットは、石の壁を思わせる背景の絵?、さらにいつもあるちょっと透けた大きな布(舞台上部にかかっていて、上がったり、下がったり、効果的に使われていた)があるくらいなのだが、この作品の場合舞台セットがシンプルだからこそ、ダンサー達が作り出すドラマが一層ドラマチックに浮かび上がるのだと感じた。



4人の主要メンバーが、それぞれとても役柄にぴったりで素晴らしかった。
スパルタクスのクレフツォフ。
この人は随分前から名前は知っていたが、生で観るのはおそらく初めてだと思う。
誠実そうな顔立ちで、体型もけっこうがっちりしていて、見るからにスパルタクス。ベテランというイメージがあったが、プロフィールを見るとまだ三十代前半なんだね。若々しいというより、落ち着いて重厚な感じ。
こんなに男らしいバレエの主人公(男性が主人公のバレエってそういえば観た事あったかしら?)って初めて観たけれど、演ずるこの方もいい感じだった。
観終わって、スパルタクスって「男の中の男」だなぁ、と思った。身も心も強く、決して悪に負けない、志のある、逞しい男。こういう人物って、バレエの世界はもちろん、現実の世界でもいるの?って感じだから、凄く印象に残った(笑)。

踊り。
これねー、凄すぎるよぉ!!
超人的な動きの連続!跳躍・跳躍・回転・回転・跳躍・跳躍・・・(以下延々と続く)。観ていて、1幕だけでも、あんなの普通の人間がやったら(できないのわかってます。あくまでもたとえです)、し、死ぬ〜っ!!!と思った(^^;;;
ダイナミックとかそんなレベルじゃない。とにかく凄い!
昔ムハメドフのドキュメンタリーで観た、舞台奥から斜めに空を切り裂くような大跳躍で現れるシーンを生でこの目で観て、それだけでも感動。
途中、技に対する拍手が出ていたけれど、普段そういうの嫌いな私も思わずしたくなったほどでした。
恐れ入りました!参りました!ブラボーボリショイ!という感じです、はい。
群舞の皆さんの動きも凄いのに、主役の振りはもう・・・絶句。脚が裂けそう。四肢が、切れそう。とか思ってしまったよ(^^;;;
#うーむ、あれを1回踊ったら、最低3日、いや、1週間は寝たきりで安静。その後1ヶ月ほど療養生活を余儀なくされそうなほどの殺人的な踊りに見えました。

クレフツォフの踊り・・・めちゃくちゃ跳躍が高い、とかそんな感じでもなかったですが、とにかく踊りこんでいて、素晴らしかった。
信じられないようなリフトがたくさんある中で、パートナーを支える力もすば抜けて素晴らしかった。相手が乗る為に反動すらつけていないような状態からいきなりぐわっと高々と持ち上げたり、片手で頭上高く持ち上げたり、といった場面でも、クレフツォフの腕・身体は相手役と共に全く動かず静止しているのにも、感嘆させられた。
役柄にも深く入り込んでいて、ただ1人、広い舞台にいても、たとえ言葉がなくても、スパルタクスの正義感溢れる熱い想い、奴隷としての悔しさ・哀しみ、フリーギアに対する深い愛等々、感情がしみじみと伝わってきて、表現力にも感嘆。
テクニックと内面表現共に完璧で、この人のスパルタクスとても素晴らしかったです。



クレフツォフと共に、印象に残ったのがエギナのステパネンコ。3年ぶりに観たこの方、やっぱりけっこう好きかも。
実際観るまで知らなかったのだが、このエギナはかなり出番&踊りが多く、重要な役どころ。
ステパネンコは前回の来日公演でも観たのだが、その時と全く衰えをみせず、相変わらず素晴らしいテクニシャンだと思った。
何をやっても美しいフォームを保った動き、回転や跳躍もダイナミックでありながら、柔らかくて美しい。わりと小柄なような体型と脚の美しさも好き。
1幕でのエギナのソロの激しさは、今思い出しても凄すぎた。
身体をギリギリまで使った、身体が壊れてしまうかと思われるほどの回転と跳躍の連続。女性ダンサーの動きで、あれほどアクロバティックで男性的な動きは観たことがない。いやー、あれやっただけでも死にそうなのに、その後最後まで全く疲れを見せずに踊っているのが凄いー。
役柄については、悪女なんだけどなぜかそんなに嫌な女に見えなかったのよね(笑)。なんていうか、ちゃきちゃきしてて頭のいい姉さんって感じ?
踊ってる時だけじゃなくて、ポーズをとって(腰に手をあてて、片足を前に出してるポーズをよくやっていたのだが、それがまたかっこよかったなぁ)いるだけでも、なんたがとっても魅力的な姉さんだった。

フリーギアのパーリシナ。
会場へ行ったら、予定のカプツォーワから変更していて「えーっなんで!カプツォーワ観たかったのにぃ〜」と思ったが、実際観てみるとこの人で良かったと思う。その変更の理由というのが、「パートナーリングの関係」とあって、観るまでは???だったのだけれど、実際この作品を観たら納得。
スパルタクスとフリーギアのパ・ド・ドゥ、凄いんだもの!
これ、ほんと下手したら大怪我するね。というわけで、いかにも合ってるカップルで観れて良かったと思う。
パーリシナって名前は聞いたことあるし、即席のプロフィールの顔写真もどこかで観たことある気がするんだけど、だめだ、思い出せない。とにかく、初見ということで。
金髪(でもカツラかも)で、脚(タイツはいてないように見えた)がすらっとしてて、全体的に綺麗でフリーギアって感じの人でした(どういう説明だよ〜)。
エギナのステパネンコとほんと対極っていうか、個性が違ってて、2人を交互に観るとそれぞれの良さがわかった気がした。
クレフツォフとの息はさすがぴったりで、リフトをされている姿なんて絵のように美しく感じられた。
女性らしく、優美で、スパルタクスを心から愛する役どころにほんとぴったりだった。ラストのスパルタクスの屍を見て嘆き、彼に寄り添う姿が感動的でした。

最後にクラッススのルィーフロフ。
特別いいというわけではないけれど、役に合っていたし、良かったです。
大柄なので動きがよく映える。
この人も、ステパネンコ共々あんまり悪者に見えなかったのよね(笑)。
なんか、朴訥っていうか、ちょっと愚鈍そう(ひどい)なクラッススって感じ。
クラッススって軍隊の中では威張ってるみたいだけど、実はエギナの尻に敷かれているんだよね〜(笑)。そんなイメージで、そう感じたのかも?

と、散漫な感想になりましたが(無理矢理まとめる)、やっぱりボリショイは凄い!ボリショイバレエは素晴らしい!ロシアバレエって最高ね!と思い、久しぶりに興奮の余韻抜けきらない公演でありました。
観にいってほんと良かったです・・・。



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