成田と羽田と
シンガポール航空のジャンボは、着陸するために高度を下げていた。
機内のアナウンスで、成田上空が非常に厚い雲で覆われていると聞いた。
確かに、窓越しに見下ろすと黒い雲がかかっている。
天気が相当悪いみたいで着陸できないということだ。
しばらく様子を見るために、そのまま
ターンを続けて天候の回復を待つといことだった。
日本人の客室乗務員のアナウンスが耳に心地よい。
まだ時間があるということで
途中まで見続けていた映画を再生した。
最近の飛行機は座席で好きな番組が見れるので嬉しい。
映画が終わった。
まだ飛行機は飛び続けている。
まだ着陸しないのか?
不思議とターンしてるようには感じない。
相当大回りに回転しているのだろうか・・・・
雲間に海と緑の山が広がっているのがわかる。
・・・ただこの時、飛行機の異常なルートに気がつく者はいなかった。
本日はいよいよ帰国の日。
長かった旅も終わりになると寂しいものだ。
荷物をまとめ12:00頃と遅くにチェックアウト。
夜11:30発の便なので
スワンナプーム空港には午後9時までにつけば問題ない。
それまでの時間をどう潰すか?
さすがに濡れた荷物をリュックにしまいたくも無かったので
カオサンをうろつくのだけはもう止めておこう。
ソンクラーンの水掛け祭りは十分堪能した。
ガイドを確認しつつ考えた結果。
「サイアムスクエア」ってところマンゴープリンとタイスキを食おうと決めた。
手持ちのお金の残金もなんとか問題なさそうだ。
地図で見る限り、エアポートバスのルートはサイアムスクエア近くの国道を通ってるようだ。
多分、停留所の一つもあるだろう(ヒント:勘)
最悪、一旦カオサンロードに戻って、昨日確認したバスステーションから乗り込めばよろしい。
それだけの時間の余裕は十ニ分にあるのだし。
昨日の経験をいかし市バスで「サイアムスクエア」を目指すことに決めた。
一番安上がりだからだ。
目的のバスストップまで歩いて10分程度の距離だった、
そこまでソンクラーンを楽しんでいる連中をすり抜けねばならない。
できるだけ・・・。
いや。
ノーダメージで向かわなければならない。
これまでのダメージ回避ノウハウを駆使して移動。
幸い、真っ昼間はそれほど街中のテンションが高くなかったこともあり
とりたてて水を掛けられることも無く、バスに乗り込むことができた。
ひとまず一安心。
チケット売りのおばちゃんに
サイアムで降りる旨伝えて、無事に到着。
BTSという高架鉄道が発着する場所ということもあってかなり栄えている街だった。
駅前には「東急」のドデカイデパートが幅をきかせている。
重い荷物を背負いながら歩き回るのは骨だったので、
東急デパートに入ってロッカーがないか探す。
中は、日本の百貨店となんら代わりが無い、見知ったファーストフード店がたくさんある。
あいにくとロッカーは見つからず、諦めてデパートを抜ける。
特に、寄り道するほど目新しいものは無く、ただまっすぐマンゴー屋を探す。
本来ならタイスキを食べてから、口直しにデザートであるべきなのだが・・・
なぜかオレはマンゴーを先に食べる方を選んだ。
今となってはなんでだろう?
腹減ってなかったのかな?

ダイソーを発見。
秘密結社せんべいめ・・・こんなところまで・・・
ちょっと駅前から離れるととたんに閑静に。
マンゴー専門店「マンゴータンゴ」を見つける。
店の中はセンスのよい内装。冷房が効きすぎてちょっと寒いよ。
中には2.3人のお客さんが。
すれ違いザマ。
一人で座ってる女性に目が行った。
深くかぶった白いニット帽がえらく目立つ。
ディパックが傍らに置かれていたので旅遠士だとわかる。
日本人だ。
目を通している本が「地球の歩き方」だったからだw
何かを熱心に検討してるように見える。
目は合わなかった。
とりあえずメニューを選ぶ。
専門店だけあってマンゴーのメニューばかり。
マンゴージュース
マンゴープリン
マンゴーアイスクリーム
マンゴーゼリー
マンゴーガンダム
どっれがどれやら。メニュー表を見る限り、マッキッ黄。
どれがどれやら見分けがつかない。
この中から食べて後悔しないベストなモノを選ばねばと、
無駄に時間をかけて悩む。

なんかこんな感じのマンゴーのメニュー頼む。
名前は忘れた。
マンゴーのゲル状の液体に、マンゴーのゼリーだがプリンだかと、生のマンゴーが入ったものをチョイス。
こう書くとまるで美味しそうに感じないだろうが、少なくともスペシャルメニューだったように思う。
よくばりな性格なので、シンプルな商品だけは避けたのだろう。
ガンダムでいえば、スペリオルガンダムあたりだろう。
あっさり平らげる。
美味かった。
マンゴーだなって感じw。
店内禁煙だったのでのんびりすることも無くさっさと店を出る。
さっきの女性に話しかけたかったが、さすがに店内でははばかられた。
・・というより目が合わなかったのでこっちには興味はないようだった。
そのせいかパッと見の印象はクールで寡黙な印象。
店の前で、一服しながら
ガイドブックでタイスキの店を検討する
この近くに二店舗ほどあるのだからどっちにするべきか・・・うーむ。
しばらくしてさっきの女性が出てきた。
オレには目もくれずはドアを挟んで反対側の壁にもたれかかって
タバコに火をつけた。
今回の旅で初めてみる大和撫子の喫煙者でちょっと嬉しくなった。
カッコイイし。
旅の恥はかきすて(二回目)
声を掛けてみた。
冷たい印象だったので、もしかしたら無視かつっぱねるかされるかもな・・・
それはそれでネタになってよろしい。
しかし拍子抜けするぐらいに感じの良い女性だった。
カオサンに数日滞在していたようで、今日これからプーケットの方に向かう予定だと言う。
オレと同じく離陸の時間まで間があったので、どう時間をつぶそうか考えていたらしい。
「オレタイスキを食べに来たんだけど、一人で食べるのは切ないので、付き合って欲しい」
「お腹はそんなにすいてませんが・・・私で良ければいいですよ!」
彼女の勧めで近くのチェーン店系のタイスキ屋に向かう。
昼間だからお客などいないと思っていたが、結構繁盛しておった。
鍋類を真昼間っからつつく国民性にいささか疑問w
野菜セットと肉系セットをテキトーに選んで
ややにごり目のだし汁にバンバン節操無く突っ込む。
もう説明するのもおっくうなのでこんな感じ。
これがタイ風スキヤキです。

彼女は人妻だった。
宮城県の仙台に住んでいるそうだ。
旦那をほっぽりだして一人旅に出ているのだとか・・・
一人べらべら話すオレの旅の話をウンウン熱心に聴いてくれた。
店でのパッと見の印象と違って、非常に落ち着いたできたオネーサンだった。
ごちそうさま。

ほとんどオレが食べてしまいました。
味はフツーでした。
また食べたいなーってほどのもんじゃなかったとでもいっておきましょう。
彼女を駅まで見送って別れた。
今日一日、一人で過ごすかと思っていたが
彼女のおかげで救われた。
これでベルゼバブのいる鬼龍城の扉が開かれる!!
さて、少々早いが、オレも空港に向かっておこう。
しばし歩きエアポートバスが通ると思われる国道まで出た。
右か左かどっちに行くか悩んだが、空港とは逆のカオサンロード方面に向かって歩いた。
国道の車の往来は激しいが、歩道はオレだけしか歩いてないようだ。
30分ほど歩くもソレらしき停留所が見当たらない。
その代わり交番を見つけたので、聞いてみた。
警官は間逆の方向を指差した。
どうもアテが外れたみたいだった。
「ハウロング?」
距離を聞いたが、全然ききとれねぇ?
ともかく逆に向かって歩けばいいんだ歩けば!
金はあったのでタクシーを使えば済むことだったが
ココはひとまず歩いておきたかった。
そして脳裏をよぎり思い出の数々・・・(ウソ)
徐々ににぎやかになってきた。
子供達が店先で、水鉄砲を撃ち合っている
撃たれちゃかなわんとホールドアップしてやり過ごす。
しかしなかなか停留所は見当たらない。
・・・と思っていたら
エアポートバスがオレを横切って突き進む。
ヤ・・ヤベ!あれだ!
慌てて走る。
しかしバスは止まる気配が無い。
商店街の前で、停車する。
「うおおおおおお!」
全速力で追いつく。
しかしそこは停留所ではなかった。
ドアが開いていない。
信号待ちをしていただけのようだった。
「の・・・のせてくれぇぇぇ」
窓をバンバン叩いて、オレは中の運転手に存在をアピール。
そんな中、面白がって近くの子供がオレにウォーターガンで撃ってくる。
やめろ。
オレに気がついた運転手は動き出そうとしたバスにブレーキをかけ、搭乗口を開けてくれた。
オレは滑り込むように中へ。
もう一人、オレと同じようにメガネの外人がバスに駆け込んできた。
もう子供に撃たれまくってその人は全身びしょ濡れだったw
なんとか無事二人を乗せ。バスは出発。
気の良さそうなバスの運転手が
「良かったねー。危なくおいていくところだったよ」
的な事を言ってくる。
隣に座る助手?の女の子と笑いあっていた。
「お金はまだいいよ。空港についたらそこで精算して」
お客さんはオレとメガネのおじさんの二人だけ。
ほとんど貸切で優雅なもんだ。
どうも『回送』バスだったようだ。
午後4時ごろスワンナプーム空港に到着。
形状の美しい空港を晴れ間に見れたのでラッキーだったかも。
バス代は100Bだった。
財布に残っていたバーツと$を日本円に両替した。
たったの2000円と、何枚かのコインが帰ってきた。
これだけあれば成田からの電車の費用はまかなえるだろう・・・・多分。
手持ちの10万円はぎりぎり足りた計算だ。
カード払いした額も、1万円にもみたないだろう。
これで1ヶ月も滞在できるのだからおそれいる
しばらくジャンボは飛んでいた。
ポーン。
「成田へのの着陸許可が下りた」とアナウンスが流れる。
無事に着陸。
ナイスランディング。
なんだか風景に違和感を覚える。
成田ってもう少し林が多かったような・・・・拡張工事でもしたのかな????
まあいいや、シートベルトはずすサインが出たので
乗客たちはみな荷物を降ろして搭乗口に向かおうと準備を始めた。
するとオレの隣の会社員が・・・同僚らしき人とささやきあってる。
「おいここ羽田じゃないのか?」
「え、成田だろ?」
羽田?
慌てて外を見る。確かに羽田のような気がするが、視界から海が見えない。
ざわ ざわ ざわ
同じような感じで機内がザワツキ始める。
ポーン。
「大変申し訳ございません。当機は、天候不良のため回復後に成田空港に着陸予定ではございましたが・・・
回復の見込みが無く着陸は危険と判断し、急遽、機長の判断により東京羽田空港への着陸をすることとなりました。
みなさまにお伝えすることができず大変申し訳ございませんでした・・・・」
・・・的なアナウンス。
会社員。
「ほらやっぱり」
「ああ、ポカだなこりゃウハハ」
と笑う。
珍しいことが起こるもんだな。
成田に着陸しますといって、羽田に着陸してるんだものな。
しかも事後で報告。
乗ってる限りではまるで気がつかなかったよ。
機内の雰囲気からほとんどの人が成田に着陸したと思っていたに違いない。
しかし誰の失敗だコレ?
それとも良くあることなのかな?
どうであれ、これは締めくくりのネタとしてはレアな体験だと思える。
納得した乗客たちは、荷物を持って通路を降り始める。
羽田からの電車であれば多少は近くなったかな?ラッキー。
ポーン。
「大変申し訳ございません。当機は、羽田に待機の後、成田上空の天候の回復を待って再び離陸いたします。
現在、その分の燃料を給油中ですのでしばらくお待ちください。なお、羽田からの入国は審査の都合上できませんので
ご了承ください。準備が整い次第アナウンスいたしますので、それまでしばらく機内にておくつろぎください」
・・・的なアナウンス。
ところどころで
「えー」とも「あー」ともいえないため息が。
シンガポール航空オモシロ!
そしてオレは、二度目の着陸を楽しめたのだった。
こうしてすばらしいオチがついて、「インド汁半島一人旅」は終わりを告げた。
ヤマトの勇気が世界を救うと信じて・・・・!!
完。