俺とスナーとサングラス
昨日はさっさと寝たので
パーティーモロモロの疲れはとれた。
アルコールをばかすか飲んでも、一晩寝ればスッキリ二日酔い知らずな体質は
ありがたい。
にゃー

とかいいながら宿に生息している猫が、
朝食をむさぼってるオレにまとわりついてくる。
オレは猫が嫌いだ。
あいつらは犬と違って、人間様をなめきってる。
とりたてて役にたたねぇくせに
自身の利を得るためには体を張って媚びてきやがる。
自分がかわいがられる事わかった上で、なついてくるその態度に
オレはつねづね一言いってやりたいと思っていた。
可愛さを理解した上で猫をかぶり、もてないフリしつつ、
実は、好みの男が現れたらテキトーな屁理屈を持って
古い男を切り捨てる。しかもそれで後腐れが無いとか
思ってるオメデタイ女を連想させるからだ。
こいつはオレのことを好きでもなんでもない。
オレが食事をわけてくれると思っているのだ。
バカめ!人間様をなめるなこの小動物が!!
思ったとおり俺が食後の一服をしてるまに
皿の残飯をむさぼる。
お皿の隅々までなめつくして満足したのか
親切なオレ様へのアフターケアを忘れないところが小賢しい。
オレがわざと残飯を残しておいたことを一生恩に着ろこのネコ野郎!

くそ!ネコ大好きだ!
今日は40km先のバンタレイ・スレイという
少し遠目のアンコール遺跡に向かうのである。
ショエムリアプの町から離れれば離れるほど
何も無くなる。
道路沿いに、個人で出してる露天がチラホラ点在してるわけなんですが
お客もいないのでみんな暇そうだ。
「ジョーさん昨日は残念だったネ」
「断るの大変だったよ」
「ドミやめてシングルにするね」
「勘弁してくれ」
そんな雑談をしながら突き進む。
1時間半の長い距離をスクーターにニケツは正直辛いが、
乾いた大地を風をきり突っ走ってるので、気分はよろしい。
「おおここがそうか!」

「ワシが一番乗りじゃ」
「まてぃ虎丸!ワシが先じゃあ!!」

「なんとかワットとかと比べるとなんだか小さいのう」
「富樫の脳みそみたいなもんじゃの」
「なんじゃとー!」
「フッ・・・やれやれ。虎丸と富樫のやつらにも困ったもんだぜ・・・」

「なんじゃ?そこかしこにゴチャゴチャしたもんが彫られているぞ?」

「むううこれは!?」
「知っているのか雷電!」
「これは古くは12世紀の国王スラヤバルマン2世の時代にさかのぼる・・・(略)
バンタレイ・スレイとはすなわち「女の砦」という意味なのだ」
「な・・・・なんだってーーっ!!??」
「この像こそは東洋のモナリザと称えられるデバターの浮き彫りなのだ!」
「これがあの伝説の武術を極めたという荒神なのか(ウソ)」

そんな感じで、見物して回る男塾一号生のみなさん。
遺跡の状態がいいのか・・・装飾がきれいに残っているので
見ごたえ十分。
他の遺跡と違って、石の色が赤みがかっているのが特徴的。
彫り物のデザインの意味なんか考えながらボケーと見続けてみました。
見飽きません。
合格。
近くに友人が経営しているシューティングレンジ(射撃場)があるが行ってみないか?
40$でAKとかいうライフルだかなんだかが撃てるという・・・
以前、グアムに行ったときリボルバーの実銃を撃ったことはあったが・・・
ライフルか・・・。
40$はなんかえらく高いと思ったが・・・。ライフルって言葉に魅かれて
とりあえずその場所に行ってみることにした。

なんだか殺風景のな場所につれられてきたが
ここはカンボジア軍の演習所。
その片隅で、シューティングレンジ「ガンサイト」が経営されているらしい、なるほど。
軍のお下がりを使って客からお金を巻き上げる商売を許しているのか軍は・・・
寒い時代だとは思わんか?
ところどころ宿舎があって
軍人さんたちが暇そうにしている
エアコンが無く窓が全開だったので、遠くからでものぞけちゃうのだが・・・
ちょっと前まで戦争とか平気でやってた国なもんで
こういう場所があるのは当然なんだが・・・
だらけている軍人さん見ると、なにか悲しい。
しゃきっとせいよ。
その演習所の中を突っ切って奥の方に店はあった。
平日なので、お客さんがまるでいない寂れたガンサイト。
BGMもかけないで静かな経営なため
気分が盛り上がらないことこの上ない。

戦争で使われた銃のお下がり。撃てないようになっているが好きにいじらせてくれる。
重くて困る。エアガンよりリアルで困る。人がいなくて寂しくて本当に困る。

この人がスナーの友人で、ガンサイトの経営担当。
こう見えても現役の兵隊さん、仮にジーンとしておく。
なんとなく功をあせって失敗しそうな軍人さんなイメージだからだ。
しかしなんかだらしないよチミ。
しゃきっとせいよ。
一番人気だというこのAK−47を撃ってみる。
えらく年季の入った一品なのだが
・・もしかしたら戦争中。この銃が人の命を奪っていたのかもしれないと思うと・・・
でもそんなの関係ない
「死ねおやぁ!!」

バスン!
軽く押すと、強烈な反動。こ・・これはすげぇ。
バススススススン
フルオートで連発で的へ叩き込む。
「こ・・・これがTA・TA・KA・I」
バスンバススンバスン・・・ガチン。
ジャムる。
ジーンがそそくさとやってきて、レバーを力ずくでいじくって
ガシャンと弾ごめ・・・
ジャムるような銃を撃っている自分に疑問をもちつつも
気を散りなおして
バスン・・・ババス・・・ガキン
・・・っておい!
そんなやり取りがしばしば続き、全30発を見事に撃ちつくす結果はこちら

一発も的に当たっとりません。
しかも13発は圏外(笑)・・・死にたい。

ズドーン
とりあえずバズーカでも撃って自分をなぐさめる。
一発60$。
そこまで散財できません。
ちなみにショートガンは20$。
しかし手榴弾が40$だというのには心トキメイたんだが。
手榴弾がさっきみたいにジャムって
「カンボジアで、脚ではなく腕をなくしてきた。」
なんてご機嫌なジョークを言うために体を張るのはあまりにもおろかだし(不謹慎)
しかし
お金がドンドン削られていくような一抹の不安がよぎっていたり・・・
40kmの道程を再び舞い戻る。
昨日周り切れなかったアンコール遺跡をしらみつぶしに見て回るのだ。
そのために今朝、再びアンコール遺跡の一日券20$を買っていた。
40km遠方のバンタレイ・スレイもこの券がないと見物ができなかったのだ。
ずっと気になっていたのが道端の露天で売られているこのボトル。
なにかのお酒か?
それにしても汚らしい飲み物だな。

しかたないよ。
だってここ
ガソリンスタンドなんだぜ?

日々値が上がっていくガソリン代に泣くスナー。
こっちは去年に比べると二倍も高騰してるんだって。
目当ての遺跡近くに到着したころにお昼になったので
お店の一つに入って昼食をとることにした。
飯食ってまったりしてるところに
小さい女の子がやってきた。
なんだかよくわからないが妙なグッズを観光客相手に売りあるいているのだそうな。
あまりにもどうでもいいアイテムだったので、冷やかし半分で相手にしていると
今度は別の女の子がアンコール遺跡のポストカードを売り込みに来た。
どちらも1$。
どっちもまるで興味のないしろものだったので
はぐらかし続けていると
最初に来た女の子が
「この人買う気なんてハナっからなかったのよ!」
多分、こんなことをはき捨てつつ
もう一人の子をひっぱって行ってしまった。
こっちのガキンチョは一方的に怒りを露にするから困る。

まーでも写真とってやると笑ってくれるので、いい娘だ。
ほら手にはなんだかよくわからないグッズがいっぱい。
さてここは東メボンってあたりにある遺跡「アプサラ」

写真ではわかりにくいが
地雷で脚を失った人や、仕事に従事できない状況になったおじさんたちが
弦や打楽器で演奏している。
そのような人は遺跡の場所に必ず一組はいついている。
人が近づくと律儀に演奏してくれるわけだが、
無視を決め込むには
なかなか聞き応えのある演奏なのでアレだ。
CDとかも売っていたので、うまくやってるようだ。
立ち寄った外人さんが買おうとしてるね。


こんな感じの遺跡。修復ノウハウのかかれた縦看板を見つけた。
それなりに頭をつかわないとこの手の石積みを修復することはできないのだ。

こじんまりとまとまった建物のわりに、複雑な通路でなので迷ってしまう。
「あれ?ここさっき通った場所じゃない?」
軽く遭難フラグを立てさせられた。

「ごきげんよう比瑪ちゃん。わたしが女神アプサラです。よろしくお願いします」

いいからこっち見んな
ハイ次。
「バンテアイ・クデイ」



かっこよすぎる!
手の入れられていない廃墟に、大木の根っこが伸び放題。
人気が無い遺跡なのかオレしか見物してる人間がいないので秘境感抜群。
タンサー5や蘭堂一家の気分を満喫。
さすがに見ごたえのある遺跡が続くと
時間を忘れて歩き回ってしまう。
ここで一服。
昨日もよったスナーの友達の店に行く。
なぜなら昨日飲んだマンゴーシェイクがあまりにも美味しかったからさ。
これで50円もしないのだからな・・・

おもわずもう一杯おかわり。
さて今一度アンコールワットに顔を出す。
クリエイター仲間の翁くんが
若い時分、イングランド一人旅をしたそうで
その時、スケッチブック片手に色々町を渡り歩き絵を描きまくっていたんだってさ。
・・・そんな粋な事を言うもんで、これはオレもクリエイターの端くれとしていっちょやってみるか!
町で買ったやっすいノートブック片手に、良さそうな構図を探す。
あいにくスケッチブックみたいなものは流通してなくてね・・・
なるべく人気がない場所を選び、よっこいしょと腰掛けてスタート。
さらさらラフ描く。
しばらくしてやめときゃ良かった・・・と思う
その複雑なデティールに早くも根をあげる。情報量多すぎだろ、遺跡。
それに暑いし
気温36℃なんだぜ?
まだラフ状態なところに
なんかわざわざ見物しにくるおじさんおばさんもいて
オレギャラリーしょってまで絵なんか描いていたくないYO!
スナーも待たせてるので1h以上も時間かけてらんない。
描きかけのままその場を後にする。
もうこの旅でスケッチとかするのやめる。
そんな気分の中、写真とってもらう。

実はこの瞬間からオレにケチがつきはじめる。
アンコールワットの近くに、プノン・バケンって小高い丘がある。
アンコール遺跡を360度見渡せる大パノラマ。
そこの夕日はとても美しいのだとか。
行ってみた。

像が歩いてるよ!
しかも15$で背中に乗って丘の上まで連れて行ってくれるんだって。
夫婦やカップルがやいのやいの乗りこんでいる。
オレも・・・。と思ったが
数10$単位で、予算を消費している現在。
そこまでして像に乗る必要があるのだろうか・・・?
いや・・・そもそも一人で乗るのはいかがなものか・・・
とつまらない理由で像はあきらめる。
今更ながら、像に乗っとけば良かったと大後悔。
そしてこの時、帽子に引っ掛けていたサングラスが無くなっている事に気がつく。
結構気に入っていたサングラスなだけに・・・どこでなくしたのか非常に気になる。
その手の思考はついついひきづってしまう性分なのもので・・・
丘を登りながら
サングラスをどこで落としたのか・・・そればっか脳裏をめぐってしまう。

丘にある遺跡には、予想を超えるぐらい人でごったがえす。
イラっ

大パノラマって言われているわりには、アンコール遺跡はぼんやりしすぎて思ったほど見えない。
くっ・・・

そして肝心の夕日。
スナーてめー!この時間に登れば、ちょうど日が沈むタイミングだって・・・・
どうみてもあと1時間ぐらいかかる高さじゃないか!
ちっ・・・
まてどもまてども夕日が沈む瞬間が来ない上、冷静に考えてみれば
地平線はごらんの通り雲で埋め尽くされている・・・
しかもサングラスが気になって仕方ないので
もう帰る!
「どうでしたか?」
「全然サンセットみれねぇ!時間早すぎじゃないのスナー!?」
「そうでしたか・・・ごめんなさい・・・」
「まぁいいや。オレ、サングラス無くしたみたいだから、アンコールワットによって欲しいんだけど」
「いいんですけど・・・。ジョーサンのために夕食、安くて美味しいところ早く連れて行きたいです」
「ああ、さっき話してたところ?」
「んーでも、見つからないかもしれないけど・・・こういうの気持ち悪いから・・・」
「サングラス安い。あとで買えばいいね」
もっともなんだが・・・ここでそれを見つけに行く行かないで
気分的に違うんだな。たとえ無かったとしても
アキラメがつくというイベントはとっても精神衛生上、今のオレにはとても必要なのだ。
と力説して、日がくれつつあるワットによってもらう。
間違いないあの時写真をとって貰う時、俺は帽子を脱いでカメラを渡していた。
そのときに地面に落ちてしまったに違いない!
「ちょっと待ってて」
「はい。できたらお早めに」
なにか少しあわて気味なそぶりのスナーをおいて、入り口に行くと。
係員に止められる。
「こちらは6:00で終了です」
今は6:15。
なんだぁそりゃっ!!
「終わってた」
「そうですか。じゃあ行きましょう」
「はぁ」
「カンボジア、サングラス安い。後で買うね」
『もうそういうレベルでは無いのだよスナー』
スピードを速めてつっぱしるスナー。
そんなに慌てなくても・・・
「ここです」
「うわでかっ!」
「いくらなの?」
「そんなにしないと思います」
「そう。じゃあ、オレ汗かいてるから一旦宿帰ってシャワー浴びさせて」
「・・・いや・・・それは」
「?」
「6:30で予約しているもので・・・」
「ええええええ!?予約?」
「はい、ここは結構人気があるところなので・・」
って気持ちはありがたいんだが・・・・炎天下でスケッチごっごしてたから体ベタベタして気持ち悪いんだが・・・
そんな中・・・こんな店でご馳走食うなんて・・・
「気持ちはわかるが・・・こんなベタベタな状態では・・・」
「そうですか・・・。混まない内にと思ったんですが・・・」
ととても悲しい顔をするので、これはもう入るしかない!
「んじゃ行こうスナー」
「いえ、私は外で待ってます。こことても美味しいゆっくり食べてってください。」
「一緒に食べるんじゃないの!???」
「ここ高いね」
「いやおごるって!こっちもそのつもりだったから」
「いえ、この店私達のような者は入れないので・・・」
もう、なんだか色々とズレまくった事象を背負いつつやむなく店内に入る。
ディナーパーティーが行われそうなだだっ広い会場に、無数のテーブルが並べられている。
ステージもあり、何やらちょっとしたショーが行われるようだ。
人気といわれるだけあって夕食にはやや早い時間にもかかわらず外人さん達で賑わっている。
ボーイに誘導されて、席に案内されるが・・・
なぜかオレは一人用のテーブルを用意されて・・・ステージが一望できる場所に座らされる・・・。

ある意味、すげー落ち着かない状態にされた。
何か安い飯だけ頼んでとっとと帰ろうと思ったが
どうもここはバイキング形式なようだ。うひーいくらするんだ?
いまさら予算聞いたところで予約されてるんじゃ出るに出られまい、ここは腹をくくってひとまず食べとくか。
でも実は、オレそんな腹減ってなかったの(泣)
事前にバイキングだとわかれば、昼飯抜いてたんだが・・・スナーめ。
サプライズのつもりで、そこまでは詳しくは話してくれなかったんだな・・・。
大成功だよ。色んな意味で大サプライズだぜ。
そしてそんなときに限って
クソ豪華で、うまそうな食事がズラーと無数に並べられている。
フルーツも野菜もバラエティーに富んで、充実したスペシャルバイキングなのだとわかる。
豪華なのはいいのだが、広々とした場所で一人で食事を食べるのは、状況に対して嬉しさ大反比例!
何品か惣菜を食ったら、もうすぐにお腹いっぱいになりました。
さすがに美味いし、衛生面でなんら不安が無い食事であることを忘れてはならない。
ショーが始まるのは・・・まだ先なので、フルーツをつまむぐらいしかやることがない。
話し相手もいない・・・
暇だ。
帰りたい。
でもスナーの行為を無にするのも申し訳なく思い。
ショーを見届けるだけはしておこう。
おお、ライトアップが始まりショーが始まりました。
煌びやかな衣装をまとったオネーサン方の演舞がスタート。
会場は大いに盛り上がる。

ステージが一望できる場所なだけに、
遠すぎて全然なにやってんだけわからねぇ!
オレのテンションは盛り下がる。
なにかツマミもうとバイキングのトコに行くと、もう人でごった返して
惣菜つまむのにもレジの順番待ちな状態に。
スナーが混むといったのはホントだったのだな・・・と彼の気遣いに感謝しつつも、
もう惣菜の周りに人がたかっているというほどの混雑ぶりに
キーッ!
そして肝心のお会計
12$(1200円)
安いんだか高いんだか・・・。
この時点で金銭感覚がやや麻痺してることに気が付く。
もうあらゆる事がズレまくっていて、なんともいえないイライラがオレを襲う。
スナーなりに気を使ってもらっているだけに、オレがイラつくのはオカド違いなんだが・・・
はっきりいえば
場末の露店の安くても美味しい食事をスナーと一緒に食べることが出来た方が、
今日のバイキングの何倍も楽しかったに違いないと思う。12$でどれだけ豪遊できることか!
12$なんてさして高額ではないと思えるものの、このカンボジアではかなりの大金のはず。
スナーは、オレをあくまでも日本人の観光客として接待してくれていたのだ。
それはオレの本位ではない。
詳細をスナーに確認した上で、はっきりと断っておくべきだったのかもしれない。
すべては自分で判断しきれていない点が原因だった。
自分で考える事に、この旅の意義を見出そうと思っていたわりには、スナーの案内に身を預けすぎていたようだ。
そんなおれ自身に、に後悔と苛立ちに怒りを乗せて今必殺のサンアタック。
それでもスナーあってのシェムリアプ冒険でもあったわけなので、
明日もスナーと一緒に動き回ろう。
だがこのケチのつけはじめは今日一日で終わることは無かったのだ。
運命という名の歯車はカクジツにオレを蝕んでいくのであった。