再会だらけのビエンチャン
朝、フエに向かって発つ。
隣の都市(というか町)なので3時間ほどで到着する。
タイガーバームの超効果により、日焼けの痛みはほとんど落ち着き。
寝返りを打つたびに痛んだ背中も問題なしだった。
やっぱスゴイ膏薬だコレは。
さて、この時期になると次の国ラオスを視野に入れなければならない。
残りの日数は九日。
まだ一週間以上の余裕はあるとはいえ・・・移動の時間を考えると
北の都市・ハノイへの侵攻は断念せざるをえない結論となった。
フエでの宿は、引き続き同伴している大阪に任せた。
すでに狙いをつけた宿があるというからだ。
「日本語」のはなせるスタッフがいると評判の「ビンジュオン」というホテルだそうだ。
バスから降りると、やけに寂しげな雰囲気、ホテル街から少々離れた場所のようだ。
地図を片手に目的の宿に向かうと
色黒で小柄だが石垣祐磨似のイケメン兄ちゃんが大阪に声をかける。
「宿探してるの?」
露骨に現地の人間だったが・・・流暢に日本語を話してきた。
なんだか軽くて調子のよさ気な態度が気にくわなかったので無視しておいた。
大阪も印象は同じだったのか目すら会わせなかった。
「宿探してるんでしょ〜?ねぇ」
「・・・・」
「いいところしってるよ私」
「自分達で探すからいい」
「どこのホテルいくか?」
「・・・」
日本語をしゃべれるくせに、よりによって話し方がヤタラ軽薄。
なんだか完全に自分で探そうとしている大阪をみかね。
オレが答えてやった。
「俺達はビンジュオンって宿に行くんだ」
「ビンジュオン?それウチのトコだよ〜」
「えーー!」
「そりゃ奇遇だ」
「も〜!早く言ってよ」
・・・って無視してたの俺達のほうジャン。と心の中でつっこむ。
というわけで彼・ユーマにそのホテルを案内してもらう事にした。
その事で、心を許したと思われる大阪は、ユーマと仲良く会話をし始めた。
「彼は君の恋人か?」
「違う違うホイアンで会っただけの人」
「恋人はいるのか?」
「んーいないかな?」
「なぜいない・・・」
「好きな人いるか?」
「どういうところに行きたい?」
「わたし美味しいチェーの店知ってる」
「ホントに!?」
スイーツだ。
どうでも良かったので俺は会話に加わらなかったw
ホテル街らしき一画から細い路地につっこむと
目的の「ビンジュオン」はあった。

二棟あり本店「ビンジュオン1(ワン)」は満室らしく。
チョイ離れた「ビンジュオン2(ツー)」に行かされる。
ロビーで受付すると、こちらもドミトリーやシングルは一杯らしい。
高い部屋が何部屋か空いてるらしいが・・・
オレは最悪別の宿でもいいと考えていたので
大阪の宿が決まるまで見守っていようとソファーに座って待っていた。
そばのデッカイ棚には見知った漫画がズラリと並んでいる
全部、日本の漫画だった。
中々のライナップでさながらちょっとした漫画喫茶レベルに感じる。
かといって海外旅行にきてまで日本の漫画もないな、と思い。手はつけなかった。
スタッフから出された冷たいベトナム茶をすすって時間をつぶす。
すると
階段から、みなれた紫色の衣装に身を包んだ男が現れた。
「あーーっ!ジョーさん?」
「おおっ!」
ムラサキ曹長だった。
聞くと、彼は四日間ほどフエに滞在していたという。
「そんなに居心地いいんだココ?」
「いや・・・あれです。2日ばかり下痢で・・・」
「あらま」
「いや・・・もう死ぬかと思うほど部屋で寝こんでたんすよ〜」
ということらしい。
明日にはハノイへ立つらしい。
ハノイか・・・。
オレは無理だな。
「おい大阪。彼が話していた例のムラサキくん」
「ああー。はじめまして〜!本当にムラサキなんですね〜」(ウソ)
ムラサキ曹長は、ようやく体調も回復したのでウォーミングアップをかねて
市場まで散歩にいくとのことだった。
着いていきたかったが宿がまだまとまっていないので、二人で軽く見送った。
大阪は、高額の部屋か3人部屋を一人で泊まるかで悩んでいたようだった・・・
「なんならオレと同室するかね?シェアすれば安く済むんじゃね」
「やだ!」
「だよな」
そんな中、例の二人組みが受付にやってきた。
「あっ!」
「おお!」
「ジョーさん。もうこっち来てたんだ?」
ふたりはプリキュア・桃と伊達のコンビだった。
ホイアンには一日しか滞在しなかったらしい。

「おい大阪。これが話していた例のふたりはプリキュアだ」
「ああー。はじめまして〜キュアタオルです」(ウソ)
と軽く挨拶を交わす女性陣。
格好からテンションまで間逆の雰囲気だったので、傍からみていて奇妙な事この上なかった。
ほどなく女性3人で部屋をシェアするとかしないとか相談しつつ。
とりあえず女性陣は部屋の状態を見に上にいった。
大阪が降りてきた。
「部屋決めたよ。最上階の部屋が、エアコンとかバルコニーとかついてて良かったの」
「そうかすごいな」
「高くつくけど、部屋の中にパソコンあってね。ネットもできるのよ〜」
「ほえーそりゃいいなぁ!」
「あの二人はどうした?」
「高いけど、ダブルの部屋にするとか言ってた」
「まぁ二人いるしなシェアすりゃ半額だもんよ」
「ジョーさんはどうするの?」
「今から交渉する」
・・・といっても残された部屋は3人部屋じゃないか?
話を聞くと12$だという。おやま安いじゃん。
カード払いもできるというので、その3人部屋にすることに決めた。
クソ広くって困る。
困るというか、ベット二つが勿体無くってな。
「ダブルを一人で」は経験したが、
トリプル一人はさすがに「もったいないオバケ」が出てきそうだった。
ここフエには阮朝の王宮があり、そこがえらくでっかくって有数の観光スポットだった。
まずはそこへ行ってみようということになった。
「あたし、準備してくる」
と彼女が部屋に戻ったので、準備の必要のない俺はまた待たされる事に・・・
こりゃ長くかかりそうだな・・・と宿の外の路地に出てみた。
すると
そばの小売店からドリンク片手にメガネのヒョロイモジャ毛のEU系兄ちゃんが現れた。
「フランキー!?」
「おお!ジョー?」
「また会えたな・・・」
「おう・・・私、急ぐ。午後の便でハノイへ。バスすぐ発車デス!」
「おうじゃあ急げ急げ!」
「シユアゲン。ハバナイストリップ。グッドラック!」
こうしてフランキーは会ったと同時に慌しく路地を突っ走って行った・・・。
彼もハノイか・・・。定番ルートなんだな・・・。
しかし何この遭遇率・・・?
イデの導きなのか?
王朝に向かう途中のフラッグタワー。
でっかいベトナム国旗がハタメイテイル。
ちょっとした城砦だなこりゃ。
王朝の入り口。入場料は4$(400円)です。

この写真でみるかぎり、しょぼい感じですが・・・中はむちゃくちゃ広いのです。
さて行こうか!
・・・ってタイミングで俺達に謎の小柄な兄ちゃんが流暢な日本語で話しかけてくる。
「日本人の方ですか?私と一緒に王宮を見てまわりませんか?」
ビデオを片手に妙なテンションで話しかけてきたこの兄ちゃん。
名前はレイなんとか。26歳。
なんでも日本に3年間ほど留学していた経験があるとかで、話せるのだった。
多少、疎通に難があったが普通の会話であれば差し障りはなかったので
色々聞けた。
久々の日曜日、兄弟でココを見学しようと約束したがボクだけ遅れた。
中にはすでに妹と姉、そして姉の旦那さんが入っている
待たせているので早く行かないといけないのだ。
日本語をより深くしりたいので、日本人にはよく声をかけて一緒に行動してる。
それは自分にとってとても勉強になるんだ。
そうかい。
最初、チップ目当てのガイドかと思ったが・・・
どうもそうではないようだ。
大阪はずっと怪訝な態度をとっていたが・・・
本当かどうかは結局良く分からなかったので
「悪いけど俺達のペースで回るから」
「そうですか?残念です。中でまた会いましょう!」
・・・と彼はそそくさと受付に向かった。
前向きなヤツだな。

さぁ行くぞ!
日曜日の割りに閑散としたj感じだが・・・
午前中だからだろう。
午後になると陸続と観光客が押し寄せた。

これが阮朝王宮の模型。
かなりの広さだ。
しかし林立してる建物のそのほとんどは戦争によってオジャンになっていたので、
実際は隙間が空きまくっている。

どこだコレは?
まーどーであれこれらのたてものはやはりというか当然というか
「世界遺産」に指定されているありがたい遺物なのであーる。

王朝のえらいさんが乗ってたらしい。
無駄に豪華だ。
100円入れると前後に動く(ウソ)

装飾やレリーフのセンスは素敵だと思った。

なのでそういう装飾ばっかみてるオレ。

何か意味のありそうな掲示板。・・・のような・・・そうでもないような。

王宮周りをグルリととりまく掘り。
手を叩くとショーグンがゆらりと出てきそうな気がしなくもない。
あ、これは「華麗なる一族」のネタね。

装飾。

立派立派。

たかだか手スリにも手の込んだ彫刻がほどこされる。

ごらんのように、王宮内は隙間だらけで見晴らしが良い。
向こうに見えるのはフラッグタワーだ。
日本のお寺とかみたいに、そびえ立つような建築物がみあたらないのがちょっと残念。

東屋も豪華だ。カッコイイ。
陽射しよけしつつ休憩するには持って来い。
んでな・・・
ところどころレイのヤツとは遭遇してしまうので・・・
半ば行動をともにするような感じになった。
思惑とは裏腹に・・・結局、普通の観光客であるのがわかる。
大阪はそれでも打ち解ける事は無い。
意外と人見知り激しいタチのようだ。
・・・というか今日は今朝からなぜか機嫌が悪いようだ・・・。
アノ日であるとしか思えない。
色々聞くと、父親は会社を経営している人らしく
さっぱりした整った身なり、ビデオカメラなんて高価なものを所持してるところから
「金持ちのエリート家系」つまりぼんぼんと察する。
留学できるベトナム人なんて、この国に何人もいないだろうに。
そんな彼らがこのベトナムの将来を背負ってたつのか
弱者から色々搾取するだけの立場になるのか・・・それはわからないが・・・・
それは後の歴史家が判断する事だろう。
色々と話してみると
気さくでデキタ人間と見える。
帝王学とか天然で学んでそう。
いずれ父の後をついで社長さんになるんだろうな。頑張れ。

姉(30)を紹介してもらう。
金持ちそうなファッションに身を包んだ、お高く留まった雰囲気のおねーさん。
スラリとした美人なんだが・・・旦那がどこかにいってしまって一所懸命に探していた。
なのでほとんど話はできなかった。
妹(17)。かわいい。
彼女も近々日本へ留学に行くとか。
最初、なんだか怖がられてしまったが・・・
色々話してる内に打ち解けてくれた。
ただし日本語はほとんど解してないので、簡単な英語での会話となる。
「日本に行くならもっと勉強しとけよ」と喝をいれておいた。
はにかまれてしまった。
可愛いぜコンチクショウ。


そして歩きつかれる俺。
大阪も本調子ではないようで、少し元気がないようだ。

あいかわらずバイクは多い。
ここはスタンド。満員御礼。

橋を渡ってると、真後ろからクラクションならされる。
歩道にも関わらず心無い人間がバイクでつっぱしる。
それが一度ならずも何台も何台も通りなさる。
ルール無用の悪党か貴様ら。
オレの正義の心が燃え上がる。
何台かトーセンボして、歩道を渋滞させてやった。
「悪を持って巨悪を制す」ゼロの言葉だ。
大阪が少しダルそうだったので先に宿に帰ってもらう。
オレはここからラオスへの行き方を探索しなくてはならない。
知人の話しではフエからラオス行きのバスが出ているはずだ。
A:「シンカフェ」
B:「宿近くの旅行代理店」
C:「宿お抱えの旅行代理店」
と色々相場を見てまわった。
シンカフェが信用がある分30$近くかかる。
やたら高いのはうなずける。
なぜならフエからラオスの首都・ビエンチャンまでの道程は約24時間、
つまり丸一日かかるという気の遠くなるような距離なのだ。
国境を越える手間も入ってるので仕方が無いだろう。
値段のばらつきはあったものの
『21時間で到着。全行程スリーピングバス』ということでB社のチケットを24$で購入した。
夜7:00発〜夕方5:00着のでたらめにもほどがる長時間運行だった。
他のところは、途中までスリーピングバスで途中から通常のバスの乗せかえられるとかなんとか
しちめんどくさいシステムのようだった。
道中、ずっと足を伸ばせるスリーピングバスは死守しねばならないコンテンツだろ。
ホテルに戻ると、
「あっジョーさん!」
「・・・ん?おお!」
とまたも声かけられる。
ヒゲボーボーのその見慣れた姿は桜間長太郎だった。
思った以上にあっさり再会。
ついでに再会を祝ってw夕食一緒に食おうと誘う。
長太郎は丸一日ここの漫画を読んで過ごしていたらしい。
本棚の漫画はあらかた読みましたって・・・
結構分量あるぞ。
ブラックジャックが良かった。北斗の拳いいすねー等々、
海外で漫画の話をするとは思わなかった。
大阪は、例のユーマに誘われて美味しいチェー屋にいくという。
あれだけ無視決め込んでいたわりには心を許したらコレかよ。
日本語堪能な兄ちゃんなだけに話もしやすいのだろう。
これは邪魔しちゃならないとオレは遠慮した。
ベトナム人とネンゴロになってくれ。
痛い目みないとわからないだろうこの手の娘は。
長太郎の話をしたら、「私も行く」と夕食までに戻ってきてもらう事に。
(そういえば結局チェーなる飲み物に出会う事はなかったな・・・。)
長太郎に薦められた一冊「恐ろしい中国人」とかなんとか言う安っぽい啓蒙漫画と、
ぼろぼろに崩れかけた「沈黙の艦隊」を棚から5.6冊抜き取り部屋までシャワーを浴びに行った。
決めた時間にロビーに大阪が来た。
チェーは美味しかったという。
ロビーには暇そうな若いスタッフ達がソファの座って雑談してたりと、割とのんびりした経営システムのようだw。
大阪は完全にスタッフ(男)どもと打ち解けていたようだ。
色々ちょっかいだされては
「もー!ヤダ〜」
色々ちょっかい出されては
「ひど〜い」
とまんざらでもない受け答えはとても楽しそうである。
どうやら元気は取り戻したらしい。
どうも彼女は典型的な「いじられキャラ」のようだ。
すれていない分スタッフ受けはいいらしく人気者になっていった。
「それはないな」
購入したチケットの話をすると、ユーマがオレにそういう。
「25$ですべてスリーピングバスなんてない」
「どういうことだよ?」
「ジョーさん騙されたね?21時間で到着もあやしいね」
「んじゃどこで買うんだよ」
「ウチで買えば安心だったのに」
「29$は高いだろ」
「高いけど安心。そこ安すぎる心配」
「途中でバス絶対乗り換えさせられる。損したね」
「うるせー。わかんねーだろそんなこと!」
「あ〜あ」とスタッフ連中に、同情されるはめに。
しかし、よもやそれ以上の超惨劇に見舞われるとは・・・・この時、誰が予想できようか?(誰もできない:反語)
このバスでオレは、無駄に金と時間を失ってしまうのだが・・・それはまた後の話である。
集合時間になっても長太郎はこない、すでに20分近く過ぎている。
部屋番号聞いてなかっただけにこれは待たざるをえない。
階段から、桃と伊達、ムラサキ曹長とレゲェでYOYOな髪型をした見かけない兄ちゃんの4人が降りてくる。
ちょとした白銀旅遠士軍団だった。
「俺達、今から王朝がライトアップされているってんで見に行くんすけど・・・」
付き合いたかったんだが・・・・間の悪い事に長太郎のヤツが姿をみせていない状況で同行するわけにもいかず。
丁重に断わった。
ふむライトアップなんて小粋な事やってんだな・・・飯食ったらオレ達も行ってみるかな?
「す・・・すいません」
そして時間30分オーバーで長太郎が眠そうな顔で出てきた。
それがお前の言う「協調性の無さ」か。大納得。
夕食は、ムラサキ曹長お勧めの『水牛のステーキ』が22000ドン(120円)とやらが食える場所。
こちらではバッファローも牛と同じくポピュラーな食材だった。
硬くてアレですが十分美味いですってムラサキのどっちつかずな意見をこの際置いておくとして、
水牛は食ってみたかった。
長太郎に再会して、大阪も大喜び。
『長太郎物語』
□南米篇
□北米篇
□イースター島外伝
□ヨーロッパ25万$フリーキップ制覇篇
と多岐に及ぶ内容を色々聞いて、あまりの旅遠士ぶりに関心を通り越して呆れる。
そしてそんな彼の生き様がとてもまぶしく・・・羨ましかった。
ただ、そろそろ資金も尽きてきたので5月下旬には帰国して。
6月一杯までバイトで30万ほどためて・・・またもとの場所に戻る計画だと言う。
今の、彼の生き様は「世界踏破」の一文字だけであった。
そんな彼にも盲点があった。
海外にばっか出ていたので
日本の名所全然しらねぇの。
出身地の千葉県・松戸からほとんど動いた事が無いという。
そういうことなんだ。
水牛は、硬い牛肉だった。
まあ、肉はえらいよ。いつ誰と食べても美味いんだからさ。
そしてムラサキ曹長達4人を追いかけるように王朝のライトアップを見に行く。
暗い夜道を3人で進む。
相変わらず歩道を無遠慮に突っ走るバイク。
例のごとく悪のパワーでトウセンボしてやった。
一台巧みオレを交わして、かわしついでい俺のお尻をヒトナデした
「いえーい」と走りさるバイクの一団。
殺す!
オレは大阪と長太郎をおいて、全速力で追いかけた。
足には自信があるのだ。
俺に気づいた連中は、スピードをあげてあっという間に夜の闇まぎれていった。
事故レ!そしてお前らはみんな!死ね!
王宮に着いた。
真っ暗だった。