オンライン実務翻訳講座(最新号)

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(第49回)「即戦力がつく英日実務翻訳コース」 2009/9/15

2009年10月より、以下の通学コースを担当することになりました。

「即戦力がつく英日実務翻訳コース」
http://www.edu.dhc.co.jp または「DHC 英語」で検索

今回は、上記コースについて簡単にご紹介したいと思います。

この「即戦力がつく英日実務翻訳コース」はその名の通り、各分野を幅広く網羅した中上級者向けの技術翻訳講座で、即戦力となる実務翻訳力を養成するものです。

また優秀と認められた修了生は、日本最大の翻訳会社であるDHCの文化事業部翻訳部門に推薦、翻訳者として登録されるチャンスがあります。

受講対象としては、

●すでにプロとして活躍している実務翻訳者
●トライアルに合格したいプロ志望者
●デビューまもない翻訳者
●プロとして完成度の高い翻訳をめざしたい方

などを想定しています。

本コースの最大の特長は、徹底的に無駄を省き、学習期間を短縮して即戦力となる翻訳力を養成することです。

また、狭い専門分野にとらわれずに、時代に即してオールラウンドに対応できるプロ翻訳者に要求されるノウハウをマスターしていただきます。

そのため、コンピュータ、IT・通信、バイオテクノロジー、自然科学全般など、科学技術分野を中心とする幅広いドキュメントを題材にし、高度な訳文を仕上げる翻訳上のポイントを演習を通して徹底解説します。

課 題の多くは実際の仕事を題材としたものですが、各分野の基礎知識や専門用語に関しても解説しますので、特定の技術分野の専門がない方でも受講できます。

ま た、学習効果を高めるために、英文和訳だけでなく和文英訳も取り上げます。さらに、講師の多数の著書から重要な内容をピックアップして紹介します。

講座カリキュラムとしては、各期ごとに主に次の分野を取り扱います。

T期(10〜12月):コンピュータ(ハードウェア・ソフトウェア)・IT通信
U期(1〜3月):自然科学記事、ビジネス(契約書含む)、ノンフィクション
V期(4〜6月):バイオ、メディカル、先端技術、環境
 
各期10回で全30回の授業です。多くの分野から構成される教材演習を通して、それぞれの内容が有機的に結び付いて、重要テクニックの理解が深まるように教材構成を配慮しています。

講座内容は、各期とも短文、パラグラフ、長文の重要テクニックの演習・解説を行います。また、各分野のトライアル合格レベルに対応する総合演習も行います。

実務翻訳は基本的に独学だと言われ、「実務翻訳は一生が勉強」であるとも言われています。私がデビューした頃は「理工系の一流大学を出た語学の天才が朝から晩まで10年間翻訳して、やっとまともな翻訳が少しできるようになる」とさえ言われていました。

これまで20年以上の講師経験を通して千数百名の生徒さんを直接指導してきましたが、即戦力として通用するスキルは自己流ではなかなかマスターしにくく、かつ時間がかかるというのが実感です。

本コースでは単一の分野にとらわれない題材を通して、学習期間を大幅に短縮するだけでなく、実務翻訳のもつ面白さ、深さ、厳しさも、できるかぎりお伝えしたいと思っています。


お知らせ:
上記コースの第I期の開講は2009年10月からですが、当ページをご愛読の皆様には特典があります。
当事務所経由でのお申込みの場合に限り、受講費の15%が割引となります。
今回の割引特典はDHCさんのご好意によるものですので、上記DHCホームーページでは15%の割引特典については掲載されておりません。
15%の割引特典をご希望の場合は、「近況について」のお知らせのコーナーをご参照のうえ、必ず当事務所経由でお申し込みください。




(第48回)第一期特待生A(I.M.さん・女性)「応募動機」 2009/8/31

今回佐藤洋一先生が「2009年度特待生」を募集されていることを知り、そのタイミングに何か運命的なものを感じました。私は台湾在住で海外翻訳会社から翻訳の仕事を受けており、この4年 間ずっと佐藤先生のウェブサイトを自分が仕事をする上での励み、そして戒めとさせていただいておりました。翻訳の仕事といっても日本語教育との兼業でごく 限られたものであり、職業を尋ねられて胸を張って「翻訳者」であると答えられるようなものではありません。それでもかねてから将来は翻訳で食べていけるよ うになりたい、そのために佐藤先生のオンライン翻訳コースを受講したい、と思っていました。そして、最近ようやく翻訳一本に絞る覚悟ができ、この7月にそれまでの仕事の中心だった台湾の高校での日本語教師の仕事を辞職しました。もう後には引けません。そのようなタイミングでの今回の願ってもないチャンス、何とか掴み取りたいと思います。

私 が翻訳を志すようになったのは様々なラッキーな要素が重なったためでした。高校時代から英語が好きで、外国語大学の英米学科に進学し、大学卒業後は米国の 大学院に留学しました。当時は翻訳ではなく国際開発に携わるという仕事の夢があったのですが、留学中に台湾人である現在の夫に知り合い、卒業後台湾へ渡り ました。渡台してすぐに日本語教師の仕事を始めました。今考えると自分に日本語を教える資格などなかったのがよく分かりますが、仕事はあったし、とにかく お金が必要でした。その後、結婚・出産を経て3年ほど育児に専念した後、再び日本語教師の仕事を始めました。

翻訳に関してはほとんど経験がなかったのですが、4年 前に英語学習ソフトウェアを開発している台湾の会社から、会社ウェブサイトやソフトウェアの既存の英日翻訳の見直しをして欲しいという依頼を受けました。 以前の翻訳者が日本語を第一言語とする方ではなかったそうで、日本語がおかしいという指摘を顧客から受けたとのことでした。この時に新規の翻訳も担当しま した。英語学習という自分の得意とする分野であり、かつ比較的平易な内容であったこともあり、翻訳について何も分かっていなかった私ですが、この時初めて 翻訳の面白さに触れました。

より深く翻訳に関わるようになったのは同年、別の翻訳依頼を受けてからです。ある出版社の方が私の留学歴などを見て、なぜか上海(本社はシンガポール)の翻訳会社の英日翻訳案件をやらないかと打診してきたのです。正直なところ私に務まるのか自信がなかったのですが、是非にと頼まれ、その10分 後にはもう上海から私のパソコンにソーステキストが届いていました。しかし、その内容は私のまったく知識のない施設防災に関するもの。馴染みのない化学用 語も多く出てきて苦戦しました。右も左も分からない状態でしたが、入念にウェブで調べ物をし、できるだけ丁寧な翻訳を心がけました。たまたまこの案件のク ライアントの要求レベルが高くなかったのが幸運だったのだと思います。以来、その翻訳会社からは継続的に仕事が入るようになりました。

し かし、他のクライアントの案件はそうは行きませんでした。執念のリサーチ力だけでは対応できないものが多く、毎回真っ赤になってクライアントによるチェッ ク済みの原稿が戻ってきます。数々のクレームを経験し、落ち込むことが増えました。私が仕事を受注している翻訳会社は海外エージェンシーであり日本語ネイ ティブのチェッカーがいません。ほとんどの場合、私の納品したものは直接、グローバル企業であるクライアントの日本支社の担当者がチェックすることになり ます。相手は社内用語も文章の書き方も知り尽くしたプロ。修正済みのテキストは自分の翻訳よりも格段によくなっているのを認めざるを得ません。勉強にはな るもののやはり焦りが募ります。

上達するにはどうすればいいのか。ネットで翻訳に関するサイトを読み漁る毎日。そんな中で出会ったのが佐藤洋一先生のウェブサイトでした。当時は先生の「実務翻訳講座」をNo.1から順にすべて読むことができました。むさぼるように一気に読んで、愕然としました。翻訳者はかくも謙虚でなければならないのか。それに、やはり本物のプロは違う。自分の翻訳にかける覚悟も努力も実力もプロには遠く及ばないものなのだと思い知らされました。

そ れからはできるだけ謙虚になることを心がけ、誠実な仕事をし、翻訳会社やソースクライアントに信頼してもらえるよう努めました。私はたまたま海外にいたた めに、勉強よりも先に仕事がやってくるという幸運に恵まれたのですが、それは不幸なことでもあったのだと思います。海外では英日翻訳では日本語ネイティブ の人材が足りないため、全く基礎のない人間にも仕事の依頼が来ることがままあるようです。私の場合、翻訳だけでなく日本語教育もそうで、日本人であるだけ で簡単に仕事が見つかりました。考えてみれば、日本語教育にせよ翻訳にせよ、台湾に来てからというもの自ら努力して掴みとった仕事はほとんどありませんで した。友人や同僚の紹介で気が付けば仕事が舞い込んでいました。日本ではありえない状況でしょう。

 私は本当に幸運だったと思いま す。いえ、仕事が勝手に向こうからやってきたことではありません。それももちろんそうなのですが、本当に幸運だったのは、それをあたかも自分の実力である かのうように勘違いしたままで終わらなかったからだと思います。それぞれの分野で本物のプロと呼べる方々に出会い、自分がいかにプロとしてだめであるかに 気づいたことです。日本語教育では様々な職場で日本語教育という仕事に矜持を持ち、常に自己研鑽を忘れない先生方に出会いました。その結果、畑違いの自分 も少しは本物に近づこうと日本語教育について体系的に勉強し、試験を受け資格を取りました。翻訳では佐藤先生との出会いが大きかったです。もちろん、直接 存じ上げていたわけではないし、ウェブサイトを読んだだけで突然翻訳力がつくものでもありませんが、佐藤先生の文章からは誠実さと徹底したプロ意識が感じ られ、先生のウェブサイトを拝見するようになってからは自分が翻訳に対して取る態度が確実に変わりました。まともに翻訳の勉強をしていない私がこの4年間、同じ翻訳会社からコンスタントに仕事をいただいてきたのは、誠実・謙虚な仕事で翻訳会社と信頼関係を作ることができたからだと思います。

佐 藤先生のウェブサイトで募集されている各種のオンラインコースは魅力的でした。海外にいる自分は翻訳学校に通うことはできませんし、通信講座も決して安く ありません。そんな中、手頃な受講料で自分のロールモデルである先生から学べる佐藤先生のオンラインコースはいつか受けたいと思っていました。

 ここ数年は、日本語教育と翻訳 のどちらにも絞れない中途半端な状態が続きました。どちらもそれ一本で食べていけるほど極めていないし自信もありませんでした。しかし時間の経過とともに 日本語教育における自分の資質や将来性に限界を感じるようになりました。翻訳のほうは少しずつ手ごたえを感じ始めました。時折クレームが付くのは相変わら ずですが、以前のように翻訳の仕事が辛いと思うことが減り、翻訳をしている自分に喜びを見出すことが増えました。

自 分が本当にやりたいのはどちらなのか見極めるために、これまでの自分を振り返る作業を行いました。昔から英語が好きで大学でも英語をやり、大学院も米国を 目指したこと。その反面、英会話が苦手で、英語が大きなコンプレックスになっていること。それでも渡台後も強迫観念のように英語に関する勉強を続け、英検 やTOEICを受けたり、時々翻訳コンテストに応募したりしていること。結局私はずっと英語をやってきたのだ。自分の情熱はやはり英語にある。そう確認しました。

も ちろん仕事としてやっていくには情熱以外の要素も考慮しなければなりません。私のように海外在住、しかもまだ小学生の子供がいる身には、パソコンさえあれ ばどこにいても世界中を相手に働け、通勤時間もかからない翻訳の仕事は魅力的です。もしも将来日本に生活の拠点を移した場合、私の経歴では日本語教育の仕 事はまず見つからないでしょう。でも、翻訳は違います。そして努力次第で高収入も得られます。

こうして日本語教育ではなく翻訳で食べていく決心をしました。日本語教育に関してはできることはすべてやりもう悔いはないと思えたので、この7月に収入の中心となっていた高校の仕事をやめました。もう逃げ道はありません。何とか翻訳で稼げるようにならなければなりません。それにはさらなる勉強と、より多くの翻訳会社からの受注が必要です。

そんな矢先に佐藤先生のウェブサイトで知った特待生の募集。今なら時間もあるし、TRADOS、英和、和英とすべてのコースが無料で受講できたら、そんなに素晴らしいことはありません。

TRADOSの 必要性は早くから感じていましたが、兼業で翻訳収入が限られている私には大きすぎる投資に思えました。しかし、過去に自分が担当したものと類似の案件を受 けるたびに、関連のファイルを探して参照するのに多大な時間を費やすという歯がゆい思いをすることも増えていました。また、最近は翻訳会社からたびたびTRADOS使用案件の打診があり、やはり本格的に翻訳をやるには入手しなければならないと感じていました。それで先日、ついにTRADOSを購入したところなのです。(しかし、まだ使っていません。)

英 和翻訳に関してはいうまでもありません。常日頃、実際の仕事を通して自分の足りなさを一番痛感している部分だからです。これまで様々なウェブ上および書籍 の資料を参考にしてきましたが、体系的に翻訳者になるための勉強をしたことはありません。佐藤先生の「コンピュータ翻訳入門」は非常に参考になりました が、より深く、直接先生のご指導を仰ぐことができたらどんなに良いだろうと思います。以前佐藤先生のオンラインOJTコー スのダイジェスト版のみ受講させていただきましたが、その折には、海外の翻訳会社とのみ取引をしている自分の仕事のやり方が、プロの翻訳者として日本で活 躍していくには全く通用しないものだと思い知らされました。佐藤先生の下で日本でも海外でも通用するプロの翻訳を徹底的に学びたいです。

和 英翻訳に関しては、自分には無理なのではと半分あきらめており、打診されても断ってきました。しかし、その反面、英訳こそ自分の力を生かせるのでないかと いう漠然とした思いもありました。大学、大学院と常に英語は身近な存在で、読み書きに関してはかなりやってきたという自負があります。しかし、これまでに 私が書いてきた英文は自己流で、翻訳となるとほとんど経験がありません。佐藤先生の英作文に関する著書もいくつか読ませていただきましたが、やはり英訳を 仕事にするにはきちんとした学習が必要だと感じました。もしも特待生として受講させていただけるなら、絶対にものにして見せるという思いがあります。

今回、応募させていただくのは、自分を追い込いこむことでのみ前進できると思うからです。かつてのようにチャンスが向こうからやってくるのを待っていたのでは、とてもプロの翻訳者として自立できる日はこないでしょう。そして今の私には悠長に構える時間もありません。

今の私には足りないものだらけです。翻訳技術はもちろん、翻訳スピード、PCや翻訳支援ツールの使いこなし、日本語表現力、精神的なタフネスと営業力。これら全てが課題ですが、佐藤先生のオンラインコースの受講でかなりの部分克服できる、そして、克服してみせると思っています。

目 標は他人に職業を聞かれたときに自信を持って「実務翻訳者」であると答えられるようになることです。そのためにはいかなる努力も惜しまない覚悟でいます。 これまで学業や仕事を通じて培ってきた根性だけは誰にも負けないつもりです。もしも今回特待生として選んでいただけたなら、決してそれを無駄にしない自信 があります。佐藤先生に私を選んでよかったと思っていただけるように日々邁進したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


 
第一期特待生@(A.N.さん・男性)「応募動機」 2009/8/31

私は現在40代前半です。大学院 を中退した20代後半からフリーランスの翻訳者を目指してきました。30代半ばから40歳になるまで、パソコンメーカーで派遣社員としてノートパソコンの 開発補助の仕事をしながら英語学習を続けました。翻訳業務はありませんでしたが、仕事の中で英語を使う局面があったのが救いといえば救いでした。そしてと うとう2年前、半導体メーカーに社内翻訳者の仕事を見つけることが出来たのです。

 最 初の半年間はとても緊張しました。翻訳者として仕事をするのは産まれて初めてなのですから、当たり前といえば当たり前です。その職場では、依頼される翻訳 のほとんどが日英翻訳だったことも大きかったのだと思います。今まで私がしてきた翻訳学習は、そのほとんどが英日翻訳に限られていたからです。

 この2年間の経験を礎にして、さらに翻訳者としてのスキルを高めていこうと考えていたのです。

それなのに結局私を待っていたの は、「派遣切り」の運命でした。地方にある半導体製造ラインが縮小され、それにあわせて工場での余剰人員整理を進めるために、配属先の半導体メーカーが派 遣社員契約打ち切りを決定し私は今月末に職を失います。話を上司より聞かされたときにはショックを受けました。せっかく駆け出し翻訳者として働き始めたの に、僅か2年でその職を失うとは思ってもいなかったからです。

 私 が現在、考えていることは翻訳者としての実力を今こそきちんと固め、もともと私の目標であったフリーランスの翻訳者を目指そうということです。どうせ不安 定な身の上なら、技術翻訳のプロとして独立する道を選ぼうと考えたのです。そしてそのために今私が学んでおくべきスキルがあると思うのです。特待生として 全オンラインコースを無料受講できたら、そのスキルを身につけるために大いに役立つと私は考え、今回応募させていただいた次第です。

 私 が学ぶべき事柄と考えているのは以下の事柄です。まず何よりも大事なのは、日本語、英語の双方に関してきちんとした読解力を身につけることです。ただし、 日英翻訳と英日翻訳ではそこで要求される読解力の性質が異なる場合もあると思うのです。英日翻訳の場合、まず読み取らなくてはいけないのは自分にとって外 国語である英語文書です。鍵となるのは、どこまで正確に筆者の意図を読み取れるかです。その際に私が導きの糸として使おうとするのは、文書を読みながら筆 者の頭にあるだろう論理のラインが、きちんと自分に見えているか自問するという方法です。それが見えているときには筆者の意図を読み取っているとおおむね 理解できていると思いますが、そうでないとき、つまり文と文のつながりがわからず細切れにしか理解できないときには、筆者の意図を読み損ねていると考えて いいと思うのです。まず、その論理のラインを英語文書の中に読み解く能力を身につける必要があります。

 た だ、それはあくまでも文書の要旨に関わる部分で、文書の細部に関しては原文をどこまで理解できたときに、翻訳準備が整ったと考えるのかも重要です。技術翻 訳の分野で扱う文書はそれが英日翻訳であれ、日英翻訳であれ、予備知識無しに理解できるものではありません。もちろん、様々なツールを使って必要な情報を 集め、それを元に原文を理解するわけですし、理想的には書き手と同等レベルの知識が必要なのだと思いますが、現実的にはそれは不可能に近い要求でしょう。 ただ、ここまで理解していなければ原文に込められた意図を理解したことにはならない、ここまで理解していれば当座は問題ないというレベルがあるはずだと思 うのです。その見極めがプロとしての翻訳者にとってとても大事なのだろうと思うのです。その見極めの力を身につけたいと思います。

 筆 者の意図を正確に読めて初めて翻訳に取り掛かるわけですが、そのとき英日翻訳の場合には私たちには大きなアドバンテージがあるはずです。私たちの母語が日 本語だからです。読み取った内容を日本語で表現する場合、どのような言葉を選ぶのがもっともふさわしいのかを私は日本語ネイティブの視点から吟味すること が出来ます。そして、自分が書いた訳文を文体の面から評価することすら可能です。意味としては適切でも技術文書にはふさわしくないような語彙や言い回しを 用いてしまっても、推敲の段階でそれに気づいて訂正することが出来ます。もちろん、私が日本語のネイティブだからこそ見落としてしまいがちな要素もありま す。それは先生が著書の中で論じられているような要素です。この部分も私はオンライン・コースの中で学び取りたいと思っています。

 日 英翻訳の場合、状況はかなり違います。多くの場合、日本の技術者はテクニカル・ライティングの教育を受けておらず、彼らの技術文書には多くの不備があるよ うに見えます。内容上重複し冗長な表現が多く、その割には肝心な部分が曖昧で、ある動作の主体が誰なのか、ある行為を受ける客体が何なのか、明確に特定で きない場合も珍しくありません。社内翻訳者であれば、書き手に直接質問することが可能ですし、事実私はこれまでそうしてきましたが、フリーランスの翻訳者 の場合はそれが出来ないことも多いと思います。そのときにどのようにその問題を解決するのかを私は学びたいと思います。

 日 英翻訳の場合には、読み取った原文の内容を自分にとって母語ではない言葉で適切に書き表さなくてはなりません。そのときに注意しなくてはならないことはた くさんあります。個々の文を正確に、かつ簡潔に表現するためにコロケーションに注意しながら語彙を選び、適切な構文を選択するということはもちろん大切で すが、それと同じように文と文とのつながり、つまり文脈を上手に表現することも重要です。一文一文を見るとほぼ正確に訳されているが、通して読んでみると 読みにくい、筆者の意図がどこにあるのか読み取りにくいというのでは良い訳とはとてもいえません。

 一 つだけ具体例を挙げるなら、英語と日本語では接続詞の扱いがずいぶんと違うように思います。もちろんどちらの言語にも接続詞はありますが、英語の場合、普 通多用されるものではないと思うのです。文章が論理の流れに従っている限り、接続詞を使用して読書の意識をことさら文頭で誘導する必要がないからでしょう か。それに対して、日本語の文章には、「しかし」や「つまり」といった(英語にもある)接続詞は無論のこと、「とは言うものの」とか、「ちなみに」のよう な文と文とを無理につなぎ合わせたり、論理の流れを意識的に不鮮明にしたりするような接続詞がむやみに多いように思うのです。

前者はともかく、後者タイプの接続詞は英語に訳す場合に、かな りの工夫が必要です。私はなるべく、日本語の接続詞をそのまま英語に訳さずに(土台、そんなことは不可能です)、論理の流れの中にうまく織り込むことで消 してしまおうとしますが、そうすると原文の日本語文書が持っているパラグラフ構造を相当程度、見直さなくてはならなくなって苦労します。私を含めて日本人 が書く英語には接続詞がむやみに使われている印象がありますが、それは明らかに日本語での癖を引きずっているからだと思うのです。

 英 語の技術文書では、各パラグラフの独立性が高くて、各パラグラフの中にストーリー(とはいっても、物語の意味ではないので起承転結でないですが)があるの が普通です。そして、さらに大きな論理の流れを形作るために、各パラグラフが結び合わされます。その結果、パラグラフ内の論理よりも一回り大きな論理が生 まれ、その作業を積み重ねて、一つの論文なり、一つのドキュメントなりが出来るわけです。

日本語の原文を読んで読み取った内容を、自分の母語ではない英 語を使って言い表すときに、どのようにして英語の技術文書が持つべきパラグラフ構造を作り出すのか、大局的に見たときにはそこが日英翻訳で最も重要な要素 になるのではないでしょうか。私がオンライン・コースの中で習得したいと考える最後の要素はそのパラグラフ構造を作り出すスキルなのです。

 私 には夢があります。技術翻訳(英日・日英)のスキルに熟達し、いつかは英語でのテクニカルライティングのプロとして第一線で働くというのがその夢です。そ の実現のためには、ここで翻訳者としての基礎体力を磐石にしておくことが必須であると思うのです。まさに、今回の特待生の募集は私に与えられた人生最大の チャンスなのではないかと思われるのです。










 




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