第5編 相続
第4編 親族

 
第1章 総則

第882条【相続開始の原因】
 相続は、死亡によって開始する。

第883条【相続開始の場所】
 相続は、被相続人の住所において開始する。

第884条【相続回復請求権】
 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った
時から5年間これを行わないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年
を経過したときも、同様である。

第885条【相続財産に関する費用】
@
 相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。但し、相続人の 過失によるものは、この限りでない。
A
 前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産を以って、これを支 弁することを要しない。


 
第2章 相続人

第886条【胎児の相続能力】
@
 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
A
 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。

第887条【子及びその代襲者】
@
 被相続人の子は、相続人となる。
A
 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当 し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲 して相続人となる。但し、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
B
 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該 当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合にこれを準用する。

第889条【直系尊属・兄弟姉妹】
@
 左に掲げる者は、第887条の規定によって相続人となるべき者がない場合に は、左の順位に従って相続人となる。
第1  直系尊属。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
第2  兄弟姉妹
A
 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合にこれを準用する。

第890条【配偶者】
 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、前3条の規定によって
相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

第891条【相続人の欠格事由】
 左に掲げる者は、相続人となることができない。
 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に在る者を死亡するに至 らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。 但し、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血 族であったときは、この限りでない。
 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、又 はこれを変更することを妨げた者
 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消さ せ、又はこれを変更させた者
 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

第892条【推定相続人の廃除】
 遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮
辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、
その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

第893条【同前―遺言による廃除】
 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その
遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければならない。この
場合において、廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

第894条【廃除の取消し】
@
 被相続人は、何時でも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求すること ができる。
A
 前条の規定は、廃除の取消しにこれを準用する。

第895条
@
 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後、その審判が確定する前に相 続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によっ て、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。廃除の遺言があったと きも、同様である。
A
 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第27条から第29条の規定を準用す る。


 
第3章 相続の効力


 
第1節 総則

第896条【相続の一般的効果】
 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

第897条
@
 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の 祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀 を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。
A
 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、前項の権利を承継すべき者 は、家庭裁判所がこれを定める。

第898条【共同相続―相続財産の共有】
 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

第899条【同前―権利義務の承継】
 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。


 
第2節 相続分

第900条【法定相続分】
 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、左の規定に従う。
 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分 の1とする。
 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、 直系尊属の相続分は、3分の1とする。
 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、 兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものと する。但し、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父 母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹 の相続分の2分の1とする。

第901条【代襲相続分】
@
 第887条第2項又は第3項の規定によって相続人となる直系卑属の相続分は、 その直系尊属が受けるべきであったものと同じである。但し、直系卑属が数人ある ときは、その各自の直系卑属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従 ってその相続分を定める。
A
 前項の規定は、第889条第2項の規定によって兄弟姉妹の子が相続人となる場 合にこれを準用する。

第902条【推定相続分】
@
 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、 又はこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続人又は第三 者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
A
 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを 定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定によってこれを定め る。

第903条【特別受益者の相続分】
@
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しく は生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時におい て有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条 規定によって算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額 を以ってその者の相続分とする。
A
 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺 者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
B
 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺 留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する。

第904条【同前】
 前条に掲げる贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的たる財産が滅失し、又
はその価格の増減があったときでも、相続開始の当時なお原状のままで在るものとみな
してこれを定める。

第904条の2【寄与分】
@
 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続 人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与 をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共 同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第9 00条から第902条までの規定によって算定した相続分に寄与分を加えた額をも ってその者の相続分とする。
A
 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所 は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続 財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
B
 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を 控除した額を超えることができない。
C
 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910 に規定する場合にすることができる。

第905条【相続分取戻権】
@
 共同相続人の一人が分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同 相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
A
 前項に定める権利は、1ヶ月以内にこれを行わなければならない。


 
第3節 遺産の分割

第906条【分割の基準】
 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心
身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

第907条【分割の実行】
@
 共同相続人は、第908条の規定によって被相続人が遺言で禁じた場合を除く 外、何時でも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
A
 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすること ができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができ る。
B
 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺 産の全部又は一部について、分割を禁ずることができる。

第908条【遺言による分割の指定又は禁止】
 被相続人は、遺言で、分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託
し、又は相続開始の時から5年を超えない期間内分割を禁ずることができる。

第909条【分割の遡及効】
 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。但し、第三者の権利
を害することができない。

第910条【分割後の被認知者の請求】
 相続の開始後、認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合
において、他の共同相続入が既に分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払
の請求権を有する。

第911条【共同相続人間の担保責任】
 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保
の責に任ずる。

第912条【同前―債務者の資力の担保】
@
 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が分割によって受けた債権 について、分割の当時における債務者の資力を担保する。
A
 弁済期に至らない債権及び停止条件附きの債権については、各共同相続人は、弁 済をすべき時における債務者の資力を担保する。

第913条【同前―無資力者の担保責任の分担】
 担保の責に任ずる共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還す
ることができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各々その相続分に応じてこ
れを分担する。但し、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求
することができない。

第914条【同前―遺言による特則】
 前3条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、これを適用しな
い。


 
第4章 相続の承認及び放棄


 
第1節 総則

第915条【承認・放棄をなすべき期間】
@
 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、 単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し、この期間は、利害 関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において、これを伸長することがで きる。
A
 相続人は、承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

第916条【同前】
 相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相
続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から、これを起算する。

第917条【同前】
 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第915条第1項の期間は、その
法定代理人が無能力者のために相続の開始があったことを知った時から、これを起算す
る。

第918条【相続財産の管理・保存】
@
 相続人は、その固有財産におけると同一の注意を以って、相続財産を管理しなけ ればならない。但し、承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
A
 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、何時でも、相続財産の保 存に必要な処分を命ずることができる。
B
 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第27条から第29条の規定を準用す る。

第919条【承認・放棄の取消し】
@
 承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、これを取り消すことができな い。
A
 前項の規定は、第1編及び前編の規定によって承認又は放棄の取消しをすること を妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から6ヶ月間これを 行わないときは、時効によって消滅する。承認又は放棄の時から10年を経過した ときも、同様である。
B
 前項の規定によって限定承認又は放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家 庭裁判所に申述しなければならない。


 
第2節 承認


 
第1款 単純承認

第920条【単純承認の効果】
 相続人が単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

第921条【法定単純承認】
 左に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。但し、保存行為及び第602 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は放棄をしなかったとき。
 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部若しくは一部を隠匿 し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき。但 し、その相続人が放棄をしたことによって相続人となった者が承認をした後は、こ の限りでない。


 
第2款 限定承認

第922条【限定承認の効果】
 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済
すべきことを留保して、承認をすることができる。

第923条【共同相続人の限定承認】
 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをする
ことができる。

第924条【限定承認の方式】
 相続人が限定承認をしようとするときは、第915条第1項の期間内に、財産目録を
調製してこれを家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

第925条【相続財産と相続人の財産との分離】
 相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しな
かったものとみなす。

第926条【相続財産の管理継続義務】
@
 限定承認者は、その固有財産におけると同一の注意を以って、相続財産の管理を 継続しなければならない。
A
 第645条第646条第650条第1項、第2項及び第918条第2項、第 3項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第927条
@
 限定承認者は、限定承認をした後5日以内に、一切の相続債権者及び受遺者に対 し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しな ければならない。但し、その期間は、2ヶ月を下回ることができない。
A
 第79条第2項及び第3項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第928条
 限定承認者は、前条第1項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済
を拒むことができる。

第929条
 第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産を以って、その期
間内に申し出た債権者その他知った債権者に、各々その債権額の割合に応じて弁済をし
なければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。

第930条
@
 限定承認者は、弁済期に至らない債権でも、前条の規定によってこれを弁済しな ければならない。
A
 条件附きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の 評価に従って、これを弁済しなければならない。

第931条
 限定承認者は、前2条の規定によって各債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に
弁済をすることができない。

第932条
 前3条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定
承認者は、これを競売に付さなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の
評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができ
る。

第933条
 相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することが
できる。この場合には、第260条第2項の規定を準用する。

第934条
@
 限定承認者が、第927条に定める公告若しくは催告をすることを怠り、又は 第1項の期間内にある債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の債権 者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた 損害を賠償する責に任ずる。第929条から第931条の規定に違反して弁済をし たときも、同様である。
A
 前項の規定は、事情を知って不当に弁済を受けた債権者又は受遺者に対する他の 債権者又は受遺者の求償を妨げない。
B
 第724条の規定は、前2項の場合にも、これを適用する。

第935条
 第927条第1項の期間内に申し出なかった債権者及び受遺者で限定承認者に知れな
かったものは、残余財産についてのみその権利を行うことができる。但し、相続財産に
ついて特別担保を有する者は、この限りでない。

第936条
@
 相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人 を選任しなければならない。
A
 管理人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に 必要な一切の行為をする。
B
 第926条から前条の規定は、管理人にこれを準用する。但し、第927条第1 項に定める公告をする期間は、管理人の選任があった後10日以内とする。

第937条【共同相続と法定単純承認】
 限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第921条第1号又は第3号に掲
げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産を以って弁済を受けることができなか
った債権額について、その者に対し、その相続分に応じて権利を行うことができる。


 
第3節 放棄

第938条【放棄の要件】
 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

第939条【放棄の効果】
 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかったものとみ
なす。

第940条【相続財産の管理継続義務】
@
 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を 始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意を以って、その財産の 管理を継続しなければならない。
A
 第645条第646条第650条第1項、第2項及び第918条第2項、第 3項の規定は、前項の場合にこれを準用する。


 
第5章 財産の分離

第941条
@
 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から3ヶ月以内に、相続人の財産の中か ら相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続 人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後でも、同様である。
A
 家庭裁判所が前項の請求によって財務の分離を命じたときは、その請求をした者 は、5日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと 及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、 その期間は、2ヶ月を下回ることができない。

第942条
 財産分離の請求をした者及び前条第2項の規定によって配当加入の申出をした者は、
相続財産について、相続人の債権者に先だって弁済を受ける。

第943条
@
 財産分離の請求があったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な 処分を命ずることができる。
A
 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第27条から第29条の規定を準用す る。

第944条
@
 相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があったときは、以後、その 固有財産におけると同一の注意を以って、相続財産の管理をしなければならない。 但し、家庭裁判所が管理人を選任したときは、この限りでない。
A
 第645条から第647条及び第650条第1項、第2項の規定は、前項の場合 にこれを準用する。

第945条
 財産の分離は、不動産については、その登記をしなければ、これを第三者に対抗する
ことができない。

第946条
 第304条の規定は、財産分離の場合にこれを準用する。

第947条
@
 相続人は、第941条第1項及び第2項の期間の満了前には、相続債権者及び受 遺者に対して弁済を拒むことができる。
A
 財産分離の請求があったときは、相続人は、第941条第2項の期間の満了後 に、相続財産を以って、財産分離の請求又は配当加入の申出をした債権者及び受遺 者に、各々その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を 有する債権者の権利を害することができない。
B
 第930条から第934条の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第948条
 財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産を以って全部の弁
済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行う
ことができる。この場合には、相続人の債権者は、その者に先だって弁済を受けること
ができる。

第949条
 相続人は、その固有財産を以って相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに
相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができ
る。但し、相続人の債権者が、これによって損害を受けるべきことを証明して、異議を
述べたときは、この限りでない。

第950条
@
 相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合 しない間は、その債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができ る。
A
 第304条第925条第927条から第934条第943条から第945 及び第948条の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第927条に定 める公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がこれをしなければならない。


 
第6章 相続人の不存在

第951条【相続財産法人の成立】
 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、これを法人とする。

第952条【相続財産管理人】
@
 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財 産の管理人を選任しなければならない。
A
 家庭裁判所は、遅滞なく管理人の選任を公告しなければならない。

第953条
 第27条から第29条の規定は、相続財産の管理人にこれを準用する。

第954条
 管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、これに相続財産の状況を報告
しなければならない。

第955条【相続財産法人の消滅】
 相続人のあることが明らかになったときは、法人は、存立しなかったものとみなす。
但し、管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

第956条【管理人の代理権の消滅時期】
@
 管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
A
 前項の場合には、管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければな らない。

第957条
@
 第952条第2項に定める公告があった後2ヶ月以内に相続人のあることが明ら かにならなかったときは、管理人は、遅滞なく一切の相続債権者及び受遺者に対 し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、 その期間は、2ヶ月を下ることができない。
A
 第79条第2項、第3項及び第928条から第935条の規定は、前項の場合に これを準用する。但し、第932条但書の規定は、この限りでない。

第958条
 前条第1項の期間の満了後、なお、相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁
判所は、管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権
利を主張すべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、6ヶ月を下回ること
ができない。

第958条の2
 前条の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、相続人並びに管理人に
知られなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行うことができない。

第958条の3【特別縁故者への相続財産の分与】
@
 前条の場合において相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じ くしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があっ た者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を 与えることができる。
A
 前項の請求は、第958条の期間の満了後3ヶ月以内に、これをしなければなら ない。

第959条【相続財産の国庫帰属】
 前条の規定によって処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合には、
第956条第2項の規定を準用する。


 
第7章 遺言


 
第1節 総則

第960条【遺言の要式性】
 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない。

第961条【遺言能力】
 満15歳に達した者は、遺言をすることができる。

第962条【同前】
 第4条第9条第12条及び第16条の規定は、遺言には、これを適用しない。

第963条【同前】
 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

第964条【包括遺贈・特定遺贈】
 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができ
る。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。

第965条【相続人の規定の準用】
 第886条及び第891条の規定は、受遺者にこれを準用する。

第966条【被後見人の遺言の制限】
@
 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の 利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
A
 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、これを 適用しない。


 
第2節 遺言の方式


 
第1款 普通の方式

第967条【三種の普通方式】
 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってこれをしなければならない。但
し、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

第968条【自筆証書遺言】
@
 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書 し、これに印をおさなければならない。
A
 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更し た旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、そ の効力がない。

第969条【公正証書遺言】
 公正証書によって遺言をするには、次の方式に従わなければならない。
 証人2人以上の立会いがあること。
 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲 覧させること。
 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押 すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を附 記して、署名に代えることができる。
 公証人が、その証書は前4号に掲げる方式に従って作ったものである旨を附記し て、これに署名し、印をおすこと。

第969条の2【口がきけない者の公正証書遺言】
@
 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び 証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第2号 の口授に代えなければならない。この場合における同条第3号の規定の適用につい ては、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とす る。
A
 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第3 号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の 読み聞かせに代えることができる。
B
 公証人は、前2項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその 証書に附記しなければならない。

第970条【秘密証書遺言】
@
 秘密証書によって遺言をするには、左の方式に従わなければならない。
 遺言者が、その証書に署名し、印をおすこと。
 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章を以ってこれに封印すること。
 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書 である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 公証人が、その証書を提出した日附及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺 言者及び証人とともにこれに署名し、印をおすこと。
A
 第968条第2項の規定は、秘密証書による遺言にこれを準用する。

第971条【秘密証書遺言の転換】
 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第968条の方
式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。

第972条
@
 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び 証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通 訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第970条第1項第3号の申述に 代えなければならない。
A
 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、 その旨を封紙に記載しなければならない。
B
 第1項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封 紙に記載して、第970条第1項第4号に規定する申述の記載に代えなければなら ない。

第973条【成年被後見人の秘密証書遺言】
@
 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、 医師2人以上の立会いがなければならない。
A
 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事 理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に附記して、これに署名し、印 を押さなければならない。ただし、秘密証書によって遺言をする場合には、その封 紙に右の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

第974条【証人又は立会人の欠格事由】
 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
 未成年者
 推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇人

第975条【共同遺言の禁止】
 遺言は、2人以上の者が同一の証書でこれをすることができない。


 
第2款 特別の方式

第976条【死亡危急者の遺言】
@
 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、 証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをするこ とができる。この場合には、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び 他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した 後、これに署名し、印を押さなければならない。
A
 ロがきけない者が前項の規定によって遺言をする場合には、遺言者は、証人の前 で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならな い。
B
 第1項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣 旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳 によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることがで きる。
C
 前3項の規定によってした遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は 利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
D
 家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、こ れを確認することができない。

第977条【伝染病隔離者の遺言】
 伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官1人及び証人
1人以上の立会いを以って遺言書を作ることができる。

第978条【在船者の遺言】
 船舶中に在る者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いを以って遺言書を
作ることができる。

第979条【船舶遭難者の遺言】
@
 船舶遭難の場合において、船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人2人以 上の立会いを以って口頭で遺言をすることができる。
A
 口がきけない者が前項の規定によって遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の 通訳によりこれをしなければならない。
B
 前2項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名 し、印を押し、かつ、証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求し てその確認を得なければ、その効力がない。
C
 第976条第5項の規定は、前項の場合について準用する。

第980条【遺言関係者の署名押印】
 第977条及び第978条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言
書に署名し、印をおさなければならない。

第981条【署名押印不能の場合】
 第977条から第979条の場合において、署名又は印をおすことのできない者があ
るときは、立会人又は証人は、その事由を附記しなければならない。

第982条【普通方式遺言の規定の準用】
 第968条第2項及び第973条から第975条の規定は、第976条から前条の規
定による遺言にこれを準用する。

第983条【遺言者の生存による特別方式遺言の失効】
 第976条から前条の規定によってした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言を
することができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、その効力がない。

第984条【在外日本人の遺言の特則】
 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしよう
とするときは、公証人の職務は、領事がこれを行う。


 
第3節 遺言の効力

第985条【遺言の効力発生時期】
@
 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
A
 遺言に停止条件を附した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したと きは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

第986条【遺贈の放棄】
@
 受遺者は、遺言者の死亡後、何時でも、遺贈の放棄をすることができる。
A
 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

第987条
 遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認又は
放棄をすべき旨を受遺者に催告することができる。もし、受遺者がその期間内に遺贈義
務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。

第988条【受遺者の相続人の承認・放棄権】
 受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続
権の範囲内で、承認又は放棄をすることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意
思を表示したときは、その意思に従う。

第989条【遺贈の承認及び放棄の取消し】
@
 遺贈の承認及び放棄は、これを取り消すことができない。
A
 第919条第2項の規定は、遺贈の承認及び放棄にこれを準用する。

第990条【包括受遺者の権利義務】
 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

第991条【受遺者の担保請求権】
 受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求する
ことができる。停止条件附きの遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様で
ある。

第992条【受遺者の果実取得権】
 受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。但し、遺言者
がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第993条【遺贈義務者の費用償還請求権】
@
 遺贈義務者が遺言の死亡後に遺贈の目的物について費用を出したときは、第29 9条の規定を準用する。
A
 果実を収取するために出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、そ の償還を請求することができる。

第994条【遺言の効力発生以前の受遺者の死亡】
@
 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
A
 停止条件附きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、 前項と同様である。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その 意思に従う。

第995条【遺贈の無効・失効の場合における目的財産の帰属】
 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力がなくなったときは、
受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。但し、遺言者がその遺言に別
段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第996条
 遺贈は、その目的たる権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったとき
は、その効力を生じない。但し、その権利が相続財産に属すると属しないとにかかわら
ず、これを遺贈の目的としたものと認めるときは、この限りでない。

第997条
 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条但書の規定によって有効であるとき
は、遺贈義務者は、その権利を取得してこれを受遺者に移転する義務を負う。もし、こ
れを取得することができないか、又はこれを取得するについて過分の費用を要するとき
は、その価額を弁償しなければならない。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示
したときは、その意思に従う。

第998条
@
 不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者が追奪を受けたときは、遺贈 義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責に任ずる。
A
 前項の場合において、物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物を 以ってこれに代えなければならない。

第999条
@
 遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によって第三者 に対して借金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと 推定する。
A
 遺贈の目的物が、他の物と附合し、又は混和した場合において、遺言者が第24 3条から第245条の規定によって合成物又は混和物の単独所有者又は共有者とな ったときは、その全部の所有権又は共有権を遺贈の目的としたものと推定する。

第1000条
 遺贈の目的たる物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であると
きは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させる旨を請求することができな
い。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

第1001条
@
 債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、且つ、その受け取 った物が、なお、相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定 する。
A
 金銭を目的とする債権については、相続財産中にその債権額に相当する金銭がな いときでも、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。

第1002条【負担付遺贈】
@
 負担附遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担 した義務を履行する責に任ずる。
A
 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者が、自ら受遺者と なることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その 意思に従う。

第1003条【同前】
 負担附遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したと
きは、受遺者は、その減少の割合に応じてその負担した義務を免れる。但し、遺言者が
その遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。


 
第4節 遺言の執行

第1004条【遺言書の検認、開封】
@
 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出 して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、 相続人が遺言書を発見した後も、同様である。
A
 前項の規定は、公正証書による遺言には、これを適用しない。
B
 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いを以っ てしなければ、これを開封することができない。

第1005条【同前の罰則】
 前条の規定によって遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行
し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処せられる。

第1006条【遺言執行者の指定】
@
 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者 に委託することができる。
A
 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続 人に通知しなければならない。
B
 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なく その旨を相続人に通知しなければならない。

第1007条【遺言執行者の就職】
 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

第1008条【遺言執行者に対する利害関係人の催告権】
 相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に就職を承諾するかど
うかを確答すべき旨を遺言執行者に催告することができる。もし、遺言執行者が、その
期間内に、相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。

第1009条【遺言執行者の欠格事由】
 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

第1010条【遺言執行者の選任】
 遺言執行者が、ないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求
によって、これを選任することができる。

第1011条【財産目録の調製】
@
 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を調製して、これを相続人に交付しな ければならない。
A
 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いを以って財産目録を調製 し、又は公証人にこれを調製させなければならない。

第1012条【遺言執行者の職務権限】
@
 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利 義務を有する。
A
 第644条から第647条及び第650条の規定は、遺言執行者にこれを準用す る。

第1013条【相続人の処分権喪失】
 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行
為をすることができない。

第1014条【前3条の適用範囲】
 前3条の規定は、遺言が特定財産に関する場合には、その財産についてのみこれを適
用する。

第1015条【遺言執行者の代理権】
 遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす。

第1016条【遺言執行者の復任権】
@
 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせること ができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りで ない。
A
 遺言執行者が前項但書の規定によって第三者にその任務を行わせる場合には、相 続人に対して、第105条に定める責任を負う。

第1017条【共同遺言執行者】
@
 数人の遺言執行者がある場合には、その任務の執行は、過半数でこれを決する。 但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
A
 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

第1018条
@
 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定める ことができる。但し、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
A
 遺言執行者が報酬を受けるべき場合には、第648条第2項及び第3項の規定を 準用する。

第1019条【遺言執行者の解任、辞任】
@
 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人 は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
A
 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を 辞することができる。

第1020条【委任の規定の準用】
 第654条及び第655条の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合にこれを準用
する。

第1021条【遺言執行の費用】
 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。但し、これによって遺留分を減
ずるこどができない。


 
第5節 遺言の取消

第1022条【遺言取消しの方式】
 遺言者は、何時でも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を取り消すこと
ができる。

第1023条【後の遺言又は処分による前の遺言の取消し】
@
 前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言 で前の遺言を取り消したものとみなす。
A
 前項の規定は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれ を準用する。

第1024条【遺言書等の破棄による遺言の取消し】
 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を取り
消したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様である。

第1025条【取り消された遺言の復活】
 前3条の規定によって取り消された遺言は、その取消しの行為が、取り消され、又は
効力を生じなくなるに至ったときでも、その効力を回復しない。但し、その行為が詐欺
又は強迫による場合は、この限りでない。

第1026条【遺言の取消権の放棄】
 遺言者は、その遺言の取消権を放棄することができない。

第1027条【負担付遺贈遺言の取消し】
 負担附遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期
間を定めてその履行を催告し、もし、その期間内に履行がないときは、遺言の取消しを
家庭裁判所に請求することができる。


 
第8章 遺留分

第1028条【遺留分権利者とその遺留分】
 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
 その他の場合には、被相続人の財産の2分の1

第1029条【遺留分算定の基礎となる財産】
@
 遺留分は、被相続人が相続関始の時において有した財産の価額にその贈与した財 産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定する。
A
 条件附きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した鑑定人の 評価に従って、その価格を定める。

第1030条【同前に算入される贈与】
 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入
する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年
前にしたものでも、同様である。

第1031条【遺贈又は贈与の減殺の請求】
 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び前条
掲げる贈与の減殺を請求することができる。

第1032条【条件付権利等の贈与又は遺贈の一部減殺】
 条件附きの権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合におい
て、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第1029条第2
項の規定によって定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付
しなければならない。

第1033条【減殺の順序】
 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、これを減殺することができない。

第1034条【同前】
 遺贈は、その目的の価額の割合に応じてこれを減殺する。但し、遺言者がその遺言に
別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第1035条【同前】
 贈与の減殺は、後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶ。

第1036条【受贈者の果実の返還】
 受贈者は、その返還すべき財産以外、なお、減殺の請求があった日以後の果実を返還
しなければならない。

第1037条【受贈者の無資力による損失の負担】
 滅殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰す
る。

第1038条【負担付贈与の減殺】
 負担附贈与は、その目的の価額の中から負担の価額を控除したものについて、その減
殺を請求することができる。

第1039条【不相当対価による有償行為の減殺】
 不相当な対価を以ってした有価行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えるこ
とを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者が
その減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。

第1040条【贈与の目的を処分した場合の減殺の請求】
@
 減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者 にその価額を弁償しなければならない。但し、譲受人が譲渡の当時遺留分権利者に 損害を加えることを知ったときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求す ることができる。
A
 前項の規定は、受贈者が贈与の目的の上に権利を設定した場合にこれを準用す る。

第1041条【価額による弁償】
@
 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価 額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
A
 前項の規定は、前条第1項但書の場合にこれを準用する。

第1042条【減殺請求権の消滅時効】
 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があった
ことを知った時から、1年間これを行わないときは、時効によって消滅する。相続の開
始の時から10年を経過したときも、同様である。

第1043条【遺留分の放棄】
@
 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、 その効力を生ずる。
A
 共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及 ばさない。

第1044条【相続人及び相続分の規定の準用】
 第887条第2項、第3項、第900条第901条第903条及び第904条
規定は、遺留分にこれを準用する。