プロダクト・アウトからマーケット・インへ


 プロダクト・アウトとは、自社で作りたいもの、作りやすいものを作って市場に売り出す形式で、マーケット・インは市場のニーズを汲み取って物を製作し、ニーズの多いときにニーズの分だけ売り出すことを指す今流行りの経済用語である。

 市場の論理よりも自社の理論を優先した結果、競争力を失う、あるいは中国産などの安い製品に押される。そして、今の日本の製造業は市場のニーズと自社の技術力を融合させた製品に生き残りをかける時代になっている。

 そしてこれは、飽和状態にあるTVゲーム市場にも適用できる論理である。

 ゲーム作りのシステムが確立し、どのゲームもある程度の出来が約束され、発売週に大半のセールスが集中する今は、ゲームの出来が売り上げに反映されにくくなってきている……もうプロダクト・アウトの時代ではないのである。


 音楽市場ほど目まぐるしくはないものの、ゲーム市場の中にも様々なニーズの変化、潮流のようなものがある。わかりやすいものとして

代表例 内容解説
・商戦期 任天堂系 他 社会人向けなどにはそれほど波は無いが、低年齢層や学生が主なユーザー層のソフトはやはり長期の休みの時期が強い(春休み、夏休み)。そして、さらに経済的な支援が付く年末商戦期は、圧倒的。
・イベント期 ウイイレ6 他 ワールドカップ、プロ野球、オリンピックなどの人気スポーツの開催に合わせて需要が急激に伸びる。ただし、そのイベントの結果いかんで盛り上がりも変わり、終わると急速に需要が萎むので発売のタイミングが難しい。
・新ハード発売時 リッジV
決戦
鬼武者 他
ハード需要に引っ張られて売れる。ハード発売初期に作り込まれた名作、大作はほとんど出ないので、わかりやすくハードの特性を活かしたソフトに人気が集まる。
ハード主導で売れている間はこの傾向が続く。

 次にわかりにくいものとして、

代表例 内容解説
・流行 侍、剣豪
音ゲー 等
音ゲーの流行や、電車でGOなどのシミュレーター系がもてはやされたのも今は昔。現状ではPS2で時代劇ものが流行?
たまごっちなどの単品の流行に乗るのは無理だが、ジャンルとしての流行はタイミング次第。
・ニッチ ポケモン
どこいつ 等
ニッチとは、市場が注目していない隙間に隠れた需要を掘り出す事。例の2つはコミュニケーションという需要が隠れていた例。流行に似ているが、ジャンルとして展開するほどの裾野はなく、当てるのは難しい。SCEは闇雲にこのニッチ市場に手を出して火傷しているが、時々当たりもある。また、ニッチ向けは市場的には閑散期に発売しないと目立たなくて埋もれる。
・ハードのピーク期 多数 ハード主導にしろソフト主導にしろ、ハードが最も売れている時期から遅れて1年間はソフトが最も売れる時期である。(下図参照)



※ 2002年の数字は半期データからの推定です。


 これらに、各ハード市場の普段からの特性、競合などの要素がかみ合って販売数が決まるわけである。

 以上の事から、メーカーがソフトを開発する時に決めることは、

1.現在の市場の状態を確認
2.発売時期を想定、市場の状態を予想
3.ゲーム内容を決めて、ユーザー層を確定
4.ハードを選択
5.販売量を最大化できる発売時期を想定
6.広告展開の工程表を作成

 ……こんな感じではないでしょうか。

 とにかく言える事は、今は出来が良ければ売れる時代ではなく、マーケットを見て自社の持つコンテンツ、技術をいかに生かすかを考える時代である。「こんなに面白いのになんで売れないんだろう?」というのは、マーケットを無視してプロダクト・アウトに走った結果であり、必然と言えるだろう。