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あなたの能力入れ替えます。Vol.1
それは例えるならば一陣の風。その風が吹いたとき、悪党共は1人残らずなぎ倒
されているだろう。伝説の光の剣を翻し、悪を滅ぼすために自らの命を賭ける、天
才美少女剣士、リナ=インバース。
例え相手が、あの赤眼の魔王であったとしても、勇敢に立ち向かいそれを滅し、
ドラゴンさえも一撃で消滅させる、竜破斬を巧みに操る、天才美形魔道士、ガウリ
イ=ガブリエフ。
リナ「なんでこーなるのよーーーーーーー!!!!」
なんでこうなったか、それは今をさかのぼること3日前のことであった。
あたし、リナ=インバースと相棒ガウリイ=ガブリエフはとある街へ向かい、山
道をひたすら突き進んでいた。ひたすら突き進むのには一応訳があり…
「もっと早く歩きなさいよ!日が暮れちゃうじゃない!あたしは野宿なんてまっぴ
らごめんよ」
あたしは背後でやや疲れを見せている、ガウリイに言った。
「…だれのせいだと………」
「何か言った?」
ガウリイの抗議をあたしは遮った。まあ、確かに、少々路銀が寂しくなったから
って、盗賊のアジトを探そうと提案したあたしにも責任はあるけど。ここいらにあ
るはず!!と範囲を決めて、決めたはいいが、結局アジトがなかったのも、あたし
の責任かも知れない。でも、
「探してる内に道に迷ってあたしに散々探させたのはどこのどいつだーー!!!」
うぎゃああぁああ!!!
…今のは別にあたしがガウリイを半殺しにした音声ではない。もっとじいさまな
声であった。それが森の奥から聞こえてきたのである。
「行ってみよう!」
あたしは疲れ果てていたので、面倒事はゴメンだと思ったが、ガウリイが声のし
た方に向かって走りだしてしまったので、仕方なく後に続いた。
案の定、そこには4頭のトロルに囲まれて四苦八苦している、小柄なおじいさん
がいた。えんじ色のローブを羽織り、胸にアミュレットをつけているところを見る
と魔道士のようだが、なぜか魔法を使おうとせず、おろおろしているばかりである。
「動くな!!爺さん!」
ガウリイが剣を抜き飛び出した。トロルはガウリイに気付いたが、いかんせん動
きののろい彼らのことである。すべては遅かった。数秒後、トロルはすべて彼の剣
によって闇に滅せられていた。
…さすが、脳スライムでも超一流の剣士だ。あたしも剣の腕に覚えはあるが、一
撃でトロルを倒すことは出来ない。
「大丈夫かい?爺さん。こんな遅くに1人で出歩いてちゃ襲ってくれって言ってる
ようなもんだぜ」
ガウリイはトロルの体液を布で拭い、鞘へパチンと収めた。
おじいさんはがたがたと震えて言葉もおぼつかない。
「あ…あんた……剣士……かね?」
「?ああ、まあ、一応そうだけど。ちなみにこっちは自称美少女天才魔道士だ」
あたしはガウリイの言い方にかちんときて、ごちんと頭を殴り倒した。
「お……おおおぉぉぉぉお……剣士と………魔道士……おおおっぉぉおぉぉっっ」
いきなりおじいさんは奇声を発し始めた。あたしはちょっと気味が悪くなり、ガ
ウリイの袖を引っ張り、
「もういきましょ。…なんかこのひと危なさそうだし…」
「え?でも……」
あたしは渋るガウリイの袖をぐいぐい引っ張り無理矢理その場から離れようとし
た。しかし、
むんず!
もう一方の袖をおじいさんが掴んで離さなかったのである。
「ち…ちょっとおじいさん!その手離してよ!…街までなら送ってあげるから!」
おじいさんの顔から先ほどまでの怯えた表情は消えていた。そのかわり…何てい
ったらいいんだろう、興奮したようなびっくりしたような、満面の笑みを浮かべて
いたのだ。あたしはこの表情をどこかで見た。どこだろう……………………
「わしを助けてくれた礼じゃ!わしのすばらしい実験のサンプルにしてやろう!!」
おじいさんはそう言って右手に握っていた何かの粉を私たちの顔に向かって振り
かけた。何!?と思う間もなく、あたしは意識が遠くなっていくのを感じた。みる
とガウリイはすでにぐっすりと眠っている。…そうだこれは……この匂いはブルー
リーの………かすむ視界の中で、おじいさんの顔が昔会ったディオルじいさんの顔
に重なった。
……そう……あれはマッドサイエンティスト特有の…最高の実験体に出会ったと
きの…喜びと期待の入り交じった狂喜の顔………
そして、あたしの意識は闇に落ちた。
あたしはさっきのトロルに襲われていた。しかしあわてることなく、呪文を紡ぎ
、両手を前につきだし、
「爆裂陣!!」
しかし、呪文は発動されなかった。
「え!?何?」
おろおろする私にトロルが必殺の一撃を与える。あたしの肩は大きくえぐり取ら
れ、血をほとばしらせながら、地面にもんどり打って倒れる。
…あたしはその光景を客観的に眺めていた。そうか。これは夢だ。でもなんでこ
んな夢を?
夢の中のあたしは傷口に手を当てて、脂汗を流しながら、つぶやいた。
「治癒…」
しかしやっぱり呪文はきかなかった。傷口に当てた手指の間から血がぼたぼたと
流れ落ちる。
「治癒、治癒、治癒!」
あたしは必死で呪文を唱える。
そしてさらに頭上からトロルの一撃が……
…目が覚めると、そこは先ほどの場所であった。朝になっていたが、トロルの死
体もそのままである。辺りを見回すと、ガウリイが倒れている。駆け寄って脈を取
る。…よかった、眠っているだけのようだ。
「さっきのおじいさんは…いったい……」
一応自分の体も調べたが、特に何かされたという事はないらしい。
「…う……ん……?」
ガウリイが頭をさすって起きあがった。
「痛……頭が重いぞ……」
「ブルーリーの実をすりつぶした粉で眠らされていたからよ。どう?他になにか体
に変わったことはない?」
「いや、別に……」
「そう、よか………!」
あたしとガウリイの顔に緊張が走る。あたし達はいつの間にかトロルの大群に囲
まれていた。死体を見て何か話し合っている。どうやらこいつらの仲間らしい。
話し合いの結果、あたし達は敵と見なされたらしい。
「ぐがぁああああ!!!」
1頭のトロルがあたしに向かって襲いかかってきた。
一瞬、さっきの夢があたしの脳裏にひらめく。
「リナ!なにぼーっとしてんだ!?」
ガウリイの声に我に返ると、あたしは呪文をつぶやき始めた。そんなことがある
わけない。呪文はちゃんと使えるはずだ。こういうふうに……
「爆裂陣!!!」
しかし、呪文は発動しなかった。
「リナ!危ない!!」
あたしの背後から一頭のトロルが迫っていた。あたしが避けられないと知ると、
ガウリイはすらりと剣を抜き…
「!?」
なぜか一瞬躊躇したようだが、すぐに気を取り直し、刃をトロルに叩きつけた。
しかしその一撃を受けたにもかかわらず、トロルは大したダメージもなく、再び
向かってくる。
「炸裂陣!」
あたしは再度呪文を発したが、やはり何も起こらない。いったいどうしたって言
うの?ガウリイも調子が悪いみたいだし…
仕方なくあたしは呪文を諦め、腰のショートソードを抜き、トロルに切りかかっ
た。
「…え!?」
あたしの体は驚くほど軽かった。
大きく延ばしたトロルの右手はあたしに届くことなく切り落とされ、数秒後には
数頭のトロルが地に伏していた。
あたしにこんなことが出来るなんて…今のはまるで、そう、昨日のガウリイのよ
うな…
トロル達は勝ち目がないと知り、いずこともなく消えていった。
「ガウリイ!今の見た?」
あたしが勢い込んでガウリイの方を振り向くと、彼はまだ訝しげな表情で剣をひ
ゅんひゅんと振り回していた。
「…どしたの?」
「なんか体が重いんだよ。力もうまく入らないし…それに何だか剣が重いんだ」
「どれ」
あたしはガウリイから剣を受け取った。ひゅんと振り下ろしてみる。…あれ?光
の剣ってこんなに軽かったっけ?
「重くはないわよ、むしろ軽いくらい」
「えー?…変だな…まあ、それはそうと、さっきなんで魔法使わなかったんだ?」
「使わなかったんじゃなくて使えなかったのよ。…あ」
あたしはふいと思いついたことを口走る。
「もしかして私たちあのおじいさんに何かされたんじゃないかしら」
「へ?何で?」
あたしはおじいさんの怪しい態度をガウリイに話して聞かせた。
「リナが魔法を封じられて俺が力を封じられたっていうんなら分かるけど、それで
なんでお前の力が上がってるわけ?不公平だなー、それなら俺に魔法力が備わって
たりしてもいいんじゃないか?」
「ガウリイに〜?あはは、そりゃないでしょ」
「いや、もしかするともしかするぞ。俺が火炎球とかいうと火球がでてきたり…」
ボウッ!!
「へ?」
「あれ…」
なんてことだ。ガウリイが呪文を唱えたとたん、彼の掌から、小さな炎が飛びだ
したのだ。
「まじ?」
あたしは懐から宝石のついたペンダントを取り出した。
「なんだよ、それ」
「魔力探知機よ。持ち主以外の魔力を感じると青く光るの。これで魔法の罠を探知
したり魔道士が隠れてたりすると分かったりするの」
あたしはペンダントをガウリイにかざした。
「!これは…」
宝石はこれ以上にないほど青く光輝いていた。あたしはこの光り方を知っている。
これを買うとき、店のおっちゃんがあたしの魔法力を計ってくれた。そのとき、や
はりこれ位大きく光った。ということは今のガウリイにはあたしと同じ位の魔力が
備わっているということだ。
あたしは理解した。
あたしの魔力が封じられ、力がアップしたわけではない。ガウリイの力が半減さ
れ、魔力が備わったんじゃない。
あたしと、ガウリイの能力が、入れ替えられたのだ!あのじいさんに!!
【つづく】
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