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1997年 9月号


腸の健康大解明

消化管9mのうち7mは腸

口から肛門までは、管でずっとつながっています。長さにすると約9m。口から入った食べ物は、この9mの旅の間に消化、吸収され、そして排泄されるのです。この9mの管の中の約7、8mを占め、この旅の主役を演じるのが「腸」なのです。

食べ物は、口でかみ砕かれ唾液と混ぜ合わされて食道を通り、胃にやってきます。胃は消化・吸収を担っているというイメージがありますが、実はどちらかというと、食物と強い酸性の胃液をよく混ぜて消化の準備をし、十二指腸での消化速度に合わせて食べ物を少しずつ送り出す、倉庫番のような役割をしているのです。

 

腸はどんな働きをしているの?

小腸は消化・吸収の主役

胃を出ると、そこはもう小腸です。小腸は体の中で1番長く、6mにもなります。小腸の内面には、たくさんのヒダがあり、その表面には、「絨毛」(じゅうもう)と呼ばれる細かい突起が生えています。このため、小腸を全部平らにならしてその表面積を測ると、約200平方メートル、テニスコート2面分にもなるそうです。このたくさんの絨毛で、食物中の栄養素や水分を吸収するというわけです。

小腸は、十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分かれます。胃のすぐ隣が十二指腸で、胃とは反対にアルカリ性の、さまざまな消化酵素を含んだ腸液や、膵液、胆汁などで、食物を消化します。ちなみに、十二指腸は指を横に12本ならべたくらいの長さなので、そう呼ばれています。その後、空腸、回腸と続きます。

そして、栄養分が吸収されて残りカスだけになったものが、大腸へやってきます。人が1日に取る水分量は約2リットルですが、途中で出る消化液が1日約7リットルあり、合わせて9リットルの水分が腸へと送り込まれます。大部分は小腸で栄養分と一緒に吸収されますが、大腸でも1日2リットルの水分と、ミネラルを取り込んでいます。そしてできた便は、大腸のうちの直腸という場所にためられます。大体、24時間から72時間ほど便はためられて、量が多くなった時点で脳に刺激が伝わり排便反射が起きてウンチとして、体外に出るのです。

なぜか女性に多い便秘。なかには、ガンコな便秘のために、薬を毎日欠かせない人もいるとか。でも「ウンチが出ない=便秘」ではないってご存じですか?便秘の口コミ情報はどこまでが本当なのでしょうか。

本当の宿便は腸にこびりついた便のことじゃない?!

「宿便を取ってお腹の中をきれいにしましょう」という、便秘薬のCM以来、便秘の人の腸には、便がヘドロのようにこびりついているというイメージが定着しています。果たして本当にそうなのでしょうか。

「宿便」という言葉は医学用語ではありません。ただ、「宿便」という言葉はあります。「宿便」とは広辞苑には、「腸内に長くたまった便のこと」とあります。実際、腸の壁に便が長い間こびりついているということはありません。このCMは事実ではないので厚生省からも注意を受けたそうです。腸の細胞は2、3日で新しいものと入れ替わってしまうので、ずっと便が残っていることはありません。内視鏡検査前に下剤を飲みますが、腸の中はそれだけで十分きれいになるそうです。

 

便秘のときのおなかの中はどうなっている?

便秘の原因は3つ

ところで、便秘とはどのような状態をいうのでしょうか。便の出るサイクルは、人に

個性があるように人それぞれです。なかには、1週間に1回しか排便がなくても、まったく不快感を感じない人もいます。便秘の定義は、「3日以上便が出なくて、おなかが張るなど不快な症状があること」。ですから便は毎日出なくてもよいのです。1週間に1度でも、器質的な病変がなく、本人が異常を感じなければ、問題はないでしょう。

では、「お腹が張るのに出ない」「顔に吹き出物ができる」というような便秘はどうして起きるのでしょう。その原因には3つがあります。

食物繊維で便秘は解消するか

食物繊維は、体に吸収されない成分です。タンパク質、糖質、ビタミンなどそのほかの栄養素は、体の中に取り込まれて、生命を維持するのに使われますが、食物繊維は口から入り、消化管を下って排泄されるだけで、からだの栄養分にはなりません。

一般的には、食物繊維は植物性というイメージがありますが、カニなどの甲羅に含まれるキチンなどのように動物性のものもあります。ただ、食事から摂取しやすいのは、やはり植物性のものです。植物細胞の植物壁の成分セルロースやペクチン、海草類のアルギン酸などが代表的なものです。これらの食物繊維には、水に溶けるものと溶けないものがありますが、天然の食品には両方入っていることが多く、またその働きもさほど変わりません。繊維が腸の中で膨らむことで便を押し出す、便秘に対しての作用は、水溶性のもののほうがより膨張するので、効果があります。

そのほかにも、繊維は様々な働きをしています。あまり知られていませんが、高脂血症や動脈硬化の原因になるコレステロールや、高血圧の一因となっているナトリウムなどを吸着して、体外へ排泄してくれます。また、糖尿病にもよいといわれていますが、それは糖質を消化するスピードを繊維がゆっくりにすることで、急激に血糖があがるのを防ぎ、膵臓の負担を減らすから。成人病予防には効果的ですね。

食物繊維を取るポイントは3食ともきちんと穀類を食べ、生のものよりも火を通した野菜を多くすること。規則的に食事ができない人は、繊維入り食品を利用してもよいでしょう。その際、他の栄養素を取ることもお忘れなく。

繊維も取れば取る程良い、というわけではありません。お年寄りでは、胃が小さくなり消化能力も落ちているので、繊維で満腹になってしまい、ほかの栄養分が摂取できずに栄養失調になることも。貧血の治療で鉄剤を服用している場合は、鉄を吸着排泄してしまうこともあるので、効果を弱めてしまいます。また、下痢を起こして体に必要な無機質まで排泄してしまうこともあるので、下痢をしたら繊維を控えましょう。

 

◆器質的な原因

特定の病気による影響。痔や大腸がん、腸がマヒする麻痺性腸閉塞などでみられますが、今まで便秘で悩んだことのない人が、急に便秘になってしまったような場合は要注意。病院で検査を受けたほうがよいでしょう。

◆機能的な原因

大腸の運動障害で腸の内容物が停滞する。このタイプの便秘は、弛緩性と痙攣性に分かれます。

弛緩性便秘は、大腸の働きや腹圧が弱かったりして、排便が滞ってしまうもの。体力がない人や肥満の人に多く、中年女性によく見られます。お年寄りの便秘も、ほとんどがこのタイプです。全身運動や入浴が効果的です。反対に、痙攣性便秘では大腸の緊張が強く、いろいろな場所で大腸がけいれんするように動くため、便がうまく腸の中を移動できません。大腸壁にある神経の障害や、無意識下で腸の運動をコントロールしている自律神経の失調症、大腸の炎症などが要因になります。このタイプの便秘では、下剤を飲むのは逆効果。なぜなら、下剤の多くは、腸を刺激して運動を活発にするからです。腸のけいれんを抑える鎮痙剤や鎮静剤などが有効です。

◆習慣的なもの

人間は、朝起きて胃に物を入れると、反射的に腸が激しく動くようなメカニズムになっています。このため、朝、便意をもよおすのですが、時間の都合などでこの排便反射を我慢してばかりいると、だんだんと便意が起こらなくなり、便秘になってしまいます。このようなケースでは、生活スタイルを変えることが基本。朝食をきちんと取り、その後トイレにいくための時間を少し、作るようにしましょう。すっきり便が出たときの快感は、1日の始まりをさわやかにしてくれるはずです。また、女性に便秘が多いのは、男性より悩みなどを抱えやすく、その影響を腸が受けやすいことや、女性ホルモンが腸の蠕動運動を抑制するから、トイレに行くのを恥ずかしがる、などの理由が考えられます。しかし、やはり不規則なライフスタイルがその原因の大半。生活を改善して、よい朝を迎えましょう。

 

市販されている薬の多くは腸を刺激して便秘を解消するタイプ

薬局では、たくさんの種類の下剤を売っていますが、いったいどのような違いがあるのでしょうか。

下剤には、腸の粘膜を刺激して排便を促すものと、便の容量を増やして便を押し出すものがあります。市販薬のほとんどが前者にあたる刺激性下剤。作用は刺激性のもののほうが強力ですが、胃腸がそれほど強くない人には後者のほうがいいでしょう。食物繊維にも便の容量を増やす作用がありますが、下剤でも利用されています。プランタゴ・オバタ種子がその代表で、初めて下剤を使うという人には、作用が穏やかなのでおすすめです。また、植物性(生薬)の成分を配合した下剤も多く見かけます。センナやダイオウ、アロエなどが代表的ですが、これらの生薬は腸の粘膜を刺激するタイプのものがほとんどです。化学成分の刺激性下剤と、作用の基本的な仕組みはほとんど変わりません。注意したいのは、植物性のものでも副作用が出ることがあるということ。体に合わないようなら、服用を中止しましょう。妊娠している人では、ダイオウ、カンゾウなど、避けたほうがよい成分もありますので、薬を購入するときにそのことを伝えて下さい。なお、下剤を飲んでいて便に着色することもありますが、心配しなくても大丈夫です。がんこな便秘の人には、ビサコジルやアルギン酸ナトリウム入りの下剤がおすすめです。

これらの下剤を使うとき気を付けたいのは、あまり長期間連用しないこと。とくに刺激性のものでは、薬を飲まないと便が出なくなる、ということも。できるだけ食生活などで便秘を解消する努力をして、どうしてもという場合のみ、薬を飲むようにしましょう。

 

細菌性食中毒の下痢には下痢止めは危険!!

排便回数が1日に4回以上で、便の水分の割合が80〜90%以上のものを「下痢」といいます。ちなみに、普通の便だと水分は70%、ちょっと緩めで80%位です。下痢の起きるメカニズムは、腸の中に水分が多くたまり、水分の吸収が追い付かなくなるため。原因として、病気や腸の炎症、ストレス、お腹を冷やすなどの刺激があります。
とくに、昔から「断腸の思い」とか、「はらわたが煮えくり返る」などということわざがあるように、腸は精神的なものが反映されやすい臓器です。ストレスが加わると、自律神経が興奮して腸の運動を活発にしたり、腸液の分泌を高めるため、下痢が起こるのです。ストレスコントロールも、下痢の大切な治療法です。

下痢には、急に起きるものと、慢性的なものがあります。急性下痢は、腸の炎症や消化不良、決まった食品によるアレルギーなどが引き金になります。腸の炎症は下痢の原因の1位に挙げられますが、腸の粘膜が破壊されるために消化吸収できなくなってしまうのです。かぜをひいたときの下痢も、ウイルスが腸管に入って炎症を起こすためです。

腸の炎症で怖いのは、「食中毒」です。細菌が引き起こすものと、毒キノコ、水銀などの有害な化学物質によるものがありますが、細菌が原因のものでは、昨年に引き続き問題になっている「病原性大腸菌O157」もそのひとつに当たります。激しい腹痛や発熱を伴うのでかぜとも間違われやすいのですが、一刻も早い処置が必要なので、そんな症状が出たら、念のため病院で診てもらったほうが安心です。また、細菌性の下痢では、下痢止めの薬を服用するとかえって悪化することもあるので、医師の指示なく使用しないほうがいいでしょう。最近では、海外から帰ってきた人で細菌性の下痢も増えています。くれぐれもナマモノには気をつけましょう。

同じ下痢でも原因はさまざまです!!

下痢のときは水分補給を忘れずに

消化不良による急激な下痢は、経験のある人が多いのではないでしょうか。飲み過ぎ、 野菜や果物の食べ過ぎ、寝冷えや疲労も原因になります。このようなときは、食物を控えて水分を補給しながら、睡眠を取りましょう。

牛乳やお酒、卵など、一定の食品を取ると、下痢を起こす人がいます。これは食品によるアレルギーで、その食品を食べないのが1番の対処法です。

一方、慢性的な下痢では、栄養障害を起こしやすく、多くの場合、やせてきます。潰瘍性大腸炎、腫瘍などの病気や炎症、精神的なもの、消化酵素の不足などで起こります。

下痢をしたときの一般的な対処法としては、とにかく体力を消耗しやすいので、発熱やひどい嘔吐などの症状を伴わないときは、下痢止め薬を服用して下痢を止めたほうがいいでしょう。また、皮膚がカサカサになったり、のどが渇くような下痢は危険なので、すぐに病院にいったほうがいいでしょう。

 

ストレスの影響が大きい過敏性腸症候群

最近増加している腸の病気の一つに過敏性腸症候群があります。以前は、大腸過敏症、胃腸神経症などといわれていましたが、現在では、腸全体が影響していると考えられ、このように呼ばれています。下痢型と便秘型、そして下痢と便秘を繰り返す型の3つのタイプがあります。

この病気の特徴は、とくに悪い部分が見つからないこと。ストレスなどの環境因子、疲れなどの身体的因子、そして心理的因子などが関係していると考えられています。性格も大きく影響し、几帳面で真面目、神経質な人に目立ち、反対にカラッとしていたり、あまり遠慮をしない性格の人には見られないそうです。

治療には薬も用いますが、それに頼りすぎていたらダメ。まず、生活サイクルを規則正しいものにして、食事もできるだけ決められた時間に、栄養バランスよく取りたいもの。また、ストレスがたまっているようであれば、カラオケやスポーツなど、自分の好きなこと、没頭できることを見つけ、気持ちを切り替えるようにしましょう。

ただ、思い当たる症状があっても、自分で勝手な判断はせずに、隠れている病気はないか、病院できちんと調べたほうが安心です。

腸の病気がこんなに増えている!!

食生活の欧米化で増加する大腸ガン

日本人では、部位別ガンの死亡率のトップは胃ガンなのですが、早期発見・治療のためか、近年、減少傾向にあります。しかし、大腸ガンはその逆で、急激に増加しています。その理由としては、食生活が欧米化したこと、食物繊維の摂取量が少なくなったことなどが挙げられます。

大腸ガンは、良性のポリープが大きくなってガン化する場合と、最初からガンとして出現する場合があります。発生しやすい部位はS状結腸や直腸ですが、基本的に大腸ガンはあまり症状が出ないため、気がついたときは手遅れ、ということもあります。

日頃便秘でない人が便秘になったり、便意が頻繁になる、下血や腹痛、おなかが張るなどの便通の異常が続いたら便の中に血が混じってないかを調べる便潜血検査を受けましょう。この検査で陽性が出た場合、内視鏡検査など詳しい検査を受けて下さい。内視鏡検査というと気が進まない人も多いかと思いますが、早期発見は早期治療につながるので、積極的に受けたいものです。

 

医 食 同 源

今月の食べ物

うなぎ

ウナギの主成分はビタミンA・B1・B2です。特にビタミンAが豊富で、肝に一番多く含まれています。このほかタンパク質と脂質、カルシウム、リン、鉄、ナトリウムが含まれています。脂質はホンマグロに匹敵するほどです。

ウナギは栄養価の高い食べ物の代表格で、体力をつけ、夏バテを防ぐことで知られています。豊富なビタミンAが消化器や呼吸器、目の粘膜を強化するため、かぜの予防、胃腸病、夜盲症にも役立ちます。

血液の濃度を濃くし、内臓を活発にするため、冷え症、低血圧症、貧血の予防にも一役買います。みじんぎりにしたウナギとやまいもでだんごを作り、スープにいれて食べると、虚弱体質の人の体力増強に効果的です。不正出血やおりものには、ウナギの唐揚げをおすすめします。

ウナギ料理を常食するとリウマチや神経痛に、蒲焼きは痔に効果的です。

ただし、ウナギは消化があまりよくないので、胃腸が弱って下痢気味の人や子供は控えましょう。

 

土用にウナギのわけは?

日本人は、年間を通じて8月の盛夏がビタミンAの摂取量が最も少ないというデータがあります。この時期に、ビタミンAを多量に含んだウナギを食べよう、と提案したのが平賀源内といわれています。

ウナギのビタミンAは、ピーマンやかぼちゃと比較しても10〜30倍以上。イワシと比較すると100倍以上、牛肉とはなんと200倍です。

ビタミンAは脂溶性で、油と一緒にとると吸収されやすくなります。ウナギには脂質もたっぷり含まれるので、効率よくビタミンAが吸収できるわけです。したがって夏の土用にウナギを食べるのは、理にかなった食習慣といえます。

 


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