| パクリのすすめ イーヤマ・ミツル PCたちが冒険者の宿でくつろいでいると、どうにも場違いな感じの一人の美少女が入ってきます。彼女はキョロキョロあたりを見回していますが、やがてPCたちの所へやってきます。 「お願いします、私の護衛をしてください!」 彼女は王家に仕えるメイドです。彼女の父は王家の騎士団長でしたが、あるとき、急に騎士を辞め、行方不明になってしまいました。母親はショックで寝ついてしまい、彼女は王のはからいでメイドとして働き始めましたが、ここ数年、彼女の誕生日に奇妙なことが起きているのです。 「毎年私の誕生日になると、旅人が城を訪れ、私に正体不明の届け物を届けてくれるのです。誰から頼まれたのか尋ねても、誰一人として人相をはっきり言える人がいないのです」 包みの中身は毎年一つの宝石でした。彼女は父親がどこかに生きているのではないかと思っていたのですが……。 「でも、今年の誕生日は宝石だけでなく、手紙が入っていました」 『貴方の父親は亡くなったが、貴方は彼の遺産を受け取る権利がある。3日後の夕刻、街の門で待て。心配なら3人まで護衛を連れてきても良い」 3日後と言えば今日です。PCたちが彼女と共に待っていると、一台の馬車がやって来ました。 「これにお乗り下さい」 言われて乗り込むと、馬車は静かに走り出します……。 ……てな発端のシナリオはいかがでしょう。元ネタがなんだか分かりますか? そう。シャーロック・ホームズの『四つの署名』です。この物語はざっと百年前に発表された小説ですが、普段は地味なホームズ物にしては展開が派手で僕のお気に入りです。 美少女(ってトシでもなかったか?)に送られてくる謎の宝石、密室の殺人現場に残る子供の足跡、屋根裏に隠されたインドの宝石、警察犬の追跡、猛毒吹き矢を使う小人、そしてクライマックスはテムズ河を股にかけた銃撃戦。こんな要素をそれぞれのゲームに合わせてアレンジし直せば、お手軽にシナリオが作れます。 例えばファンタジー物にする場合、小人を何かのモンスターにしてしまうとか、インドの財宝を古代王国の秘宝にするとか、犬の嗅覚で追跡するところをレンジャー技能で代用するとか(笑)、蒸気船を帆船にすると……、山本宏さんのS・Wリプレイにそんな場面があったかな。 SF物ならもっと簡単。単なる冒険ストーリーだから。ホラーにするのは少々辛いかもしれないけど。あ、でも『クトゥルフ・バイ・ガスライト』はこの時代を扱っているから、原作そのまんまできるかも。 こうやって他のジャンルの小説から作るというのは、一つの利点があります。プレイヤーの意表を突くことができる。ファンタジーのゲームやる人って、やっぱりファンタジーの小説読んでいるケースが多いでしょうからね。守備範囲外から攻めてくってのはどうでしょうか。 ホームズ物の他には、僕はあんまり読んでいないけど、ルパン物なんかもいいかもしれませんね。この手の昔の冒険小説はシナリオのネタにお勧めです。現代のハイテクが主役になるケースも多いし、特に最近は「男の生き様」か「複雑な現代社会情勢」か、どっちか書き込まなきゃ売れないみたいで、単純な冒険ストーリーはj減ってる減ってるし、だいいち最近の冒険小説は長すぎる。ボリュームありゃいいってもんじゃねーぞ。 ……私情に走ってしまいました。この駄文が皆さんの快適なTRPGライフの一助けになれば幸いです。それでは。 1992.8.1 『TRPGの本2』より 再録。 |
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