★サイコフレーム、それはイデオナイトへ至る道…。




月刊「ガンダムエース」で連載中の小説『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』
その主役メカであるユニコーン・ガンダムは、設定によれば
“全身の駆動式内骨格(ムーバブル・フレーム)をサイコフレームで形成した実験機”とある。
しかし「サイコフレームって、
いつからムーバブル・フレームに使われるなんて話になったのか?」


最初にそれに驚かされたのは『ガンダム・ファクトファイル 39』の記事だった。
「へ?サイコミュ・チップを無数に鋳込んだMS用フレーム(*1)
関節などの駆動制御系にも使われてる?」
「ヤクトに至っては、ムーバブル・フレームにサイコフレームが
採用されてる、と言わんばかりじゃないか。」と。(*2)
だってサイコフレームって、νガンダムのコクピット周辺に採用されたのであって、
内骨格に用いられたなんて、劇中では一言も言ってなかったハズ
(*)
…。
「いったいいつの間にそんな設定に…。」

ということで、まずはΖ以降の設定本に、基本資料として多大な影響を
与えたバンダイの「ENTERTAINMENT BIBLE」(*3)を引っ張り出す。
すると“コクピット周辺のフレームに使われている”という記述のほかに
サイコ・フレームがコクピット周辺を始め各駆動制御系に配置され
なんてことが、すでに書かれてるではないか!!うがっ!まるで気づかんかった!
というか、映画劇中のセリフで設定を納得していたために、
長年そんな一文があることを見落としていたようだ。迂闊っ!!

では、そういう設定になったのはどこからか?この本から?
「よもや『逆襲のシャア』公開当時から、そんな話があったんではあるまいな。」

てな訳で、さらに目ぼしいガンダム本をさかのぼってみると、
1988年発行の「動戦士ガンダム MS大全集」の初版ヴァージョンに(*4)
すでに決定的な文言があったことに仰天する。
これがまたよりによって“サイコフレームは従来のムーバブルフレームに
コンピューターチップを金属粒子レベルのサイズで封じ込めたもの

などと、どこよりもハッキリとムーバブル・フレームへの採用を断言してるとは…!
(“サイコミュフレーム”ってのも、他では聞いたこともないが、ケアレス・ミスか?)
手持ちの資料ではこの他にこれ以前で、それらしきものは見当たらないので、
どうやらこれが事の始まりと思って良さそうだ。
というのも、映画公開時の書籍などから、“サイコフレームがコクピット以外にも
使用された”ことを示すものが、他に見つからないからだ。
(ひょっとしたら「動戦士ガンダム MS大全集」の本誌にあたる、
当時の「B-CLUB」にも、同様の説明が書かれてる可能性はあるし、
プラモの解説書も今後チェックできればしたいものだが。)
ちなみに同じく1988年発行の「NEWTYPE 100% COLLECTION 10
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(*5)でも"駆動系に直接
パイロットの脳波を伝達することができる
"との文言はあるものの、
使用された箇所は“コクピットの周囲”としか説明されていない

映画本編(*)ではもちろん、
トミノ監督の手になる小説版(徳間書店刊 「ハイストリーマー」)でも
“「サイコ・フレームはνガンダムのどこに使ってあるのだ?」
コックピットの周囲です。”(*6)と言い切っていることからも、
監督ご自身もそのつもりだったのは、おそらく間違いあるまい。
(一方で“サイコ・フレームは、その性能を持ったチップを焼き込んだ
モビルスーツのフレームのことである。”(*7)などという、
どうとも取れるような曖昧な表現が一箇所あり、これが誤解を生んだ、という可能性は高い。
“駆動系に作用する”という解説も、一連のこの文章を参考にしたのではなかろうか。)

ということで、「動戦士ガンダム MS大全集」のライターが
“νガンダムはフレームをサイコフレームに取り替えた”という表現は、
コクピットのフレーム(構造材)を指していたのに、
「フレームと言えば、ムーバブルフレームのことだな。」と勘違いを
起こしたのではないか?という疑いを強くしているのだが、果たしてどうか?



だからと言って「サイコフレームがνガンダムの関節駆動系にも使われてる、ってのは
間違い」だとか、「サイコフレームはムーバブル・フレームに使われる技術ではない」とか、
まして「ユニコーンガンダムの設定は誤り」などと言いたい訳ではない。
要はガンダムの設定は生き物である、ということだ。
「GUNDAM CENTURY」を引き合いに出すまでもなく、設定の多くは後付けで生まれる。
時にはライターの解釈や創作のみならず、筆がすべったことが一人歩きして
いつの間にか普及してしまうことも、少なからずあるのだ。
今となっては「νガンダムのサイコフレームは関節駆動系にも使われてる」というのは、
ガノタの共通認識として、ほぼ公式設定化していると言っていいだろう。
要はどの段階で、なぜどのように設定が変化したのか、ちょっと気になった、ということで。

そしてユニコーンガンダムでついに
全身のムーバブルフレームをサイコフレーム化できたのであれば、
表面装甲や全身総てのサイコフレーム化も、じきに可能かもしれない。
イデオン誕生まであとわずか…?


ところで後年発行された旭屋出版の「逆襲のシャア フィルムコミック」(*8)の解説コーナーでは、
かなり突っ込んだ独自のサイコフレーム解釈がなされており、興味深い。
コクピット・コアが一種の巨大なコンピューター・コアとなる、というのは
コクピットの周囲を覆うサイコフレームの機能としては、説得力があるのではないか。

また、この解説の中で“ミノフスキー共鳴力場仮説”なる理論が開陳され、
『逆シャア』ラストの奇跡を、科学的に理屈付けをしていたりもする。
おそらくこの説はこの本が初めて提唱したものと思われるのだが、
これを応用すればΖやΖΖの物理的なバリヤーや、
ハイパー化をも説明できる
ということで、けっこう重宝がられているようだ。



さて、これでサイコフレーム談義は終わりかというと、さにあらず。
よくあるガノタの質問に「サイコフレームはなんで『逆シャア』以後の
モビルスーツには採用されてないの?」ってのがある。
ユニコーンガンダムが登場した今となっては、少なくともその後の
搭載例が明示された訳だが、実はF91にも積んであるとか無いとか、
あるいはその開発に至る「フォーミュラ計画」へと技術(MCA構造)が受け継がれた、
などとも言われている。(*1)
で、これらの話は“サイコミュとバイオ・コンピューター”の関係や、
ファンネルやV2ガンダムについても関わってきたりして、その辺も含めた話は、
また近いうちにってことで…(^_^;)。















★参考資料
(太字・下線は筆者による)

(*)
映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年公開) より

━━━━━━映画冒頭、アナハイム・フォンブラウン工場内のνガンダムを前にして

チェーン「原因は何です?重量が3kg減った原因は?」
オクトバー「コクピット周辺の、フレームの材質を換えたんです。
       強度は上がっていますから、絶対 危険じゃありません。」

        *        *        *        *  

━━━━━━同工場内の一室、νガンダムを受領に訪れたアムロに解説するオクトバー技師。

アムロ「敵の脳波をサイコミュで強化して受信できれば、対応は速くなるからね」
オクトバー 「その大尉のアイディアがヒントになって、うちの材質開発部が
       フレームの中に同じ性能を持つ物を内蔵したんです」
アムロ 「フレームの中に内蔵?」
オクトバー 「ええ」
(サイコミュチップの拡大図を指し示しながら、)
オクトバー 「このコンピュータ・チップが、言ってみれば金属粒子並みの大きさで
       フレームに封じ込めてあるんです」
アムロ 「すごいアイディアじゃないか」
オクトバー 「それで、このフレームにそれを使ってます
(νガンダムの全身の構造断面図が映し出された後、
 コクピットの球体フレームだけが明滅して、さらに球体のみアップになる)


        *        *        *        *  

…少なくとも劇中では「コクピットの周囲だけがサイコフレームに換装されており、
それ以外に使われてるとは読み取れない」表現になっているのは確かだろう。



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(*1)
「GUNDAM FACT FILE 週刊 ガンダム・ファクトファイル 39」2005.7.12 デアゴスティーニ・ジャパン刊
「MS開発史(20):サイコ・フレーム」 より

「サイコ・フレーム」とは、金属粒子サイズにまで小型化したサイコミュ・チップを無数に鋳込んだMS用フレーム━━━
つまりサイコミュとMS用フレームを一体化させたハイブリッド・フレームである。
(中略)
 数々の特徴を持つサイコ・フレームだが、コストが高いためコクピット周辺や関節部分のみ用いられることが多い
(中略)
「シャアの反乱」以降、サイコ・フレームが一般化することはなかったが、装甲やフレームとほかの機器を融合させる発想は
「フォーミュラ計画」で確立されたMCA(マルチプル・コンストラクション・アーマー)構造へと受け継がれることになる。


サイコ・フレームの搭載箇所
 サイコ・フレームの搭載箇所は、フレーム素材を組み込める場所であれば何処でもいい(通常のフレームを
サイコ・フレームにするだけでも、理論上は効果がある)が、感応波の送受信とパイロット保護のため、
通常はコクピット周辺に用いられる。また、関節などの駆動制御系に用いることで、四肢やスラスターを
思考で制御できるようになる。

        *        *        *        *  

(*2)
「GUNDAM FACT FILE 週刊 ガンダム・ファクトファイル 39」2005.7.12 デアゴスティーニ・ジャパン刊
「MS開発史(20):サイコ・フレーム」コラム:SCIENCE KEY WORD より

 サイコ・フレームを初めて搭載した機体は、MSN-03ヤクト・ドーガとされる。
ヤクト・ドーガは、AMS-119ギラ・ドーガと同じムーバブル・フレームを使用していたが、
サイコ・フレームの採用により
NT専用機として完成。


        *        *        *        *  

(*3)
「ENTERTAINMENT BIBLE.3 機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.3 アクシズ戦争編」株式会社バンダイ刊 1989.6.20 より

サイコ・フレームがコクピット周辺を始め各駆動制御系に配置され、
機体の追従性が格段に向上しており、パイロットの思惟と同時に機体が作動する。

サイコフレームは、サイコミュを制御するコンピューターチップを
金属粒子レベルで封印したもので、コクピット周辺のフレームに使われている


        *        *        *        *  

(*4)
「B-CLUB SPECIAL15 動戦士ガンダム MS大全集」バンダイ刊 1988.2.10 より

駆動系にサイコフレームが組みこまれ、サイコミュと連動する。

サイコフレームは従来のムーバブルフレームに
コンピューターチップを金属粒子レベルのサイズで封じ込めたもので、
駆動系の直接パイロットの脳波を伝達することができる。(※原文ママ)

サイコミュフレームという、パイロットとマシーンとの結合を深める装備には注目すべきであろう。


        *        *        *        *  

(*5)
「NEWTYPE 100% COLLECTION 10 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」角川書店刊 1988.5.1より


なお、ロール・アウト直前に、急遽コクピット周辺の材質
最新技術である“サイコフレーム”に換装することが決定し、
そのため全体の重量が当初の予定より3kg少なくなるという
ハプニングもあった。
(「MECHANICAL OF GUNDAM CHAR'S COUNTERATTACK」νガンダム より)

RXシリーズ初のファンネル装備MSで、
サイコフレームの採用によって、駆動系に直接
パイロットの脳波を伝達することができる

最強のモビルスーツ。
(「CloseUp!MOBILESUIT」νガンダム より)

コクピットコアのフレームを構成する材質に、
サイコウェーブを増幅するサイコチップを
分子レベルで封入するという新技術。
(「ガンダム世界のキーワード100+α」サイコフレーム より)


        *        *        *        *  

(*6)
小説「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(中篇)」(別名・ハイストリーマー)徳間書店刊 1988.2.29
「チャプターN フォール・アタック 4」 より

サイコ・フレームはνガンダムのどこに使ってあるのだ?」
 オクトバーは、別のディスプレーにνガンダムの断面図を出して、
コックピットの周囲です。これで、サイコミュ受信の能力を強化できたわけです。ファンネ
ルのコントロールだって楽になりますし、大尉なら、それ以上に使いこなせるはずです」

        *        *        *        *  

(*7)
小説「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(中篇)」(別名・ハイストリーマー)徳間書店刊 1988.2.29
「チャプターK νガンダム 2」 より
 
 ここで問題となっているサイコミュというのは、脳波を増幅して発信する装置のことであり、
サイコ・フレームは、その性能を持ったチップを焼き込んだモビルスーツのフレームのこと
ある。
 これを搭載したモビルスーツは、パイロットの意思を直接モビルスーツの駆動系に作用させ
ることができた。それは、パイロットが手足を使う以上に、敏捷にモビルスーツを作動させ
ることができるという意味である。
 νガンダムでは、それを脳波誘導ミサイルともいうべき、フィン・ファンネルの誘導に使
うことに重点が置かれて、建造されていた。
   (中略)
 が、サイコミュとサイコ・フレームを併用すれば、そのような問題もなく、一般的なパイロ
ットでも、脳波誘導をするぐらいできるだろうと想像された。




        *        *        *        *  

(*8)
「MOBILE SUIT GUNDAM THE MOVIES IV 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア フィルムコミック」旭屋出版刊 1997.7.2 より
「GUNDAM UNIVERSE II U.C. MECHANICS」
サイコ・フレーム・システム


サイコ・ミュ兵器の完成形
(前略)
従来のサイコ・ミュは、パイロットの思考を転写したハードウェアの規模が小さい点に問題があった。
コンピュータ技術は極限に達していたものの、それでも思考を同期させるという作業は
コンピュータに過負荷を強いたのである。
 また、システムが同期しても、原因不明の誤作動を起こすことが少なくなかった。
後に、これはサイコ・ミュが動作している周囲でミノフスキー粒子(の場)が不可測な挙動を示すことが
原因であると判明するのだが、なぜミノフスキー粒子がそのような挙動を起こすのかは現在も解明されていない。
 そこで、これらの障害を最小限にとどめるために考案されたものがサイコ・フレームである。
これは、いわば最小のサイコ・ミュ(金属粒子大のコンピュータ・ユニット)をコックピット・フレームとして成形し、
パイロットから等距離に配することで、ミノフスキー粒子の影響を打ち消しつつ、
大規模なコンピュータ・コアを形成して、十分な処理能力を獲得しようというものだった。

奇跡のシステム
 サイコ・フレーム・システムは、想定された以上の効果を発揮した。非常に高性能なサイコ・ミュとしては
もちろんだが、まったく予期しなかった副次的効果の存在が確認されたのである。
 作動中のサイコ・フレームの周囲では、場合によってはメガ粒子ビームすら偏向させる力場が
発生することがあった。これがサイコ・フレームの周囲で起きるミノフスキー粒子の異常なふるまいに
起因することは、すでに確認されていたが、、問題は、その異常な挙動がパイロットの精神状態に
対応しているらしいということであった。
 また、現象の強さはニュータイプ能力の強さに比例するらしく、アムロ・レイの場合、
驚くべきことに小惑星アクシズの半分の質量降下軌道から持ち上げるという現象を引き起こしている。
 現在、この現象は<ミノフスキー共鳴力場仮説>と呼ばれる仮説で説明されているが、
あくまで仮説にすぎず、これらの現象の真の究明は、これからの研究成果を待つよりほかないようである。

(文・永瀬唯/日下部匡俊)



…なぜか、この本に限り“サイコミュ”を“サイコ・ミュ”と表記している不思議。
このナカグロ表記を普及させるべく、提唱してたのかな?



        *        *        *        *  




*なお、参考資料に漏れた未確認の資料や出版物も、
まだまだたくさんあるものと思われる。
とりわけプラモは守備範囲外というか、さほど詳しくないので、
ガンプラ付属の解説書の類は一部しかチェックしきれていない。
(っていうか、あれだけ大量のガンプラを全て入手する訳にもいかず。^_^;)
そのため、もし当方が未確認の資料をご存知の方、
記事中の不備などに気づかれた方は、ぜひご指摘いただきたい。








★バイオコンピューターとは?

(以下、近日加筆。)





























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