与太郎さんの足は、外見上も機能的にも標準的なものだと思っているのだけれども、どうも
靴との相性が悪いことがある。
 一番相性の悪いのは、スキー靴やスケート靴。半日もやっていると足が痛くなってしまう。だ
からスキーに行ったときは、半日がスキー、半日が温泉ということになる。でもこれは、靴のせ
いではないのだろうな。与太郎さんがスキーやスケートが下手ということだけなのだろう。
  さすがに運動靴では足が痛くなったということはないが、運動靴を通勤に使うのはどうもという
気がする。
 ビジネスシューズは、足が痛くなるとまではいかないが、履き心地はイマイチ。
 そこで、与太郎さんはあるとき、決心した。
 自分の足にピッタリ合う靴を探してみよう。金に糸目はつけない。
 手順は以下のとおりである。
  @ 靴の専門店に行ってプロにアドバイスをしてもらって買う。
  A それでもだめなら、セミオーダーで靴を作る。
  B それでもだめなら、オーダーメイドで靴を作る。
 というもの。

 まずは手順 @ から……。 
結果的には、この段階で気に入る靴が手に入ったのだが……。

 どこの靴屋にしようか。東京の銀座あたりに行こうかとも思ったのだけれど、やはり生活圏内
にある靴屋にした。そして、小さな靴屋で従業員があまりいないところ。つまりだな、店の主人
が自分の考えで靴を仕入れ、自分の経験で客に靴を薦めるところ、こういう店がいいな。つま
りだな、靴のプロが靴を売っている店がいいんだ。店は大きいが、靴のことなど全く知らない、
昨日か一昨日、従業員になった兄ちゃん姉ちゃんが、客の指差した靴を包んで品物とお金を
ただ交換するような店じゃだめなんだ。
 そういうことを気に留めながら、街を歩いていると、あったね。
 「 シューフィターのいる店。靴のことなら何でもご相談ください 」
 と書いてある。店もあまり大きくない。ここだここだ。
 与太郎さんは早速この店に入ってみた。そしていろいろ相談して薦められたのが、クラークス
(英国製)のウォーキングシューズ。色は茶色で通勤にも使えそう。
 「 この靴は、長い間はいていると風格が出てきますよ。底も張替えができますから
   この靴は一生物ですよ。 」 と店主が言う。
 値段は、忘れたが、4万円くらいだったか。与太郎さんが普段はいている靴に比べると高価
だが、いいんだ、金に糸目はつけないんだ。これを買いました。
 この靴の履き心地は最高!! こういう靴があるものかと感心したものだ。下手な運動靴よ
り靴底のクッションは効いているし、足は全く痛くならないし、疲れない。与太郎さんはこの靴を
もう8年くらい履いているが、満足しきっている。途中で一度靴底を張り替えたのだが、それに
17500円かかった。それでも高いとは思わない。店主が言ったとおり、風格も出てきた。これ
は一生履ける。
 3年位前、もう一足靴を買いました。同じ店で。他のメーカーでお薦めはあるかと訊いたら、
薦めてきたのがメフィスト(フランス製)のウォーキングシューズ。
 「 この靴は、最初の2〜3ヶ月は硬い感じがすると思います。でも、その後は足に
   ピッタリあって、いつまでもその履き心地が続きます。底も張替えができますか
   らこの靴も一生物ですよ。
   日本製の靴は、試し履きのときはいいけど、2〜3ヶ月たつとフニャフニャにな
   って一生物になる靴は少ないんです。 」 と店主が言う。
 値段は忘れたが、3万円台だったと思う。色はこげ茶でこれも通勤に使える。これを買いまし
た。
 この靴の履き心地は、最初はゴツゴツした感じで、失敗したカナと思ったくらい。でも、2〜3ヶ
月経つと、店主の言ったとおり、足にピッタリとあってきた。不思議なものだ。クラークスの靴に
比べると全体的に硬いのだが、その分足をしっかりと保護しているという感じ。この靴も充分に
気に入って履いている。
 現在、与太郎さんはこの2足の靴を中心に、靴には充分満足した生活を送っている。

 さて、結論です。
 与太郎さんの物を買うときの考え方ができました。(消耗品は別ですよ)
  @ 本当に欲しいものは専門店で買う。 
  A 物を値段だけで買ってはいけない。
     商品知識をしっかり持った店で、充分商品に対して説明を受けられるならば、
      代金の中にアドバイス料が含まれていると思えばよい。
  B 予算の許す限り、できるだけ良い物を買う。
     贅沢だと思われるかもしれないが、安価なものを買って、しょっちゅう買い換えている 
     のに比べると結果的には大きく変わらないのではないかと思う。
     良いもの(自分の気に入った物)を買えば、大事に長く使い、愛着が湧いてくる。
     使い捨ての時代はさびしい。物は大事に末永く使いましょう。

 最後に…… 靴というと、いつも思い出す話があるので、ご紹介しておきます。
与太郎さんがロンドンに住んでいたときのこと。
 ある日、与太郎さんはお友達の家にブラッと遊びにいきました。このお友達というのは日本人
です。訪ねていくと、
  与太郎さんのお友達  「 ちょうどいいところに来た。珍しいものがあるぞ。
                   コタツだよ。日本から送ってきたんだ。     」
  与太郎さん          「 ロンドンでコタツとはオツですね。
                   では、ちょっくらあたらせてもらいましょうか。 」
  てなわけで、与太郎さんが彼の家のリビングルームに入っていくと、あったねコタツが。でも、
そこには先客が2人いた。2人とも男性のイギリス人だった。多分、与太郎さんのお友達が、日
本からの珍しいものを見せるためによんだんでしょう。その二人のイギリス人がコタツにあたっ
ているのでした。
  与太郎さんも、ハローとか何とか挨拶をして、コタツの空いているところに座り、足を中に入れ
たのでした。すると、与太郎さんの足が何か堅いものにぶつかったのです。 コリャ何だ?
与太郎さんはもう少し足先で探ってみたのだけれど、その硬いものもゴソゴソ動く。ム!何だ?
与太郎さんは、コタツの布団をまくって中をのぞいてみて唖然とした。
 そこにあったのは、何と、靴!!。彼ら2人は、靴を履いたままコタツにあたっていたのだ。
 「 おい、ここはロンドンでイギリス領かもしれないが、コタツの中は日本領なんだ!!
   コタツにあたるときぐらい、靴を脱げ!! 」
 と叫びたがったが、そこは国際親善、国際友好。与太郎さんはニコニコ笑って、
 「 エクスキューズ ミー 」
 彼らもニコニコ笑って、日英紛争にならずにすみました。
 西洋人というのは、よほど靴を脱ぎたくないのだなぁということがわかった出来事でした。



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