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君の気持ち 猫の如く。 薄っすら汗ばむこの季節。夏の日差しが降り注いでくるけれど 柔らかい芝生に座った日陰は 心を風が吹き抜けて気持ち良い。 遠くの山にかかる雲に茜色が滲んでいる この瞬間が1番綺麗に見える まるで 1日の疲れを全て昇華してくれるような気持ちが生まれる 明日も また頑張れる そんな、気持ちがうまれ、 「侑士、まだか」 ・・・・現実は そう は 行かない(るるる〜/涙) 俺はただ今キッチンにて料理の真っ最中。 大好きな白猫のお姫さんは、自分がこうと決めた事は絶対で。 逆らおう物ならこの我侭猫はどうなることやら 未だに生傷が絶えへんのんがえぇ証拠・・・ 「ハイハイ、ちょぉ待って!;もうちょっとで・・・出来るから」 今晩の料理はエビのリゾット。 熱いもん景吾はあんま好きやないみたいやけど、今日は比較的大人しく待っている。 「早くしろ」 言葉には小さく苦笑いを返して、これじゃあどっかの料理人と変わらんやん; この状況に慣れてしもてるで、と心の中で自分にツッコミを入れる。 こんな我侭なプライドの高い猫でも 自分と一緒に居る時は (今のような状況ではなく!←重要) 猫本来の甘えたいという本能が疼くのか、べったり とまではいかないが。それなりに仲は良い。 特に夜のあの声は 自分にダイレクトに伝わってくる。 他の求愛の鳴き声が束になっても敵わないんじゃないかと そう思えるほど。 とても とても可愛い一面を知っているから 敵わんのん、やなぁ・・・ 「あ゛………買い忘れた!!」 「何だ…?」 「チーズ!最後にかけたら風味ようなって美味いて景吾言うとったやん!この前」 「あぁ…まぁ、あった方が良いけど。別になくたって…」 「あぁぁ!俺とした事が一生の不覚や!ひとっ走り行ってくるわ!」 脱兎の如く財布を引っつかみ、玄関へ そして 外へ 「え………って、侑…」 文字通りぽつんと リビングに残されてしまった。 あの慌しさでも、きちんとコンロの火を止めて出ていったというのは凄いと思う。 少し開けられたベランダに面した窓からは、少し冷たい風が入ってくる。 耳がぱたりと音を立てた。 蝋燭の火が消えてしまった。 同じ空間にいられるだけで 安心出来る どこか嬉しい気持ちになれる。 でも・・・・今の、あいつがいないこの空間は どこか淋しい。 料理なんて チーズなんて良いのに なんで、なんでわかんないんだよ。 ・・・バカ。 許して欲しいなら、早く・・・戻って 来い。 膝を抱えてソファに座っていると チャイムが鳴った 弾かれるように立ち上がり、玄関のドアまで走る。ほんの少しの距離、でもお互いの距離を縮めたくて。 鍵を回してノブを開けた。 真っ黒の耳を持ってなかった・・・・ 薄いベージュの色。廊下の電灯の光に反射してキラキラ。 「俺が鍵持ってるっちゅうに、なんでお前はわざわざチャイム鳴らすねん」 呆れたような声に反応して そいつの隣りに視線を移せば 待ってた彼がいた。 「侑・・」 「だって早く俺侑ちゃんのリゾット食いたいし!」 忍足に向けられる満面の笑顔は 先ほど沈んだばかりの太陽に似ていた。 「ただいま、景吾」 緩やかに自分に向けられるその微笑が嬉しくて。でも顔に出無いように我慢する。 なんでか、侑士の隣にいるジロみたく 気持ちを全て出してしまったら俺が 俺じゃなくなってしまいそう。 「こんばんは−アトベ!夕飯お邪魔させ」 「帰れ」 「・・・・・・え?」 「景吾?」 ピシリと空気が凍り 落ちていく。音を立てて。 らしくない 自分の本音を出してしまえば反応は読めてくる 「……冗談だ。どうせ路頭に迷ってて、侑士引っ掛けたんだろ」 身体を避けて、仲に招いてやる。俺の 部屋に。 「・・・びっくりしたぁ!その通り!聞いたら侑ちゃんこれから夕飯だって言うし」 こいつの物は 俺の物。俺のものは 侑士の物。 そのソファも クッションも カップも ベッドも 空気も 全部。 忍足は買ってきたチーズを持ってキッチンへ 夕食を盛りつけているらしい ジロ−が誕生日席の位置に、わざわざ椅子を移動させて腰掛けた。 俺とあいつと両方が自分の隣り同士になるように。中立の位置になるように。 「お前、何でそこなんだ?動かしてまで」 「・・だって。侑ちゃんの隣りだけだったら怒るでしょ。アトベ」 言葉に 詰った。 「ごめんね。侑ちゃんの世話焼きなとこに付け込んじゃった、今日は」 「だって、俺侑ちゃんの手料理いっぺん食べてみたくってさ」 「ジ・・」 「心配しなくても大丈夫、ちょぉっとだけ。ね」 自分のテリトリー、乱される事は。心をかき乱されることと同じ事。 「ん?どないしたんや・・?景吾?」 ワンクッション置かれて、自分の目の前に料理が置かれた。 ジロ−の方にちらりと目をやると、耳を楽しそうに揺らしながらもう手を付けている。 「いや・・・別」 「大丈夫、やから。な?」 「何・・」 ふわりと 額に唇が乗せられた 侑士越しに見えたジロ−の姿 皿に夢中でこっちに気付きもしねぇ あんなにも威嚇した俺がバカみたい 待て、・・・大丈夫やからって それって自分の気持ちをわかっているから そう言う意味で、っ 唇が離れて、顔をそのまま上げたら 微笑まれた。 いや つまりは・・そういう事なんだろう。 「・・・お前ら、ズルイ」 目の前に座る侑士を軽く睨み据え、隣のジロ−も睨む。だって、だって ズルイじゃないか。 俺があの時言ったのが本音で、俺がジロ−に妬いてて。侑士を取られるんじゃないかって思って。 でも それが2人ともわかってて。 俺だけ蚊帳の外・・ 面白く無い。 「こ−ら、景吾。スプーン齧らんのん」 「いつもこうなの?アトベ」 「いや、ちょっと今日は特別。みたいやね」 「あはは。可愛ぃね」 「俺の景吾はいつでも可愛ぇねん」 「惚気−」 スプーンを齧って、尻尾をぱたぱたと揺らすのは 景吾の癖。 表情を見れば一目瞭然なんやけどな・・思いっきり眉寄せてしもてるし。 そんなにな、ジロにやなんて妬かんでえぇのに。っていつも言うてんのに。 ほんま、可愛らしい子ぉや。 満足そうな笑顔を浮かべたジロは、始終笑顔で『美味しい美味しい』と連発していた。 本当に笑顔が蕩けてしまいそうだ。 「満腹!ほんっとに料理上手だね−!」 「そんなに褒めてもデザートは今日はあれへんよ」 「冗談抜きでっ!侑ちゃん、もう俺ん家にお嫁に来て欲し」 「駄目だっ!」 誰がなんと言おうとも 仕方ない! 例え侑士が『大丈夫だって』そう言ってくれても、お前は俺のなんだからっ。 他の岳人とかジローとかのじゃなくって 俺だけのなんだからな! 「冗談だってばぁ」と、言ってもやっぱり油断できない。いつ取られてしまうか・・・。 なら取られ無いように見張ってなきゃ。 ずっとずっと 見ていなきゃ。 「俺、愛されもんやから。」 「あはは。見てたらわかるってば。アトベ、俺そろそろ帰るし。ね?」 「・・・・。」 「帰り際にお姫さん刺激せんとったってや;」 見送るために玄関へと侑士と一緒に並んで歩く。一応・・俺の友人でもある訳、だし。 ぺこりとジローはお辞儀をして『今日はありがとう』って言って、ようやく俺のテリトリーから姿を消した。 無意識に、肩の力が抜けて溜息が漏れた。 「景吾そないに眉間に皺寄せて・・威嚇し過ぎ」 それにぴくりと耳が反応する。 「・・しょうがないだろ」 ぎゅぅって 触れたくてしょうがなかった彼の身体に腕を回す 「俺の、俺だけのなんだからな。ジロ−なんかの所になんか、絶対絶対やらないんだからなっ」 どこをどう聞けば、俺がジロの所へ行くと取れたんやろうか・・・。 だけど、単純にそう言ってくれる。・・自分に執着してくれるのは心地良い。単純に 嬉しい。 あぁ。 きっと 会話に入れなくて ずっと妙に感ぐって気を張っていて 景吾の事だから もしも俺がジロのところに行ってしまったらと想像までしてしまったに違いない。 そんなの ある訳無いのに。 そろりと自分の腕を彼の背に回す 「景吾と一緒におれへんなんて、タコの無いたこ焼きや」 訝しげに顔を上げた彼はこう言った。 『それ、たこ焼きって言わないんじゃないのか?』と。 その言葉そのままに。 「俺は景吾とおられへんかったら、俺やないねや」 そう 君に返そう 「岳人も?」 「あかんなぁ」 「ジロ−でも?」 「あかんあかん。むしろ家事手伝いでコキ使われるから」 「・・そっか」 安心して頬を胸に摺り寄せる可愛らしい君に 次はなんて言おう。 「景吾が世界で1番 大事な子ぉなんやで?」 ・・・なんて言ったら どんな顔を見せてくれるんやろうか。 君が嬉しそうに笑ってくれるなら 俺は家事手伝いでも 我侭でも 何でも聞いてやりたい。 我侭な君は 誰がなんと言おうと 俺にとって たった ひとつの 宝物 END |