俳句工房[ZA]−俳句と評論
 
 
 
[俳句をめぐるコラム]
小島健作品をめぐって
 
 
■2 (句集『蛍光』)

 

 小島健さんの句集『蛍光』(角川書店、2008年)を拝読しました。

  • 鶏鳴のどこにもあふれ斑雪(はだれ)村  小島 健
  • 空いろに越の棚田の春氷
  • 川音の空へ抜けゆく青胡桃(くるみ)
  • 梅雨明けの街真つ白になりにけり
  • 口中の冷たくなりぬ梅の花
  • 東京のきれいに暮れて桜かな
  • 物陰にあり薔薇園の竹箒
  • 跳躍の尻美しく秋の空
  • 太々と川の力や冬景色
  • かたまつて風音聞けり冬の鹿

 構図の確かさ、といったら、少し単純すぎるでしょうか。しかし、小島さんの作品のよさは、こうした単純な言い方で表現できるよさだと思います。それはむろん、作品が、あるいは作品のよさが単純だということではありません。細やかで豊かな作品だと思います。
 先の句集『木の実』(朝日新聞社、2002年)をめぐって、「彼は光景の合間に垣間見えるある本質を鷲掴みにする」(「日常と真向かうための」−「合歓」第22号)と記しました。鷲掴みとは、勇気のことだと思います。決断する勇気。

  • カンガルーの袋恋しき万愚節(ばんぐせつ)
  • あちこちへ昼寝せし顔持ち歩く
  • 水吐いて蛸(たこ)逃げてゆけり春の昼

 こうしたユーモアのある作品もまた、小島さんらしい確かさに支えられています。

 

小島健句集『蛍光』(角川書店)

小島健句集『蛍光』(角川書店)
 
 
■1 (『大正の花形俳人』)

 

 小島健さんの著書『大正の花形俳人』(ウエップ:発行、三樹書房:発売、2006年)は、大正時代に活躍した20人の俳人の作品を鑑賞したエッセイです。「ウエップ俳句通信」に連載されたもので、連載は毎回1俳人の読み切り。こうして一冊にまとめられても、読み切りのリズムのよさがあり、とても読みやすいものとなっています。
 取り上げられている俳人は、「虚子門の五大家」「女流俳人」「中間派」「文人俳人」「自由律俳人」「その他の個性的な俳人」(「はしがき」)と幅広く、多くの人に興味をもってもらえる構成になっています。「読者はどこから読んでいただいても結構でしょう」(「はしがき」)ということばに従って、ぱらぱらとページをめくりはじめました。
 まず、芥川龍之介。続いて、村上鬼城。とくに理由があるわけではありません。目次を見ていてふと思ったページを開きました。 1俳人あたりのページ数は9ページ。細切れの時間でも一気に読むことができます。
 村上鬼城は、20俳人のトップバッター。その一句目が「治聾酒の酔ふほどもなくさめにけり」。「この句は、耳疾の境涯にあることを堂々と詠んでいる点に注目したい。自己を一句の主題にし、笑う。詩人としてこんな強い表現方法はない。自分に自信がある証左だ」と、小島さんは書いています。小島さんは、「はしがき」で「最近の多くの俳句作品を見ますと、どうも全般的に脆弱化していると思うのです」と述べておられます。鬼城作品に対するこのコメントは、こうした問題意識と強く繋がっているのだと思います。

 

小島健著『大正の花形俳人』(発行:ウエップ)

小島健著『大正の花形俳人』(発行:ウエップ)
 
*初出:<Made in Y
(1=雑記帳193:2006.9.16 2=雑記帳230:2008.9.22)
 
 
 

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