俳句工房[ZA]−俳句と評論
 
 
 
[季節別自選俳句作品]
秋−歳時記の秋の季語たち
 
 
 
 
町長の首かくかくと終戦日
先生の近くにあれば秋の水
台風の近づく町に眠りけり
人びとが渚に集ふ秋日かな
柿熟れてゆくまでのことずれながら
市役所に人の集まる野分かな
桃の葉の色づく日々を妻の秋
手の届くところにあつて吾亦紅
にんげんに家草々に秋の風
十月のゆつくり変はる海の色
終戦日/秋の水/台風/秋日/柿
野分/妻の秋/吾亦紅/秋の風/十月
[2009.8.23掲載]

 
倉庫から顔出してゐる終戦日
たくさんの草八月の公園に
大残暑とは湖のほとりなり
レポートの溜まる九月の必死かな
古書店に小さな客や秋彼岸
秋風にやはらかくあり肘と膝
べたべたと日差しありけり秋の家
熟れ柿の砕けてゐたり枝の先
馬鈴薯や家人のこゑのそれつきり
ひとりならにぎやかになる吾亦紅
終戦日/八月/大残暑/九月/秋彼岸
秋風/秋の家/熟れ柿/馬鈴薯/吾亦紅
[2007.9.21掲載]

 
待つてゐて蜩のこゑ山の方
軒下に父の自転車秋の蝉
倒れつつ鶏頭鉄の空はあり
朝刊に大きな顔や秋の風
花木槿たぽんと暮れてしまひけり
きらきらす一人が立てば秋の水
木犀の路地を通つて昔かな
十月の膨らんでゆく水があり
踏ん張つてみよ秋風のなかの牛
胡桃の実母に従ふ日暮れかな
蜩/秋の蝉/鶏頭/秋の風/花木槿
秋の水/木犀/十月/秋風/胡桃の実
[2006.10.23掲載]

 
流星や祖父の書物を大切に
野分後の山のかたちの美しく
元町の入り口に立つ秋の人
いつまでも動いてゐたり秋扇
父の庭月のしづくの中にあり
鶏頭に息ととのへてゐたりけり
 銀座・月光荘画材店
三人や扉を開けたままの秋
この男銀杏黄葉を載せてをる
ほがらかにことばを使ふ落葉かな
鎌倉の秋に疲れてゐたりけり
流星/野分/秋の人/秋扇/月
鶏頭/秋/銀杏黄葉/落葉/秋
[2005.8.6掲載]

 
原爆忌路面電車の石畳
だぶだぶと九月の水のありにけり
秋づくやベランダに来る鳥の影
桃太る小さな町に来てゐたり
鶏頭を十本抜いて了ひにす
ひよいと来て二百十日の石の上
三匹が蜻蛉であれば秋彼岸
墓洗ふつむりにひかり集めつつ
秋風や力士の尻のごはごはと
秋の日を束ねてゐたるふたりかな
原爆忌/九月/秋づく/桃/鶏頭
二百十日/秋彼岸/墓洗ふ/秋風/秋の日
[2004.7.17掲載]

※このページの作品の作者は全て吉野裕之です
 
 
 

秋の風景−青栗

 

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