
裸山沢に入った時の巻き道の厳しさが脳裏に染みついていて、正直言えばここに一人で再び入るのは避けるべきだろうなと思っていた。
でも、あの時に巻いてしまった沢の上部はどうなっているんだろうかということがふと気になってしまった。
そんなこと
他人的にも自分的にもホント些細なことなのに、これをよく言えばこだわり、悪い方でとれば病気というらしい。病はもやもやを晴らさなければ直らないと言うけれど、そのとおりにしようとすればますます深みにはまってしまう。
どうすればいいんだろう。
谷峨駅下の246バイパスは早朝なのにもう渋滞走行が始まっていた。連休の初日だ。だが15分遅れでやってきたバスは「何っ」と思うくらい空いていた。多くの人は遠くの山に行き、近場は逆に空いているということかなあ。
高いところに雲がかかっているがほとんど晴れ。
山を歩くには暑くなく寒くなく、彼岸の週らしい天気に歩調も軽い。先週、女郎小屋で遭難があったとかと聞くと隧道を一つ通過すると、ついつい通過野猿棚があるあたりに目をこらしてしまう。そして青崩隧道に着く。
玄倉川への下降路はかぼそかった以前を思い出せないほどに、しっかりとした踏跡道になっている。ここらあたりの川の流量は上流のダムで全量が堰き止められていることもあって、幅広い河原にはモチコシ沢からの水が隅っこに申し訳なさそうに流れている程に少ない。そんな状態だからモチコシ沢出会いまでは、軽く飛び石で流れをわたることはあっても、靴を濡らさずに済む。
そしてモチコシ沢に入る。
出会いの小ナメを登る。靴はこの前富士山にいたときに履いていた物で、つま先は割れてしまっている。そんななのに今日履いてきたのはフリクションが良いからなのだ。この靴、底にはゴムが貼り付けてある。使い始めてまだ四回目くらいなのに、模様はほとんど無いくらい柔らかめのゴムはすり減っている。安物ということもあるが、減りの早い分だけグリップ力が良いということだ。
富士山後、もうだめと同じ物を探しに行ったが、その時限りの特売品ということでゲットしたその靴は3サイズ以上の違い品しか残ってなかった。靴はまずはプライスで/フリクション・その次にサイズ/履き心地と順番づけても、さすがに3サイズ違いだと除外せざるを得ない。そのうちにまた出てくることを期待して、今度見つけたときには絶対に三ダースくらいなら買い溜めようと思う。だけど・・・当分は出てこないだろうな。
あの時、宝物だと気がついていれば
”惜しかったなぁ”はいつも後の祭りが終わった時の独り言なのだ。
以上はどうでもよいことだが、前回フリクションに手こずった記憶のあるので裸山沢を登るにはこれと考えて、現状を承知でこの靴を引っ張りだしたのだ。
さてモチコシ滝
二段の落差60m、下からなら見上げ見る程の落差を感じるだろう。下段はホールドが比較的豊富なので確保しながらなら、それほど難しくない。たぶん。
上段は傾斜がきつくなる。流れ左側を登り、上部で小凹角状に入って落ち口のスラブに出る。ここのところがのっぺりとした岩に水垢が付いていて難しいらしい。もちろん、この滝は見るだけの滝だ。二段の中間横に位置する滝見台の立木に結びつけられたφ11mmのザイルは無ければないで済ますことは可能だが、ルート選択に迷いが出ないこととバランスの手助けにはなるからあってありがたいロープである。ただ、もしもフィックスにしてゴボウで登ろうとするならば、立木の向こうの折れ曲がった先の見えない箇所のロープが落石で痛めつけられているかも分からないから止めた方が良い。たとえ落石に傷んでいなかったとしても、固定されてから十年以上は経過しているのだからナイロン素材がいつ裂断するかもと普通に考える時分だろう。
<写真削除しました。あしからず 091018>
<古いロープはまだまだ健在 でもな あんまり頼りにするなよ>
立木から5m下がって滝の中間にある釜の縁に立ち、下と上をそれぞれ眺める。それから再び急斜面を登る。最初は右手方向に踏まれた巻き道を登る。巻き道とはいえ、明確な道ではない。灌木に根っ子に笹の根を掴んで右手の小尾根方向を目指して行ける方向に行けるように登っていく。
もう五回か六回は登ったこのコース、高度差があるなかの急斜面ということもあり、馴れると言うことはなくて、いつも巻き終わるまでは緊張しっぱなしだ。
そんな、登路の一角で忘れ物を二つ発見した。
左手上の灌木にひっかかったマップケースに入った地図。
右手にはクライミングロープ(ザイル)。
まずはロープ。
だれが放置したんだろうか。立木にセットされた状態だった片方の端を引っ張ったら簡単に回収が出来た。全長18mくらいで、ロープの切断面はナイフでカットされていた。まだ新しく柔らかく十分に使用可能なφ10m/mのクライミングロープである。立木へのかけ方からは下降途中にセットしたと思われるが、なんで回収しなかったんだろうか。
夏の間にこの巻き道にセットして使い、回収しようとしたが、途中で若木に引っかかってしまった。登り返すのも面倒だったので手元に残ったところ迄で良しとして、残りは切断して捨てたということだろうか。それが秋になって引っかかっていた葉っぱがもげたのでマシラでも容易に引っ張って回収できる状態になったのだ。以上は想像。
裸山沢の厳しい巻き道が脳裏にこびり付いていたので、そんな時には使わせてもらおうとロープを束ねて肩に袈裟懸けに背負う。これだけで一人前のクライマーになった気分になれるから登攀具ってふしぎだな。
もしも使わなかったどうするかって! そんなことちっとも考えていない。
他方 地図
これも急斜面の立木の枝に引っかかっていて、回収するにはおっかなびっくりな動作が必要だった。不安定な場所だったので現地で中身を確認する余裕はなく、ウエストバックのベルトに短刀をさすようにして挟み込み、巻き道が終わって沢に戻ってから中身を確認した。中身は全く乾いているから落としてからそれほど時間が経過していない。同角尾根を中心にして、裏面には”堰堤下坑道跡…”と座標点のメモ、表の地図上にはあたりの沢名・ピーク名がボールペンで丁寧に書き込まれ、マーカーペンで所々に付点されている。そんなところから沢屋の落とし物ではなく、地形探索屋さんの持ち物だったらしいと推察するがそれ以上は分からない。このように拾いものは余計な詮索を呼ぶから、余計な落としものは精々しないことにしよう。だが
小尾根に出る手前で踏み跡は左手上方向に切り返す。それを無視して直進すると向山沢大滝の上につながる踏み跡道が見つかるだろう。その先は丹沢でも秘境中の秘境だ。今日はそれを再確認したところで、「秘境は人が入り込まないから秘境なんだ」、なんて言いながら身を切り返す。
巻き道は更に急になるが、立木や木の根っ子もしっかりしているので、腐り木を掴まないようにすれば、登るのに困ることはなく、やがて水平になった巻き道がF2を過ぎたところで、やや強引に下降すると巻き道が終わる。

<二段目の巻き道途上で放置されていたクライミングロープを回収>
(1.)まずは、登る斜面が安定しているかだね。
岩と剥離している草付きとか、密着性の悪い泥の斜面、踏ん張りの利かない露岩の上の砂の斜面がこれに当たる。急な斜面を巻いている時に、いったん滑り出したら自力ではまず止まらない。ズルズルと急斜面を「あれ〜っ」と悲鳴を上げながら滑り、下が断崖だと、そこからは転げ落ちることになる。そして、これの怖いのは「巻き道は何処に」と斜面の弱点を探していると「ここは易しいぞ」と思わせてルート選択させて誘い込み、ある程度突っ込んでから「ホラッ」と突然キバを剥くことだ。斜面の中に部分的に潜むこのような状態を事前に知るのは難しく、そんな状態に陥ってからにっちもさっちもいかなくなることが良くある。
急斜面の細いバンド状の踏み跡で、足を取られてズルッという目にあってごらん。とても怖い!
(2.)次に、コースだ。
どこをどう巻いていけば良いのか。パッと見て「ここだ」と判断できれば良いが、少し大きな滝だと途中に露岩帯が混じっていたり、斜面と滝を分ける凹状壁があったりして、どこをどう登れば良いのか判断できない事が多々ある。そんな場合は、とりあえず易しそうなところを探して取り付いて、途中からは成り行きに従って登っていくしかない。しかし、下で見たときには行けると思ったところが、そこに着いて見ると手も出せないほどに急だったり、単なる岩の模様だったりして行き先に詰まってしまう事が多い。最初のカンは必ずしも当たらない。ダメダったら方向転換を早めに行い、窮地に陥る前にやり直さなければならないが、行くとこまで行ってしまうと、引き返す事それ自体が難しいんだ。
(3.)その次は手がかり足がかりにする物の安定さだね。
灌木・根っ子・露岩/これが安定していれば、どんな急斜面でも安心さ。たとえ足をばたばたしたとして身が空中になろうとも確保点に掛けたシュリンゲを手首に掛けて確保出来れば、たとえ力が尽きたって落ちやしない。ところが丹沢の巻き道には腐り木がかなりあるんだよ。それも見た目には丈夫に見せてだよ、少しくらい力を入れても確かな反力があって、絶対に大丈夫と思った瞬間に「ポキッ」というのがあるから、これが侮れない。
用心のためには左右両手に別の木を掴むことが絶対条件だが、そんないつも都合良く急斜面に灌木が這えているとは限らない。また、岩の上に根を張った灌木は見た目より保持力が弱く、根っ子全体が「ガバッ」と剥げてしまう事だって無きにしもあらず。
そんな場合は根っ子が頼りだが、これは立木以上に注意が必要だ。ぐっしゃり腐っていれば見分けを誤らないだけ良いが、岩に入り込んだ根っ子の先が腐っていて力を掛けたらズルズルと伸びてバランスを崩す何てことがかなり多い。泥が付いている中で使える根っ子を使っていいもんか、あるいは危険なものかを的確に見分ける方法なんていまだに手にしていない。精々自重をすべて預けるなんて状態にならないよう注意しよう。
そして露岩、土石の表層に顔を出した岩に石。
これって不安定な物が多い。腕を頭の上に伸ばして引っ張ったときはがっしりしていたのに、胸の位置まで来たら「ボロッ」と剥げるのは普通にある。大きさに頼っていると、これもまた間違い。1mくらいある岩だってバランスが崩れれば容易に転げ落ちる。そんなのを下で受けたら身もろとも大転落さ。それに急斜面のものが転がりだしたら、後続した人にはもう止められない。パーティで来ている場合には、先頭が落とす岩は間違いなく後続を遅う凶器になるから、二番目もバカ顔して上を見ていてはダメよ。先頭と間を詰めて登るか、十分に間隔を取り鉛直線下方方向には間違っても位置しないこと。
(4.)最後に高度に斜度。ヤッパリ大きな滝の高度感ある巻き道は怖い。だけど巻き道の難易度を決めるのは(1.)〜(3.)であり、高度/斜度は時間に関係する要素にはなるだろうけど、難しさへの寄与度合いは低い。
こう列記した基準でこのモチコシ沢の巻き道をランクづけたらどれくらいだろうになるだろうかなあ。
高度差では確かにすごい。そのことによって緊張感が途切れないことでうっかりミスが少しは減るだろう。それにロープ設置済みによるコース選択の容易性/立木&根っ子の安定感からは安心して登れる巻き道の部類であり、難易度は中位に位置づけても間違っていないと思うけどね。
だったら難しい巻き道ってどこよ?
いったいが名の知れた名瀑は沢山の人が歩くから当然ながら巻き道だって整備されていておかしくないが、小さな沢の奥の狭まった谷間に立つ名もない滝なんてメッタに人が来ないんだから巻き道だってろくなのがなく、必然的に巻き道の難易度が高まるのも当然なのは言うまでもない。それらを網羅し××棚とか、○○沢の大滝なんてのを相対比較した巻き道ランクリストなんてのは実にマシラにふさわしいレポートになると思うんで作ってみようと思うけど、今は暇がないので少しの間待ってくださいな。
さて本題に戻ろうか
F2は本日も上から眺めるだけにする。
簡単な小滝を一つ通過して岩床の沢を短く歩くと二俣に着く。ここで先ほどの拾いもののうち地図はポケットに突っ込み、残ったマップケースは邪魔なのでおいていく。腰のベルトを締め直し、さあここからが裸山沢だ。
<写真削除しました。あしからず 091018>
裸山沢 F2(倒木下の滝をF1として) 右から巻いて上がる
最初は岩床から始まり、すでに二俣から見えていた倒木の塊にすぐに突き当たる。そこには5m程のナメスラブの滝が倒木に埋もれていた。その倒木にまたがって乗り越していくと岩肌に一歩も触れずにこの滝を登ってしまう。
次に続くのは8m程のゴツゴツした岩の滝。一見簡単そうなのだが、それに釣られて登るとスタンスが外形していて相当に面倒だというのが前回の教訓である。それを覚えていたので滝のすぐ右横から巻いて登ることにした。しかし、泥状の急斜面は不安定でスタンスが取れずにズリズリ滑って登れない。それで10m程の戻り、傾斜の幾分緩くなったところより岩の上縁の動物が付けた道に乗って、この滝を巻く。
沢に戻ると太い倒木が何本か横たわる。そうそう………こんな状態の沢だったよ
一枚岩の沢床に倒木、そしてまた大きな倒木 小さなのは無く
何十年も前の大出水の時の倒木が、苔むしていまだに沢を横断する。
6年前の遡行の記憶が少しだけよみがえる。
短くゴーロを歩くと沢は右にキュッと曲がり、曲がり端にはナメスラブの滝が待っている。ほとんど全面水に濡れている。右に点々と白く乾いた岩が見え、そこを登ると幾分か傾斜が落ちる岩床が続いていて、下の滝部分と併せて快適な岩歩きが堪能できるのだった。こんな登りが続くなら、本当に山は楽しい…………
さらには苔むした古い丸太の上を渡り、白い岩のスラブをヒタヒタと歩く。そこに幾らか傾斜の乗っただけの小滝を越えると、次には倒木の丸太で出来た小滝を梯子登りする。丸太は多いが、どういう訳か一箇所に集まり、またみんな古く小枝等は無くなっているので倒木の数ほどに沢が歩きにくいのでない。
<写真削除しました。あしからず 091018>
裸山沢F3 ナメスラブの優美な滝 快
右に五段50m程の涸れ棚が僅かな水量で落ち込んでくる。最上部の二段の20m程がきつそうだな。左から30mは超えようかという涸棚が右の涸棚と対をなすかのように落ち込む。左右の斜面は急であり付近の悪絶な様子をうかがわせる。このように、いざと言う場合でも、この沢は左右の斜面を使って逃げ出そうという輩が入り込むことを拒んでいるかのように思える。
そうなんだよ! この沢は2万5千の地形図を見れば分かるとおり、丹沢でも屈指の等高線密度が濃い地帯に位置し、沢がダメという場合の巻き道が厄介なのだよ。そのために、先ほど放置されていたロープを見つけたときはマシラ小躍りして「これ、今日は絶対に役に立つ」と喜んだのだ。でも、実際、登攀道具が役に立つような状況に陥ってはいけないのだという自覚は忘れちゃならないぞ。
左右の涸棚を見る場所ではすでに正面本谷には狭い樋状の滝が待ち受けている。涸棚の場所からは一体どうやって登っていけば良いのだろうかという不安を持って、その樋状滝に近づいてみると、滝が狭いので左右の岩が使えるのと、先ほど思ったほどには急ではなく、滝の中に適度に足場があるのが分かる。その足場をスリップすることなく使えれば、ここは絶対に易しい。そのためにこそとこの靴を履いてきたのだもの役に立ってもらわなければならないのだ。手持ちの靴の靴では一番の安物ではあるが、手持ちの中では最高にフリクションの良いこの靴。
とは言っても、何十足の中の選択ではなく3足の中での相対比較なんだけどね。
<写真削除しました。あしからず 091018>
F4 狭い樋状 靴が挟まるほど 快適だ
岩が赤くなっている部分では滑り気味に感じる場合もあったが、予測通りにフリクション良く、左右の岩に期待することもなく、この調子なら10m内外でなく100m続く樋状もこの靴ならOKなんて気分でこの滝を登り終える。イイゾイイゾ ト オダテラレ ブタが木に登るようにマシラは滝を攀じる。
次の小滝 樋状3m 前回はフリクションが悪く、左を巻いて怖い目にあった。今日は滝通しに楽ちんに通過する。左右の大石に挟まれた2m程の小滝は中央の丸太を手がかりに軽くパス。次の丸太でできた堰(自然物)を強引に突破すると奥に大滝が見えてくる。奥の悪場帯に到着したのだ。
その悪罵の最初は傾斜の緩い6m程の滝。グリップが良いのが分かっているので水垢は全く怖くない。簡単に登ると次は丸太が積み重なって出来た堰。左右の壁はのっぺりしているが丸太を左脇に抱えて岩を蹴るようにしてせり上がってパスする。
そうすると次も、のっぺりとした5mの滝だ。幾分か急。
ここが前回登れなかった。それで一段下がった丸太の堰付近から左岸の露岩帯を上に・横に・下に・縫って、このたった6mの滝を通過するための大巻きを敢行する羽目に陥ったのだった。そのときの事は、よ〜く覚えている。大滝を目の前にした左岸の露岩に立つ沢床から8m程の高さの灌木のところまでは何とか行ったが、そこから5m下の沢床に降りれなくて、来た巻き道を大半戻り、そこから上の疎林帯に入って大滝の上で沢に出るまでに結局一時間以上かかる大巻きを余儀なくされた。
その曰く付きの6m滝が、なんであの時苦労したんだっけと思うくらい今日はあっさりと登れた。おそらく岩のヌメリがあの時と相当違うのと、靴の違いが今日の結果になったんだと思う。
ところで、その6m滝が登れたからと言って、次の大滝が登れるとは限らない。結果的に同じような巻き道をたどることになることはあり得て、事実、そうだった。
とは言え、大滝の下に立ってからの巻き道と、そうでなかった前回との気持ちの差は大きかった。
F5 大滝の下の6m滝 前回は登れなかったが今回は快適に 周囲は圧倒的な急傾斜
大滝の下に立って右側の斜面を見ると、その時の立木が、すぐそこに見える。少しだけ斜面は急だが、取り立てて難しくもなさそうなに見えたことと、経験から確実に巻いてパスできるルートがあるということを知っているだけの差なのだが、その気分の差は実に大きいのだ。
巻き道のことは後にして まずは大滝の見物である。
<写真削除しました。あしからず 091018>
F6 大滝 20m? 逆層垂直 こりゃあ登れない 右フェースに逃れて逃げるより手がない
上から落ちた水が3m程下の突起した岩で二つに分かれ、急でのっぺりとした岩肌を一気に下る。登るとしたら左手の落水に沿って登るのだろうが、ホールドは逆層でみんな下を向いているので、フリーで登るのは相当に難しいに違いない。現在登山全集<S36初版>にはハーケン連打で登ったとの記述がされ、「丹沢の山と谷」<S48>東京雲稜会編によるとハーケンに頼っても難しいと記述されているとおりに見るからに悪絶。それに下から目をサラしてもハーケンのかけらも見あたらない。もっとも残置が有ったところで今のマシラには絶対に登れない!!いいや登る気にも岩肌に触る気にもなれない程に悪い。そうであれば、こんな場所は出来るだけ早くクレヨン・シンチャン流にケツをまくるべし。「オラッ ヤメタぞ〜」
なんて言いながら滝の上から落ちるなよな〜 「しんのすけ」
右壁5m上の先ほどの灌木を目指して露岩を登り、そこに着いたら、右方向(下流側)にトラばり、合間にチョンチョンと上を目指す。右手のカンテ(岩角)に突き当たったら(前回は岩角の左手すぐのの凹状部を直上したが)、そこからは左側に切り返す。それも10mも行くと滝の下から続く凹状の急斜面に突き当る。この凹状を渡れれば落ち口にダイレクトに出られそうだが、凹状に降りるのと凹状から脱出する四歩くらいが相当に悪そうに見える。そうするには水平方向に進むことになるが、こんな場合には肩にかけているロープで確保しようにも転落防止にはならない。だったら直上するよりなく、不安定な岩場を露岩が尽きるまで登ってから、下から続く薄い踏み跡道(獣道)に出る。不安定な露岩に急傾斜、手にする立木は茨が強く、なによりルート選択に迷う巻き道である。
20m程左上に進み、踏み跡道はそのまま小尾根を急に登っていくが、脇に立つ立木にロープをかけて、それを体に巻いて下降を二回ほどして沢に戻る。ロープがないと下降するのに必死になって手間取りそうな斜面も、確かな道具があると立木がしっかり利いているのを確認するだけでよいのだからホント楽だ。ロープを引っかけて持ってきたかいがあったと思った。事実、巻き初めて30分で沢に戻れて、それは見込みより20分は短かかった。
大滝を超えても沢は狭く、両岸に押し込められそうな雰囲気の中で続くのは3mCS滝である。そこしか行ける場はないCS右の右壁の岩瘤に指が引っかかるクラックがあり、それを手がかりにCS下まで登ってから上にのし掛かる岩(CS)を抱くようにして左にトラバースしてパスする。思ったよりも指のかかり具合が良かったので助かる。
その狭い沢をそのまま進む。そうして奥の二俣。
<写真削除しました。あしからず 091018>
奥の二俣の左(傍流)にかかる表層が剥がれて出来たように思える25m滝 右の草付きと灌木の間を登る
左は斜面の表層が剥がれて出来たような広いスラブの二段に膨らんだ岩の上に水が広がって流れ落ちる25m程の滝。
右の奥には急で狭い岩肌に凹状クラックが磨かれている10m程の滝。スラブには手がかりが少なく、特に上部の傾斜が強いので登るのは相当に難しいだろう。この滝が裸山沢本来の大滝と言われているらしいのだが、下半は土石の中に埋もれていて今は見る影がないという<現代登山全集記述>。
岩で出来た狭い本流に先んじて上部から転げ落ちてきた大石がCSとなり堅固な自然の堰となった。そこに先の左の表層が剥げた分も併せて上部から次から次と岩や大石が転げ落ちて堆積して本流を・滝を埋めてしまった。きっとそうなんだろうなと想像する。
その礎となる岩だって年月が経てば崩壊するだろう。そうすれば再び大滝が出現するに違いない。ただ、それは大地震でもあればすぐに、そうでも無ければ何十年も先のことになる。だからマシラにはおそらく幻の大滝のままでいるのだ。
前回は、この凹状滝の右斜面から巻きにかかったら急傾斜に阻まれて沢に戻れず、そのまま山頂に向かうことになってしまった。そんなことは帰ってきてから前回の記録を読み直して「おっ今回とはルートが違う」と知ることであり、山の中ではそんなことは全く分からないし気にもしていない。いつも只その時の感じでルートを適当に選択して、今日は左の露岩滝25mとブッシュ帯のコンタクト部分を選択して登る。
<写真削除しました。あしからず 091018>
奥の二俣 右の凹溝状滝(S30年より前には大滝だったらしいが下部の大半が土石に埋まってしまった) なにしろ急なので登るのは難しい
25m滝はこうしてパスし。
その次の6m滝は右の縁部分を登り、落ち口で左に横断する。そこから左の樹林帯にトラバースし、そのまま斜面を上がって裸山沢の頭(P1129m)に行こうか と考えて取ったコースだった。上にはブッシュ帯から滴るような水滴を落とす10m滝が見える。その上では沢状は消えている。沢は終わりだろう。
ところが左へトラバースするには傾斜が急すぎて、下は急な露岩滝と言うこともあり、怖くてとても進めない。上は垂直のしたたり滝だから進路にするには問題外だ。そうすると右に進むしか進路がない。そんな場合に備えたかのようなお誂えのような斜面がそこにあるのが、如何にも丹沢らしい。しかも
途中で岩からの滴水で喉を潤してから緩斜面を登ると、そこからは岩肌を削って作ったようにも見える道が付いていた。古いけど確かに人為的な道だとおもう。その道に従って進んでいくと、先ほど別れた10m滝の上に続く本流の稜線まで続く緩斜面全体が見渡せた。
この道って昔の坑道路なんだろうか。そうだとしたら、その辺に坑道口が見えてもおかしくないだろうなんて周辺を見渡すが、ひょっとしたら坑道路か?なんてのに思いついたのは本流に戻ってからだったので、もしもあったとしてもその場所はすでに通り過ぎているに違いなかった。ちょっと気を回すタイミングを間違った。
だが今になって25m滝付近まで探索のために戻るのも面倒くさいと思った。オレは狭いところは嫌いだから中に金でもあるのが確実なら恐怖を押し殺してでも探索もしようが、黄銅鉱くらいなら面倒くさいのはいいや。それに、これだけ坑道状態の宣伝を書いておけば、「そのうちに誰かが確認に来てくれるだろう」と見損ねた心残りを強がりを言ってごまかす。来るなら上の稜線からだろうけどルート選択能力がプロ級でないと難しいだろう。下からの探索では、もっと苦しいかも
<写真削除しました。あしからず 091018>
奥の左俣から本流の間に付けられている鉱山道跡? 急傾斜帯の露岩を崩して作ってある
道に導かれて本流に戻ると、ゴロッとした岩の沢は安定した石の沢になり、次に岩床の緩い斜面に変わる。こうして最終段の緩いカールを易しく登って、ぽいっと尾根に出た。発電所横からモチコシ沢の頭の間に伸びる山稜の1070mと1129m(裸山丸)の鞍部である。
1129m(裸山丸)のピークまではひと登り。
山頂は立木に黄色のテープが巻かれているだけで、ほかには目印はない。向山沢から来た時にはテープにマジックで”裸山丸”って書かれていたように思うけど、字は消えたのか見えない。そのテープに下に拾ってきたロープをぶら下げて記念写真を一枚撮る。
さてとモチコシ沢の頭を目指す。
ところが進んでも鞍部状にならないのだ。1129mからは確か30m程しか下らないはずなんだから、すでに向こうに次のピークが見えてもおかしくないのに、どうしたんだろう。
踏み跡もほとんど無いくらい薄い。もう少しは目印があってもいいだろうに。
おかしいなあ。
そんな場合には、さっき拾った地図はあるじゃないか。
ポケットから引っ張り出して比べてみると広い尾根に誘われると左に曲がってしまってモチコシ沢と裸山沢の中間尾根に誘われることが分かった。何回来ても付近の地形は複雑な上に見通しが悪く、それに生来のそそっかしさからついつい間違ってしまったらしい。
もしもその尾根(中間尾根)だったら
一度は歩いたことのある尾根であり、このまま降りて途中から女郎小屋沢左岸尾根に乗るならば悪いところは無い。だからこのまま下るというのも一つの手ではある。そんなには考えたけど、帰路の玄倉林道をとぼとぼ歩くイメージがどうもというのと、先週の女郎小屋遭難騒ぎの直後に女郎小屋付近を歩くって言うのはなんかミーハーっぽく思われないかという肝っ玉の小ささがそのまま下るのを思いとどめた。戻る。
だけど、ちょっとの降りだけど、元に登って戻るっていうのはいつも疲れることである。たった一歩でも10mでもな。そして、今日は、そんな思いをもう二回・三回と重ねるのだった。それは拾ったロープの重さ分だけ体が疲れてしまって山勘がちょっと鈍ったために違いなかった。だったら、そんなロープさっと捨ててしまえば良いのになあ。
もう使わないだろう。
だけど、いったん担ぎ上げたからには捨てるにしろデポするにしろ、それぞれの登攀具にふさわしい場所に戻してやらなければかわいそうだ。それが拾いあげた者の拾った物への責任でもあるのだ。ただ捨てたんではゴミになってしまうじゃないか。
一つの捨て場所は、沢が終わった裸山丸の山頂だった。山頂であることを示すマークにはなるだろう。だが帰路の同角尾根のタギリのロープが少し気になって、そこでは残置できなかった。
モチコシ・裸山沢の中間尾根をあのまま下降するならモチコシ沢を横断するその場所・・6mスラブ滝の上だったかな。あそこだろうな。置いておけば誰かが使ってくれるだろう。そこなら女郎小屋左岸尾根がすぐそこだから下降のじゃまにならないから。
<写真削除しました。あしからず 091018>
無名の頭で東沢乗越方向を示す標識
戻った1129メートルから左手(発電所尾根からなら右手)に折れるようにして下降すると、すぐ先に次のピークが見える。モチコシの頭に相当するピーク(1200m)である。山頂の標識は風雨にさらされ、元の形をほとんど残さないほどに縮小して石に挟まれて木の根っ子に保持された板は、それでも固定した方向が東沢乗越を指すことで標識の存在感を極小ではあるが懸命に示している。
さあ、同角尾根を30分で芋沢の頭まで行ければ次のバスに間に合う。そんな気分で歩き出したのだが、今日は荷物が計算外に多かった。わずか切れぱっしのロープに地図(A4二葉)だけなのだが。それに、そもそも30分でそこまでというのが勘違いの元だった。
大タギリに着くまでにすでに30分が経過し、
タギリの話しをまとめるという約束手形が期日がきても落とし切れていないとの思いは頭の隅っこに押し込め
残り御料林径路20分+林道40分はかかるとすると、どう急いでも玄倉1時半のバスには10分ほど間に合わないだろうと計算できた。だとしたら次のバスまで、もう一時間半ほど間があることになる。そう思った時、同時に体も脳内神経回路もだらけてしまったらしい。
<写真削除しました。あしからず 091018>
ワナバ沢を降り損なって御料林経理に戻る登り
余る1時間強の暇つぶしに何をやろうか。定番は小川谷に浸かって洗濯するということで、それ意外のアイデアはなかった。芋沢の下をトラバースするように進む御料林径路を左目に見て直進し、鹿柵のゲートをくぐる。そこから直進して頃合いを見て右手の斜面をトラバースしてワナバ沢に入る。これが定番の下降路だ。このコースは三回くらい使っている。ただし、きちっと決まった踏み跡道があるのではなく、毎回微妙にコース取りが違い、易しく沢に下降することが出来る場合もあれば、ザレの崩壊地にドギマギする事もあった。今日は少しトラバースが早すぎたらしい。沢に滑り落ちるように入り込むことが出来たが、そこから50m程下降した地点で大きな滝場に遭遇してしまった。落ち口に乗る大岩が不安定に思えて直下を覗き込む事が出来なかったが、落差は10m以上あるだろう。両岸が切り立っていて、近くに巻いて降りるコースが見あたらない。どうしても下降を続行するなら、さっき降りてきた山の斜面を登り返して沢へのトラバース開始地点を下げての再トライが必要なのだ。しかし、かなり足が疲れている感じがあって小尾根に戻った地点で小川谷への下降を止めることにした。
どうせ暇つぶしだし………だけどこんな意識の時って、まともな事が出来るはず無いのだ。
御料林径路に入ったのは良しとして、ここでもコースを誤ったらしい。トラバースから下に向かう小尾根に乗り、少し違うかなと思う間もなく滝音が唸るように聞こえてきて下に小川谷F3が眼下に見えてきた。知らず知らずに先ほどの”小川谷に下ろう”の残渣が頭に残っていて沢に引き寄せられたんだろうな。
ここまで下ってしまえば「それならば、そうでもいいや」さ
せっかくだもの、水浴びを楽しもう。
ところが沢へ下降できないんだな。
肩にロープを持っていることを忘れていたのと、谷底から10m程の高さに沢に沿って道が踏まれているので、下る面倒を考えると、ついついその道を歩いてしまう。そうしているうちにF1の下まできて道が沢に下降する。こうして最初は思いかなわず下降できず、諦めた後に道迷いから想定外に小川谷に下降してしまう。何ということだろう。こんな時は良くない事が起きる前兆って肝に銘じる必要がある。慎重にさ!何事も!
<写真削除しました。あしからず 091018>
小川谷にて靴を洗う
でも、そんな事どうでもイイヤ まずは洗濯しよう!
F1(3m)は釜がずいぶんと浅くなっていた。前回は腰まで入ったのが、今回は膝下だ。F1を登ってF2(大岩が左右に水を分ける)の左側の落水を腰から下に受けて衣服の泥を落とす。流れの中に靴を突っ込めば、泥だらけだった靴がたった10秒で砂一つ無く綺麗に洗える。まさしく天然の洗濯機の性能はよいのだ。だけど、このときポケットの拾った地図も一緒に洗濯してしまった。閲覧サービスからダウンロードしたのを水溶性のインクのプリンターで印刷したらしく、書き込みのボールペンは残っていたがインクが流されてどんな地図だったかは分からなくなってしまった。これは持って帰って捨てよう。
残ったロープはどうしようか。
<写真削除しました。あしからず 091018>
御料林径路入り口の立木にロープを掛けてデポ 今日はご苦労さんでした
御料林径路入り口前の広場にはテントが三張りほど張られていた。彼等・淑女がじろっと見ている中を径路の階段を上って20m程先の立木の枝にロープをぶら下げる。ベストの場所とは言えないが小川谷に入り込む人が気がつけばこのロープを有意義に使ってくれるに違いない。そう思ってぶら下げたのだ。決してゴミを放置したつもりではないが、異論があれば回収はやぶさかではない。
ただ袈裟懸けにしていたロープを体から外した際に、かぶっていた帽子がロープに引っかかって落ちてしまったらしい。その時はもう疲れていて、帽子が取れたことになんか注意がいってなかったらしい。これが本日の悪いことのブービーである。なんか変だなと 「帽子が無い」 と気がついたのは、小割沢に着いた頃で、そこから戻るのが億劫だったので諦めた。あんなもの誰も持っていくはずがないので、そのうちに回収する機会があるに違いないんだ。もっとも惚けた頭のことだから、本当にあの場所で無くしたのかと問われると確信をもって「そこだ、間違いない」とは応えられない。
玄倉からユミコちゃんに電話で帽子無くしたと言ったら、返答は「約束の三時帰宅、どうなっているんだよ〜 もう時間が過ぎているゾ 松田警察にいつ電話しようかと悩んでいたんだよ〜 約束違反だから、この連休の残り期間は単独外出は禁止 すべて私の命令に従うこと」と怒られた。本日の悪いことのラストメニューである。
あ〜ぁ まだ15時05分じゃないか。オレは嫁さんに魔法をかけられたシンデレラ・ガールの弟かよ。せっかくの秋のシルバー週間がユミコちゃんのお供で過ぎて行く。
写真集です。
自宅6:25〜本厚木6:51〜松田7:23JR〜谷峨7:55〜玄倉8:10〜青崩隧道9:05〜モチコシ沢大滝下9:20〜裸山沢・モチコシ沢の分岐9:55〜20m大滝下10:30〜巻き道で〜大滝上11:00〜奥の二俣25mスラブ滝下11:15〜鉱山道で沢に戻る11:30〜尾根に出る11:40〜裸山丸11:45〜モチコシの頭(東沢乗越への分岐)11:55〜女郎小屋沢乗越12:10〜大タギリ12:30〜芋沢の頭12:55〜ワナバ沢下降試みるがダメ/御料林径路に戻る13:30〜再び小川谷に下降(F3上)〜左岸踏み跡道でF1下まで13:50〜F2下で衣服の洗濯〜御料林径路入り口(回収ザイルをデポ)14:05〜玄倉14:50_15:06乗車〜谷峨15:29JR〜新松田16:03〜本厚木〜自宅17:00ごろ 2009/09/19 薄曇り(玄倉から富士山が見えた)
今週末はモチコシ沢/裸山沢と大勢の人が時間差だったが集まったらしい。
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