女郎小屋沢出会い前の隧道で軽車が越していった。車には何の標識も無かったように思う。その時は青崩隧道手前から折り返してくるか、もしくはマシラの不法通過状態チェックでもするのかと考えたが、そこまでいってみれば車は影も形も無かった。緊急車両以外でも、何らかの理由がある関連者ならば通行可能らしく、通行止めは私有林所有者締め出しの口実かも知れないなんて感じた。
 それに抗う所業なんてことはないだろうけど閉鎖ゲート上層のバラ線を支柱ごと折り曲げて、よじ登って通過している跡があった。こんな無体な努力するパワーがあるなら、どうでも良いことだが、周囲を見渡す頭を少しだけ使えば迂回路が探せるし、その方が時間もかからないだろうに。ご苦労様なことだ。

 玄倉川の水量は少なかった
 青崩隧道下からモチコシ沢出会いまでの水の流れは前とはいくらか変わっていた。水量は僅少なので、これならばモチコシ沢出会いまで徒渉無しかなと思っていたが、何回も水溜まりに入ることを強いられた。その上、モチコシ沢出会いは見え始める右岸のトラバースでは靴がスルッと滑って胸までズボンと水に浸かる。幸いデジカメも何もかも、まだザックの中だったので濡れて困るとはならなかった。
 それで今日の靴のフリクションは良くないのが分かった。休み前まで会社の上履きだったのを不要になったので山用に転用した靴である。フィット感はよろしいがフリクションはまるでダメだ。最初のツルッを教訓に今日は気をつけようとドボンした瀞の中で思う。

 モチコシの大滝は見るだけにして巻き道へ
 古びたφ11m/mザイルのフィックスを使う。このザイル、表層に苔も這えているし、見た目ではとても古びている。念のため、最下部で全体重を掛けて、手がかりには十分耐えるであろう事の確認作業は行うのだが、いつまで保ってくれる物であるか、今回は役に立ったが、次回はとんだやっかい者に転じるなんてことも、この固定ザイルを使う毎に、そう思うのだ。
 実際、最上段は太い立木に結わえてあり、とても重宝するが、立木もザイルに結わえられて少々弱り気味だ。こちらも、いつまで生木で巻き人の体重を支えてくれるだろうか。
 そんなだから使わなくてもと思うけど、二箇所くらいはどうしても使いたくなる。そんな場所には補助としてシュリンゲが立木にセットされている。

 一段目の滝が終わり、続く上部の二段目は右寄りに5m程踏み跡を追いかけた後に、それからは左・上・左上と露岩と立木を縫うように上がっていく。最初の5m程の歩みの跡に継続して右の小さな岩稜を目指すと向山沢F1上をトラバースする仕事道(踏み跡)につながるのだが、今日はそっちには用がない。

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モチコシ沢F1 その1
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モチコシ沢 その2 上半部
 巻き道はF1、そしてF2もパスして、その上で緩やかに沢に降りる事になる。F2下まで下降してF2見物とは考えたが、下降は落ち口の左隣の凹状で、引っかかるような箇所はないから滑り降りても良いのだが、かなりきつい。F2の二重の「ノ」に落ちる滝は珍しいが、面倒を考えて止め、上に向かう。
 F2上からは小滝とナメを挟んで歩く間もなく裸山沢との二俣となる。右の裸山沢はナメ床の上に大岩が転がり、左のモチコシ沢は石英閃緑岩の上を涼やかに水が流れるナメとなり、奥にナメに傾斜がついた滝が三段に重なって見える。
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裸山沢と別れて直ぐのモチコシ沢
 その最初の5m程の小滝は見た目易しいのだが、(おそらく水の流れに負けずに水の中を行くのがベストなんだろうが)ついつい歩き出して間もないという気分が、それを避けさせる。
 流れ左にホールドスタンスがあり、そこもルートであることを教えてくれる。中段の三歩くらいがフリクションになるのだが、そこは岩の上の薄く草が乗っかているような不安定さがあって、実際、沢靴で表面をこすって苦労した跡も見える。しっかりしたホールドが一箇所でもあれば、何も難しくないはずなのだが、あるいはフリクションの利くフィルト靴があればなのだが、今日のズック靴は合成樹脂の安物で、水苔には弱い摩擦しか得られそうもない代物だから。中段部を登る時には何時滑るかも知れないとハラハラ・ドキドキだ。その部分を通過すると、残りの傾斜部は水に磨かれた石英閃緑岩のまっただ中を行けば何も問題なし。
 沢が右に少し曲がっている地点の6m滝。ここはうまい人ならフリクションだろうけどマシラは5m戻って左岸を巻いて登る。
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モチコシ沢には」ナメ状滝が続く
 なんで夏の今に、このモチコシ沢なんだろうか。
 それはフリクションが利いて、白く輝く平ったい沢床を薄く水が流れるその上を子ども達が川縁で水遊びをやるように、「ピチピチぱちゃぱちゃランランラン」なんていう気分で歩けば夏の暑さも吹き飛ぶはずだ。
 それが手軽に楽しめて最もアプローチの短い場所ってキーワードで検索したら(そんな検索しても出てこないよ;念のため)モチコシ沢ってマシラの頭の中では抽出してしまったからだ。そのような地形が、途中の沢筋が左に曲がるところの赤い岩の小滝や、その先の5mスラブ滝を挟んで奥の悪場付近までずっと続くのだ。この間にはナメやゴルジュ状に小滝はあっても難しい滝は一つとしてない。
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スラブの滝は右側から巻いて登る
 さて、狭い廊下状を進んでいくと前方に小滝がかかり、その上に緩い傾斜の滝が見える。右側は平ったい高さ5m程の岩にリング・ボルトが二本打たれて、その横を僅かな水を流している。
 進行方向の前だけ見ていると直進しかねないが、本流はこの平板状の滝の方であるが。ボルトのあるフェースはA0でもやらないと登れない。直進方向の小滝を登ってから、草付きの中にスタンスを探し、高度感を楽しみながらトラバースしてフェース上に出ると傾斜の落ちた岩を5m登って、いよいよ奥の悪場の最初の滝の下に着くことになる。
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狭いゴルジュ状が続くが難し箇所はどこにもない
 この悪場最初の滝は15m程あり難しい。前回は右側の草付きを登って落ち口上に出ようとしたが、不安定な灌木と急斜面に行き詰まって追い返された。今回は、そんなだと分かっていたので最初から滝の左の小尾根についた巻き道に入る。この巻き道は、しっかりとしている。手がかりにする細い竹も強く二本も掴めばぶら下がっても大丈夫だろうと思われるほどで、もしも巻き道が不明瞭で、この竹の中を藪こぎするとしたら相当に困難だろうと思う。途中、下が切れている部分にさしかかった地点で沢には次のクラックの滝が見えるが、いったん巻き道に上がった後なら、下降するにはロープがないと危険な地形ということは過去二回の経験から分かっているので梢の中の滝を見るだけで下降は諦める。
 巻き道は水平になった小尾根の上に続く。左手に大きな露岩の見える小尾根上の鞍部から右手の白い砂の斜面を10mくらい滑り降りて本流に戻る。先ほどの滝の部分で本流の流れは無くなり、僅かな水溜まりが残るばかり。30m程下流に戻って岩の下から浸み出す水を飲んで、水分の補給を行う。

奥の悪場の入り口に当たる平板フェース(上流から眺める)
 ここからは源流歩きである。最初は岩床の上を、次第に岩や石が散乱するガレ場歩きに変わっていく。
 左に小さな窪みを分け、前方に白く砕けて崩壊した石っころが沢の中を埋める地点に来たところの手前50m程の位置から左岸側を注意して見る。それはイガイガ氏の鉱道跡が、この辺だろうと思ったからだ。まず、沢床から10m程の位置に鉱道入り口らしきものを見つける。岩を人為的に砕いていて入り口の上部に当たるように感じたが、そうだとした場合の入り口部分は砂に埋もれていて、此処が本当に鉱道入り口かどうかは分からない。
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奥の悪場の最初の滝 逆層で悪そう
 そして、その場所から30m程上流側の沢のほんの脇に当たる立木の葉に隠れるよな感じで、別の穴の入り口を見つける。こちらは明らかに人の掘った穴だった。入り口が埋まりかかっているせいで中腰にならないと入れない高さだが、ちゃんとした構造の穴である。しかし、中は真っ暗だし、中から得たいの知れない獣が飛び出して来るんじゃないかと思えるような雰囲気から、入り口に腰を落として座ったが、中には一歩だって入ろうとは思わなかった。実際、右手になんかの場合ように石ッコロを握り、何時でも走って逃げ出せる姿勢で身構えて中に怖い物いないかと腰は座らなかった。マシラは自転車で走るトンネルの中だって恐怖を覚えるし、どんなに宝物があると言われても間違っても穴の中に入るケービングなんてのには手を出さない狭所恐怖病患者なのだと思う。

廃鉱山入り口?
 万が一、この穴の中に入るとしたら、この山域で大雨や大雪に遭ってニッチもサッチも行かずに一時的に待避する場合を除いては考えられないと思う。その場合は、たとえ獣と一緒でもガマンするだろう。
 この場をデジカメでフラッシュを一枚たいて退散する。

 その場所から上に向かっては白い石屑が散乱する。その石屑も人為的なものかも知れない。
 そう考えると、さっきは怖いといったのに、それはどこだろうかとあたりを見渡す。右手の上方30m位の位置に露岩があり、その下から岩屑は続いている。
 その露岩の下に鉱道入り口があるんじゃ無いか?
 しかし、これは認識違いだった。露岩の下に着いても穴らしきものは何もなく、露岩の表層が大きく剥離しているのが見えるだけだった。石屑はこの表層が自然に砕けて落ちたのであって、鉱道から不要な屑を吐き出したのではなかったのだ。そんな状況を基部で確認したら露岩を左から回り込み、立木を頼りに急な登りを10分ほど行うと、立木にテープが地味に巻かれ山頂であることを示す裸丸山の山頂に着く。
 軽く降り、登り返すと東沢乗越への分岐だ。方向を示す木の標識は本当にくたびれて二枚に割れ、文字も判別不能となっている。

東沢乗越への案内標識は二つに割れてしまった。
 さて、これから

 復路
 一番安易なルートを選らぶ。理由は今日はユミコちゃんと約束があるので玄倉発13:26分に確実に間に合うルートであることが条件であった。
 もしも制約が無ければ、一番のお勧めコースは大タギリまで行って右手の涸れ沢を降って、小川谷の前後半部を全て楽しんで下降すること。これには四時間位はかかるだろう。
 次には大タギリからワナバ沢の頭まで足を伸ばし、ワナバ沢を下降して小川谷前半部だけ水遊びする。この場合には時間的には三時間ではちょっと早足が必要だ。
 沢に降らずに御料林径路を小川谷取り付きまで下降するのも手だが、持ち時間が二時間だと、かなり飛ばさないと無理だ。

 今日は一番無難なルートにする。たまには仲ノ沢径路も良いじゃないという思いもあった。
 東沢乗越から砂の中の道を降る。跡がしっかり付いていて昨日か一昨日か何人かが歩いたらしい。小川谷終了点(欅平)からはゆったりと歩く。

 何カ所か道が崩落している部分はあるが、この道の大部分は歩きやすい道だ。お盆休みの最中であたりに人の気配もなく、思わず歌を口ずさむ。考えてみれば何時もこのあたりは歩くときは、こんな気分である。きつい所は終わり、玄倉バス停まで歩けば終わりと心が安心できるのだろう。
 そんな場合に適当に唄う歌は何時も違っていて、今日の主題はなぜか「私のお父さん」 本田美奈子にでもなった気分で歌うが、もちろんそれは気分だけで、音痴であることは変わらず、歌詞だって最初の一フレーズしか覚えていないので「ラ〜ラ・・ララ」の繰り返しだ。そうなれば本田美奈子もキャスリン・バトルもナナ・ムスクリもマシラも僕の頭の中では歌のうまさに関しては判別不能で同じだ。
 この歌、映画「異人たちとの夏」の中でも歌われていた、なんて事も思い出す。歌手は誰だったか。誰でもいいけど、映画の中で風間政夫が亡き父母に会ったように、

 そうそう私もお盆には田舎に帰り、祖父母・父にお線香を上げて来よう。

 その前に県民の森にある山神様に今日の楽しい山遊びの御礼を申そうと階段を上がっていったら賽銭箱が10m程下に転がっていた。風に煽られて跳ばされたらしい。山神様と言え、天変制御は思うに任せないのだろう。社から賽銭箱が転んでた場所まで、一円五円五十円百円玉が散らばっていたので拾い集め元に納めた。十円玉が目に入らなかったのはなぜか土色なので見つけにくいからだろう。2006年謹製の缶ビールは風に飛ばされてはいなかったが、やはりあおられたんだろうか、社の下に転がっていた。相当に強い風が吹いたのだろうと推察される。

 玄倉で
  あの水難事故があってから何年たったろう。濁流に抗って何人か立っていた正にその場所に、朝方ターフが一枚貼られていた。
 帰りにその場所を見れば、大勢の若者に家族ずれが周辺に群れて、若者達は上の段(砂防堤)からの高飛び遊び(7m位の高さ)の最中だった。一人じゃ足りずに四人つるんで集団で、あるいは女の子もいて

 ギャハッハのハッ
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水難事故の発生場所も晴天なら楽園だ
 その下の段は十数mの高さがあり、あの時、何人もがたたきつけられて、その後行方不明になったと聞いている。
 その場所での一日の行楽
 人の噂も四十五日。十年も経てば、世の中、こんな物 人の不幸は密の味ってことかな
 停車したパトカーから警察官がなにやら言い出しそうだが、警告しても聞く耳は持たないだろうね
 平和で退屈な世の中の夏の一日だ。


写真集です


 自宅5:25〜本厚木5:49〜松田6:23〜谷峨6:55〜玄倉8:10〜青崩隧道下の玄倉川9:10〜モチコシ沢出会い9:20〜F2上9:45〜奥の悪場下10:30〜鉱道跡11:10〜裸丸山11:25〜東沢乗越11:30〜小川谷終了点11:50〜西丹沢県民の森12:20〜山神様に感謝12:25〜水遊びの見学〜玄倉13:10_26〜谷峨14:02〜新松田14:24〜本厚木〜自宅15:05 2008/08/13 基本的に曇り・時々僅かに日差しありだが、割と涼しかった。

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