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尾崎の茶畑から三峰山夜明け
ユミコちゃんを口説いた。
 「明日、山行かせてよ〜」


 その日、その話しはそれで止めた。29日、後始末に出社して帰宅した時のことだ。
山の準備はして、朝はいつもの時間に起きたけど、ダメと言われた事を打ち消して強行する程に一途な思いを山遊びに抱いているわけではない。
 30日 所在なげに音楽聞きていたら、近くで熊の出ないところに熊鈴というモノを持って行くならOKとユミコちゃんからご宣が告げられた。
ほ〜 二ヶ月ぶりで山に行ける。
 厚木で言えば七沢では熊出没以来自警団での見回りが行われていると聞いているほどだから、確実に出でない場所なんて市街を除いて無いだろう。
 制約を比較的にと解釈すれば、厚木市近郊の山いずれでも熊に遭遇する可能性は少なく、どこでもOKとなる。今日は、その中でも入り口部は民家にガードされ、周囲を林道でグルッと大きく取り囲まれ、それに登山道にも固められていて人間の臭いがぷんぷん漂うことで獣が立ち入りにくい辺室沢の支流が良いじゃないかとそこを選んだ。
 熊鈴は元来持ってない。しかし、約束は約束である。守り札に付いている小さいのを外して小銭入れのスライダーに結びつけ、それで「これっ熊鈴」と示して代用する。彼女、「それじゃあ」と言い出したいような納得しがたい表情を示したが、形は形さ。小銭入れをポケットの中に収まると鈴は揺れず音も出ないので役には立たないのは確かだ。でも、今日の場所 間違っても熊は出ない。

 通勤チャリを引っ張り出す。土山峠を登らないなら変速が壊れ利かないこの自転車でも十分に役に立つ。ただし、タイヤの空気が抜け気味と言うこともありペダルは重い。それに自宅から飯山街道を走り出すと北風がきつく感じる。少しでも上し坂になってそれが続くと腹の筋肉が燃えて徐々にきつくなるのが分かる。考えてみたら、ここ二ヶ月運動なんて何もしていなかったし、事故前までは片道一時間のを徒歩で通勤していたのもバスにかえたので、すっかり筋力が弱まってしまったらしい。すこし鍛え直す必要がある。その点では変速機の壊れた自転車は筋力増強という目的に全く合致している。
 煤ヶ谷手前の尾崎で三峰山に朝日が当たる。役場前の坂道で宮ヶ瀬行きのバスに抜かれる。ほぼ予定通りの時間だ。そして煤ヶ谷で三峰山に登りに行く団体さんの間を割ってバス停前にある観光表示板の裏に入り、自転車をデポする。

 煤ヶ谷から坂尻までは車道に沿って歩き、柿の木平川にかかる橋を渡ると辺室沢沿いに民家の間の車道を進む。車道の終点は尾根の東側突端にあたる平坦部で、そこには加藤林業の看板と広い庭園風墳墓と営業事務所が建っている。現在営業していないらしく、人の気配はしないが、日が燦々とあたり、林間から舞い散る枯れ葉は丁寧に取り除かれ、車道や四方に延びる仕事道は綺麗に掃き清められ手入れがされていて正月を迎える準備が整え終わった状態にうかがえる。
 その庭園風の南端から延びる階段道を降って辺室沢に降り、降り終わったところにある水飲み場で喉を潤す。そして沢沿いに平行して上部の辺室ダムまで延びる車道を歩く。
 ダム(大きめの砂防ダム)上からは、まず朽ちて落ちそうな丸太橋を伝って左岸に渡り、暫く杉の林の中を歩く。仕事道沿いに導水管が伸びている。その菅を拾ってきた枯れ枝で叩くと”カン・カン”と甲高い音がして谷間に響く。これがマシラの熊避けだ。菅の切れたところからは木々の幹を50mおき位の間隔で叩いて音を出す。小ナメが出てきたところで、最初と同じように丸太橋を伝って右岸に戻る。途中のナメ滝を見るためには仕事道から外れ、10m程降って川面を歩く何てことするが、基本的にず〜っと仕事道の上を歩くことになる。そして、中から上流にかかる地点で、この先100m程進めば辺室沢の大滝に付く地点で左手に小沢が別れる。これが今日の目的の小沢で清川村地名抄にも書かれていない位だから、沢の名称は当然知らない。対岸は辺室林道が一番沢の流れに降ってくるあたりである。

辺室沢の小滝(ナメ部の始まり)
 大滝を見に行こうかと半分程度まで進んだところで、今日はリハビリである。余計な事はしないというユミコちゃんとの約束を思い出して、引き返す。
 さて、この小沢、当然ながら大きな滝はない。でも、フリクションの良い岩床の手頃な傾斜が上部の登山道付近まで続き、冬の日だまりを散歩がてらに歩くにはなかなか良いと思う。
 本流から別れて60m程度進むと7m+3m程度の緩い傾斜のナメ滝に出会う。仕事道歩きではポケットに突っ込んでいた片手を滑り落ちないよう念のため岩に添えるが、斜度50度は手のホールドがなければ登れないという程の難しさではない。落ち口の上に湧水口が一箇所口を開けていて、この沢の半分の流量がそこからあふれ出ている。

45度ほどの傾斜の滝(フリクション) この上に7mの垂直な滝(水無)が隠されている
 この湧水口の横から上に10m程度(長さは15m程度)のナメ滝が延びている。上は岩場で、そこから沢は右に向いて延びているように思われた。このナメは斜度45度程度だが手がかりは少なく、フリクションで登る必要があって、難しくはないが片手をポケットというわけにもいかず、一生懸命に登る必要がある。そのナメを登り切ると、目の前に7m以上の垂壁が唐突な感じで立つ。気がついた位置ではあまりに距離が保てず、写真が撮れない。かといって、下のナメを降るのは面倒で、結局写真は撮れない。右に曲がるものと思っていた沢は、実際は直進し、この垂壁が水路になるのだった。もしも、これで逃げ場がなかったら、下のナメ滝も降るのは面倒だし、困ってしまうだろう。幸い、右に曲がると思えた部分は急ではあるが、ホールドが豊富でしっかりとした岩だった。4m程登り、土の中の根っ子を頼りに滝から逃げて登る。7m滝の上部は3m程の傾斜の緩い樋滝が続く。

登山道近辺までこんな感じです
 さて、この先も滝が続く。しかし、3〜4mで傾斜はソコソコあっても岩の出っ張り引っ込みが適度にあり、フリクションも利くので、登って難しいと思える滝も、危ないと感じる場所も、もう出てはこない。それでも最後の長さ20m程の一枚岩を登った先で岩が砂の下に隠れてからの凍った砂の上の霜柱にステップを刻んで上によじ登る100m程は滑り落ちないよう注意する必要がある。
 そこを30m程登ったところで、このまま直登するにはアイゼン必要という状態になったので右に逃げて、右手から上がってくる仕事道(尾根に着けられた水源保護作業用;一般者侵入禁止の看板が上部の登山道に掲げられている)にでる。そこから登山道までは70mの間は急な傾斜で仕事道といえど侮れない。

これで今日は終了。自転車漕ぐのはちょっと辛いけど、山を歩く分には体調に支障なしが分かった。今年の〆としては十分だ。
物見峠に行くこともせず下山する。

登山道が煤ヶ谷方向に水平に延びて緩やかに右回りなる地点から左手に別れる黒波線道に入ったのがちょっとしたアクセントだ。
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黒波線道の途上の小ピーク(道は殆どしっかり 一部だけなし)
 入り口は少々藪っぽいが”水源保護”の杭があるその先からは馬引き道の跡のような広い道が断続的に続く。左手にトラバース気味に下降していくと20m程の間だけ道と山林との区分けが付かない箇所があるが、それ以外はメーン道路のようにガタガタと石がころばっていたりせず、岩も露出してないので膝には優しく良い道だと思う。途中、小ピークを踏める事が出来るのも全く山の頂を踏んでいない今日にしてみれば嬉しい。その小ピークと次のピークの鞍部で道は分岐する。右手に入ると緩やかに降っていって、新築なった砂防堤の手前で登山道に合する。200m歩けば寺家の集落だ。もしも分岐を左手に入れば (こちらも良い道が踏まれている) 曲師宿方面に下降するものと思う。


自宅6:40〜煤ヶ谷7:30〜坂尻〜加藤林業事務所(寄り道)7:45〜辺室ダム7:55〜分岐8:20〜今日の沢8:25〜7m垂壁8:35〜登山道(物見峠手前)9:05〜分岐9:10(黒波線道へ)〜小ピーク9:15〜分岐(分岐先の小ピーク付近探索)9:20-9:25〜登山道に合する9:30〜寺家9:35〜煤ヶ谷9:40〜自宅10:10 北風が体に時折感じられるように小寒かったが、空はくっきりと青い冬の一日でした。帰りは下り坂の楽な道 2007/12/31

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