現在、就職塾という形で20名ほどの学生を数回に渡って指導する試みをしています。その中で、「あるイベントを実施するためのチェックリストを作成する」という課題を与え、それに取り組んだ学生たちの感想に対して、講評として書いた書簡を、コラムの一つとして掲載します。
【書簡1】
就職塾各位
今回の課題は、単純に皆さんの「考える体力」を見るためのものです。
「考える体力」は、現時点で差があるのは仕方がありません。考える体力をつける、そのためには、「徹底的に考える」ことしかありません。
スポーツと同じで、ルールブックや本を読んだだけでオリンピック選手になることはできません。さまざまなトレーニングをし、練習試合をし、そして結果を出しながらつぎのステップにいくのです。
忙しかったから十分にできなかった、その点を反省したい、という方が ほとんどでした。しかし、よく考えてください。広告業界は極度に忙しく、複数の仕事を転がしていくのは当たり前のことなのです。忙しかったからできなかった、という発想を私たち社会人、しかも広告業界の人間に普通に言えるということ自体、学生の甘え、大きな感覚のずれがあるのではありませんか?
仕事の優先順位の設定と時間の使い方は表裏の関係です。時間がないからこそ、密度を濃くした取り組みをしなければいけませんし、「考える体力」がある人ほど、これがうまいのです。
A君のように時間を区切って全力を尽くすとか、B君のように寝る前にも取り組んでみるというような「時間を作り出す」ことができる人に、他の人は勝てません。しかも、A君B君でも、電通・博報堂クラスに入れるかどうかは分かりません。この2名でも厳しいのが、極めて門戸の狭い広告業界の就職なのです。
最終目標に達するために、手前のことに慌てているような精神状況では絶対にゴールテープは切れません。限られた時間で最大のアウトプットを出したつもりでも、その結果で他の学生と勝負をしなければいけないということを認識すべきです。自己満足で内定するほど、社会情勢・雇用状況はよくありません。このままではほとんどの人が広告業界はもとより、他の企業でも役員面接を通過するまでに至らないと予想しています。フォーラムでもいいましたが、自分のいるポジションを正確に把握してください。
少しでも内定に近づくための今回の結論は、あなたたちの時間の使い方を徹底的に考え直すことです。そのためには徹底的に考える体力を鍛えるしかありません。まずはこの講評をもとに、自分の心がけややり方を徹底的に反省してみてください。
【書簡2】
時間の使い方が悪かった、プライオリティのつけ方がまちがっていた、という反省は決してまちがっていません。まずはここからでしょう。
しかし、時間をかければ出来ているはず、と考えるのは間違いです。「時間をかける」=「努力をする」=「結果が出せる」という構図はあまりに甘い、ということです。
この課題は「成果物」がすべてであり、基本的には「量」を見ています。しかし「時間をかければ量は出る」、と思って反省を終わらせた人は、多分一生考える体力はつきません。常に「明日からダイエットを始める」人に似ています。
考える体力自体は特定の課題で訓練されるものではありません。日々の生活の中で常に頭をフル稼働し、時間当たりの考え出す能力(スループット throughput)を鍛えていくことが大事なのです。
今回の課題のように、ただ思いついていけばいいというものは、このスループットのベンチマークに最適です。(本来は取り組む時間を共通化すべきのでしょうが、取り組んだ時間自体も、結果から見て取ろうと思っていました。)
ビジネスの現場は、いまでは時間をかけることが必ずしも評価されず、今同じ仕事をするのにどれだけ効率よくできるかということが求められています。スループットをいかに向上していくか、あなた達にできることは寝ている以外のすべての時間を使って頭をフル稼働することでしょう。ニュースを見る、中吊りを見る、新商品を見つける、友人と話す、すべての局面で、いままでより何か1つでも多くの視点を見つけるといった心構えで、日々すごしてみてください。