「クフィルC2 『サキ・ヴァシュタール』」 AQTハセガワ製1/72スケールプラスチックモデルキット \1200
イスラエルは長くフランス製兵器を使用していましたが、1967年の第三次中東戦争(所謂「六日間戦争」)後の禁輸政策により、フランスからの兵器供給は途絶します。これによりイスラエル航空工廠(IAI)は、当時使用していたダッソーブレゲー・ミラージュ3/5の国産化計画を推進。ネシェル(鷲)として生産に漕ぎ着けました。更に、新たにアメリカから供給を受けるF-4ファントムのJ79ターボファンエンジンへの換装をも計画。エンジン発熱量増大などの問題をクリアして産まれたのがクフィル(ライオン)です。改修を続けて今も現役機として運用されており、C1型がアメリカ海軍/海兵隊の仮想敵機としてF-21の名称で運用されるなど同盟国への輸出も行われています。地中海に面した小国、アスラン共和国もその一つで、主力戦闘機として長く使用していました。
ミラージュ3を受け継いだデルタ翼に、C型ではインテイクサイドのカナードと機首ストレーキを追加して安定性を増した機体。マーキングは70〜80年代のアスラン王国(当時)内乱における、王国政府軍外国人部隊第88戦区基地(通称:エリア88)の司令官、サキ・ヴァシュタール中佐機をチョイスしました。
アスランの内乱は、当時のヴァシュタール先王崩御の際に後継者として、長兄アブダエル王子ではなく、次兄ザク王子を選出したことに端を発します。選出理由はザク氏が保守派であり、一方のアブダエル氏が急進派であった為ですが、それを快く思わなかったアブダエル氏がその外交能力を活かして兵器を導入、反政府組織を結成したとされています。数奇なことにサキ中佐はアブダエル氏の長男であり、一方次男であるリシャール氏はアブダエル氏の片腕として、反政府組織側での活動を行ないます。王族でありながら政府軍外国人部隊基地の司令官の職に就き、しかも自ら戦闘機に搭乗して最前線に出るのにはこうした背景があったようです。内乱は軍事産業の干渉などを招いて泥沼化、ザク国王政権が倒れるも暫定政府は機能せず、結果国連の調停によりザク氏とリシャール氏を中心とした共和制に移行。またアブダエル氏とサキ中佐は国連調停目前の首都攻防戦において死亡したとされています。
アスラン王家の紋章を描いた垂直尾翼。機体塗色そのものはイスラエル機と同じです。ハセガワのキットは設計が古いため、モールドが凸ですが彫りなおしは行っていません。フォルムそのものは良いので無理に彫りなおすこともないかも。スミ入れが行いにくいですが、「1/72サイズに見える戦闘機のパネルラインは見えない」という雲上の持論に基づけばスミ入れは要らないですし(笑 アスラン王国仕様のキットは限定発売ですが、デカールが手に入ればタミヤ/イタレリのC7型キットを使うという手もアリですね。
側面。オリジナルのアターC9より発熱量が高いJ79エンジンを搭載するためバルジ化してチタンを導入した機体後半部がクフィルの特徴。逆に機首周りはミラージュ系の特徴を色濃く残しています。カラーレシピはほぼ指定色。機体上面はC313イエローをベースにC310ブラウン、C312グリーンの2色による迷彩、下面はC314ブルー。インテイク内はC1ホワイト。機首と垂直尾翼前端はC40ジャーマングレー。コクピット内はグレー系で塗り分け、エンジン排気管はC61焼鉄色。脚はC314ブルーでタイヤはタイヤブラック。ストラットの銀色はエナメルのチタンシルバー、ピトー管の銀はC8シルバーでの塗り分けです。尾翼上端のフィンバンドは、キットではC314ブルーを指定していますが、資料では黄色の時期もあったようなのでC329イエローで塗装。主翼の大三角はデカールを使用しました。
正面から。内乱後に公開された図版の中でも有名であり、このキットのパッケージにも用いられている「山岳基地から発進するヴァシュタール中佐機」のアングル。もっとも、あの図版ではカメラのレンズの効果か、かなり前後に圧縮された絵になっていますが。
#なお、このページの記述にはフィクションを含んでおります(笑 機体はもちろん新谷かおる氏の傑作コミック「エリア88」登場の架空機であり、アスラン王国はその舞台となった架空の国家ですので念の為。またクフィルという戦闘機そのものや、その開発史の記述とかはホントのことです。これも念の為。