本当に患者の利益になるPOSと薬歴の活用


薬剤師の在宅訪問指導を考える




在宅患者への薬剤師のかかわり
薬剤師の訪問指導を断られた!
薬剤師の仕事のイメージがない!
気になったら訪問
在宅は患者主体の服薬指導がしやすい
情報不足恐怖症の薬剤師
訪問指導は担当制の方がよいのか?

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在宅患者への薬剤師のかかわり


 このページでは、開局薬剤師による保険点数にかかわらず在宅訪問活動そのものについて
書いてみたいと思います。 
 薬剤師の在宅患者さんへの介入もずいぶん増えてきました。病院薬剤師と異なり、開局薬
剤師による訪問指導には患者さんの「同意」が必要です。ですからこれから薬剤師が行う
服薬指導の内容やかかるコストもみーんな説明します。
 介護保険では薬剤師の訪問指導のことを「居宅療養薬剤管理指導サービス」と言います。そ
うなんです、サービスなんです。ですから利用者様(患者さん)とは契約書を交わします。契約
書ですから印を押してもらうわけです。それなりの覚悟が薬剤師にできるシステムですよね。
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    薬剤師の訪問服薬指導を断られた!
 

 介護保険が導入され、薬剤師の訪問服薬指導に対して自己負担が発生したとき、「もう薬剤
師の訪問はいらない、薬はこちらで薬局にとりにいく」と言われ訪問服薬指導できなくなったと
いう話をよく聞きました。訪問服薬指導の保険点数は高いので、薬局の経営という側面からみ
ると大打撃です。
 私の勤務していた大阪の薬局でも訪問服薬指導をやっていました。大阪という土地は非常に
お金にシビアです。薬剤情報提供のあるなしで変わる自己負担10円だって見逃しません。「何
で同じ薬なのにこう変わるの?」だから保険調剤については詳しい明細表をつけています。
 介護保険導入前から訪問服薬指導していたのですが、介護保険になってどれだけの人が契
約してもらえるだろうか?とドキドキ。20人ほど在宅患者さんをフォローしていましたが、地域
の薬局だったせいか患者さん宅から薬局までは徒歩10分以内(近い!)の患者さんがほとん
どだったのです。しかも慢性疾患でみんな状態は落ち着いているし、処方日数は14日に1回。
経腸栄養などの運ぶにはちょっとかさばって重たい処方の人もいない。もしや半分?薬局内で
も重たい空気が流れます。
 さあ、介護保険の契約書を持って行って説明し、もちろん1回550円月2回まで(2000年当
時)という説明し、患者さん(利用者様)に印を押してもらわなければなりません。でも意外や意
外。みんな気楽に印をくれるではありませんか?介護保険対象患者18名中14名をゲットでき
たのでした。「薬の説明があると助かるのよ」とか「薬をちゃんとセットしてくれるから安心して飲
める」とか。このときに思ったんですよ、契約できた患者さんととできなかった患者さんのちがい
はなんだろう?って。1件は経済的負担で断れました。他ははっきりいって「配達」がメインにな
っていた患者さんです。病状も安定しているし処方変更もないからというので、こちらも手抜き
した患者さんでした。配達なんて誰でもできるようなことは薬剤師に求められていないということ
を痛感しました。
 このときに「薬剤師って患者さんには必要な職業かもしれない・・・」そう思って気を良くし
た私はもっと何かできることはないかなーと思い、窓口患者さんではできなかったPOSでいうと
ころの初期計画を立てたり、在宅患者年間サマリーなるものを作成をしてみたりするのであり
ました。
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 薬剤師の仕事のイメージがない!

 ドクターやナースをモチーフにしたドラマは多いですよね。しかもナースマンなんて、薬剤師よ
りおそらく(いや絶対)数が少ない男の看護師までドラマの主人公になっちゃうんですよ。薬剤
師というと業務をテーマにしたドラマなんて作ってももらえない。それだけカオが見えない職業
のようです。
 ですから、患者さんの中には「薬剤師=薬の配達人、配達料とられるなら薬局に取りに行っ
たほうがおトク」なんて思い仕方ないと思うのです。たいてい入院して退院してから在宅フォロ
ーになることが多いので、病院薬剤師にもぜひ頑張っていただきたいと思うのですが・・・
 それはさておき、患者さんが嫌がらないのであれば、「お試し期間」を設けて訪問指導して
みてはいかがでしょうか?保険請求する際は医師からの指示や手続きなどがいりますけど、
保険請求しなければ別に行っていけないわけでないのですから。その上で再度契約に持って
いくのでも悪くないと思うんですけどね。
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気になったら訪問

 薬局窓口での服薬指導のときに「この人薬がどうも飲めていないような気がする・・・」そんな
患者さんに遭遇したことはありませんか?そんな患者さんには「今度家にあまっている薬、薬
局に持ってきてください」とか「もうそんな古い薬は捨ててしまってください」とか説明するんだけ
どその通りしてもらえたかなと心配になったことありませんか?
 実は私も何度かありました。そんな患者さんはたいてい、処方がとても多くて、用法が複雑
で、他科受診も多そうで、おまけに市販薬まで買っていく。薬を持ってきてとお願いしても持って
きてもらえない、、、そして薬局の薬剤師全員が「そうねえ、あの人ねえ」っていう患者さんで
す。
 そんな患者さんの一人Aさん(80歳女性)の事例をお話します。
 私はどうしたかというと、「Aさん、ずいぶん長い間この薬飲まれているんやね。薬も少し人よ
りたくさんあるし、毎日忘れず飲むのって大変じゃない?残ってきたりしない?薬局だとゆっくり
お話しにくいし一度薬の話をしにおうちに行ってもいいかな?」とお願いしてみました。意外にあ
っさり「いいよ」と言ってくださったのでアポイントを取り、後日訪問したわけです。
 Aさん宅に行きました。部屋に入らせていただき「薬をぜーんぶみせてください」というと「そこ
の押入れに入ってるからあけてみーや」とのこと。押入れをあけた途端がらがっしゃーん!薬
のなだれが起こったのです。まるでマンガの1コマ。こういうことってあるんやな〜
 Aさん「薬はな、とても捨てられへん。先生も私のことを思って薬くれるわけやし、いらないとも
言えへん。薬局にもってこいと言われてもこれだけあったらもって行かれへん。」なるほど。持
って来たくても持って来られない患者さんもいるのだなと思いました。ちなみに私はこのときもう
一度薬局に戻り、空ダンボールを持って再度患者宅に行き回収し、薬を整理し、服用できてい
なかった薬については患者さんの同意を得て服薬情報提供して処方変更もできたのでした。
 こういう気にかかる患者さんがいらっしゃった時は、あれやこれや説明するより訪問した方が
早いかもしれません。
 そんなの忙しくてできない!という声も聞こえてきそうですけど。でも訪問した患者さんとは信
頼感アップしますね。「部屋のあの辺に薬を置いておくと飲み忘れが少なくなるんじゃないか
な?」なんて説明もできたりして。何より薬作って渡してるだけっていう薬剤師のイメージが少
しは変わるようですよ。確かに私の薬局の場合、比較的薬局から近い患者さんが多かったの
で訪問しやすかったというバックグラウンドはあるんですけどね。
 この訪問は「訪問の理由」「訪問の目的」を薬剤師と患者さんとの間でしっかり確認がと
れていれば問題なくできるはずです。まかりまちがっても「あなたは薬が飲めていないようだか
ら訪問します。いいですね」なんて権威主義的にはならないように。大切なのは薬剤師と患者
さんが水平的な関係で「なぜ薬が飲めないか?」というProblemを一緒に考えて薬剤師
はそのProblem解決に努めることが大事です。
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在宅は患者主体の服薬指導がしやすい

 いきなりですが、みなさん薬剤師の国家試験の受験会場はどちらでしたか?私は兵庫県の
大学にいましたが、兵庫県には薬学部をもつ大学が3校あります。それで受験会場は毎年順
番にもちまわりをすることになっています。私が受験したときは会場がちょうど自分の大学であ
ったので、交通機関の心配や会場の下見などの必要もなく、普段慣れ親しんだ講義室で受験
できました。自分のテリトリーの中で国家試験を受けられるということは緊張感も少しは軽減さ
れ非常に優位にだったと思っています。
 それでは在宅訪問時の服薬指導について考えてみたいと思います。在宅での服薬指導は、
患者さんのテリトリーの中へ薬剤師が入っていきます。
 薬局で「患者さんの立場に立ち・・・」と強調しても所詮薬局は薬剤師のテリトリーです。「こ
こに処方箋入れてください」「こちらでお掛けになってお待ちください」「薬局内は禁煙です」「携
帯電話はやめてください」など丁寧に親切にしたところでも薬剤師主導の空間なんです。これ
が患者さん宅だとどうなりますか?「あのーおじゃましてもよろしいですか?」から始まり、「薬は
ここに置かせてもらいますけどいいですか?」「少しここに座らせてもらっていいでしょうか?」
「(灰皿をみつけて)タバコ吸っておられるのですか?」「お電話ですよ。お電話が終わるまでお
待ちしていますから。」なんて。
 そうなんです。逆に薬剤師の方がドキドキしちゃうんですよ。こうしてもいいかな?あーしても
いいかな?って思いながらの服薬指導です。こっちは勝手がわからないから患者さんに了解を
得ての服薬指導になりますよね。薬剤師にとってはちょっと厳しいんですけど逆に考えると、在
宅という場は薬局よりはるかに患者さん主体の空間なのです。患者さん自身の自分の家です
から自由にいられる、食事の時間や寝る時間が決まっている病院でいくらくつろげと言われて
も本当にくつろげますか?
 薬局窓口ではあまり話してもらえない患者さんが自宅ではいつもより話をしてくださ
る・・・これはこういう背景があるのでしょう。本当に患者さん主体の医療を実践したいと思うの
なら、情報不足恐怖症(以下に述べております)になってないで、薬局から飛び出して患者さん
に近づいてみませんか?
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情報不足恐怖症の薬剤師


 薬剤師は全般に真面目な方が多いように感じます。私のホームページもこんなに字が多い
のに、ここまでたとどりついて読んで下さってありがとうございます。
 さてその性格が中には災いしている方もおられるのでは?訪問指導となると、なんせ患者さ
ん宅に行く=患者さんのテリトリーの中に入っていくことになるので、情報収集に多くの時間を
かけがちです。処方内容、病状に付け加え「どんな患者さんだった?」「家族の感じはどうだっ
た?」などの情報を必死に集めようとしていて肝心の訪問時間がなくなってしまう・・・なんて事
態も。しかも「薬剤師なんていらないって言われなかった?」「私が行って大丈夫かな」なんて想
像がつかない部分の情報すら得てなるべく完璧な状態にしてから訪問にいきたいという傾向が
あるように感じます。
 でもまずは「現場から」あれやこれや考えてみてもどうしようもありません。在宅訪問の基本
は「行く」「見る」「患者さんと話す」これでしょう。

薬剤師が行う訪問服薬指導とは・・・

薬剤師にしかできない仕事をしないと患者から必要とされない
薬剤師活動はイメージできない⇒訪問指導には「お試し期間」を設けてもいいのでは
在宅は患者のテリトリー、その中でこそ患者主体の医療が実践しやすい
在宅訪問の基本は「行く」「見る」「患者さんと話す」
                                   
ということではないかと思います。
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訪問指導は担当制がよいのか?


 薬局の薬剤師事情もありますし、地域性も関連してくるのでどちらがよいとは言い切れないと
思います。担当制にすることで、大切な患者さんと薬剤師の信頼関係を築くことができやすいと
言えるでしょう。以下、それぞれのメリット・デメリットを挙げておきたいと思います。
 ただ個人的にはチーム制をおすすめしたいと思います。担当制にしないと信頼関係が築けな
いのかというとそうでもありません。むしろ患者さんの方から「担当制になったら担当薬剤師が
休みの時に困るから薬局の薬剤師全員が自分のことをわかっていてほしい」「複数の薬剤師
の意見を聞ける方がよい」などの意見をいただきました。チーム制でも毎日の朝礼報告や
薬歴への患者情報集中などを徹底することにより、申し送り不足などがなくなり患者さん
に不安を与えることなく服薬指導ができるではないかと思っています。(実際やっておりまし
た)
 一人の患者さんを一人の薬剤師が受け持つ担当制にしてしまうと、もしかすると服薬指導に
差が出てしまうかもしれないですし、特に慢性疾患で状態が落ち着いている患者さんではマン
ネリ化しかねないというデメリットもあります。ですからチーム制にして複数の薬剤師で受け持
つことで複数の視点で違った角度から問題点を発見できるようにしたかったのです。
 どちらがよいとは言いませんが、ただ担当制でなくてもやり方によってはうまくできる場合もあ
るということをここではお伝えしておきたいと思います。

          服薬指導にかかわる薬剤師の担当制とチーム制のメリット・デメリット
メリット デメリット
担当制 患者との信頼関係を築きやすい 服薬指導の偏り
マンネリ化
担当者不在時の対応
チーム制 複数の視点で違った角度から問
題点を挙げることができる
申し送り不足による患者への不安


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<参考文献>
上町亜希子「そよかぜ薬局における訪問薬剤管理指導の実際〜在宅での服薬指導と薬局窓口での服薬指導〜」
薬事新報(No.2156p.397-401/2001)薬事新報社
上町亜希子、清水美沙:「開局薬剤師のPOS 訪問薬剤管理指導に対する在宅患者の認識と服薬コンプライアンス」
日本POS医療学会雑誌;(Vol.8.No1.p93-96.3/2003)
2003年5月10日UP



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