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推薦CD(好みのアーティスト)

「ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章、プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番/その他」 マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ) ユニバーサル UCCG-3341
 約30年前の録音ですが、未だにこのCDを上回る演奏に出会っていません。ピアノはある種の機械ですから、演奏には機械的な限界もあるはずなのですが、その限界を全く感じさせない超人的な演奏。本人の実演も聴きましたが、このCDの方が迫力がありました。ポリーニは現代最高のピアニストの一人ですが、若い頃の方が良かったように思います。実演を何度か聴いていますが、一時期低迷していたように感じました。最近は復調してきていますが。この曲の決定盤。カップリングのブーレーズの第2ソナタも力演ですが、何度聴いても良く分からない難曲。
「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番(悲愴)、第14番(月光)、第21番(ワルトシュタイン)、第23番(熱情)」 ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ) ユニバーサル UCCG-3344
 ケンプ70歳の録音。日本では技巧的に優れているとされたバックハウスの方が権威があったようにも思いますが、久々にケンプの演奏を聴いて、ケンプは巨匠だったのだと再確認した次第。ケンプの偉大さが漸く分かりました。技巧も年齢にしては凄し、パワーを感じさせます。演奏は朴訥(ぼくとつ)ですがファンタジーあふれる、即興的なもの。使用しているピアノの音は高音域に特徴的な共鳴音が聴こえます。もしかするとスタインウェイ社のピアノではなく、ベヒシャタイ社のピアノを使用した可能性があります。ケンプは元々ベヒシュタインを使用していたはず。自分の愛用していたピアノを持ち込んで録音した可能性もあります。大作曲家シベリウスがケンプのピアノからは人の声が聞こえると評したように、その滋味溢れる演奏は現代のストレス社会で再評価されてもいいはず。
「モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番、第5番、第10番、第11番、第12番、ロンド イ短調」 ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ) DECCA UCCD-7023
 約40年前のステレオ初期の録音。多少、ノイズがあります。バックハウスは70歳頃と思います。全く技巧の衰えを感じさせない演奏で、何度聴いても飽きません。一言で言えば、襟を正して聴く正調モーツァルト。説得力があります。全曲名演ですが、個人的にはロンド イ短調が好きです。バックハウスのベートーヴェンも昔から権威がありますが、今聴くと、多少表現に古臭さを感じます。ところが、このモーツアルトには時代を超越した普遍性があるように思います。さりげない演奏ですが、バックハウスの芸を感じさせる名演。
「ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番(熱情)、第7番」 ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ) RCA Victor(BMG)輸入盤 (1959年録音)
 20世紀中期を代表する巨匠ピアニスト、ホロヴィッツのベートーヴェン、ピアノソナタ。最初、この録音は約25年前にLPレコードで聴きました。RCAがLIVING STEREOシリーズとして発売した、RCAの初期ステレオ録音の一枚。ホロヴィッツ最初のステレオ録音として当時大いに話題を集めたそうですが、その後、どうしたことかRCAに一枚もステレオ録音を残さず、突然RCAを去りCBSへ移籍しました。再びRCAに戻ったのは1970年代だったと思います。この当時、超大物アーティストがレコード会社を移籍することは、大事件だったようです。
 熱情は本人自身もインタビューで語っていたのですが、少し冴えない演奏です。テンポが不安定で、彼にしては説得力に欠ける演奏。このCDでは7番を聴くべきです。未だに、これ以上の演奏を聴いたことがありません。冴え渡るピアノの音、繊細さと大胆さが交差する、陰影の深い個性的な名演。ホロヴィッツの芸風が良く出ていると思います。
 CD化により、音質の改善が著しく、ホロヴィッツの超絶技巧と歯切れの良い、鐘のようなピアノの打鍵音がはっきりと聴き取れるようになりました。この7番は何度聴いても新鮮な感じを受ける、ホロヴィッツ絶頂期の超名演だと思います。
「ベートーヴェン:後期ピアノソナタ集(第28番〜第32番)」 マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ) ユニバーサル UCCG-3345/6
 約20年前、初めて聴いた時はLPレコードでした。何度聴いても、その度に感銘を受ける名演。ベートーヴェンの創作スタイルは、ピアノソナタ第28番を作曲した頃から後期様式に入ったとされています。その頃、彼の聴力は完全に失われていたようです。最近の研究によると、ベートーヴェンが苦しめられていた病気は全て慢性鉛中毒が原因とのことです。後期様式とは、聴力を失った彼の頭の中に浮かび響いた観念的で抽象的な音楽です。要するに、聴いて楽しい音楽ではありません。ポリーニは抽象的な後期ピアノソナタを巧みに再創造して、非常に分かり易く聴かせています。特に、第29番「ハンマークラヴィーア」と第32番は秀演。おそらく多くのピアニスト達が、このポリーニの演奏を一つの目標にしてきたのでしょうが、未だに超えられないようです。現代ベートーヴェン・ピアノソナタの規範的演奏。音楽性が豊かで完璧な演奏ですので、今後も当分の間、このポリーニ盤が不動の決定盤だと思います。ただ、この状態が長く続くことはピアノ芸術の停滞を意味しますから、新世代のピアニスト達に期待しているのですが。


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