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彬兄は大学2回生の10月からから5回生の3月までの間、とある児童館でバイトしてました。そこは主に家族連れを相手に天体観測会を行なっており、彬兄はそこで「星のお兄さん」、かっこよく言えば天体観測のインストラクターをやってたわけです。
彬兄がバイトに入る日ってのは客の多い日で、バイト内容は大体20人から30人くらいを相手に今日見る星とそれにまつわる話をしてから屋上で天体観測っていう流れでした。
晴れてる日ってのはこれでいいが、曇ってる日はそうもいかない。その児童館は宿泊施設。宿泊予定の客は曇ってようが雨が降ろうが台風がこようがやってくる。
曇った日はどうするかというと、やはり星の話をする。ただし、晴れのときより時間が長い。軽く30分は話してないといけない。この星の話というのが、実はすべてアドリブだったりする。台本やマニュアルなんて気の利いたものはない。一応、事前にある程度ネタになる話を集めてはいるのだが、その日の客層によってフレキシブルにネタを変えなければならない。
一番ネタに困らないのが、小学生相手のとき。何といっても反応がいい。元気過ぎて困るときもあるが、基本的に決まったパターンのリアクションが返ってくるので、あしらい方さえ覚えればちょっとした話で十分時間が稼げる。
小学生ってのはまれにつわものがいる。一概につわものといってもジャンルはさまざまで、図鑑持参でくじら座のミラの等級幅と周期を丸暗記(注1)している奴もいれば、ミザール(注2)の話すると即座に死兆星とか返してくる小学校低学年もいる。きみら一体いくつやねん(笑)
次にらくちんなのが極端なちびっこ。極端なちびっこはだんまりが多いけど、親がフォローを入れるので扱いやすい。っていうか、子供向けに見せかけて親を相手にしていることのほうが多かった。
まあ、がきんちょにもいろんな のがいたけど、親にもいろんなのがいました。一番記憶に残ってる親御さんは、こんな質問をしてくれた。
おやじ:あの、さっき、青い星は1万5千度あるっていってましたよね
彬兄:はい、青く見えてる星はだいたいそのぐらいですね
おやじ:じゃあ、地球って1万5千度あるんですか?
彬兄:………………(汗)、いや、そんなに温度が高かったら人は住めませんよ
いや、確かに子供向けだから恒星のスペクトル帯(注3)がどうとかそういう話はせんかったけど、おっちゃん、まじな顔でそれはかっこ悪いぞな。
天体観測会をしていると、星の質問ってのもよく聞かれる。さっきみたいなおおぼけは論外として、おこちゃまの質問は結構深いものが多い。
問題。以下の質問に子供にも理解でき、なおかつ子供の夢を壊さないように回答せよ。
- Q1 星って宇宙にどのくらいあるんですか?
- Q2 宇宙人はほんとにいるんですか?
- Q3 どうして星は光っているんですか?
- Q4 ブラックホールってどんなのですか?
- Q5 流れ星に三回お願い事するとかなうのはなぜですか?
これ、全部実際にあった質問。特にQ5が難問。全部できたらなんかあげてもいいです(笑)
ちょうどバイトしてた期間中に百武彗星とかヘール・ボップ彗星なんかも現れたりして、なかなか楽しいバイトだった。特に、91cmの反射望遠鏡が覗けるってのはとてもおいしかった。
他にも笑える話がいくつかあるんだけど、それはまたの機会ってことにして、今回はこれでおしまい。またね〜。
注1:くじら座のミラっていうのは変光星(明るさの変わる星)。等級ってのは星の明るさの単位。大の大人の天体屋でもミラの等級なんて覚えてる人間はほとんどいない。
注2:北斗七星のアルコルのそばにある星。アルコルとミザールは肉眼で確認可能な数少ない二重星の一つ。
注3:エネルギーの関係上、表面温度が高いほど星の出す光のスペクトル帯は青に、低いほど赤に寄る。一般的な温度と色のイメージとは逆なので、豆知識としてクイズにすることが多かった。
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