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SFの世界では、人型をした巨大なロボットがしばしば登場する。ガンダムシリーズに見られるように、主にそれは戦争のためのマシンであるのだが、人は空想世界の中で戦いではなく巨大ロボットそのものに夢をはせてきた。
現実では、大手重工機メーカーなどが技術力を見せるために人間サイズの人型ロボットの開発を行っていたりするが、残念ながら実用という意味においてはまだまだである。
そんな巨大人型ロボットたちの可能性について考察してみたいと思う。
最初に人型巨大ロボットについて本文中で扱う定義を決めておく。以降、本文で登場するロボットは以下の条件を満たすものとする。
まず、人型であること。つまり、二本の足で直立し、二つの手を持ち、手にはちゃんと指がついていること。
そして、身長が10メートル以上であること。アンテナ等は身長には含まないものとする。
最後に、人が操縦できること。あらかじめプログラムされたとおりにしか動かず、動作をリアルタイムに変更できないものは操縦できるとはいわない。
以上の条件を満たすロボットの実現性をいくつかの観点から考察してみよう。
1:重量
巨大ロボットを製作する上で、もっとも問題となるのがこの部分であろう。身長が二倍になれば、表面積は4倍に、体積は8倍になる。仮に、人と比重が同じで十倍の高さを持つロボットを作ったとしよう。このロボットの足の裏にかかる単位面積当たりの重量、つまり圧力は人間の10倍となる。たっているだけで土の地面はかん没してしまうだろう。これでは満足に歩くこともままならない。
では、比重を下げる方向で考えてみよう。この際、強度的な問題は無視するとして、高さ10倍で比重を10/1したロボットを作れば、圧力の問題は回避できることになる。
が、今度は別の問題が発生する。比重が1/10になるということは、慣性力も1/10になるということになる。なにがまずいかというと、風に煽られるのである。ちょっと強風に煽られるとすぐに飛んでいく巨大ロボット。屋外で活動することのできない巨大ロボットなど、何の役にも立たない。
重量という観点から見ると、地球上では巨大ロボットを実用化させることは非常に難しいという結論になる。せいぜい人の2〜3倍、身長5mが限界であろう。
しかし、地球以外での運用を考えるのなら話は変わってくる。例えば、月は重力が地球の1/6である。そして大気が存在しないので風もない。月面上でなにかさせるのなら巨大人型ロボットは重量の観点から見ればなんの問題もない。
2:用途
巨大ロボットを何に使うのか。これは実現の可能性を考察する上で非常に重要な要素だ。使い道のない機械の制作には資金も人材も集まらないだろう。
もっとも金と人が集まる分野はなんといっても軍事関係だろう。が、兵器としてみたとき巨大ロボットは著しく効率が悪い。前面投影面積はやたらめったら広いし、安定性はないし、複雑な間接部品が多くメンテナンスが大変だし。唯一の利点は威圧的な概観をしているくらいか。巨大ロボットを軍事用途に使うには向いていないという結論に落ち着かざるを得ない。
兵器以外の用途でかつ巨大な機械を扱う分野といえば土木工事がある。巨大ロボットは人間の動きをそのままトレースすることができるので汎用性が高い。したがっていろんな作業に使うことができると思われる。とはいっても、地面を掘り返すにはシャベルが、岩を砕くにはつるはしが、ものを切断するためにはのこぎりが必要になる。それも、巨大ロボット専用の特注品が。
多機能型土木工事用ロボットとしてなら人型巨大ロボットの存在価値は有りそうだ。
3:操縦
巨大ロボットを操縦するためのインターフェースはどのようになるのだろうか? 人型ロボットの可動部分は多い。肩、股関節、ひじ、ひざ、手首、足首、首、手の指…。実に40以上の間接を同時に操作しなければならない計算になる。一体こんなものをどうやって操作すればよいのだろうか。
方法は二つある。パイロットの動きをトレースさせる方法と、さまざまな動きをソフトウェア的に組み込む方法だ。
まず、最初にパイロットの動きをトレースさせる方法を検討してみよう。この方法であれば、誰でも思ったとおりにロボットを動かすことができるだろう。しかし、いろいろ問題も発生する。人間サイズで手足をぶんぶん振り回したとしよう。巨大ロボットの身長がパイロットの10倍だったと仮定すると、手足のトップスピードは10倍となる。スピードが10倍ということは、運動エネルギーは100倍になる。その運動エネルギーは最終的に反作用としてロボット自身にそっくりそのままフィードバックされる。結果、パイロットは中国の朝の公園のおじさんおばさんよろしく太極拳のようなスローモーな動きで操縦に当たらなければならない。さもなくば、あっという間にロボットは故障してしまうだろう。
では、次にソフトウェアで動きの組み合わせて操縦する方法を考えてみよう。これについては将来どのような技術が開発されるかで変わってくるが、インターフェースとしてはゲームのそれに近くなるだろう。歩くという動作をパッケージ化して、地面がでこぼこしていればバランスを崩さないようにソフトウェア上で補正して歩く。用途に応じて動作パッケージを入れ替えれば、比較的単純なインターフェースでいろいろな作業にロボットを使用することができるだろう。
上記のような方法でインターフェースの問題はクリアしたとしよう。続く問題はパイロットの安全である。結論から言ってしまえば、非常に危険であるといわざるを得ない。
なぜかというと、巨大であるからである。人の動きをトレースしてみればわかると思うが普通に歩くだけでも人の体はゆれる。人間の体はあるていど柔軟にできており少々のショックは吸収してしまうので、あまり意識することはないと思うが。巨大ロボットはこの衝撃をほとんど吸収できないばかりか、サイズに比例して衝撃が増えてしまう。
一番衝撃の少ないのは頭部か腰部であろう。しかし、そこですら歩いただけで上下に1メートル近い縦ゆれが襲う。前方からのGも馬鹿にならないだろう。こんな環境でまともなロボットの操作ができるだろうか? 普通に歩いているならまだいい。操作ミスなどで倒れてしまったら、それだけでパイロットは確実に死亡するだろう。
パイロットの安全を確実に守る方法はある。遠隔操縦してしまえばいい。ただ、遠隔操作にしてしまった場合、チャフなどの妨害工作によって簡単に操縦不能に陥ってしまうので戦争には使えないだろう。
以上、3つの観点から巨大ロボットについて考察してみた。結論としては、土木工事用の月面や宇宙などで使用される遠隔操縦のロボットであれば実現する可能性はある、ということになる。
なお私の知識不足から、この場では建造や運用における技術的な問題には一切触れなかった。技術的解説を欲するのであればちまたにあふれている空想科学系の書籍を参考にされるとよいだろう。
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