コラム〜ダメ出し君活用法〜

 あなたの周囲にはダメ出し君はいないだろうか?
 ダメ出し君とは、何か目立つもの、実例などを見つけて「○○は××だからダメだ」とひたすら否定しまくって、「だたらどうすればいい」という改善案を全く出さず(もしくは非現実的な理想論を語る)、周囲から折衷案や提言を受けてもやっぱり「それは△△だからダメだ」と結局否定しかしないヤツの事だ。否定と肯定の割合が9:1くらいで、1割の肯定も何か別の事例を否定するために使用される。否定しつつ論点が移っていき、最初に否定していた事を今の論点から否定するために肯定したりすることもある。

 大概の場合、ダメ出し君は議論において邪魔な存在だ。なぜなら、彼らはある事象の是非を判断するときに、メリットを無視してデメリットを極端にクローズアップして議論の余地はないものと勝手に定義づけてしまうからだ。ダメ出し君がダメ出しをする場合、まず「ダメと言う結論」を元に「ダメな理由」を形成する。まず結論ありきのため、途中の論理にはしばしばゆがみが生じる。
 ダメ出し君が猛威をふるいはじめると、ほとんどの場合、周囲は彼らがダメな理由を形成する際に用いた論理の矛盾を指摘して説得しようと試みる。が、彼らの論理は「ダメと言う結論」から導かれたものであるのため、たとえ論理の矛盾を彼ら自身が認めたとしても、新たに別の論理的根拠を捏造する。それどころか、彼らは論理的矛盾の指摘自体に「ダメと言う結論」を発生させて、新たなるダメ出しをはじめてしまうこともしばしばだ。

 しかし、考えようによっては、彼らは時としてとても有用な議論に発展しうる議題を提供してくれるとも言うことができる。反論のための反論を脊椎反射で作成している場合はともかく、一番最初にダメ出しを提言するときは一応は論理的にものを考えているからだ。四六時中何かを否定しようと目を光らせている彼らは、着眼点と題材の選定に関しては非常に優秀だ。議論において、彼らは得がたい能力の1つを有しているとも言えるのだ。
 もちろん、否定する事を前提に考えられた彼らの理論をそのまま発展させることは、限りなく不可能に近い。だが、着眼点と題材だけを抜き出して、新たに議題と論点を作ることは可能だ。ただし、新たに作り上げた議論の中で彼らに対して返事を含ませてはいけない。彼らと建設的なやり取りをしようと試みている人がいる場合は、そちらに議論を振るのが賢いやり方だ。もしくは、を見ている不特定多数の人全員に、新たな視点での議論を投げかけるのがよい。  あなたが作った議論に、ダメ出し君が食いついてくるかもしれないが、まともに彼らの相手をしてはいけない。彼らが「あなたの考えは○○だから間違っている」と断言しても、無視して反論しなければそこで話しは終わるからだ。彼らが発した疑問に対して妥当な解答を返す程度ならかまわないが、彼らの理論の間違いを指摘しようと思ったらそれはあなたの負けだ。
 場合によっては、明らかに間違った主張を繰り返す彼らを無視する事で場の空気が悪くなる場合があるかもしれない。そういう時は、彼らに返事をするふりをして議論の参加者全員への問いかけに内容をすり変えてしまいましょう。まず、彼らの意見を理解した旨の前向上を述べた上で、彼らの意見に対する見解は述べずに話を一般化すればいい。そして、一般化した話を彼らが意図する部分以外の場所に当てはめるのだ。出来れば、議論対象の別の一面に当てはめて本論を補強、それが出来ない場合は、一見関連ありそうなケースに当てはめた上で速やかに自己完結させてしまうのだ。ポイントは、彼らの意見に逆らうような要素は一切含ませないこと。そのためには多少強引な論理のすり替えを必要とする場合があるが、ほとんどの場合彼らの理論の方が強引なので問題にはならない。
 上記のようにして、根気よくダメ出し君をかわしつづければ、やがて彼らは飽きて議論から身を引いてくれるだろう。そうでない場合も、かわしつづけながら有用な議論を発展させることも決して不可能な話ではない。

 あと、当然のことだが、ダメ出しをして欲しいときにもダメ出し君は便利な存在だ。このときは何も特別な事をする必要はない、ダメ出しして欲しい事柄を列挙し、彼らに向けて漠然と「どう思いますか?」と問かければよいだけだ。そうすれば、彼らは必死でダメ出しをしてくれるだろう。
 例えるなら、タダで働いてくれるデバッガーみたいなものだ。ダメ出しの品質こそ保証されないが、結局のところダメ出しを採用するかどうかはあなたが判断することだから、意味のない否定は採用しなければいい。もちろん、反論する必要なんてない。反論するくらいならさっくり無視してしまうべきだ。
 有用な意見が出尽くしたと思ったら「いろいろありがとうございました。参考になりました」と口先だけお礼を言って明確な結論は出さずに話を引っ込めてしまえば角もたたない。彼らは納得していないかもしれないが、そんな事はあなたの知ったことでないはずだ。

 どうだろう、ダメ出し君とて扱い方次第では議論の役に立ってくれることがわかるだろうか? 難しそうに思えるかもしれないが、冷静に議論に参加しさえすれば決して難しい話ではない。挑戦してみる価値はある。

2003.8.6更新



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