| 宿泊拒否・事件のその後 |
この問題が表面化して三か月が経過し二つの大きな動きが全国の注目を集めた。 一つは、アイスターがホテルの従業員三十八人に対してホテルを廃業することを 二月十六日に説明したこと。 もう一つは、熊本県が行政処分の方針を正式決定し、翌十八日、本社アイスターに 対し処分内容を伝える事前通知書を発送したことである。 このニュースが全国に報道されるや再び心ない市民からの抗議の電話や手紙が 菊池支部自治会に殺到することになった。内容は「県と自治会が民間企業である ホテルを廃業に追い込んだ。その責任を取れ」というものが多かった。 アイスターは全療協及び菊池支部に謝罪後も、県に対しては 「宿泊拒否は間違った判断だったが、自らに責任があるとは思わない」などと 従来と同じ姿勢を取り続けた。 これに対して熊本県は、 @ホテル側は宿泊拒否が人権侵害行為であることを認識していない。 A国、県の啓発不足や国民の理解不足を拒否理由として主張し、 責任転嫁の姿勢が変わっていないーと判断し、処分に踏み切ることを決定した。 事前通知では二月二十七日を期限とした弁明書提出を求めている。営業停止日数は 三日間程度とされ、具体的な日数期間は「弁明書を受け取った後の最終決定まで 公開できない」としている。そして処分の最終決定の時期は「三月上旬がめど」と 公表された。 一方、アイスターは「ホテルの廃業が最大で最善の謝罪」と主張して廃業の理由及び 責任までも他者に転嫁してしまった。これまでもアイスターは度々、責任を他に転嫁して 関係者を翻弄してきたが県の行政処分の決定直前になり、ホテル廃業を武器に 熊本県と全面対決する姿勢を見せた。 アイスターは一月二十日の県の事情聴取にも「宿泊拒否の責任は事前説明の なかった県にある」との考えを貫き、県とは対決姿勢をいっそう鮮明にした。 アイスターは本年一月五日、黒川温泉ホテル内で記者会見を行い「元患者無条件 受け入れ」を表明。その席で、江口社長は「全国十五か所の療養所を訪ね、 元患者の方々と話をし、われわれの認識不足から宿泊拒否を引き起こして しまったことが分かった。今後は元患者の方々が交流できる場を格安ツアーで 提供する、と述べた。翌六日、江口社長は恵楓園を訪問、自治会役員と面談し、 改めて営業再開と入所者の受け入れを言明した。翌七日、東京より早速傘下の 旅行会社アイスタートラベルより社員二名が自治会を訪問、ホテルの利用と 格安ツアーの案内をセールスした。 統一交渉団が一月十五日、アイスターに対して申し入れ書を提出、続いて 一月二十七日、熊本県及び熊本地検に対し、申し入れ書を提出した。 申し入れ書では、 @ホテル側は「宿泊拒否は当然」と社会の偏見差別を助長する発言を重ねた A恵楓園には中傷の手紙や電話が寄せられ、入所者は重ねての精神的苦痛を 与えている。 Bホテル側のその後の謝罪によっても問題は解決していないとし、厳正な処分を求めた。 一月二十日、熊本県が江口社長を事情聴取したが同社長は「宿泊拒否という判断は 間違ったが、責任があるとは思わない。 (予約時に宿泊するのは入所者であることを説明しなかった)県に責任がある」 と改めて主張した。 一月二十九日、潮谷県知事は定例記者会見で、「それぞれの事業体は人権教育を していくことが大切で、その認識は(衆人)の一致するところだ。県に責任があると いう認識は、いかがなものか」と批判し「(アイスター側の)人権侵害に対する認識は 甘い」と指摘、行政処分については、慎重に検討中であると発言した。 二月十二日、朝日が「熊本県はアイスターに、旅館業法に基づいてホテルに 五日前後の営業停止処分を出す方針を固めた」とスクープ報道、さらに 「処分方針が固まるまで約三か月かかった理由として県は、 @過去に例のない行政処分となるため、慎重になった。 A当初「宿泊拒否は当然」という姿勢だったアイスターが間違いだったと 態度を変えたことから、真意がどこにあるのかを見極めようとした と説明している」とつけ加えた。 二月十三日、熊本地検は「ふるさと訪問事業」に参加した入所者十六人に 事情聴取を行った。 二月十五日、西日本新聞は、県が、」ホテルを三日間の営業停止処分にする 方針を決めた」と報道、さらに「県はこれまで同社関係者から事情を聴き、 宿泊拒否の背景や再発の恐れなどを調べてきた。この結果、 @人権侵害に対する明確な謝罪がない。 A『国や県の啓発不足に問題がある』などと責任転嫁する姿勢が見られ、 再発の恐れもあるーと判断、処分に踏み切ることにした」とつけ加えた。 さらに二月十六日、熊日も「県は十五日、旅館業法違反でホテルを三月十五日から 十八日まで四日間の営業停止とする方針を固めた。宿泊拒否を理由とした営業停止 処分は全国で初めて」と詳しく報道した。 これらマスコミ報道に対して、アイスターの江口社長は、二月十六日従業員三十八人に 対してホテル廃業の説明を行った」と、某通信社を通して全国に発信した。 特に、突然のアイスターの「ホテル廃業宣言」は関係者に驚きと戸惑いを与えた。 二月十六日、熊日は夕刊で「宿泊拒否ホテル廃業へーアイスター社長が表明」と報道し、 翌十七日付朝刊で各紙はトップで報道した。 マスコミ報道によると、アイスターはホテルを廃業する理由について 「多くの人に迷惑をかけた(入所者らに対する)最大かつ最善の形の謝罪を考えている」 と説明している。 一体、「最大の謝罪」の意図は何なのか。 二月十七日、熊本県は旅館業法違反でホテルを営業停止処分とする方針を 正式決定した。 同十七日、坂口厚生労働大臣は会見で「過去に行った企業の行動は廃業しても残る。 それはそれで決着をつけなければならない」と発言した。 二月十八日、熊本県は、行政手続法に基づき、アイスターに処分内容を伝える 事前通知書を送付した。この日、潮谷知事は「違反の重大性にかんがみ、行政処分の 手続きに入ることにした。今回の問題では人権侵害を救済する一般的な法制度がない ことを痛感した。人権救済制度の整備を望むとともに、ハンセン病に関する啓発に 一層力を入れる」とコメントした。 春が来れば、この問題も終結を迎えるものと思っていたが、二月十六日のホテル 廃業宣言で新たな局面に突入したといえる。 (菊池支部長・太田明) |