宿泊拒否で緊急シンポ

     誹謗中傷に負けない熱気

                     菊池恵楓園自治会長 太田明の報告

 「美しい花と糞(くそ)の違いだ。―誰も平等に思ふものはない。仏が与えた罰は一生や二生では贖罪出来るものではない」「お前たちハンセン病にかかった奴らはハンセン病発病の時点で人間ではなくなった。ダニやゴキブリやハエやノミやうじ虫よりもバカでアホでうざったく」「色々と新聞でよんで来たがお前らは死んで一人前」「ハンセン病患者は人間ではないから人権もない。死ね」  

偏見・差別の歴史のなかで、ハンセン病であった者たちがかつて、これほどあからさまな罵詈雑言をあびせられたことがあったでしょうか。いまごろになって何故、一体どうしたらいいのでしょう。

 「宿泊拒否とハンセン病問題の現在(いま)」と題した緊急シンポジウムは統一交渉団とハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会の共催、毎日新聞社の後援で二月二十五日午後六時より毎日新聞東京本社内「毎日ホール」で開催されました。この日、午後の議懇総会および健康局長交渉に参加した人々をはじめ、一般の関心も集めて会場は次々に椅子を足し、約三百人の熱気でいっぱいでした。

 赤沼弁護士の司会、豊田弁護士の開会の挨拶ではじまり最初、菊池支部自治会の太田明会長が経過報告を行いました。

 太田会長は、熊本県による「ふるさと訪問事業」で宿泊を予定していた「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」が「他の宿泊客に感染する恐れがある」とし、恵楓園入所者十八人の宿泊を拒否するという差別事件が起きた昨年十一月十五日以降の経過を事実に沿い、極めて冷静に述べていましたが、そこでは、@県が二月十五日にホテルを三日間の営業停止処分にする方針を決めたこと、Aこれに対し、アイスターの江口社長が二月十六日、従業員三十八人にホテル廃業の説明を行ったこと、B「廃業」の表明で再び自治会や入所者個人に対する誹謗中傷の電話や葉書、書状、ファクシミリが殺到していること、以上の三点が特に重要でした。

 「無視しろ」といわれても「お金目当」とか「疎外された腹いせに復習」とか「恵楓園に火を付けろ」など、投書は二百数十通にも達し、明らかに二次被害となっているが、太田会長は「ひどいのは涙が出るからやめる」といい、眠っていた偏見・差別をゆり起こしてしまったものの責任の重さを指摘し、入所者の短歌を紹介して最後を締めくくりました。



 「啓発に啓発重ねるしかないか偏見の壁差別の壁に」

 続いて全国弁連事務局長の安原弁護士をコージネーターにパネルディスカッションが行われました。パネラーは谺雄二(全原協会長)、神美知宏(全療協事務局長)、江田五月(議懇会長)、三木けんじ(毎日新聞論説委員)、東(ひがし)明正(熊本県健康福祉部健康づくり推進課長)の皆さん。会場からも活発な発言があり、予定時間をオーバーして盛況でした。

 幾つかの注目された意見を拾うと、
@これは温泉ホテルだけでなく、社会全体の問題であること

A水面下の差別意識や偏見を浮かび上がらせ、誤った政策の恐ろしさを思い知ったが、
  政府の新聞への謝罪広告はおざなりで単なるペーパーに過ぎないこと、

B差別する側は安穏な立場で国の政策に乗っかっているだけで、本質は無知であること

Cホテルの総支配人が謝罪に訪れた十一月二十日、充分な回答が得られず、謝罪文の受け取りを
  拒否した際の自治会の真意などを正確に伝えず、マスコミのミスリードが誹謗中傷等、二次被害を
  誘発してきたこと、

Dマスコミにも国の政策への「不作為」があったし、そもそも「ふるさと訪問事業」がなぜ必要か、
  きちっと伝えていくべきで、無知無理解を取り除く責任があること、

E一方、社会復帰者のなかには、病院へ行って断わられ、床屋へ行って断わられ、隣人に気兼ねし、
  息をひそめて生きている人がいること、

Fわが国には、人権侵害に対する救済の法が整備されていないこと

G隔離の結果であることが確かだから、ノーマライゼーションがそれを無くしていく道であり、
  交流が大切で県民一人々々と入所者が接していくのが有効であること、などでしょうか。


 「本当に頭にきている。だから、思いの丈を申し述べて」と徳田弁護士が閉会の挨拶をされ、怒りを闘いへの熱気のうちに終了しました。