(全療協ニユース890号転載
 
      統一交渉団会議



       第8回定期協議に向け 全面解決目指す

本年度の「ハンセン病問題対策協議会」が八月二十五日に開催されることに
なり、対応を話し合うための統一交渉団会議が七月二十五日午後一時から五時過ぎまで、麹町・弘済会館において開催され、統一交渉団を構成する全療協、全原協、全国弁連の約七十人が参加しました。

 冒頭、全療協の曽我野一美会長が入所者の高齢化や不自由度の高進、療養所の将来構想問題にも触れながら、全療協は本部・支部共に組織の維持が大変だが、今ほど大切な時期はなく、定期協議に向けて要求を纏め、交渉への意思統一を図りたい」、と挨拶されました。

  


一、 非入所者問題
 会議は、統一要求書(案)に従って進められましたが最初、非入所者問題が取り上げられ、第七回協議会(三月二十九日)開催以後の交渉経過について野間弁護士から報告されました。
 それによると、厚労省は現在、基準額を四万八千五百円とする修正案を提示していますが、それは低所得者に一定率を加算しながら高所得者には所得制限を行う、というもの。定額のうえ、基本のところで段階的な扱いになっています。しかし、これが決着しないと次に行けないという状況もあり、結論は協議会において出されることになります。

二、 協議会の取り組み
 平成十五年度のハンセン病問題対策協議会の取り組みについて、安原弁護士から全体的な説明と問題提起がありました。

三、 真相究明
 鮎京弁護士が先ず、検証会議についての経過と提案の説明を行いました。
 厚労省は、検証会議がすでに提出した2003年度報告書と来年三月に提出する予定の最終報告書について、両報告書で明らかにあった事実検証の結果を真摯に受け止め、過ちを繰り返すことのないよう、再発防止のための提言を施策に生かすべく最大限の努力をしなくてはなりません。

 とりわけ、検証会議による本年七月十三日付き「公衆衛生等施策等に関する再発防止の提言(骨子)」については、これを尊重し、同会議が要請する提言実施過程の「ロードマップ化」に向け、平成十七年度の予算確保とロードマップ委員会の設置を約束させたい、と。

 ロードマップ委員会には全療協や全原協から委員を送り出すべきだ、ということでした。

 胎児や臓器等病理標本が検証後の園から次々に出てきていることや、ハンセン病資料館の充実と資料の保存及び歴史的建造物の保存・復元についても報告があり、これに対し「高松宮記念」の名称問題やアイスター事件について、政府は何もしていないのではないかなど、参加者からたくさんの発言がありました。

四、 謝罪・名誉回復
 アイスター事件に関する無為無策も踏まえ。厚労省に対し、名誉回復・啓発活動(各都道府県でのシンポジウム開催)のための予算確保を要求することになりました。

五、 在園保障
 去る七月九日、厚労省関係各課との間で行われた「在園保障作業部会」(本紙八月一日付所載)について、古賀弁護士から報告があり、個別要求項目としては、@医師の確保、A夜間看護、BC型肝炎対策を中心に協議会に臨むことになりますが、社会復帰者と共同の「医療作業部会」を設置させることも重要な課題です。

六、 療養所の将来構想
 このまま手を拱いていたら、療養所は立ち枯れてしまうでしよう。療養所の存在価値を高めるため、外部からの要請を受け入れるとしたら厚労省はどう出てくるかなど、将来構想問題は徳田弁護士によって取り上げられましたが、今度の協議会では、「統一交渉団と厚生労働省との間で作業部会を設置して、協議を開始することを求める」ということです。

七、 社会復帰・社会内生活支援 
 基本方針の確認と共に、ここで重視されたのは医療体制の整備充実の問題ですが、神谷弁護士の担当でした。国の隔離収容政策は、治療の場を療養所に限定してきました。
 そうした療養所中心政策は、一般医療現場からハンセン病患者あるいは同病の既往歴有する者を排除し、ハンセン病患者・元患者から医療を選択する権利及び適切な医療を受ける権利を奪い続けてきたといえます。
 
 この権利を回復するため、国の権利回復義務に基づき、@療養所を含めたハンセン病治療に重点をおく医療機関の設置と医療体制の充実。Aハンセン病に関する知識・経験を有する医療従事者を配置すべき医療機関として、国立ハンセン病療養所を含めた複数の医療機関を指定する。B略 C上記指定病院を基幹とする医療情報提供・治療指導ネットワークを構築するとともに、同病院においてハンセン病の知識・経験を有する医師を育成する、などを要求することになります。

 上記課題の実現のため、医療協議の場を設置することになりますが、小林弁護士の説明に移り、「厚労省と設置のコンセンサスは得ている」とのことでし
た。
 小林弁護士によれば、「医療作業部会」での要求戦略の確立に向け、医療実態調査が必要であり、各支部自治会の協力を得て療養所に入り、問題を現場において把握したい、ということでした。

 最後は、全原協の谺雄二会長が挨拶しました。「長い時間にわたり、ごくろうさま。今、何をすべきか。ハンセン病の問題はまだ終わっていません。みんなの、その思いをぶっつけていこうではありませんか」



   主 張・・将来構想策定に力を結集しよう。

 全療協が直面している課題の一つにハンセン病療養所の将来のあり方をどのように考えていくか、という問題がある。
 これまでに、全療協はこの重要な課題に積極的に取り組むべきであったが、まだ遠い先の問題として等閑に付してきた。しかし現在では、全国の療養所の入所者数は往年の三分の一以下に減少して三千五百人になり、平均年齢も七十七歳に達した。その結果五年後、十年後の療養所の姿がみえるようになった。

 近年、入所者の高齢化が急速に進み、死亡率が徐々に高くなっていくにしたがって、将来への不安が身近にせまったことを実感させられている。入所者の疾病構造は高齢者特有のものとなり、悪性新生物や老人性痴呆症、糖尿病、高脂血症など、数多くの生活習慣病療養所内にみられる。さらにC型肝炎、肝硬変、肝細胞癌の発症も侮れない。

 このように複数多様化する入所者の医療ニーズに的確に応える態勢は療養所内では極めて不充分といわざるを得ない。今後改善充実をされるという保障もない。医療の提供能力を高める措置は療養所の将来を考えるにあたって決して欠くことは出来ない。医療と看護は、将来にわたってどのように改善充実していくかが問われているのであり、全療協は昭和五十六年に開催した第二十八回定期支部長会議で「療養所は将来にわたって国立医療機関として存続させるよう要求する」ことを機関決定している。
 全療協のこの基本方針は現在も変わっていないので、療養所の今後のあり方を検討するにあたり、当然このことが前提にならなければならない。全療協は、いまや残された力を結集して可及的すみやかに取り組まなければならないのが療養所の将来構想の問題である。

            


 平成十三年十二月十五日に締結された統一交渉団と厚生労働省大臣との間に「ハンセン病問題対策協議会における確認事項」では、「十三の国立ハンセン病療養所入所者が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める」と規定された。

 たとえ一人になっても、現在入所している療養所に終生在園いうる権利が認められたことになる。

 今後の医療、看護、介護、そして将来の療養所のあり方を協議する場合、この「確認事項」を全面的に踏まえた上でなければならぬことは当然である。

 八月二十五日に開催されるハンセン病問題対策協議会でも、厚生労働省に対し「将来構想の策定に当たっては、協議会でその内容を協議していくこと」を要求することになっている。

 全療協運動の最後の締めくくりとなるであろう「療養所の将来のあり方」を検討する委員会を立ち上げ、衆知を集めて鋭意協議重ねなければならない。
 法律の整備や医療・看護・介護の保障があってはじめて隔離を強いられてきた者たちの安らぎを得ることができよう。道は険しいかもしれないが避けて通るわけにはいかない。