Concert review

特に強く印象に残った演奏会について綴ってみました。

 

2008.5

再度、若林暢ヴァイオリンリサイタル7(A-LAND Ensemble Concert Series18 浜離宮朝日ホール 2008年5月27日19:00開演)を聴きに行きました。テクニックやパワーもさることながら、構成と和声進行を十二分に考えられた彫りの深い演奏が非常に印象的で、勉強させられるコンサートであり毎回のことながら感動せずにはいられません。歴代大ヴァイオリニストの作品を並べた前半のプログラムも興味深いものでしたが、やはり後半のベートーヴェンヴァイオリンソナタ《クロイツェル》が圧巻で、前述の構成感・和声感のすばらしさと、ピアノとのコンビネーションのすばらしさが、傑出していました。ピアニストの江口玲氏の演奏は、構成感・和声感という点では同一路線の表現を指向されており、クールで静的で無駄な動きは一切なく、それでいてきわめて繊細かつさりげなく多彩な演奏で、これぞ大人の奥深い演奏だなあ、と感動せずにはいられませんでした。バランスも絶妙なものとなり、非のうちどころのない完璧な演奏会だったと思います(27日)。

前山仁美ピアノ・リサイタル(2008年5月15日横浜みなとみらい小ホール)に行きました。ハイドン《ピアノソナタ》3曲、メンデルスゾーン《3つの幻想曲・奇想曲》《ロンド・カプリチオーソ》《スコットランドソナタ》、スクリャービン《エチュード》op2,1、《幻想ソナタ》、ラフマニノフ《ピアノソナタ第2番》(1931年版)から成る4部分構成のプログラムです。なんといっても、全体に比類なき美しい音色での表現が続き圧倒されました。ハイドン・メンデルスゾーン・スクリャービンいずれの組も、ゆったりとした美しい音色を要する曲を最初に配してあった理由が伺えます(調性を考えた曲配列もなかなか素晴しいと思いました)。中でも《幻想ソナタ》の第1楽章の美しさは忘れられません。単に美しいだけでなく構成やバランスの良さもさりげなく目立ちました。最初に弾かれたハイドン《ピアノソナタ》XVI/42 の構成感・バランスの良さが傑出していたと思います。技術も高水準に安定しており、 非常に素晴しいピアノソロ演奏であったことは間違いありません(15日)。

2007.12

若林暢とエイランド・アンサンブル クリスマス・コンサート2007(A-LAND Ensemble Concert Series17 Christmas Concert 2007)(12月2日東京文化小ホール)を聴きに行きました。企画・演奏ともに良質の演奏会シリーズで、良く拝聴させていただいております。今回はヴィヴァルディ「四季」を主体に組まれたプログラムで、古今の名演奏と比較しても遜色のない素晴しいアンサンブルの見事な演奏でした。この曲のもつ標題性に安易に流されることなく、構成感・楽章統一感・バランス感のある演奏であった点がまず特筆されます。それでいて、色彩感や表情が多彩に表現されるアンサンブルの個性は存分に表出されていました。例えば描写的な演奏部分がユニークに大胆に表現されていた点で、特に「冬」の「凍った地面を蹴りながら走る」部分などの描写力は大胆で、非常に感動しました。この他にメンデルスゾーンの八重奏曲(弦楽合奏版)などが演奏されましたが、いずれも明るく調和のとれた演奏だったと思います(14日記)。

2007.11

「20世紀いいんかいリサイタルシリーズ16(小野山幸夏うたの夕べ 〜スペインの粋なよる」(代々木上原 ムジカ−ザ 11月22日)を聴きにゆきました。ファリャ、モンサルバーチェ、グリーディ、トゥリーナ、オブラドルスなど、スペインの作曲家の歌曲主体のユニークなプログラムです。不勉強のせいで初耳の作品が少なからずあり、私にとってはたいへん興味のつきないプログラムとなりました。スペインの音楽という特有の旋律感・和声進行によって独特の雰囲気がただよう作品群を一気に聴け、共通するスペインの感覚を強く味わうことができました。定番の作品 ファリャの《7つのスペイン民謡》では、バリバリと弾くのではなくスペイン風リズムや和声感覚を重視したピアニストの大島義彰氏(ラヴェル《道化師の朝の歌》など独奏も秀逸でした)の個性によって、以前聴いた演奏とかなり印象の異なるものとなりこちらも新たな感動がありました。いずれも高水準の演奏という当然の前提があるからこそ、楽しめたのはいうまでもありません。毎回これだけの高水準で演奏を続けられることに脱帽です(11月27日記)。

2007.5

松本明ピアノリサイタル(20日・東京文化会館小ホ−ル)の後半のプログラム(シューマン《幻想曲ハ長調》作品17)を聴きました。メロディーのラインの弾き出しと、和音の色を考えた雰囲気の転換が非常に徹底していて、とても骨太で意図がはっきりした解釈の素晴しい演奏でした。アンコールで弾かれた、シューベルト《即興曲》作品90,3 と 作品142,2も色彩感覚表現が秀逸で、余韻にひたることができました。前半(リスト《バッハのカンタータによる変奏曲》ドビュッシー《映像》)が所用で聴けなかったのが非常に残念でした(20日)。

2006.10

崔 仁洙 ピアノ・リサイタル(10月7日 東京文化会館小ホール)を聴きました。《J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第2巻》プレリュードとフーガ全曲演奏という重量級のプログラムです。ピアノでの平均律(第2巻)全曲演奏というプログラムに興味があって聴きに行ったのですが、予想を裏切らない演奏でした。不必要なパフォーマンスがなく冷静・沈着に客観的に弾かれている印象なのですが、さりげなく随所に個性を光らせた部分が散見されていたので(思ってもいなかったラインをバランスよくさりげなく表に出したりされています)、平均律のまた新しい一面を伺えてとても勉強になりました。全体的にやや上声部側にバランスが片寄り気味だったのと、2,3曲で若干速度の不安定さが見られたのは少し残念に思いましたが、トータルでみれば非常に内容のある演奏会でした(7日)。

2006.9

樋口紀美子ピアノリサイタル(トッパンホール)を聴きました。シューマン<アベッグ変奏曲><クライスレリアーナ> 乾春男<プレリュード 1949><ペルソナ 1948> ドビュッシー<エチュード第2巻>から成るプログラムです(アンコール曲は、ドビュッシー<アラベスク> ショパン<ノクターン遺作 嬰ハ短調>)。前半のシューマンのプログラムでは、<アベッグ変奏曲>が特に素晴しい演奏で、余裕のある安定した演奏の中に巧みな曲の造りがさりげなく伺えて特に印象的でした。後半では、ドビュッシーの<エチュード第2巻>の色の表現もなかなか素晴しいものでしたが、昭和戦後すぐの時代に活動した乾春男氏作品の演奏を聴くことができたのが何といっても興味深かったです。スクリャビンの和音を思い起こす<プレリュード 1949>と、叙情的な一面・愉快な一面など いろいろな表情を有する氏の代表的作品<ペルソナ 1948> のどちらも、昭和戦後の日本の音楽界をかいま見ることができて、とても勉強になる演奏会となりました(7日)。

2006.6

またまた、若林暢ヴァイオリンリサイタル5(A-LAND Ensemble Concert Series14 東京文化小ホール)で大感動いたしました。モーツァルト(K.377)・シューマン(op.105)・ショスタコーヴィチのソナタ(Op.134)などのプログラムで、すぐれたテクニック・パワー・エネルギーには、いずれの曲においても圧倒されました。が、それもさることながら、いろいろと曲の細かい部分まで丹念に考え尽くされて演奏されている点に、特に感動しました。毎回新鮮な発見がある演奏会で何が素晴しいのかを解明したいために、今回は一部の曲について事前に曲の勉強をしてから聴きに行きました。予想通り(あるいは予想以上に)構成に対する確固たる考え方が明確に反映されており、それに基づいた独自の多彩な色使いをされていることがはっきり分かって特に勉強されられました。ショスタコーヴィチのヴァイオリンソナタでは、背景にある思想や 隠れた音楽の構成などを 解説されたのちに(レクチャーも交えられたコンサートでした)音楽に見事に表現され、いかに音楽の世界が奥深いのかを徹底的に教えていただいたような気がいたします。ピアノのアルバート・ロト氏の、格段に安定していて美しい表現も、特筆されます(4日)。

クルト・グントナー ヴァイオリン・リサイタル(トッパンホール)を聴きに行きました。モーツァルト(K.526)・ブラームス(Op.78)・ペートーヴェン(Op.47)の ヴァイオリンソナタからなるプログラムでした。グントナー氏が全般に、淡々と それでいていろいろな表情をさりげなく丹念に丁寧に表現されて、格調高く演奏されていたのが特に印象に残りました。無駄な動き・華美な表現は避けつつ、しかし必要とあらば余裕のあるテクニックでダイナミックに表現されていたのが素晴しかったです。藤原由紀乃氏の抑えめな演奏も今回の演奏の雰囲気にあっていて、ヴァイオリンをとても引き立たせていたと、私は思いました(2日)。

2006.5

多彩な企画と高水準の演奏で音楽の楽しみを伝えてくれる「20世紀いいんかいコンサートシリーズ24(夕べの想い 〜モーツァルトからタレガへ」(代々木上原 ムジカ−ザ)を聴きにゆきました。今回の注目は後半のプログラムで、伊藤均氏のギターと小野山幸夏氏のメゾソプラノによる、C.W.グルック・A.バリオス・F.タレガ・E.グラナドスのプログラムでしたが、いずれも伊藤均氏の渋いギターの音色と それを活かした選曲に注目されました。バリオスとタレガのギター曲では、1音1音深く心をこめるような音でかみしめるように演奏されていたのが特に印象に強く残りました。クラシックギターというと名人芸的要素が目につきやすいと思いますが、それをあえて前面に出さず、その結果 満席のお客さんがいっせいに息をとめて微妙な音色を聴き入る、というような雰囲気の演奏となっており、これが曲のもつ性格と一致して素晴しかったです。演奏会場がこのような雰囲気になるのはきわめて稀なことのように思います。グルックの<オルフェオとエウリディーチェ>では小野山幸夏氏の表情豊かな演奏も秀逸で、本当にオペラを実際に見ているかのような感覚になりました。なお前半はモーツァルトイヤーにちなんだプログラムで、山内三代子氏によるシューベルト<即興曲Op.142-3> モーツァルト<ソナタKV.333>と、山内廣文氏によるモーツァルト歌曲集からなり、前者は華美を排した好演・後者は長大な量の曲の力演であったことも付言いたします(20日)。

2005.9

大正琴演奏研究集団 愛琴会師範室井儀枝氏主宰の大正琴発表会が、2005年9月4日(日) 12時30分より千葉 勝田台文化センタ−で開かれました(なぜここに大正琴の速報が?と思われる方は Concert review の2004.9の項をご覧下さい)。今回も、合奏と選抜された独奏とで構成されており、満員のお客さまで熱気に満ちておりました。この種の演奏会としては異例なくらい、リズム感がよくバランスのとれた演奏会であったと思います(4日)。

2005.5

畠中恵子ソプラノリサイタル(6日・日本大学カザルスホ−ル)を聴きに行きました。前半はロマン派の名曲(プッチーニ 蝶々夫人第二幕 からハイライト、シューベルトの歌曲)・後半はヴェルディのオテロ第四幕より柳のうたなど、現代作曲家トーマス・アデスのライフストーリーでした。メジャーな歌曲も、控えめなピアノとよく調和した美しい演奏でしたが、いつものことながら注目されたのはトーマス・アデスのプログラムです。アデスは1971年生まれの若い作曲家で、作品は、派手なパフォーマンスなどはなくシュプレッヒシュティンメなどをまじえた20世紀初期の新ウィーン楽派を彷彿させる作品でした。雰囲気を十分に伝える演奏だったと思います。また新たな作品を鑑賞することができて、大変有意義な演奏会でした。

2005.4

「金子勝子門下生による40周年記念コンサート 音の調べ」を聴きにゆきました。小学校低学年の現役の生徒さんから音楽大学卒・音楽教師・大崎結真さんなどプロのピアニストまで、多彩な出演者からなる約3時間にわたるボリュームのある会で、同氏の40年にわたる幅広いすばらしい教育実績を存分に伺うことができました。特にすばらしい演奏もありましたが、それを特記するより全体の水準の高さを高く評価すべき演奏会だったと思います。これからも、金子勝子先生・出演者全員の一層の素晴しい活躍を祈念しています(29日)。

2004.12

若林暢とエイランド・アンサンブル2004(A-LAND Ensemble Concert Series11)を聴きに行きました。6月同様、企画・演奏ともに毎回期待を裏切らない演奏会です。今回は、没後100年にあたるドヴォルザーク中心のプログラム(弦楽五重奏曲第2番・弦楽のためのセレナーデ)でした。今回も、和音の動きに相ふさわしい色彩感・表情が的確に表現され、構成感・客観性と個性がバランスよく両立して表現されていました。ドヴォルザークの音楽は室内楽としては若干曲が長いので、まとまりにくい・退屈する演奏になりやすいように思いますが、明確な構成感ゆえにストーリーの次がどうなるかという期待をもち続けて聴くことができ、また各楽章の性格を明確に表現し分けられていたので、音楽に内在するいろいろなおもしろさを常に発見しつづけることができ、とても楽しい時間をわくわくしながら過ごすことができました。特に、弦楽セレナーデが秀逸だったと思います。また、シューベルトの5つのメヌエットと6つのトリオなど、初耳の曲も演奏されました。こちらは声部間のバランスがよく、とても明快に演奏されていました(23日)。

「斉藤デュオピアノリサイタル(津田ホ−ル)」を聴きにゆきました。プ−ランクの2台ピアノのためのソナタ、ラフマニノフの組曲第1番「幻想的絵画」、モーツァルト/ブゾーニ編の2台ピアノのための「魔笛」序曲、コープランド/バーンスタイン編のエル・サロン・メヒコ、ガーシュイン/松山祐士編「ポーギーとベス」組曲からなるプログラムです。何といっても、息が非常にあっている点とバランスのよさとに、とても驚かされました。特に、どこでメロディーラインを受け渡したのかが全くわからないくらい2台のピアノアンサンブルが調和していたのは驚きです。また、すべての曲を無理なく自然に余裕をもって演奏されており、安定感も抜群でした。(8日)

「ボリス・ベレゾフスキ− ピアノリサイタル」(紀尾井ホ−ル)を聴きにゆきました。ムソルグスキ−の展覧会の絵、ショパンとゴドフスキ−のエチュ−ドから17曲のプログラムです。前提となるテクニックがけた外れにすごいのに、それを感じさせずにさらっと情緒豊かに表現されているのに、まず驚きました。ゴドフスキ−のエチュ−ドは難曲中の難曲だと思いますが、完璧に音楽性豊かにさらっと弾ききったのがなんといっても印象的でした。しかし巨匠であることだけでは語ることはできません。強烈な個性を有する豊かな音楽性にも感嘆しました。展覧会の絵の教会の鐘の音やアンコ−ルで弾かれたラフマニノフの音色があまりに美しく、言葉で表現できません。衝撃的に素晴しい演奏であったと思います。ポリ−ニの若い時の演奏に匹敵するほど、衝撃的な演奏であったといっても過言ではないでしょう。11月27日の、リストの協奏曲1番を聴かなかったのがとても残念でなりません。(2日)

2004.11

「中島裕紀ピアノリサイタル(代々木公園 白寿ホ−ル)を聴きにゆきました。リストのバラ−ド・ロ短調ソナタ、そしてショパンの3番のソナタという、重量級の曲目で構成されていました。この中では特に、リストのロ短調ソナタが、ユニ−クな解釈が随所に見られなかなかの好演だと思いました。この曲は何度聴いても多様な発見があって楽しいのですが、今回もまた新たな発見をさせられとても勉強になりました。バラ−ドでは、雄大さと繊細さを兼ね備えたピアニストであることを証明していたように思います。(26日)

「Orchestra Project 2004(国立オリンピック記念総合センタ−大ホ−ル)を聴きにゆきました。サロンオ−ケストラという指揮者なしのオ−ケストラによる演奏会です。前回の畠中恵子リサイタルの名演奏を再び、という目的で聴きに行ったのですが、期待を裏切らない優れた蝶々夫人(抜粋)のソプラノでした。ピアノとの協演とは一味違った魅力を、十分に堪能できました。オ−ケストラは、ユニ−クな企画を掲げた若い演奏者たちで成り立っていました。今後に期待したいと思います。(20日)

2004.10

「20世紀いいんかいリサイタル 12(小野山幸夏 うたの夕べ2004 第一夜 モンポウの詩情)」(代々木上原 ムジカ−ザ)を聴きにゆきました。小野山幸夏氏主宰の20世紀いいんかいは、毎回、定期的に多様な企画で音楽の楽しみを伝えてくれます。今回はすべてスペインの作曲家モンポウの作品で、小野山幸夏氏のメゾソプラノによる、「夢のたたかい」など定番を含めた十数曲のモンポウ歌曲と、共演者小林律子氏のピアノ独奏による「ショパンの主題による変奏曲」から構成されていました。歌曲に関しては、演奏者の得意分野ということもあるのでしょうが、作曲家の心情などを非常によく再現しているように思われ、なかなかの好演でした。またピアノ独奏についても、安心して身をゆだねられる演奏で、ひさびさの出色の演奏会に出会った感を強くもちました。それに加え、ショパンの主題による変奏曲(私にとっては初耳の曲)というユニ−クな音楽に出会って、2倍楽しめました。これからも期待できます。なお第二夜は、福岡あいれふホ−ル(2004年11月12日)での「ミニヨンの歌」と題されたコンサ−トとなるようです。こちらの大成功も祈念いたしております。(28日)

2004.9

大正琴演奏研究集団 愛琴会師範室井儀枝氏主宰の大正琴発表会が、2004年9月5日(日) 13時より千葉 勝田台文化センタ−で開かれました。私の活動範囲は大正琴とは無縁なので、なぜここに速報が?と思われる方もいらっしゃることでしょう。実は、愛琴会師範でいらっしゃる室井儀枝氏はとても研究熱心な方で、みずから多様な曲を編曲をされて発表活動に結びつけられており、その編曲の勉強などに当教室に通っていらっしゃることがありました。洋楽の領域である、和声法などもとても熱心に研究されています。その結果、洋楽の要素もとりいれた本格的な大正琴の演奏・普及につながっています。愛琴会師範室井儀枝氏のことについては、産業新潮社発行の「産業新潮2000年5月号」に詳しく紹介されました。今回も多数の出演者であふれ、合奏と選抜された独奏とで盛況でした。従来の大正琴のイメ−ジとでは計れない多様な会で、満員のお客さまの興味を満足させつつ、音楽面でも十分に満足させられる演奏会でした。(5日)

2004.7

『Japan korea sound crossroad 2004 exchange concert 韓国の作曲家と共に』(主催 sound crossroad 2004 実行委員会)という、韓国と日本の新進若手作曲家の交流演奏会が、2004年7月29日・30日の両日にわたって、ティアラこうとう(江東公会堂)小ホ−ルで行われました。この演奏会は、大学で私のティ−チングアシスタントを勤めて下さっている大曾根浩範さん(東京芸術大学大学院生)や、かつて中学生以来5年ほど当教室の生徒であった大久保友子さん(東京芸術大学3年生)らが中心となって企画された交流演奏会で、東京芸術大学と韓国の淑明女子大学校の新進作曲家9人の新作が、現代作品の研究と実践を主な目的とした若手演奏家たち(Ensemble Trinity)によって演奏されました。事前に注目していた、第71回日本音楽コンク−ル作曲部門で第一位を受賞され最も期待されている韓国の若手作曲家 朴銀荷氏の作品「This War」も聴くことができました。人間の心の本音を表わす内面的な内容の曲でした。フル−ト独奏の曲ですが、奏者は台詞の朗読も兼ね、時には声を発しながらフル−ト演奏をするという、前衛的な70年代を彷彿させる部分もあり、とても興味深く楽しめました。また、大曾根浩範さんの改訂初演新曲「ANKES」は、アイヌの子守歌をもとに、地上と地底の2つの世界をヴァオリン・ヴィオラ・チェロの3つの楽器で表現するという内容の楽曲で、多様な和弦を上手にあやつり手慣れた音の取扱がなされていたのがとても好印象でした。なお、2日にわたって全部聴くことができず全体をリポ−トできないのが心残りです。特に、大久保友子さんの新曲「二人舞」も演奏されましたが、個人的な日程の都合で聴けなかったのがとても残念です。この種の新作発表会は、やはり生で聴かないと曲のもつ良さがよく分からないなあ、という感をあらためて強くもちました。(30日)

2004.6

若林暢ヴァイオリンリサイタル4(A-LAND Ensemble Concert Series10)を聴きに行きました。毎回とても企画・演奏ともに素晴しく、期待を絶対に裏切らない演奏をして下さる数少ない演奏家の一人です。今回は、Bで始まる作曲家(J.S.Bach, Lv.Beethoven, J.Brahms, Bartok)のヴァオリンソナタ4曲という、正味2時間を超える重量級のプログラムでした。参考までにアンコ−ル曲も、Bloch の組曲でした。いつも拝聴していて思うことは、和音の動きに相ふさわしい色彩感・表情を的確に表現されていて、構成感がとてもある上に個性が表現され尽くされているという点に最大の特徴があるように思います。つまりよく研究されているということです。だから、この曲にはこのような表現もあったのだなあ、という新しい発見がいつもあって、こちらまで勉強させられます。いつも期待を裏切らずに安心して聴けるのは、すぐれた技術の持ち主であるからなのですが、「そのようなことを第一義に感じさせない」という演奏なのです。今回の演奏も同じ印象をもちました。

どの曲も総じて素晴しかったのですが、個人的にはブラ−ムスのソナタ第一番がいちばん感動しました。その理由も個人的ですが、各和音の色彩の扱い方がとてもバラエティに富んでいて、音楽の持つ美しさがとても多彩に表現されていたからだと痛感いたします。感動の度合が非常に大きい演奏会でした。

私は、演奏会には割合よく行く方だと思います。いつも新しい発見をしたいからです。そのなかで、感動の度合が大きかった演奏会は、今後ともこのペ−ジに綴って見たいと考えています(東京文化会館小ホ−ル 6日)。

2004.5

畠中恵子リサイタル(1日・国分寺市いずみホ−ル)では、前半は古典派・ロマン派の名曲・後半は現代音楽でした。モ−ツァルトの歌曲もよく考えられていた演奏でしたが、特に注目されたのはやはり後半のプログラムで、ケ−ジの「アリア」が、演出・演奏ともに最高でした。現代歌曲では、まちがいなく日本の第一人者であることを再確認した次第です。

松本明ピアノリサイタル(4日・東京文化会館小ホ−ル)。前半は、1993年ブタペスト出版社版による、オペラ「フィガロの結婚」と「ドン・ジョバンニ」による幻想曲(リスト作曲)が初耳の曲で、いつものごとく意欲的で斬新なプログラムでした。後半はシュ−ベルトの即興曲作品142の素晴しい演奏で、特に第4曲の舞曲のリズムが実によく表現されている、模範となる秀逸な演奏でした。

ピアノ音楽研究会(7日・古賀政男記念館けやきホ−ル)は、テレビ朝日系ドラマ「トリック」の作・編曲家 辻陽のユニ−クな企画です。辻陽の「トリック背景音楽(ピアノ版)」が、なんといっても興味深く聴かれていたようです。アンコ−ルに演奏されたバイエルの2台ピアノ版の編曲も、観客を魅了しました。演奏は高水準で、青池春美のプロコフィエフ・ピアノソナタ第3番・大津知子のシュ−マン・クライスレリア−ナは、特に素晴しい演奏でした。

 

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