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★亡国Part1★
『韓非子』:「亡徴」に、こと細かに亡国の徴候について事例があげられています。なんとその数は50近くにも及びますが、ひとつひとつ見ていきましょう。
(長くて読んでられねえぜ!という方は、上の「ジャンプ」をクリックして最後の結論へどうぞ)
| 01 |
国が小さいのに大夫の家は大きく、君主の権力より臣下の方が強い |
| 02 |
法律による禁制をおろそかにして謀略をはかり、国内の政治を乱れたままにして、外国との交際と援助に頼る |
| 03 |
群臣が無用の学問を修め、一族の子弟が弁舌を好み、商人が財貨を私的に蓄積し、庶民が私闘を重んじる |
| 04 |
君主が宮殿等を好み、車馬や器物等に凝って、民衆を疲弊させ、財貨を使いはたす |
| 05 |
君主が季節の吉凶や鬼神の意向を大切にし、占いを信じて、祭祀を好む |
| 06 |
君主が人の意見を聞くのに爵位の高下に従い、事実を調べず、一人の臣だけを情報の入り口として重用する |
| 07 |
官職は重臣の口添えで得られ、爵位や俸禄は賄賂を使って得られる |
| 08 |
君主がたるんだ心で仕事を成し遂げず、柔弱で決断にとぼしく、好き嫌いに確固たる立場を持たない |
| 09 |
君主が貪欲で満足を知らず、利益を追いかけ我が物にするのを好む |
| 10 |
君主がでたらめを喜んで法令に合うことを務めず、論説を好んで実用を追求せず、うわべだけを飾って実効を顧みない |
| 11 |
君主が人柄浅薄で、秘密はすぐ漏らし、周到にできず、群臣の言葉を筒抜けにする |
| 12 |
君主が頑なで人と和合せず、諫言に逆らい人に勝つことを好み、国家のことを考えず、軽率で自信たっぷり |
| 13 |
遠い国や強大な国の援助を頼りにして、近隣の国をなおざりにする |
| 14 |
外国から来た寄寓者が、財宝や妻子は国外に置きながら国家の謀りごとや民政に参与する |
| 15 |
民衆が主君に親しまず宰相を信用しているのに、主君がその宰相を寵愛し続ける |
| 16 |
国内の人材でなく外国の士人を求め、実際の功績でなく評判で評価し、外来の寄寓者が栄達し、古い臣下をしのぐ |
| 17 |
異腹の庶子たちが本妻の嫡子と張り合い、太子が決まらないうちに主君が死亡する |
| 18 |
君主が大まかで過ちを悔いることもなく、国内の実力も考えずに隣の敵を軽視する |
| 19 |
国は小さいのに大国にへりくだらず、無礼な態度で隣の国を侮り、外交もまずい |
| 20 |
太子が定まったあとに、強い敵国から正夫人を娶る |
| 21 |
君主が臆病で思い切りが悪く、頭でよいと考えても実行できない |
| 22 |
君主が出奔したのに国内で別の君主を立てたり、太子が人質に出ているのに、別の太子を立てる |
| 23 |
大臣や下々の民をひどく辱しめたり、むごく使役し、恥を忘れないまま身近で仕えさせる |
| 24 |
複数の大臣や君主の父兄が、国内で党派を組み、外国の援助を受けて互いに権勢を争う |
| 25 |
寵妾や幇間の言が用いられ、朝廷の内外で怨み悲しんでいるのに、君主がたびたび法に外れたことを行う |
| 26 |
君主が大臣を侮り、父兄に礼をつくさず、罪もない者を殺戮する |
| 27 |
君主が勝手な知恵や私情で法をゆがめ、法律禁制をたびたび変える |
| 28 |
防戦の備えもないのに、軽率にも攻めて出る |
| 29 |
君主が夭折して幼児が君となり、実権を握った大臣が党派を組んで、国土を割譲して外交を保つ |
| 30 |
太子が有名で、従属者も多く、大国との交際も盛んで、威勢が早くから備わっている |
| 31 |
君主がせっかちで事を起こしやすく、すぐ激怒して前後の見さかいもなくなる |
| 32 |
君主が戦争を好み、農事をおろそかにして軽々しく攻撃をしかける |
| 33 |
貴族はねたみあい、大臣は権勢を握り、他国の力を借り、国内の民衆を苦しめ勢力争いに明け暮れるが、君主がそれを罰しようともしない |
| 34 |
君は愚かだが父兄はすぐれ、太子よりも庶子の勢いが強く、官吏よりも人民が威張っている |
| 35 |
君主が臣下の罪状を明らかにしながら罰しないでいる |
| 36 |
派遣する将軍や辺境の長官に与える権力が大きすぎて、勝手に裁断し、君主の指示を仰ごうともしない |
| 37 |
正夫人は淫乱で、太后は男妾を養い、朝廷と後宮が通じ合い、男女のけじめもない |
| 38 |
正夫人より婢妾が尊ばれ、太子より庶子が重んじられ、宰相より取次ぎ役の地位が重い |
| 39 |
大臣が強力な私党を作り、君主の裁断をさまたげ、国権を勝手に操る |
| 40 |
貴族や重臣の家来は中央で任用されるが、国家の功臣の子孫は遠ざけられ、村里の小さな善行は表彰されるが、官職の功労は無視される |
| 41 |
君主・土着の民・農耕と戦争にあたる者が困窮し、大臣・外来の者・商工業者が富む |
| 42 |
君主が利益も追求せず戦争防禦もなおざりにして、むりに仁義の美名でその身を飾る |
| 43 |
君主が国家の利益を顧みず、女子が国政を動かし宦官が事を治める |
| 44 |
君主の言葉は雄弁でも法に合わず、頭のめぐりは早くても術がなく、才能は豊かでも法度に従わない |
| 45 |
新参の臣が昇進し、古くからいるものが退けられ、愚か者が事を切り回し、すぐれた者は身を隠し、功績のない者が高位につき、苦労をした者は身分が低い |
| 46 |
君主の父兄や大臣が功績以上の俸禄を受け、ぜいたくをきわめながら、君主がそれを禁じない |
| 47 |
君主の娘婿や孫たちが、庶民と同じ里に住んで近隣に乱暴する |
さて、こうしてみると重複した内容も結構ありますね。
いちばん強調しているのは、「本来あるべき上下関係が逆転するのが亡国のきざし」という点ではないでしょうか。
「君主よりも大臣が権力や名声を握ったり、私党を組む例」としては、01、07など。将軍や辺境の長官に権力を与えすぎる36も、ここに含めます。
同じように、「君主よりも太子が〜」というケースは、30。
「君主よりも、父兄が〜」というのは34です。
対君主でなく、「本妻の嫡子や太子よりも、異腹の庶子等が勢いをもつ」という関係でとらえたのが、17、20など。
「正夫人より婢妾が〜」というのは、38。
外交面では、「国内や隣国をおろそかにして、外国に頼る」というのが、02、13。
これを人間に置き換えると「国内の人材・旧臣を軽んじ、新参者・外国の寄寓者を重用する」となって、14、16など。
さらに考え方でいくと、「実利を追求するなど、現実主義・実用主義を採るべきなのに、無用の学問や弁論の方を重んずる」が、03。
それを産業面で表すと「農業・軍事より商工業が上に立つ」が03、41。
このほか、「君主の性格的問題点」ももちろんあります。
「性格が荒く好戦的」というのが、31、32。他と和合できない12や、臣下などを辱しめたりむごく扱う23、26もここに含めます。
「合理的、現実的でない」のが迷信を信じる05や、「仁義」の名で虚飾する42など。
「決断力・行動力に欠ける」が08、21。これは、大臣や一族の権勢、罪状、ぜいたく等を制することができないという33、35、46も含みます。朝令暮改の27もここに。
民衆を疲弊させるほどの「ぜいたく、貪欲」の04、09。
特定の寵臣だけを情報の入り口とする06、ほかにも愛妾や幇間の言を用いる25などを「偏愛」と定義付けします。
「軽率」は秘密を守れない11、隣国などを侮る18、19など。
「その他の問題点」としては、別の君主や太子が立って国が割れる22や、性モラルが乱れる37、君主の関係者がぜいたくをしたり、民衆に乱暴する46、47など。
さて、これらを整理すると下表のようになります。
| 1 上下関係の逆転 |
| 1−1 |
君主<大臣 |
01、07、24、29、36、39、41 |
| 1−2 |
君主<太子 |
30 |
| 1−3 |
君主<父兄 |
34 |
| 1−4 |
嫡子<庶子 |
17、20、34、38 |
| 1−5 |
正夫人<婢妾 |
38 |
| 1−6 |
国内<外国 |
02、13 |
| 1−7 |
旧臣<新参の寄寓者 |
14、16、40、41、45 |
| 1−8 |
実利<口先 |
03 |
| 1−9 |
農業・軍事<商工業 |
03、41 |
| 2 君主の性格的問題点 |
| 2−1 |
性格が荒く好戦的 |
12、23、26、28、31、32 |
| 2−2 |
合理的・現実的でない |
05、10、42、43、44 |
| 2−3 |
決断力・行動力に欠ける |
08、21、27、33、35、46 |
| 2−4 |
ぜいたく、貪欲 |
04、09 |
| 2−5 |
偏愛 |
06、15、25 |
| 2−6 |
軽率 |
11、18、19、28、29 |
| 3 その他の問題点 |
| 3−1 |
別の君主や太子が立つ |
22 |
| 3−2 |
性モラルの乱れ |
37 |
| 3−3 |
一族のぜいたく、乱暴 |
46、47 |
さて、今後、亡国の事例にあたっては、上記のどの項目に該当するかチェックしていきたいと思います。
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