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亡国Part1

 『韓非子』:「亡徴」に、こと細かに亡国の徴候について事例があげられています。なんとその数は50近くにも及びますが、ひとつひとつ見ていきましょう。
(長くて読んでられねえぜ!という方は、上の「ジャンプ」をクリックして最後の結論へどうぞ)

01 国が小さいのに大夫の家は大きく、君主の権力より臣下の方が強い
02 法律による禁制をおろそかにして謀略をはかり、国内の政治を乱れたままにして、外国との交際と援助に頼る
03 群臣が無用の学問を修め、一族の子弟が弁舌を好み、商人が財貨を私的に蓄積し、庶民が私闘を重んじる
04 君主が宮殿等を好み、車馬や器物等に凝って、民衆を疲弊させ、財貨を使いはたす
05 君主が季節の吉凶や鬼神の意向を大切にし、占いを信じて、祭祀を好む
06 君主が人の意見を聞くのに爵位の高下に従い、事実を調べず、一人の臣だけを情報の入り口として重用する
07 官職は重臣の口添えで得られ、爵位や俸禄は賄賂を使って得られる
08 君主がたるんだ心で仕事を成し遂げず、柔弱で決断にとぼしく、好き嫌いに確固たる立場を持たない
09 君主が貪欲で満足を知らず、利益を追いかけ我が物にするのを好む
10 君主がでたらめを喜んで法令に合うことを務めず、論説を好んで実用を追求せず、うわべだけを飾って実効を顧みない

 


 
11 君主が人柄浅薄で、秘密はすぐ漏らし、周到にできず、群臣の言葉を筒抜けにする
12 君主が頑なで人と和合せず、諫言に逆らい人に勝つことを好み、国家のことを考えず、軽率で自信たっぷり
13 遠い国や強大な国の援助を頼りにして、近隣の国をなおざりにする
14 外国から来た寄寓者が、財宝や妻子は国外に置きながら国家の謀りごとや民政に参与する
15 民衆が主君に親しまず宰相を信用しているのに、主君がその宰相を寵愛し続ける
16 国内の人材でなく外国の士人を求め、実際の功績でなく評判で評価し、外来の寄寓者が栄達し、古い臣下をしのぐ
17 異腹の庶子たちが本妻の嫡子と張り合い、太子が決まらないうちに主君が死亡する
18 君主が大まかで過ちを悔いることもなく、国内の実力も考えずに隣の敵を軽視する
19 国は小さいのに大国にへりくだらず、無礼な態度で隣の国を侮り、外交もまずい
20 太子が定まったあとに、強い敵国から正夫人を娶る

 


 
21 君主が臆病で思い切りが悪く、頭でよいと考えても実行できない
22 君主が出奔したのに国内で別の君主を立てたり、太子が人質に出ているのに、別の太子を立てる
23 大臣や下々の民をひどく辱しめたり、むごく使役し、恥を忘れないまま身近で仕えさせる
24 複数の大臣や君主の父兄が、国内で党派を組み、外国の援助を受けて互いに権勢を争う
25 寵妾や幇間の言が用いられ、朝廷の内外で怨み悲しんでいるのに、君主がたびたび法に外れたことを行う
26 君主が大臣を侮り、父兄に礼をつくさず、罪もない者を殺戮する
27 君主が勝手な知恵や私情で法をゆがめ、法律禁制をたびたび変える
28 防戦の備えもないのに、軽率にも攻めて出る
29 君主が夭折して幼児が君となり、実権を握った大臣が党派を組んで、国土を割譲して外交を保つ
30 太子が有名で、従属者も多く、大国との交際も盛んで、威勢が早くから備わっている

 


 
31 君主がせっかちで事を起こしやすく、すぐ激怒して前後の見さかいもなくなる
32 君主が戦争を好み、農事をおろそかにして軽々しく攻撃をしかける
33 貴族はねたみあい、大臣は権勢を握り、他国の力を借り、国内の民衆を苦しめ勢力争いに明け暮れるが、君主がそれを罰しようともしない
34 君は愚かだが父兄はすぐれ、太子よりも庶子の勢いが強く、官吏よりも人民が威張っている
35 君主が臣下の罪状を明らかにしながら罰しないでいる
36 派遣する将軍や辺境の長官に与える権力が大きすぎて、勝手に裁断し、君主の指示を仰ごうともしない
37 正夫人は淫乱で、太后は男妾を養い、朝廷と後宮が通じ合い、男女のけじめもない
38 正夫人より婢妾が尊ばれ、太子より庶子が重んじられ、宰相より取次ぎ役の地位が重い
39 大臣が強力な私党を作り、君主の裁断をさまたげ、国権を勝手に操る
40 貴族や重臣の家来は中央で任用されるが、国家の功臣の子孫は遠ざけられ、村里の小さな善行は表彰されるが、官職の功労は無視される

 


 
41 君主・土着の民・農耕と戦争にあたる者が困窮し、大臣・外来の者・商工業者が富む
42 君主が利益も追求せず戦争防禦もなおざりにして、むりに仁義の美名でその身を飾る
43 君主が国家の利益を顧みず、女子が国政を動かし宦官が事を治める
44 君主の言葉は雄弁でも法に合わず、頭のめぐりは早くても術がなく、才能は豊かでも法度に従わない
45 新参の臣が昇進し、古くからいるものが退けられ、愚か者が事を切り回し、すぐれた者は身を隠し、功績のない者が高位につき、苦労をした者は身分が低い
46 君主の父兄や大臣が功績以上の俸禄を受け、ぜいたくをきわめながら、君主がそれを禁じない
47 君主の娘婿や孫たちが、庶民と同じ里に住んで近隣に乱暴する

 



 さて、こうしてみると重複した内容も結構ありますね。

 いちばん強調しているのは、「本来あるべき上下関係が逆転するのが亡国のきざし」という点ではないでしょうか。

 「君主よりも大臣が権力や名声を握ったり、私党を組む例」としては、01、07など。将軍や辺境の長官に権力を与えすぎる36も、ここに含めます。
 同じように、「君主よりも太子が〜」というケースは、30。
 「
君主よりも、父兄が〜」というのは34です。

 対君主でなく、「本妻の嫡子や太子よりも、異腹の庶子等が勢いをもつ」という関係でとらえたのが、17、20など。
 「正夫人より婢妾が〜」というのは、38。

 外交面では、「国内や隣国をおろそかにして、外国に頼る」というのが、02、13。
 これを人間に置き換えると「国内の人材・旧臣を軽んじ、新参者・外国の寄寓者を重用する」となって、14、16など。

 さらに考え方でいくと、「実利を追求するなど、現実主義・実用主義を採るべきなのに、無用の学問や弁論の方を重んずる」が、03。
 それを産業面で表すと「農業・軍事より商工業が上に立つ」が03、41。

 このほか、「君主の性格的問題点」ももちろんあります。

 「性格が荒く好戦的」というのが、31、32。他と和合できない12や、臣下などを辱しめたりむごく扱う23、26もここに含めます。
 「合理的、現実的でない」のが迷信を信じる05や、「仁義」の名で虚飾する42など。
 「決断力・行動力に欠ける」が08、21。これは、大臣や一族の権勢、罪状、ぜいたく等を制することができないという33、35、46も含みます。朝令暮改の27もここに。
 民衆を疲弊させるほどの「ぜいたく、貪欲」の04、09。
 特定の寵臣だけを情報の入り口とする06、ほかにも愛妾や幇間の言を用いる25などを「偏愛」と定義付けします。
 「軽率」は秘密を守れない11、隣国などを侮る18、19など。

 「その他の問題点」としては、別の君主や太子が立って国が割れる22や、性モラルが乱れる37、君主の関係者がぜいたくをしたり、民衆に乱暴する46、47など。

 さて、これらを整理すると下表のようになります。

1 上下関係の逆転
1−1 君主<大臣 01、07、24、29、36、39、41
1−2 君主<太子 30
1−3 君主<父兄  34
1−4 嫡子<庶子 17、20、34、38
1−5 正夫人<婢妾 38
1−6 国内<外国 02、13
1−7 旧臣<新参の寄寓者 14、16、40、41、45
1−8 実利<口先 03
1−9 農業・軍事<商工業 03、41
2 君主の性格的問題点
2−1 性格が荒く好戦的 12、23、26、28、31、32
2−2 合理的・現実的でない 05、10、42、43、44
2−3 決断力・行動力に欠ける 08、21、27、33、35、46
2−4 ぜいたく、貪欲 04、09
2−5 偏愛 06、15、25
2−6 軽率 11、18、19、28、29
3 その他の問題点
3−1 別の君主や太子が立つ 22
3−2 性モラルの乱れ 37
3−3 一族のぜいたく、乱暴 46、47

 さて、今後、亡国の事例にあたっては、上記のどの項目に該当するかチェックしていきたいと思います。

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