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親孝行Part1

 歴史に残る「孝行息子」たちをご紹介します。
 現代の私たちの目から見ると「何でそこまで・・・」と感じるケースばかりとは思いますが・・・


(1) 急子(

 春秋時代の衛に宣公という人物がいました。父の妾である夷姜と通じ、急子が生まれました。
 その後、宣公は、世子として立てた急子のため、斉から釐(き)公の娘宣姜を嫁に迎えたのですが、その美貌に惑い、息子に渡すのが惜しくなり、自分の側室としてしまいました。
 いわゆるケダモノってやつですな。英語でいうと、fruits。(←それは、クダモノ

 宣姜との間に寿という子供が生まれると、急子は邪魔者に。急子が斉に使者として立つ際に刺客を送って始末することになりました。

 嬉しさを隠し切れない母の口から陰謀を知った寿は、急いで義兄の後を追い、他国へ亡命するよう勧めました。
 その時、急子の口から出たせりふを駒田信二氏ほか『新十八史略』(河出文庫)より引用すると、

「わたしが他国へ逃げれば、父の過ちを吹聴することになる。不孝の子となるよりは、いっそ父上の手にかかって死にたい」 

(ひとこと)
 これに類する話は多いですね。ざっと数え上げても、
 申生

 晋の献公の愛妾驪姫は、太子申生の捧げた肉に毒を盛り、彼が父を毒殺しようとしたかのように装いました。BC656年のことです。これも自分の子(奚斉)を後継ぎにしたいため。

 弁明なさいと勧める人に申生は
 「殿は老いて、最早驪姫がいなければ、安眠もできず、食事ものどを通らないだろう。それなのに、事実を話せば、驪姫を処罰せねばならなくなる。そうは、いかない」

 太子曰く、
「吾が君は老いたり。
驪姫に非ずんば、寝、安からず。食、甘からず。
即(も)し、これを辞せば、君、且(まさ)にこれに怒らんとす。
不可なり」と。
   
『史記』:「晋世家」

     

 
そして、彼は、亡命しては、という勧めもきかず、自分で命を絶ちました。
 申生の行動と、急子(『史記』:「衛康叔世家」では、太子)のそれが酷似していることは、司馬遷も指摘しています。


イ 伍尚

 
費無忌という奸臣が、太子に迎える嫁が美しいことを知り、楚の平王に勧めて取り入りました。
 建の復讐を恐れた費無忌は、太子が反乱を起こそうとしていると讒言。
 真に受けた平王は、太子の養育係の伍奢(ごしゃ)を捕え拷問しました。

 費無忌は、「伍奢には二人の息子がおり、ほっておけば、王にとって災いとなります。父の命を助けたければ、出て来いとして呼び寄せましょう」と建言。

 
弟の伍員(ごうん)は、「行ったところで、父子もろとも殺され犬死にです。亡命して、父の復讐をしましょう」

 
しかし、兄の伍尚は、「確かに、行っても父の命を救うことはできまい。しかし、父が助けを求めているのに行きもしないで、しかも、その恥も雪(すす)ぐことができなかったら耐えられぬ」として、捕われの父のもとに赴きました。

 伍尚曰く、
「我、往くも終(つい)に父の命を全うする能わざるを知る。
然れども、父、我を召して以て行きんことを求むるに、而も往かず、後に恥を雪ぐ能わずして、終に天下の笑いと為るを恨むのみ」と。
   
  『史記』:「伍子胥列伝」

   


ウ 扶蘇

 扶蘇は、秦の始皇帝の長男。BC210年、始皇帝が巡幸の途上、沙丘宮で死んだ時に、扶蘇は名将蒙恬とともに辺境の地にありました。

 宦官趙高、丞相李斯、そして末子胡亥らによって、「扶蘇と蒙恬に死を賜う」という遺書が偽造されました。(ギネス「宦官 わるもん編」の趙高の欄もご参照ください)

 「この遺書は不審です。問い合わせをしてからでも遅くはありません」と留める蒙恬に、扶蘇は、
 「父が子に死を賜うというのは、よほどのことじゃ。重ねて尋ねることなどできようか」。そういって、従容と自決しました。


(ひとこと その2)
 急子(伋)や申生は、父の名誉や健康、幸せを守るため、自らの命を犠牲にしたのでした。
(急子が死ぬまでには、更に悲劇が待っていたのですが、それは、また別の機会にご紹介しましょう)

 伍尚は、結局父子もろとも殺されるのですが、招請自体はまぎれもなく、主君平王の意思。
 また、伍奢は、王が二人を呼び寄せようとすることも、伍尚は来るが、伍員は来ないということも承知していました。
(王は、まず伍奢自身で息子を呼べと命じたのです)。
 蛇足ですが、この伍員とは伍子胥のことです。(名せりふ「史記」もご参照を)

 ところが、扶蘇の場合は、父の真意とは全く逆の偽造文書に従って、死んでしまったのですから、「犬死に度」は大、といえますね。

 さて、理不尽(又は偽り)でも「親の命令には従う。しかも命まで捧げる」というケースだけで、ずいぶん長くなってしまいました。
 あとの(2)以下は、Part2でご紹介します。