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西太后と溥儀の部屋(3) 映画紹介「ラストエンプレス 西太后」、「李蓮英と西太后」

ラストエンプレス 西太后

 映倫R指定を受けた映画。
 恭親王奕訢が時の帝であり兄でもある咸豊帝への不満をもらしている場に、逃げ出した猫の冬冬(トントン)を追いかけて玉蘭が来合わせ、運命的な出会いをする。
 その後、山賊に襲われた玉蘭を救いに現れたのは、もちろん恭親王である。玉蘭を小脇にかかえ、山賊どもをバッタバッタとなぎ倒し、扇をさっ!と開いて高笑い。ワイヤーアクションを駆使して、まるでカンフー映画のノリである。その場で恭親王は玉蘭に結婚を申し込むが、後宮に入る身と聞き、「またも、兄に奪われた」と唇をかむ。

 最初のうちは、玉蘭は、おっちょこちょいの愛すべき人物として描かれている。輿入れの際も、のぞきこんだ宦官に驚いたあまり、輿から転げ落ちて周りに笑われる。
 宦官に付け届けをしなかったために、部屋も雨漏りがする所をあてがわれ、こっそり連れてきた猫を抱きしめ、寂しさや不安に耐える。
 意外なことに帝から真っ先に召されたのは玉蘭だった。しかし、それはそのドジぶりで名前が覚えられた(転げ落ちた時に帝が通りかかり起こしてくれた)だけで、帝のお気には召さず、追い立てられて部屋に戻ると、猫が釜茹でにされて、殺されていた。

 その日以降は一向にお呼びがかからず、孤独を慰めてくれていた猫も失い、玉蘭は「あの娘は狂ってしまったようだな」と噂されるようになっていた。

 ある日、うっかり麗妃付きの宮女が、自分よりも先に帝のご指名を受けたことに腹を立てた麗妃の命令で猫を殺したことをもらしてしまう。
 逆上した玉蘭がはっと我に返ると、その宮女はかんざしを何度も何度も突き立てられ、血まみれになって横たわっていた。

 その殺人シーンに来合わせるのがまたまた恭親王。素早く、その宮女を井戸に放り込み、証拠隠滅を図る。玉蘭が変わったのが、まさにこの日からだった。
 休暇を取って実家に帰り、娼婦らを招き、男を蕩かす秘術を学ぶ。毎日続けても3年はかかるといわれた奥義を、必死の努力で1週間の休暇中に会得したのである。(この特訓シーンの辺が「R指定」のゆえんたるところであろう)

 玉蘭は、男装して帝の側近くに潜入し、みごと本懐を果たす。のし上がっていく彼女にとって、最早恭親王は過去の人でしかない。あっさり切り捨てられる彼が哀れであった。
 「西太后〜垂簾聴政」では、手足を切って麗妃を壷漬けにしたが、この映画では、猫の仇を討つべく釜茹でにする。

 エロもグロも盛り込んでいるのだが、鑑賞後の印象はもひとつ希薄な作品であった。

(資料)
監督:アンドリュー・ラウ
出演 玉蘭:チンミー・ヤウ、奕訢:レオンカーフェイ(「西太后〜垂簾聴政」では、咸豊帝。「火龍」では宣統帝と、愛新覚羅家を総なめにせん勢い)
製作年度:1994年 96分
原題:慈禧秘密生活 Lover Of The Last Empress



「最後の宦官 李蓮英と西太后」

 姜文と劉暁慶というのは、謝晋監督の「芙蓉鎮」で共演した仲だが、それぞれ李蓮英西太后を演じている。
 
 映画は、同治帝が死に、西太后が権力を維持するため朝廷の慣習に反して同世代の光緒帝を立てる辺から始まる。

 主人公だけあって、この映画では李蓮英をただ、おべっかだけで出世した悪玉宦官とは描いていない。
 危険を顧みず、光緒帝の願いを聞いて幽閉中の珍妃と会う段取りをつけてやる。
 (ただし、西太后が崔玉貴珍妃を井戸に放り込めと命じた時は、珍妃が助けを求めるのを無視して、井戸に落す手伝いをするのだが)

 妾を囲おうとするが、自分を蔑む気持ちが強いあまりに、こんな俺の妾になろうとは何て恥知らずなんだと、その女を足蹴にする。
 しかし、女はやむにやまれぬ事情があるからこそ宦官の妾になる決心をしたので、そんな扱いを受けても「一生懸命にお仕えします。ご主人様」とひれ伏す。
 そんな女を見て、李蓮英が
 「主人はお前の方だ。俺は女に仕えるんだ」と涙にくれるシーンは、西太后に待す宦官ゆえの屈折した感情なんだろうなあと思った。

 死の床に臥せていた西太后がひょっこり起き出してきて、李蓮英の処へやってくる。義和団の乱の兵火を避けるため、西安に落ち延びた日のことなどを思い起こす西太后。

 床に戻ろうとする西太后を、李蓮英が背負う。その西安への逃避行の途中、河を渡る時、李蓮英が西太后をおぶったのだ。「おんぶ」が二人をその時代に戻す。 西太后の意識はもう錯乱してしまっている。
 「ずっとこのまま歩いておくれ。」、
 「あの花を摘んでおくれ。」
 李蓮英は一切逆らわない。
 「はい(チャー)」、李蓮英の声が暖かく響く。
 「はい、このまま歩きます」、
 「はい、李蓮英はいつまでも西太后様のお側を離れません」

 まるで「楢山節考」のようだ。ああ、この映画は二人の愛の映画だったんだなあ、と感じる。

 李蓮英を演ずるのは、「紅いコーリャン」(1987年)でのエネルギーの塊のような男が印象的な姜文
 監督は「青い凧」などを撮った田壮壮。これもいわゆる西太后ものなのでキワモノか?と思っていたが、さすが田監督。ストーリーは何度もフラッシュバックするし、登場人物の説明は少ないが、印象深い佳品に仕上げています。1990年度ベルリン国際映画祭「奨励賞」は、ダテじゃないなと感じました。

(資料)
監督:田壮壮
出演:李蓮英:姜文(チアン・ウエン)、西太后:劉暁慶(リウ・シアオチン)
    醇親王:朱旭、珍妃:徐帆、光緒帝:田少軍
製作年度:1990年。原題:大太監李蓮英


  

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