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それ行け!中華探偵団(2) 「紅一点」とは?

 先日、私のサイトに「突然ですが「宰相」、「吏部尚書」、「西安府知事」の説明と、日本で言うとどのような役職にあたるのか教えてください。今週末の舞台公演までに調べなくてはいけないのですが、普通の辞書には載っていませんし、どのような資料を見たら良いのかわかりません」という質問が来たということを書きました。

 また、うちのようなマイナーサイトでお尋ねになるのは、まるでK−1のマイクベルナルドとジェロムレバンナの二人組みにからまれた女性が、たまたま通りかかったMr.オクレに助けを求めたようなものではないか、とも書いたところです。

 しかし、またも、うちの掲示板で「紅一点って花のことのようですが、何の花ですか」という質問が書き込まれました。
 まるで、「TV探偵団」で何かの調査依頼が来たような気になって、またも調べた結果を書き記すこととした次第です。


1 直感的かつ極めて安易な暫定的回答

 
掲示板に「紅一点って何の花?」という質問が書かれたので、取りあえず掲示板でレスを返しました。

 「紅い花ということで、反射的に牡丹を連想しましたが、もともと、王安石がつくった詩が「石榴の詩」というんだし、石榴(ざくろ)じゃないでしょうか?」というものです。

 掲示板に質問を書かれた方は、おそらくカルトクイズ「色いろクイズ」をご覧になったのだと思います。で、そこには「紅一点」の出典は、王安石の「石榴の詩」という詩の中の「万緑叢中に紅一点あり 人を動かす春色は多きを須いず」といわれていると書きました。
 問題は、私は石榴の花というものを見たことがなく、紅いのかどうかわからないという点です。
 石榴って、頭がかち割れた死体のことを「石榴のようにぱっくりと・・・」なんて表現されますが、最近では美容にいいとかで、ちょっとしたブームになっていますよね。私も実は(じつは・・・と告白しているのではなく、「み」は)見たことがあるし、食べたこともあるのですが、花まではちょっと・・・。で、石榴について調べてみました。と言っても、広辞苑でひいただけですが。
石榴の花 

「ざくろ 〜ペルシア・インド原産で、中国で古くから栽培された。〜葉は細い長円形で対生、つやがある。六月ごろ鮮紅色の筒状花を開き〜」 

 な、なるほど。紅いのは間違いなさそうだ。一応、この辺まではあたりをつけて、さきほどの掲示板レスを書き込んだのでした。
(右上の絵は、『植物の図鑑』(小学館)より)

 


2 出典確認編

 さて、上記「色いろクイズ」は去年の7月にアップしたもの。そして、参考文献を書いてなかったので、どの文献を見て王安石の「石榴の詩」を知ったのかわからなくなってしまいました。
 私は自分の創見と引用文とを峻別したいので、できるだけ参考文献をいちいち明示するようにしています。それで文章が非常に読みにくくなっているのですが、ここのクイズでの解説文では、短くするため、参考文献の記載は省略してしまったようです。

 「紅一点」って、案外「故事成語集」などの収録は少ないのですね。
 藤堂明保氏の『中国名言集』(上・中・下)(朝日新聞社)、同『中国の歴史と故事』(旺文社文庫)、陳舜臣氏の『中国名言集 弥縫録』(中公文庫)、細田三喜夫氏の『中国故事物語』(講談社学術文庫)、芦田孝昭氏の『中国の故事・ことわざ』(現代教養文庫)、諸橋轍次氏の『中国古典名言事典』(講談社学術文庫)、駒田・寺尾両氏編『中国故事物語』(処世の巻、教養の巻)(河出文庫)には載ってませんでした。
 
 いわゆる「新法」で有名な王安石は、一方で唐宋八大家といわれる名文家のひとり(ちなみにフルメンバーは、唐の韓愈柳宗元、宋の欧陽修。そして欧陽修の門下のうち特に蘇洵蘇軾蘇轍と王安石、曽鞏の計8人)でした。

 私が前回参考にした駒田・寺尾『中国故事物語』(愛情の巻)によると、王安石が作った「石榴の詩」の中で前掲の一節が見られ、「一面の緑の中に咲く一つのざくろの花の美しさ、可愛いらしさを、春色第一とたたえている。」とありました。
 あらま、いきなり結論が出ちゃいましたね。

 同書では、その他に出典として『壬斎詩話』『七修類稿』『王直方詩話』『遯(とん)斎閑覧』『侯鯖録』『孝経楼詩話』などが紹介され、字句としても「万緑枝頭に紅一点あり」とか、「濃緑万枝に紅一点あり」など若干の異同はある旨書いてありました。
 同じく「紅一点」の記載があった飯塚朗氏の『中国故事』(角川選書)でも、おおむね同様の内容でした。


 これではあんまり愛想がないので、前掲『中国古典名言事典』に出てきた石榴に関する一節を。

   眉黛(びたい)は奪将(だっしょう)す萱草(けんそう)の色  
   紅裙(こうくん)は妬殺(とさつ)す石榴(せきりゅう)の花

 
これは、万楚(ばんそ)という唐代の詩人の「五日、妓を観る」という七言律詩の一節。意味は「美人の黛(まゆずみ)の色は、萱草(わすれ草)の紫の色を奪うように美しく、また、美人の紅の裙(もすそ)は石榴の花を嫉妬させるほど美しい」。  

 ここでも、石榴の花は、紅の花の典型として扱われてますね。



 ご依頼の案件ございましたら、掲示板ででもお書き込みください。力の及ぶ範囲(←おっ、逃げ腰)で調べてみます。