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(No32) 恋人商法目撃?事件
今年の正月だったであろうか、バラエティ番組で、いわゆる「恋人商法」について取り上げていた。
恋人商法とは、初対面であるのに、まるで恋人からのような調子で電話をかけ、面会し、高額な商品を売りつけるというものである。
最初に出てきた被害者A氏、呼び出されて連れていかれたのが、高価な毛皮売り場。
そこには、自分と同じような、およそ毛皮だのファッションだのとは縁遠そうな男性が何人かいて、連れの女性に引きずられるようにしてオーバーなどを見ていたとか。
しかし、A氏は、その女性を怨んでいる様子は感じられず、彼女と話している時はとても楽しかった。できれば、もう一度会いたいと語っていた。
(「彼は、きっと、また被害にあいますよ」というのがスタジオの出演者の弁だった。私もそう思う)
これだけなら、ただの消費者センター的な番組なのだが、その後、少し前までこの商売をやっていたという若い女性が出てきて、電話帳を広げて実演してみせたのだ。
ある男性と会話がはずむ。スタジオも、「おっ、早くもひっかったのか?」と色めきたったが、彼女は早々に電話を切り上げてしまった。
なぜ?と問う司会者に彼女は「彼には、何だか、彼女がいるとか、女性との会話に慣れている雰囲気があったのです」。う〜ん、深い。
しばらくして、別の男性がかかった。もろ警戒している雰囲気がありありとわかる。しかし、彼女は強引に会話を進める。
きっと、名人にしかわからない魚信(あたり)があったのだろう。結局アポの取り付けに成功する。
電話の切り際に、彼女は「あのう・・・顔やスタイルは期待しないでね」と言った。
これまた理由を尋ねる司会者に
「男性は、口には出さなくても絶対顔やスタイルのことを期待してるから、こう言っておくと、大したことないんだというあきらめの心理がはたらく。
そうすると、会った時、最初からすごく喜んでくれる」
要するに彼女は、自分が顔もスタイルもいいとわかっている。(目線隠しは入っていたが、TV画面からもそれはうかがえた)
「期待しないで」と言っておくと、相手は
「どうせ、俺みたいなもてない男に、かわいい女の子が電話なんかしてくれる筈がない」と思いこむ。
そうしておくと、彼女を見たとたん
「ええ〜!?うそォ〜!めっちゃ、かわいいやん!!」と舞い上がってしまうことを熟知しているのである。
TVカメラは、その後街頭に出た。
彼女が待ち合わせ場所に指定したところを隠し撮り。待つことしばし・・・彼が来た!
彼女を見たとたん相好を崩しているのが顔にかかったモザイクごしにも見てとれた。
彼に対してはスタッフが事情を説明して、謝ったそうなのだが、人間不信に陥ったか、いい授業だったと受けとめたのか、それはわからない。
さて、何でこんなことをえんえんと書き綴ったか、というと、先日これの現場らしきものに遭遇したのです。
私は息子と電車のシートに座っていたのですが、前に立っている男性、ぱっと見たところ・・・里芋。
20過ぎくらいでしょうか?私も、芋の中の芋ですから、偉そうに批判してるわけではないのですが、無骨な顔、細い一重まぶた、短めの髪の毛、にきび、黒いダウンベスト、でかいショルダーバック。
顔から、ファッションからすべて・・・里芋。まだ、土がいっぱいついている感じ。
で、横に立っている女性の方、何か彼を見た後で彼女を見るとちょっとまぶしく感じるような・・・。
顔は、そうですねえ、畑中葉子をスマートにしたって感じ。知らないか、みんな。♪ら〜ぶれた ふろ(ん) かなあだ〜♪って聞いたことない?
ともかく、そこそこいけてるんですよ。スカートは短め。
女性の声がでかいんで、そんな聞き耳を立ててるつもりはないんだけど、聞こえてくる。どう聞いても、以前からの知り合いとは思えない。
男性の方は敬語まじり。でも、女性の方はタメ口(対等の言葉使い)。
「ええ〜、何か体育会系って感じい。何かスポーツやってるんちゃうん?」
女性の方、ぽんぽんとたたみかける。で、男性が何か応えると、感心するやら、いかにも「その話関心あります〜!!」って感じで、そのことについて質問するやら忙しい。
そうこうしてるうちに、だんだん男性の方も緊張がほぐれてきたのか、得意のギャグらしきものを披露する。
(詳細は聞こえないのだが)まずは前置きというか、状況説明みたいなことで「〜でな、〜して・・・」と言っている。
うん、うんとうなずきながら、口を少しとんがせるような格好にして、やや見上げるような感じで真剣に男性の顔を見つめる女性。
「で、結局、〜やねん。そら違うやろっちゅうねん」
・・・・・・・どうやら、これがオチらしい。
しばらくしてから、はじけるように笑い出した女性。片手で口をおおって、もう一方の手で「もう〜!」てな感じで男性の背中をぱしぱし叩く。
吊革を持って立ってる男性、叩かれるたびにすこしがくんがくんと体をゆらしながら、非常に嬉しそうな顔をしている。
取っておきのギャグがうけたのに気を良くしたのか、彼は話を続ける。
しかし、どうやら持ちネタはあまり多くなさそうで、「せやろ?なあ。しゃあから、それは違うやろっちゅうねん」
どうも、先ほどのネタの繰り返しのようだ。けれど、女性は何度でもうける、うける。
1回目の時の一瞬の空白は、おそらく「ここがオチなんだろうか?」と判断に苦しんでいたのだろうが、もはや、迷いはない。
「前振り」の段階からうずうず体を小刻みに震わせ、「っちゅうねん!」のところで、過(あやま)たず、おかしくってたまんない!とばかりにぱしぱし。
ええなあ。こんな「お客さん」欲しいなあ。何度目でも、ばんばん受けてくれる観客が。
そのうち、さしもの彼女にもふっと話が途切れそうな瞬間が訪れた。
しかし、彼女は粘り腰。そのたびに、切り札のせりふを言って、切り抜けるのであった。
「ふ〜ん・・・そうなんだあ・・・」
「そっかあ・・・」
「へえ・・・そうなんやあ」
半ば自分に言い聞かせてるような、感心してるような、その実、中味というと「私は、あなたのことはな〜〜んにも知らんかったんですよ」ということを再確認してるくらいの意味合いしかないのだが、聞いてて、そんなに悪い気はしないようだ。
これから、彼が、彼女にどんなとこに連れていかれるのか、後学のためにも是非見学したかったのだが、残念ながら私と息子は降りる予定のK駅に着いてしまった。
私たちが立つより早く、向かい側のシートで立ち上がった人がいた。
すると、彼を見ながら笑いころげていた彼女、ふっと真顔に戻り、肩越しにシートを見るや、彼のひじをつかんで、「あっ、空いたわ。座ろか?」
冷静やん、周りがよく見えてるやん。
ますます後ろ髪ひかれる思いで、電車をおりた私であった。
もちろん、私が見たのは恋人商法でも何でもなく、彼女にとって、今日誰かの紹介で初めて会った彼が、実際に理想のタイプだったんで夢中で話していたのかもしれない。
ただ、先日のTV番組でも、アポインターの女性が「心得」として、
(1)男性の話は、最大の関心があるかのように熱心に聞くこと。
(2)おもしろくなくても、「受ける」こと。
(3)ちょっとしたきっかけで、腕とか背中とかにさりげなく触れること、といったことをあげており、あんまりそれにぴったりしていたので、ご紹介しました。
あの男性のお幸せを祈ります。(まあ、太刀打ちはできんでしょうが)
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